使っている道具の料金が上がったとき|残るか移るかの決め方
プロジェクト管理ツールの値上げが告知されると、社内では決まって同じ質問が出ます。「うちはいくらになるのか」「このまま使い続けるのか、別のものに移るのか」。そして多くの場合、この2つが同時に議論されて、結論が出ないまま更新日が近づきます。
順番があります。先に決めるのは移るかどうかではなく、自分たちの場合に「いつから」「いくら」変わるのかです。この2つが確定しないと、比較する相手の金額も、移行にかけられる時間も決まりません。値上げの告知は全社一律に効くとは限らず、契約更新日ごとに効き始める形が一般的です。
この記事では、値上げの告知を受け取ってから結論を出すまでの手順を並べます。具体例として、2026年6月17日に告知された2027年1月1日からのBacklogのプラン改定を使います。公式ページ、公式ヘルプ、適時開示に書かれている内容だけを使い、記載はすべて2026年9月2日時点で確認できた内容にもとづきます。金額はすべて税抜表示です。契約や社内の稟議に使う際は、必ずそのときの公式ページで最新の表記を確認してください。
値上げの告知で最初に読む場所
告知記事を開くと、まず目に入るのは新しい金額表です。ところが、実務で先に必要なのは金額ではありません。次の4つです。
1つ目は、適用の日付が新規と既存で分かれているかどうか。2つ目は、既存の契約者にいつから効くのか。3つ目は、プランの数や上限が変わるのかどうか。4つ目は、何もしないとどうなるのか。この4つが分かれば、社内で共有すべき内容はほぼ揃います。
Backlogの改定の場合、この4つは公式に示されています。2026年12月31日に現行プラン(スターター、スタンダード、プレミアム、プラチナ)の新規契約の受付が終了します。2027年1月1日に新プラン(エコノミー、ビジネス、プロフェッショナル)が始まります。既存の契約者に新料金が適用されるのは、2027年1月1日以降に到来する最初の契約更新日からで、この日は適用開始日と呼ばれ、スペースごとに異なります。適時開示には、現行の4プラン構成を3プランに統合したうえで料金改定を行う、と書かれています。
適用開始日は自分で確認できます。契約管理者または管理者が「組織設定」の「プラン」画面を開くと表示されます。ただしトライアル中、プラン停止中、フリープランの場合は該当の案内が表示されません。プランを停止している場合、2027年1月1日以降に再開すると新プランでの再開になります。
値上げには型がある。型が分かれば効き方が分かる
値上げと一口に言っても、効き方はまったく違います。現場で見かける型は主に4つです。
単価が上がる型
いちばん単純な型です。1ユーザーあたりの月額が上がる、定額が上がる。人数が変わらないなら、上がった比率がそのまま請求額の比率になります。計算が簡単なので、社内の説明も楽です。
プランを統合して段を作り直す型
プランの数が減り、上限と金額の組み合わせが引き直される型です。この型では、同じ「値上げ」でも組織によって影響が桁違いに変わります。自分のプランがどこへ移るのかを先に確認しないと、金額の話ができません。
Backlogの改定はこの型です。移行の対応関係は公式に示されています。
| 現行のプラン | 2027年1月1日以降 | 自動か手動か |
|---|---|---|
| スターター | 受け皿なし。エコノミー以上を自分で選ぶ | 手動。予約が必須 |
| スタンダード(15名以下かつ30プロジェクト以下、Nulab Pass無し) | エコノミー | 自動 |
| スタンダード(16名以上、または31プロジェクト以上、またはNulab Pass契約中) | ビジネスまたはプロフェッショナル | 手動。予約が必須 |
| プレミアム | ビジネス | 自動 |
| プラチナ | プロフェッショナル | 自動 |
| フリー | 新しいフリープラン | 自動 |
月払いの金額で並べると、変化幅は次のようになります。いずれも税抜です。
| 移行の型 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| スターターからエコノミー | 2,700円/月 | 21,000円/月 |
| スタンダードからエコノミー | 16,000円/月 | 21,000円/月 |
| スタンダードからビジネス | 16,000円/月 | 36,300円/月 |
