Backlogの移行に使える道具|手作業が残る部分
「backlog 移行 ツール」で検索する人が探しているのは、たいてい1つのものです。ボタンを押せば課題もコメントも添付ファイルもそのまま別のサービスに並ぶ、丸ごとの変換機。結論から書くと、そういう道具は公式には用意されていません。あるのは「出す道具」と「入れる道具」で、そのあいだには必ず手作業が残ります。
だからといって移行が無理という話ではありません。残る手作業の量は、先に数えれば見積もれます。この記事は、Backlogから公式に出せるものは何か、受け取る側で何が要るのか、そしてどこに人手が要るのかを順に並べます。2027年1月のプラン改定で日程に締切ができたので、その日付の読み方も合わせて置きます。
「backlog 移行 ツール」で探しているものが、たいてい見つからない理由
移行という言葉で想像されるのは、引っ越し業者のような存在です。荷物を指定すれば、そのまま新居の同じ位置に並べてくれる。ソフトウェアの世界でも、メールやカレンダーではそれに近い仕組みが用意されていることがあります。ところがプロジェクト管理の道具では事情が違います。
理由は単純で、持っているデータの形がサービスごとに違うからです。課題という単位はどこにでもありますが、その課題が持つ項目は揃っていません。種別、優先度、マイルストーン、発生バージョン、カテゴリー、担当者、開始日、期限日、予定時間、実働時間。これらの並びが1つでもずれると、機械はどこに入れればよいか判断できません。判断できないところは、結局は人が決めることになります。
もうひとつ、状態の扱いがあります。「未対応」「処理中」「処理済み」「完了」といった進み具合は、サービスごとに名前も段数も違います。段数が違うものを機械的に対応づけると、移した先で全部が同じ列に固まるか、逆に細かく散らばります。どちらも移行の直後に誰かが手で直すことになります。
移行の道具は「出す」「整える」「入れる」の3層に分かれる
移行ツールという言葉を分解すると、実際には3つの層になります。
第一の層は出す道具です。Backlogの側にあり、公式に案内されています。課題の検索結果をCSVやExcelで書き出す機能、共有ファイルのダウンロード、Gitのクローン、Subversionのエクスポート。ここは公式のヘルプに手順があるので、迷う要素は少なくなります。
第二の層は整える道具です。書き出したファイルの列を、移行先が受け取れる形に並べ替える作業です。ここに専用の道具はほとんどありません。表計算ソフトで列を入れ替え、値を置き換え、日付の書き方を揃える。全体の手間の大半はここに集まります。
第三の層は入れる道具です。移行先のサービスが持つ取り込み機能で、多くはCSVの一括登録です。テンプレートの形が決まっていることが多く、その形に合わせるために第二の層へ戻る、という往復が起きます。
「移行ツール」で検索して見つかりにくいのは、この第二の層に汎用の答えが無いからです。ここを飛ばして「全自動」と書いてある道具があるなら、何を捨てているのかを必ず確かめたほうが安全です。
何を移すかを決めないと、道具は選べない
道具を探す前に決めることがあります。移すのは全部か、一部かです。
全部を移す前提で考えると、過去に完了した課題、閉じたプロジェクト、古い添付ファイル、5年前の議論まで対象になります。量は膨らみ、整える作業の時間もそれに比例します。一方で、動いている案件だけを移すと決めれば、対象は一気に減ります。とりまとめている人からよく聞くのは、完了した課題を移したものの、移した先で一度も開かれなかったという話です。
過去分の置き場所には、移す以外の選択肢もあります。書き出したCSVとファイルを共有ドライブに置いて、参照専用にしておく形です。検索性は落ちますが、探す頻度が低いものにかける手間としては釣り合います。この判断を先にするだけで、後段の作業量が変わります。
2027年1月のプラン改定が、検討の期限を決めている
2026年に入って移行の検討が増えた背景には、料金体系の変更があります。ヌーラボは2026年6月17日に「2027年1月1日からBacklogのプランが新しくなります」という告知を公開し、同日付で上場企業としての適時開示も出しています。噂ではなく、公式に決まっている話です。
