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デザインの校正ツールを探している人の困りごとは、たいてい道具がないことではありません。修正の指示が文章とスクリーンショットとチャットに散っていて、どれが最新の指示なのか誰も言い切れない状態になっていることです。この記事では、校正ツールの種類とできることの範囲を整理したうえで、選ぶ前に決めておくべきことを並べます。道具を入れても往復が減らない場合の原因にも触れます。
デザインの校正は、紙の時代には赤ペンで済んでいました。出力した紙に赤を入れて渡す。指示の場所と内容が物理的に一致しているので、行き違いが起きにくい方法でした。
これが崩れた理由は3つあります。
1つ目は、確認するものが紙でなくなったことです。ウェブページ、動画、アプリの画面、SNSの投稿画像。画面の中で動くもの、幅によって形が変わるものが増えました。紙に印刷して赤を入れる形では、そもそも対象を表現できません。
2つ目は、確認する人が増えたことです。制作担当、進行担当、営業、そして依頼元。依頼元の中でも担当者と決裁者がいます。1つの制作物に対して5人から10人が意見を言う形が普通になりました。意見が集まる場所が決まっていないと、同じ箇所に矛盾する指示が届きます。
3つ目は、確認の場所が離れたことです。同じ部屋で画面を指さして「ここ」と言えないので、位置を文章で説明することになります。「上から3つ目のバナーの右側の余白」のような説明は、書く側にも読む側にも負担です。
この3つの結果として、修正指示が集まる場所を作る道具が必要になりました。分類する情報を提供しているサイトでは、この領域を専用の分類として扱っています。
MONJIとは、ALAKI株式会社が提供している動画修正指示ツール、デザイン修正指示ツール製品。ITreviewでのユーザー満足度評価は3.6となっており、レビューの投稿数は4件となっています。 出典: itreview.jp
注目したいのは、レビューの投稿数が4件と少ないことです。この領域は分類として成立している一方で、利用者の声が集まるほど広く使われている段階には達していません。つまり、定番がまだ決まっていない領域です。定番がない領域で道具を選ぶときは、評価の点数を並べて選ぶより、自分たちの制作物の種類と確認する人の数から逆算したほうが確実です。
道具の機能一覧を見る前に、何を解こうとしているのかを分けておきます。3つの問題があり、道具によって得意な問題が違います。
問題1:指示の場所が伝わらない。 「バナーの文字」がどのバナーのどの文字か分からない。これを解くのが、画面に直接ピンを刺す機能です。画像やウェブページの上をクリックしてコメントを付けられると、位置の説明が要らなくなります。動画なら再生時間の何秒地点にピンを刺す形になります。
問題2:指示の版が分からない。 修正して再提出したのに、前の版へのコメントが届き続ける。これを解くのが、版の管理機能です。第2稿に対するコメントと第1稿に対するコメントが分かれていて、前の版のコメントが自動で閉じる形になっていると、混乱が止まります。
問題3:指示が終わったかどうか分からない。 20箇所の指示のうち、どれが対応済みでどれが残っているかが分からない。これを解くのが、コメントごとの状態管理です。未対応、対応済み、確認済みの3つの状態を持てると、残りが数えられます。
この3つのうち、いちばん見落とされるのが問題3です。ピンを刺す機能に目が行きがちですが、実務で時間を食っているのは「どれが終わったか分からない」状態です。20箇所の指示を1つずつ照らし合わせる作業に、1回の校正で30分以上かかっていることがあります。
道具を選ぶときは、自分たちがどの問題で止まっているかを先に決めてください。位置が伝わらないのが問題なのか、版が混ざるのが問題なのか、終わりが数えられないのが問題なのか。3つ全部を解こうとして機能の多い道具を選ぶと、覚えることが増えて誰も使いません。
デザインの校正に使える道具は、大きく4つの系統に分かれます。
校正に特化した系統。 画像やウェブページ、動画の上にピンを刺してコメントを付けることに専念した作りです。利点は、依頼元にアカウントを作らせずにリンクだけで見てもらえる形が多いこと。弱点は、制作の進行そのものは扱えないことです。どの案件が何本走っているかは別の場所で管理します。