| プレミアムからビジネス | 27,000円/月 | 36,300円/月 |
| プラチナからプロフェッショナル | 75,000円/月 | 100,000円/月 |
同じ改定でも、上げ幅は3割台に収まる組織と、金額が何倍にもなる組織に分かれます。プレミアムとプラチナの利用者は自動で移り、ストレージの上限も据え置きです。一方、スタータープランには同格の受け皿が新プランに存在しません。自分がどの行にいるのかを確定させるまで、値上げの大きさは語れません。
上限が切り下がる型
金額が据え置きでも、使える範囲が狭くなれば実質的な値上げです。この型は見落とされやすく、請求書の金額を見ているだけでは気づきません。
Backlogの改定でも、この動きがあります。スタンダードからエコノミーへ自動で移った場合、ユーザー数は無制限から15へ、プロジェクト数は100から30へ縮みます。ストレージは30GBのままで、2段階認証の必須化が新たに使えるようになります。新しいフリープランでは、ユーザー数の上限が現在の10から5に変わります。2026年12月31日までに追加済みの10名までは引き続き使えますが、2027年1月1日以降は新規のユーザー追加ができず、6名以上で使っていた組織が2027年1月1日以降にユーザーを減らすと、5名を超える人数には戻せないとされています。
エコノミーで使えないものも公表されています。孫課題(3階層)、ガントチャートの長期間表示、プロジェクト横断ガントチャート、カスタム属性、Backlog AIアシスタント、Nulab Flowbase、アクセスログ、SAML認証と監査ログとユーザープロビジョニング、ストレージ容量追加オプションです。金額の比較表だけを見て判断すると、この行を落とします。
支払い条件が変わる型
金額そのものではなく、払い方が変わる型です。資金繰りに効くため、小さな組織ほど影響が大きく出ます。
Backlogでは、2027年1月1日の適用開始日以降、銀行振込で選べる支払い期間が年払い(12か月)のみになります。現在の3か月と6か月は廃止され、これらを利用している場合は適用開始日から自動的に年払いへ変更されます。クレジットカード払いは引き続き1か月と12か月を選べます。適時開示は、月払いはクレジットカード払いのみとなり、3か月払いと6か月払いは廃止となる、と表現しています。この変更はCacooとNulab Passにも適用されます。
3か月ごとに払っていた組織が年払いになると、エコノミーなら年額239,400円(年払い・税抜)の一括請求と向き合うことになります。請求書は次回の契約開始日の63日前に発行され、発行後の調整は問い合わせ扱いです。支払い方法を選び直すなら、その2か月以上前に社内の合意が要ります。
経過措置があるかを確かめる
値上げの告知を受け取ったら、次に確かめるのは経過措置です。旧料金を続けられる特別な枠があるのか、割引で緩和されるのか、それとも今の契約期間を走り切って終わりなのか。ここで手当ての厚さが分かります。
Backlogの場合、旧料金を継続できる特別枠や、経過措置としての割引は公表されていません。用意されているのは、今の契約期間はそのまま走り切れるという一点です。公式のよくあるご質問には次のように書かれています。
現在の契約期間について、契約期間の途中でアップグレード(上位プランへの変更)をしない場合、追加の費用はかかりません。 出典: support-ja.backlog.com
言い換えると、旧料金が効くのは現在の契約期間が終わるまでです。次の更新日が2027年1月1日以降なら、そこから新料金になります。登録済みのデータ(課題、Wiki、ドキュメント、ファイル)は新プランでも引き続き使え、移行作業は不要とされています。
制限が付く操作もあります。現行プラン内でのダウングレードについては、次の利用期間が2027年1月1日以降の場合、現在のプランでのダウングレードはできない、と記載されています。「安いプランに落として凌ぐ」という手が使えるかどうかは、更新日との関係で決まります。
そして、何もしないと困る場合があります。公式のよくあるご質問には、予約が無い場合、適用開始日以降にBacklogを利用できなくなる可能性があると明記されています。予約が必須なのは、スタータープラン利用中、スタンダードプランでユーザー16名以上またはプロジェクト30超、スタンダードプランでNulab Pass契約中のいずれかに当てはまる組織です。期限の目安は、銀行振込が適用開始日の64日前まで、クレジットカードが適用開始日の2日前までです。値上げの話を金額の議論だけで進めていると、この期限を落とします。