日付は3つに分かれます。現行の4プラン(スターター、スタンダード、プレミアム、プラチナ)の新規契約受付は2026年12月31日で終了します。新しい3プラン(エコノミー、ビジネス、プロフェッショナル)の開始は2027年1月1日です。そして既存の契約者に新料金が適用されるのは、2027年1月1日以降に到来する最初の契約更新日で、ヌーラボはこれを「適用開始日」と呼んでいます。この日はスペースごとに違います。
金額の変化幅は、いま使っているプランで大きく変わります。以下はいずれも税抜の月払いで、2026年9月2日時点の公表値です。
| 現行プラン | 現行(税抜・月払い) | 移行先 | 新料金(税抜・月払い) |
|---|---|---|---|
| スターター | 2,700円 | 受け皿なし。エコノミー以上を選ぶ | 21,000円 |
| スタンダード(15名以下かつ30プロジェクト以下) | 16,000円 | エコノミー | 21,000円 |
| スタンダード(16名以上または31プロジェクト以上) | 16,000円 | ビジネス | 36,300円 |
| プレミアム | 27,000円 | ビジネス | 36,300円 |
| プラチナ | 75,000円 | プロフェッショナル | 100,000円 |
年払いは月払いに比べて5%オフで、この割引率は改定の前後で変わりません。
自分の適用開始日を今日のうちに確認する
移行の話を始める前に、まず自分の締切を確かめます。公式ヘルプによれば、契約管理者または管理者が「組織設定」の「プラン」画面を開くと、自分のスペースの適用開始日が表示されます。トライアル中、プラン停止中、フリープランの場合は、この案内が表示されません。
適用開始日が分かると、逆算できる期限が2つ出てきます。新プランの予約は、銀行振込なら適用開始日の64日前まで(請求書が発行されるまで)、クレジットカードなら2日前までが目安と案内されています。移行を検討するなら、この日付より手前で結論を出すか、いったん予約しておいて移行が済んだ時点で見直すかを決めることになります。
予約が必須になる組織もあります。スタータープランを使っている場合、スタンダードプランでユーザーが16名以上またはプロジェクトが30を超える場合、スタンダードプランでNulab Passを契約している場合です。公式のFAQは、予約が無い場合について「適用開始日以降にBacklogを利用できなくなる可能性があります」と明記しています。移行の検討中であっても、この予約だけは別の話として扱ったほうが安全です。
Backlogから公式に出せるもの
ここからが「出す道具」の話です。公式ヘルプに案内されている手段を、対象ごとに並べます。
課題とコメントはCSVかExcelで書き出せる
課題は検索結果の一覧から書き出せます。公式ヘルプにはこう書かれています。
課題の検索結果をExcel形式やCSVなどで出力できます。 出典: support-ja.backlog.com
書き出しは、シンプルな検索、高度な検索、キーワード検索のいずれの結果からも行えます。一覧の右上と右下にあるアイコンから、課題とコメントをCSVまたはExcel形式でダウンロードでき、印刷用ページの表示もできます。
ここに1つ、移行の設計に効く制限があります。**課題のコメントの取得上限数は200件**と公式に明記されています。長く動いている案件では、1つの課題に200件を超えるやり取りが積み上がることがあります。その分は書き出しに含まれません。この点は後の「手作業が残る部分」で扱います。
形式の選び方については、Excel形式が「セルが含むことができる合計文字数」の制限を受けるため、文字数が大きい場合はCSV形式が推奨されると案内されています。移行の下準備としては、迷ったらCSVを選んでおくほうが安全です。
共有ファイルと添付ファイル
共有ファイルは、WebフォルダやFinderからダウンロードする方法が案内されています。課題に付いた添付ファイルは、課題そのものとは別に扱われる点に注意が要ります。CSVで書き出した課題の行には、ファイルの中身は入りません。
移行先でファイルをどう持つかは、先に決めておきたい部分です。移行先の中に置き直すのか、共有ドライブに置いて課題からはリンクだけを張るのか。後者にすると、移す量は減りますが、リンクの張り替えという別の手作業が生まれます。ファイルの総量が数GBある場合、この選択で作業時間が大きく変わります。
GitとSubversion