デザインツールに付いている機能。 制作に使っている道具の中にコメント機能が入っている形です。利点は、デザイナーが作業している画面のままコメントを読めること。弱点は、依頼元にその道具を触らせる必要があること、そして制作物が別の形で納品される場合に使えないことです。
書類の確認に使う系統。 PDFに注釈を付ける形です。印刷物の校正では今も現実的な方法です。弱点は、動くものやウェブページの確認には向かないこと、そしてファイルが往復するので版が増えることです。
タスク管理の道具で扱う系統。 カードに制作物を添付し、コメントで指示を積む形です。利点は、案件の進行と校正が同じ場所にあることと、往復の回数が記録に残ることです。弱点は、画面の座標にピンを刺す機能がないことです。位置の説明は、画像に矢印を書き込んで添付する形になります。
現実には、2つを組み合わせている現場が多いです。位置の指示は校正に特化した道具で、案件の進行と往復の記録はタスク管理の道具で、という分け方です。この分け方の注意点は、どちらが正なのかを決めておくことです。両方に指示が書かれると、問題1を解いたのに問題2が悪化します。
タスク管理の側で何ができるかはできることにまとまっています。カードの説明欄が見出しや箇条書き、画像の貼り付けに対応していれば、修正指示の一覧をカードの中にまとめられます。ファイルをドラッグで添付してその場でプレビューできる形なら、第1稿と第2稿を同じカードに並べられます。
道具を選ぶ前に、運用の形を決めてください。決めずに道具を入れると、道具が増えただけで往復は減りません。
決めること1:指示を集める場所を1つに決める。 これがいちばん重要です。チャットに来た指示、メールに来た指示、口頭で来た指示。全部を1つの場所に写す人を決めます。誰が写すかを決めないと、写されない指示が残ります。
決めること2:指示を出せる人を決める。 依頼元の全員が自由に指示を書ける形にすると、矛盾した指示が並びます。依頼元の中で指示をまとめる担当を1人決めてもらい、その人が出した指示だけを受けるのが原則です。角が立つ話なので、最初の打ち合わせで決めておきます。
決めること3:往復の回数を先に決める。 初稿、修正1回目、修正2回目、そして最終確認。この段数を契約や見積りの段階で決めます。決めていないと、往復が5回を超えたときに誰も止められません。
決めること4:何をもって確定とするかを決める。 「確認しました」の一言か、コメントが全部閉じた状態か、書面か。確定の合図を決めておかないと、印刷や公開の直前に「まだ見ていない人がいる」と言われます。
決めること5:確定後の修正の扱いを決める。 確定した後に修正が来ることは必ずあります。追加費用になるのか、無償で受けるのかを先に決めます。ここを決めていないと、道具の中で気持ちよく指示が書ける分だけ、確定後の修正が増えます。
この5つは道具では解決しません。道具は決めたことを回すための器です。決めないまま器を入れると、散らばっていた指示が1か所に集まって見えるようになるだけで、量は減りません。
候補を並べるときに見る軸を、優先順位の高い順に並べます。
依頼元にアカウントを作らせるか。 これが最初の分かれ目です。依頼元の会社が、社外の道具にアカウントを作ることを認めていない場合があります。リンクを開くだけでコメントできる形か、招待が必要な形か。ここで候補が半分に絞られることがあります。
対応している対象。 画像だけか、ウェブページのURLも見られるか、動画も扱えるか、PDFも扱えるか。制作物の種類が複数ある会社は、1つの道具で全部カバーできるとは思わないほうが現実的です。
版の管理の形。 新しい版を上げたときに、前の版のコメントがどうなるか。自動で閉じるのか、並んで残るのか、見えなくなるのか。ここは実際に触らないと分かりません。
状態の管理ができるか。 コメントごとに未対応と対応済みを付けられるか。付けられるだけでなく、残っている数が一覧で見えるかまで確かめます。
外に出しても大丈夫な作りか。 制作物には公開前の情報が載ります。リンクを知っていれば誰でも見られる形は、公開前のキャンペーンでは使えません。見せる範囲を絞れるか、期限を切れるか。分離と権限と記録の考え方は安全性の考え方にまとめてあります。