過去の前例を見ておく
同じ提供元が過去にどう振る舞ったかは、判断材料になります。手当ての厚さや、告知から実施までの間隔に癖が出るからです。
Backlogには2023年1月11日の利用料金改定があります。告知は2022年10月4日に公開され、2日後に改定の目的が追記されています。このときは年払いの割引率が16%から5%へ引き下げられました。既存契約者の扱いは、すでに利用期間が開始しているプランは次回の更新まで従来の料金で利用できる、というもので、今回の改定と同じ考え方です。改定の目的として、サービス運用環境の強化、情報セキュリティ対策の強化、サービス開発体制の強化、顧客サポート体制の強化の4点が挙げられていました。なお、このときの改定前後の具体的な金額は、告知記事の本文には数字として記載されておらず、料金ページへのリンクで案内されていました。したがって2023年改定の上げ幅は、公開資料では確認できませんでした。
プラン自体の廃止も過去にあります。2023年8月24日にクラシックプランの提供終了が告知され、当初の終了予定日は2024年5月31日でした。その後、2024年3月6日に提供終了の延期が公表され、終了日は2025年5月31日へ1年延びています。延期の理由は、移行に不安を感じる利用者へのサポートを厚くするため、と説明されていました。同格の現行プランへの移行であれば料金は変わらず、移行費用もかからないと案内されていました。
ここから読み取れるのは、延期という前例が実際に一度あるという事実です。ただし、それを前提に予定を立てるのは危険です。今回の改定について延期の告知は出ておらず、上場企業として適時開示まで出ている以上、予定どおり進む前提で段取りを組むのが安全です。延期があったら得をした、という受け止め方にとどめてください。
サービスそのものが終わる例もあります。ヌーラボのビジネスチャットTypetalkは、2023年11月14日にサービス終了が告知され、2025年12月1日に終了、2025年12月31日にバックアップを含めてデータがすべて削除されました。オンラインホワイトボードのCacooは継続していますが、2026年4月27日から新プランの提供を開始し、同時に2026年4月26日をもってプロプランとチームプランの新規受付を終了しています。値上げの型を見分ける目は、こうした告知を読むときにもそのまま使えます。
値上げの理由をどう受け止めるか
値上げの告知には、たいてい理由が添えられます。ここをどう読むかで、社内の空気が変わります。
Backlogの2023年の改定では、目的として、サービス運用環境(サーバー等)の強化、情報セキュリティ対策の強化、サービス開発体制の強化、顧客サポート体制の強化の4点が挙げられていました。2027年の改定の告知記事にも背景の説明があり、2026年7月3日にその部分が一部修正された旨が記事末尾の更新履歴に記載されています。改定と同じ時期に打ち出されている新機能としては、孫課題(3階層)、プロジェクト横断ガントチャート、Backlog AIアシスタント、ワークフロー自動化ツールのNulab Flowbaseが挙げられています。孫課題は2026年8月18日に提供開始が発表され、プロジェクト横断ガントチャートは2026年秋ごろのリリース予定と案内されています。
理由の妥当性を評価するのは、実務ではあまり意味がありません。評価すべきなのは、その理由が自分たちの使い方に還元されるかどうかです。新機能が上位プランでしか使えないなら、自分たちが上がる段でそれが開くのかを確認します。エコノミープランでは、孫課題、ガントチャートの長期間表示、プロジェクト横断ガントチャート、Backlog AIアシスタント、Nulab Flowbaseが使えない機能として挙げられています。値上げの対価として説明されている機能が、自分たちのプランでは開かない場合、金額だけが上がることになります。この確認は、社内で説明するときにも効きます。
提供元の体力を測る材料もあります。今回の改定について、適時開示は2027年3月期の連結業績に与える影響は現時点において軽微と判断している、としています。これは値上げが業績の穴埋めではないという説明として読めますが、断定はできません。判断材料の1つとして持っておく程度が適切です。