リポジトリは、Backlogに保管されているGitリポジトリをすべて git clone する方法が案内されています。Subversionについては、公式ヘルプの「Subversionのリポジトリのエクスポートサービスはありますか?」の手順でエクスポートできると記載されています。
リポジトリを本体で使っているチームにとって、ここは移行の判断そのものを左右します。Git / Subversionは、公式の料金ページによればスターターからプラチナまでの全プランで利用でき、フリープランでも利用可と記載されています。課題とリポジトリが同じ場所にあり、課題番号とコミットが結び付いている状態は、移した先で作り直せません。クローンでコードは持ち出せますが、課題との紐付けは持ち出せない、という理解が要ります。
Wikiとドキュメントの扱いは、事前に確かめておく
課題以外に文章を溜めている場所として、Wikiとドキュメントがあります。仕様のメモ、運用の手順、決めごとの一覧など、検索でたどり着く情報がここに集まっているチームは多くあります。
これらについて、課題のような一覧からの書き出し機能があるかどうかは、公開資料では確認できませんでした。有料オプションの「スペースデータのバックアップ」の説明には、課題やWikiなどのデータをCSV形式のファイルにする旨が記載されています。したがって、まとめて受け取る手段としてはこのオプションが該当します。
移行の設計としては、Wikiを機械で運ぶ前提を置かないほうが安全です。実務では、いま参照されているページだけを人が選び、移行先に貼り直す進め方が現実的になります。数を数えてみると、日常的に開かれているページは想像よりずっと少ないことがほとんどです。ページ数が数百あっても、直近半年で開かれたものは数十に収まる、という形です。移す前に「最後に更新した日」で並べ替えて、古いものから落としていくと、対象は一気に絞れます。
スペース全体のバックアップという有料の選択肢
もう1つ、スペース全体をまとめて受け取る手段があります。有料オプションの「スペースデータのバックアップ」で、費用は50,000円(税抜、別途消費税)です。課題やWikiなどのデータをCSV形式のファイルにし、共有ファイルや添付ファイルと一緒にGoogleドライブで提供されるサービスと案内されています。
ここで見落としてはいけない一文があります。公式ヘルプは「バックアップしたデータは、Backlogにインポートできません。」と明記しています。つまりこれは、移行のための変換ツールではなく、記録を保管するための書き出しです。移行先に入れる作業は、このデータを受け取ったあとに別途行うことになります。
保管が目的なら費用に見合う可能性があります。自分で1つずつ書き出すと、プロジェクトの数だけ操作が要るからです。プロジェクトが30近くあるなら、人件費で考えれば逆転することもあります。移行の道具として期待すると、あてが外れます。
受け取る側の取り込み口が、作業量を決める
出す手段が揃っても、入れる口の形が合わなければ作業は終わりません。ここでBacklog自身の取り込み機能を見ておくと、他のサービスでも共通する型が見えます。
Backlogの取り込み機能は「一括登録」と呼ばれ、CSVファイルで複数の課題をまとめて登録できます。ここに、移行を経験した人が必ずぶつかる仕様が並んでいます。
第一に、一括登録用のCSVは専用テンプレートをダウンロードして使う必要があります。「課題検索結果一覧の出力」機能で出力したCSVでは一括登録はできない、と公式ヘルプに明記されています。出したものをそのまま入れられないという構造は、移行の作業量を考えるうえで重要です。多くのサービスが同じ構造を持っています。
第二に、**一度に一括登録できる課題は最大250件**です。課題が3,000件あれば、単純計算で12回に分けることになります。
第三に、課題の「状態」は入力できません。公式ヘルプは「すべて『未対応』で登録されます」と書いています。進み具合は取り込みのあとに手で動かすことになります。
入力できる項目は、件名(必須)、詳細、種別、担当者、開始日、期限日、予定時間、実働時間、カテゴリー、発生バージョン、マイルストーン、優先度、親課題です。日付はハイフン区切りで、複数の値はカンマ区切りと決まっています。カスタム属性を登録している場合はCSVに項目が追加され、必須のカスタム属性は入力が必須になります。
この一覧を眺めると、移行の下準備で何をするかが見えてきます。列の名前を合わせ、日付の書き方を揃え、担当者の表記を揃え、状態の列は別に取っておく。この4つが「整える道具」の中身です。
整える作業は、5つの手順に分解できる
汎用の道具が無い部分なので、手順として持っておくと迷いません。
第一に、書き出したCSVを表計算ソフトで開き、移行先のテンプレートを別のシートとして横に置きます。いきなり書き換えず、対応表を作るところから始めます。移行先の列名を1列目、Backlog側の列名を2列目に並べ、対応するものを結びます。ここで「移行先に置き場所が無い項目」が浮かび上がります。発生バージョンやカテゴリーなど、相手に同じ概念が無い場合は、本文の末尾に文字として追記するか、捨てるかを決めます。
第二に、日付の書き方を揃えます。Backlogの一括登録ではハイフン区切り(例:2025-07-31)と決まっており、多くのサービスが同じ形を求めます。表計算ソフトは日付をシリアル値として扱うので、書き出し直後に文字列として整形しておくと事故が減ります。
第三に、担当者の表記を揃えます。表示名で書き出された値を、移行先が求める形(多くはメールアドレス)に置き換えます。ここは対応表を1枚作れば、置換で処理できます。退職者が担当のまま残っている課題は、この段階で見つかります。
第四に、状態の列を別に取っておきます。取り込み時に使えなくても、移行後に絞り込んで一括で動かすための材料になります。捨てずに残す、とだけ決めておけば十分です。
第五に、少量で試します。いきなり全件を入れず、10件だけ取り込んで、移行先の画面で開いて確かめる。列が1つずれていることに気づくのは、たいていこの段階です。全件を入れてから気づくと、取り消しの作業が丸ごと乗ってきます。
移行先の受け口を、契約する前に確かめる
移行先を選ぶときに見るべきは、機能の一覧より先に取り込み口です。確かめたいのは4点あります。CSVを受け取れるか。1回あたりの件数の上限はいくつか。状態や担当者を取り込み時に指定できるか。取り込みを間違えたときに、まとめて取り消せるか。
4つ目は見落とされがちですが、実務では効きます。列を1つずらしたまま数百件を取り込んだとき、1件ずつ消すことになると、そこで半日が消えます。
なお、ボード型のタスク管理ツールの中には、自動での取り込みに対応する範囲を限定しているものがあります。自動で丸ごと取り込めるのはTrelloからだけ、という作りのサービスもあり、それ以外は表計算を経由することになります。取り込み口の対応範囲を先に見ておくと、見積もりがずれません。移行の受け口については、Trelloからの移行のページで、どの範囲が自動で運べてどこから手作業になるかを確認できます。
手作業が必ず残る5つの部分
ここまでを踏まえて、機械に任せられない部分を挙げます。移行の計画を立てるとき、この5つに何時間を見込むかで全体の見積もりが決まります。
コメントの200件超と、決定の経緯
書き出しでコメントを取れるのは1課題あたり200件までです。長期の案件では、この上限を超える課題が数件から数十件出てきます。超えた分は、画面から個別に読み取るか、諦めるかになります。
現実的な進め方は、全部を移そうとしないことです。移す価値があるのは「なぜそう決めたか」が書かれているコメントで、多くは日程の調整や短い確認です。動いている案件については、決定事項だけを1件の要約にまとめ直して新しい課題の本文に置く。この形なら、200件を読み返す必要はありません。
状態とワークフローの読み替え
状態は取り込みで指定できないことが多く、Backlogの一括登録でも「すべて未対応で登録されます」と明記されています。移した直後、全部の課題が最初の列に並ぶことになります。
対処は2つです。1つは、書き出したCSVに状態の列を残しておき、移行先で状態ごとに絞り込んで一括で動かす方法。もう1つは、そもそも進行中のものだけを移し、完了済みは移さない方法です。後者を選べる案件なら、状態の読み替え作業はほぼ消えます。
添付ファイルと、本文に書かれたリンク
添付ファイルは課題とは別に運ぶことになります。さらに厄介なのが、課題の本文やコメントに書かれた「別の課題へのリンク」です。移行先ではURLが変わるため、リンクはすべて切れます。