上限に収める運用を先に試す
移るかどうかを決める前に、試す価値のある手が1つあります。上限の内側に収まるように運用を整えることです。金額の段は上限で決まるため、棚卸しだけで段が1つ下がることがあります。
Backlogの新プランで言えば、エコノミーの上限は人数15とプロジェクト30です。ここを1つ超えるとビジネスの36,300円になり、エコノミーの21,000円との差は月15,300円、年額では183,600円です(いずれも税抜、月払いの金額から計算)。棚卸しで枠に収まるなら、その額がそのまま残ります。
棚卸しの対象は3つです。1つ目は、使われていないアカウント。退職した人、異動した人、短期で入っていた協力者のアカウントが残っていることは珍しくありません。2つ目は、終わったプロジェクト。ここで注意が要ります。公式のよくあるご質問には、アーカイブ済みのプロジェクトも上限に加算されると明記されています。片づけたつもりで数に残っている、という状態が起こります。3つ目は、社外の協力者の枠です。社内が10名で社外が6名なら、それだけで15の枠を超えます。
ただし、無理に枠へ押し込めるのは逆効果になることもあります。必要な人のアカウントを削って、その人が進捗を見られなくなれば、確認の手間が別の場所で発生します。プロジェクトを統合しすぎて、1つのプロジェクトに何もかも入ると、絞り込んでも件数が多すぎて読めません。枠に収めることと、運用が回ることの両方が成り立つ範囲で整理してください。両立しないなら、それは上の段に上がるか、道具を替えるかの判断に進むべき合図です。
残るコストと移るコストを同じ単位に揃える
ここまでで「いつから、いくら」が確定します。次は比較です。ここで多くのチームがつまずくのは、残るコストは金額で出るのに、移るコストは金額で出ていないからです。片方だけ数字になっていると、比較の天秤が最初から傾きます。
移行にかかる時間を測る
移行の作業量は、課題の件数ではなく、書き出せない項目の数で決まります。手っ取り早い測り方は、いちばん大きいプロジェクトを1つ選んで、書き出しから移行先への取り込みまでを実際に1回やってみることです。かかった時間にプロジェクト数を掛ければ、全体の見当が付きます。
Backlogから持ち出す場合の条件は公式に案内されています。課題の検索結果はCSVまたはExcel形式で出力でき、課題のコメントの取得上限数は200件です。Gitはリポジトリをすべてクローンする手順、Subversionには専用の手順があります。スペース全体のバックアップは有料オプションで50,000円(税抜)ですが、バックアップしたデータはBacklogにインポートできないと明記されています。取り込み側の一括登録は専用テンプレートのCSVを使い、一度に登録できる課題は最大250件まで、課題の状態は入力できずすべて未対応で登録されます。
この最後の条件は、そのまま作業量になります。状態を引き継げないなら、移行後に手で付け直す作業が件数分だけ発生します。1件30秒として、500件なら4時間強です。時給に換算すれば金額になります。ここまでやって、はじめて残るコストと同じ単位で比べられます。
見えにくいコストも数える
金額に表れにくいものが3つあります。1つ目は教育の時間です。人数分の学習時間がかかります。2つ目は社外の協力者への案内です。相手に新しい画面を覚えてもらう負担は、こちらの都合では減らせません。3つ目は、移行の期間中に進行の精度が落ちることです。2つの場所に情報が分かれる期間があると、どちらが最新か分からなくなります。
この3つを見積もったうえで、それでも移るほうが安いなら移ります。逆に、上げ幅が3割台で、移行に数十時間かかるなら、残る判断のほうが合理的なことが多くなります。
残るほうがよい場合と、動いたほうがよい場合
残る判断が合理的になりやすいのは、上げ幅が小さく、自動で移行でき、いま使っている機能が新プランでも維持される場合です。Backlogの例で言えば、プレミアムとプラチナの利用者がこれに当たります。プレミアムは月27,000円からビジネスの36,300円へ、プラチナは75,000円からプロフェッショナルの100,000円へ動きますが、ストレージ上限は据え置きです。移行の手間と、その間に落ちる進行の精度を考えると、上げ幅を飲んだほうが合理的なことのほうが多くなります。