数が少なければ手で直せますが、数百件あると現実的ではありません。動いている案件だけに絞って直し、過去分は旧環境を参照専用として一定期間残す、という割り切りが要ります。ここでも「全部を移さない」判断が効いてきます。
権限と、社外メンバーの席
誰がどのプロジェクトを見られるかの設定は、書き出しの対象になりません。移行先で組み直すことになります。社内だけなら手間は限られますが、外注先や協力会社が入っていると、招待のやり直しと、見せる範囲の再確認が必要になります。
このとき、旧環境で「なんとなく全部見えている」状態のまま運用してきたことに気づくチームは少なくありません。移行は、見せる範囲を引き直す機会でもあります。見せる範囲の考え方については、安全性の考え方のページで、社外の人を入れるときにどこで線を引くかの整理が示されています。
リポジトリと課題番号の結び付き
前述したとおり、コードはクローンで持ち出せますが、課題との紐付けは移せません。リポジトリを本体で使っているなら、移行はこの一点だけで判断が変わります。持ち出したコードを別のホスティングに置き、課題は別のサービスに置き、両者をもう一度つなぐ。つなげたとしても、過去の分は追えません。
逆に、リポジトリを外部のホスティングに置いていて、Backlogは課題と工程表だけに使っているなら、この項目は移行の障害になりません。自分たちがどちらなのかを最初に確かめておくと、以降の検討が速く進みます。
移行先を並べるときに見るところ
道具の話の最後に、移行先の見比べ方を置きます。機能の丸とバツを数えるより、次の3つの軸で見たほうが、移したあとの後悔が減ります。
1つ目は、料金がどの単位で決まるかです。人数で増えるのか、席数の下限があるのか、スペース単位の定額か。ここが違うと、同じ人数でも年額が数倍変わります。区切りが人数とボードの数だけで、機能では段を分けない形の料金もあり、その場合は「この機能のためにもう1段上げる」という判断が要らなくなります。料金の考え方は料金のページに一覧があります。
2つ目は、機能で段を分けるか、規模で段を分けるかです。機能で段を分ける作りだと、工程表や属性のカスタマイズのために上のプランへ上げる話が定期的に出ます。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという作りであれば、その相談自体が発生しません。どちらが合うかは、チームの規模の変わり方で決まります。使える機能の範囲はできることのページで確かめられます。
3つ目は、入力する人が増えるかどうかです。移行の成否は、移した先で何人が更新を続けるかで決まります。項目が多く、埋めるのに考える時間が要る作りだと、更新する人は数人に固定されます。固定された時点で、進捗の表は実態から離れ始めます。
比較の材料としては、Backlogとの比較のページに課金の単位と上限の考え方の違いがまとまっています。開発寄りの作りをどこまで必要としているかで判断が分かれる部分です。
移さないという選択も、同じ土俵で比べる
道具を探し始めると、移す前提で話が進みがちです。ただ、移行にかかる時間を金額に換算すると、順位が入れ替わることがあります。
計算はそれほど難しくありません。書き出しに要る時間、列を整える時間、取り込みと確認の時間、社内への案内と質問対応の時間、移行後1か月の混乱で失う時間。これを合計して、担当者の時間単価を掛けます。数千件の課題を持つチームなら、合計で数十時間になることは珍しくありません。
一方、料金の差は月額で計算できます。たとえばプレミアムからビジネスへの自動移行なら、27,000円から36,300円(いずれも税抜・月払い)で、差は月に9,300円です。年間で111,600円。この金額と、移行の作業時間を並べて比べます。差額のほうが小さいなら、残る判断に十分な理由があります。
Backlogは長く使われている製品で、2026年に入ってからもAIアシスタント、関連課題、AIレビュー、孫課題と機能追加の告知が続いています。提供終了の告知も出ていません。値上げという言葉だけで動く理由にはならない、というのが公平な見方です。移行を検討するのは、費用の差が作業時間を明確に上回るときか、リポジトリを使っておらず、いまの作りが自分たちの規模と合わなくなっているときです。
今日のうちに終わる確認の手順
移行するかどうかを決める前に、次の6つを数えておくと、見積もりの精度が上がります。どれも1時間かからずに終わります。