同じことは、いまの道具でしか成立していない使い方がある場合にも言えます。Git / Subversionを課題と紐づけて使っている、工数の実績を積み上げて次の見積もりに使っている、社外の取引先を巻き込んで長く運用している。こうした使い方は、別の道具で作り直すと、金額の差では割に合わないことがあります。
一方、検討を始めたほうがよいのは、同格の受け皿が無い場合、上限の切り下げで枠を超える場合、そして払い方が資金繰りに合わなくなる場合です。Backlogの例では、スタータープランの利用者が該当します。月2,700円から最低でも21,000円になり、同格のプランがありません。この場合は、無料の枠に収めて凌ぐ、上のプランに上がる、別の道具へ移る、という3つを、それぞれの実務コストまで含めて比べる価値があります。
判断を分ける問いは1つに絞れます。値上げ後の金額を払って残ったとき、その道具はこれからも自分たちの働き方に合い続けるか。合い続けるなら残ります。もともと噛み合っていなかったなら、値上げは決断の期限を与えてくれただけです。値上げをきっかけに移るのではなく、もともと移るべきだったかどうかで決めます。
社内を通すための数字の作り方
稟議に必要な数字は4つです。1つ目は、適用開始日。2つ目は、現在の年額と改定後の年額、その差額。3つ目は、移行する場合にかかる工数の時間と、その金額換算。4つ目は、判断の期限です。判断の期限は、予約や解約の締切から逆算します。銀行振込で予約が必要なら、適用開始日の64日前が実質の締切になります。
数字を出すときは、月額ではなく年額で並べるのが通りやすくなります。月16,000円が21,000円になる、と言うより、年額で60,000円増える、と言ったほうが判断する側には伝わります。税抜の金額しか公表されていない場合は、消費税を足した金額も併記しておくと、経理とのやり取りが1往復減ります。
共有する相手によって、必要な粒度も変わります。決裁する人に必要なのは、年額の差と判断の期限の2つだけです。経理に必要なのは、支払い方法と請求のタイミング、税抜と税込の別です。現場のメンバーに必要なのは、いつから何が使えなくなるのか、自分の作業が変わるのかどうかです。同じ資料を全員に配ると、それぞれが自分に関係のない部分を読むことになり、結論が遅れます。宛先ごとに1枚ずつ分けたほうが、結果的に早く終わります。
見落とされやすいのが、判断しない場合に起きることを書いておくことです。予約が必要な条件に当てはまっているのに何もしなければ、適用開始日以降に使えなくなる可能性があります。この一文があるかないかで、決裁の速度は変わります。危機感を煽る必要はありません。公式に書かれている条件をそのまま引くだけで十分です。
そして、移らない場合の案も必ず1つ入れます。選択肢が「移る」だけだと、比較になっていないと見なされて差し戻されます。残る案、上限の内側に収める案、移る案の3つを並べ、それぞれの金額と工数を書けば、判断する側は選ぶだけで済みます。
今日できる確認の手順
まず、契約の画面を開いて適用開始日を確認します。Backlogなら「組織設定」の「プラン」画面です。この日付が確定しないと、他のすべての予定が動きません。
次に、人数とプロジェクト数を数えます。ユーザー一覧を開いて、直近3か月にまったく操作していないアカウントを洗い出します。退職した人や、短期で入っていた協力者のアカウントが残っていることは珍しくありません。次にプロジェクト一覧を開いて、最後の更新が半年以上前のものに印を付けます。ここで注意が要ります。公式のよくあるご質問には、アーカイブ済みのプロジェクトも上限に加算されると明記されています。棚卸しの結果、上限の内側に着地できるなら、それだけで金額の段が1つ下がることがあります。
3つ目に、使用容量を確認します。ストレージの上限はプランごとに決まっているため、添付ファイルが積み上がっていると、人数とプロジェクト数が収まっていても上の段が必要になります。
4つ目に、いちばん大きいプロジェクトを1つ書き出してみます。書き出しにかかる時間と、欠ける項目を目で見ておくと、移行の見積もりが現実的になります。ここまでが今日中に終わる範囲です。
この4つが揃うと、社内に共有できる材料になります。適用開始日、改定後の年額、上限に収まるかどうか、移行にかかる時間の見当。この4点をそのまま1枚にまとめれば、次の打ち合わせで結論まで進めます。逆に、どれか1つでも欠けたまま議論を始めると、その場で調べ直すことになり、判断が1回分先送りになります。
移り先を1つに決めない
比べ方の軸は3つに絞れます。1つ目は、課金の型が人数の積み上げか定額か。2つ目は、必要な機能がどのプランから開くか。3つ目は、いま持っているデータのうち何を持ち出せるか。この3つで並べると、機能一覧を全部突き合わせなくても順位が付きます。主要な道具については、公式ページの表記にもとづいて整理した比較の一覧とBacklogとの比較にまとめています。
板の形をとる道具の中には、機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという料金の作り方をしているものもあります。プランごとに機能の線を引かない代わりに、できることの幅そのものが絞られています。工程表を細かく引く道具ではなく、いま誰が何を持っているかを1枚の板で見せる道具です。料金の考え方は料金に、できることの範囲はできることに整理してあります。
この形の道具の弱点も書いておきます。リポジトリの機能は持ちません。自動化と外部サービスとの連携で勝負する作りでもありません。画面は日本語のみです。自動で取り込めるのはTrelloからだけで、他のサービスからは手作業での移し替えになります。取り込みの手順はTrelloからの移行にまとめています。値上げをきっかけに移るとしても、移った先で同じ不満が出るなら意味がありません。
最後に、判断の重心をどこに置くかについて書いておきます。道具を替えるかどうかは、機能の一覧を突き合わせるより、入力する人が増えるかどうかで判断したほうが外しません。工程表を1人が引き直している間、他の人はその表を見られません。入力する人が増えないと、進捗の表はすぐ嘘になります。値上げは、その問いをもう一度考える機会を与えてくれるだけで、答えを教えてくれるわけではありません。判断に迷いやすい点はよくある質問にも整理してあります。
なお、この記事に書いた金額、上限、日付は、いずれも2026年9月2日時点で公式サイト、公式ヘルプ、適時開示に掲載されていた内容です。金額はすべて税抜表示です。プランと提供条件は変わりますので、契約や社内の稟議に使う際は、必ずそのときの公式ページで最新の表記を確認してください。
Q1. 値上げの告知を見たら、最初に何をすればよいですか?
自分の契約の適用開始日を確認してください。値上げは全社一律ではなく、契約更新日ごとに効き始めるのが一般的です。Backlogの場合、契約管理者または管理者が「組織設定」の「プラン」画面で確認できます。この日付が確定しないと、予算も比較も移行の予定も組めません。作業としては数分で終わります。
Q2. 旧料金のまま使い続ける方法はありますか?
Backlogの2027年の改定については、旧料金を継続できる特別枠や経過措置としての割引は公表されていません。用意されているのは、現在の契約期間を途中でアップグレードしなければ追加の費用はかからない、という一点です。次の更新日が2027年1月1日以降なら、そこから新料金になります。
Q3. 値上げは延期される可能性がありますか?
今回の改定について延期の告知は出ていません。過去には、2023年8月に告知されたクラシックプランの提供終了が、2024年3月に1年延期された前例があります。ただし前例があることと、今回も延期されることは別です。上場企業として適時開示も出ているため、予定どおり進む前提で段取りを組むのが安全です。
Q4. 移行にかかるコストはどう見積もればよいですか?
いちばん大きいプロジェクトを1つ選び、書き出しから移行先への取り込みまでを実際に1回やってみて、かかった時間にプロジェクト数を掛けるのが確実です。Backlogの場合、課題のコメントの取得上限数は200件、一括登録は一度に最大250件で、課題の状態は入力できずすべて未対応で登録されます。状態の付け直しは件数分の作業になります。
Q5. 残る判断が正しいのはどういう場合ですか?
上げ幅が小さく、自動で移行でき、いま使っている機能が新プランでも維持される場合です。Backlogの例では、プレミアムからビジネス、プラチナからプロフェッショナルへの移行がこれに当たり、上げ幅は3割台でストレージ上限も据え置きです。Git / Subversionを課題と紐づけて使っている場合も、作り直しの手間が金額の差に見合わないことが多くなります。