第一に、適用開始日です。「組織設定」の「プラン」画面で確認します。この日付が無いと、他のすべての計画が宙に浮きます。
第二に、いま登録されている人数です。エコノミープランの上限は15名で、ここを超えるとビジネスプランの36,300円(税抜・月払い)になります。退職した人のアカウントが残っていないかを含めて数えます。
第三に、プロジェクトの数です。エコノミープランの上限は30で、現在のスタンダードプランの100から縮みます。アーカイブしたプロジェクトの扱いについては、公式FAQの記載を確認したうえで数えるのが確実です。
第四に、使っている容量です。エコノミーは30GB、ビジネスは100GB、プロフェッショナルは300GBです。移行するなら、この容量がそのままダウンロードする量になります。
第五に、リポジトリを使っているかどうかです。使っているなら、移行の判断はここで大きく変わります。
第六に、コメントが200件を超えている課題の数です。書き出しで取りこぼす分を、事前に把握しておくためです。
数え方には注意点があります。人数は招待済みのアカウントで数えます。実際に使っていない人でも席は埋まるからです。プロジェクト数は、閉じたつもりのものが残っていないかを含めて数えます。容量は、管理画面の表示をそのまま控えます。リポジトリは「使っているか」ではなく「課題番号と結び付けて使っているか」で見ます。コミットのメッセージに課題のキーを書く運用をしているなら、それは結び付けて使っている状態です。
この6つの数字が揃うと、移行の見積もりは具体的な作業時間に落とせます。移すデータの量、整える列の数、手で直す課題の件数。そのうえで、残るという判断も十分にありえます。改定後の金額を払っても、いまの運用が回っているなら、移行にかかる時間のほうが高くつくことがあるからです。判断の材料として不足があれば、よくある質問のページに移行と運用まわりの疑問がまとまっています。
Q1. Backlogから他のサービスへ、丸ごと移せるツールはありますか?
公式に案内されている「丸ごと移す変換ツール」はありません。用意されているのは、課題とコメントをCSVまたはExcelで書き出す機能、共有ファイルのダウンロード、Gitのクローン、Subversionのエクスポートといった書き出しの手段です。移行先へ入れる作業は、その受け取り側の取り込み機能を使って別途行うことになります。列の並べ替えなど、あいだの整える作業に人手が要ります。
Q2. スペースデータのバックアップを買えば移行できますか?
移行そのものには使えません。費用は50,000円(税抜)で、課題やWikiをCSV形式にし、共有ファイルや添付ファイルと一緒にGoogleドライブで受け取れるサービスです。ただし公式ヘルプは「バックアップしたデータは、Backlogにインポートできません。」と明記しています。記録の保管や、書き出し操作をまとめて済ませたい場合には合いますが、移行先へ入れる作業は別に必要です。
Q3. 課題のコメントはすべて書き出せますか?
すべては書き出せません。公式ヘルプに「課題のコメントの取得上限数は200件です。」と記載があり、長く動いている課題では超過分が書き出しに含まれません。実務では、全部を移そうとせず、決定の経緯にあたるコメントだけを要約して新しい課題の本文に置く進め方が現実的です。旧環境を一定期間だけ参照用に残しておく方法も併せて検討できます。
Q4. 移行の作業で、いちばん時間がかかるのはどこですか?
書き出したデータを、移行先が受け取れる形に整える部分です。列の名前を合わせ、日付の書き方を揃え、担当者の表記を統一する作業で、ここに汎用の道具はほとんどありません。加えて、課題の状態は取り込み時に指定できない場合が多く、Backlogの一括登録でも「すべて未対応で登録されます」と案内されています。進み具合の直しも人手になります。
Q5. 移行を検討中でも、新プランの予約は必要ですか?
移行の検討とは切り離して考えたほうが安全です。スタータープラン利用中、スタンダードプランでユーザー16名以上またはプロジェクト30超、スタンダードプランでNulab Pass契約中のいずれかに当てはまる場合は予約が必須で、公式FAQは予約が無い場合について「適用開始日以降にBacklogを利用できなくなる可能性があります」と明記しています。期限は銀行振込で適用開始日の64日前、カードで2日前が目安です。