案件の進行とつながるか。 校正の道具だけを入れると、案件が何本走っているか、どれが締切に近いかは別の場所で見ることになります。制作の本数が多い会社では、ここがつながっているかで管理する側の負担が変わります。
比較のコツは、機能の有無の表で選ばないことです。どの道具も基本の機能は持っています。差が出るのは、依頼元が迷わず使えるかどうかと、往復の記録が後で読めるかどうかです。候補を2つに絞ったら、必ず実際の案件1本を両方で回してみてください。
どの系統の道具がどんな形に向いているかを並べて見たいときは、比較の一覧が使えます。文書を中心に扱う道具との違いを知りたいならNotionとの比較のように1対1で並べたページもあります。
校正ツールの費用は、課金の形が道具によって違います。単価だけを並べても比べられないので、何で数えるかを確かめてください。
1人あたりの月額。 確かめるのは、依頼元の人を数えるかどうかです。制作側が5人で依頼元が20人という案件では、依頼元を数える形だと費用が跳ねます。見るだけ、コメントするだけの人を数えない形かどうかが分かれ目です。
案件やプロジェクトの数あたり。 案件が少なく人が多い会社には向きます。逆に、小さい案件が同時に30本走る制作会社では割高になります。
容量あたり。 動画や高解像度の画像を扱うと、容量は思ったより速く増えます。1案件でどれくらい使うかを試用期間中に測ってください。
保存できる案件数や期間で切る形。 校正の記録は、後から「あのとき何と言われたか」を確かめるために残します。期間で消える形は、この用途に向きません。
無料の範囲の切り方も確かめてください。期間で切られる形は、試用が終わった日に全部止まるので、本番の運用を試したことになりません。人数や案件の数で切られる形なら、1案件を丸ごと回して判断できます。
進行の側の道具についても同じことが言えます。5人まで期限なしで無料、ボードは10個まで、という切り方なら、案件1本を初稿から確定まで通して試せます。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという形であれば、無料で試した使い方をそのまま有料に持ち上げられます。料金の条件は料金で確かめられます。
費用を判断するときは、いま往復にかかっている時間も数字にしてください。1案件で修正の往復が4回、1回ごとに指示のとりまとめと突き合わせで40分。月に10案件あれば、それだけで月26時間です。この時間がどれだけ減るかが、費用の判断材料になります。
道具を入れても往復が減らない場合、原因はたいてい指示の書き方にあります。ここは道具ではなくスキルの領域です。
減らない指示には特徴があります。
感想だけの指示。 「なんとなく硬い」「もう少し明るく」。これは指示ではなく感想です。受け取った側は当てものを始めます。3回当てて外れると、その案件は必ず荒れます。
目的が抜けた指示。 「文字を大きく」だけでは、どこまで大きくすればよいか分かりません。「スマートフォンで見たときに読めないので大きく」なら、目的が伝わり、別の解き方も提案できます。
優先順位のない指示。 20箇所の指示に重みが付いていないと、受け取る側は全部同じ重さで直します。締切が近いときに、直すべき3箇所が埋もれます。
まとめて来ない指示。 3回に分けて届く指示は、3回分の作業になります。依頼元に「まとめて1回で出してください」と頼むのは、遠慮すべきことではありません。
書き方を良くする方法は、型を作ることです。「場所」「何が問題か」「どうなっていてほしいか」「必須か希望か」の4つを1組にします。この4つを埋める形にしておくと、感想だけの指示が減ります。
依頼元に型を守ってもらうのは難しいと思われがちですが、実際には型があるほうが依頼元も楽になります。何を書けばいいか分からないまま「なんか違う」と書いている人が多いからです。型を先に渡すと、書く側の迷いが消えます。
もう1つ効くのは、制作側から質問を先に出すことです。初稿を出すときに「文字の量はこの想定で合っていますか」「この色はブランドの規定に沿っていますか」と2つか3つ聞いておくと、その論点が確定します。後から出てくる大きな差し戻しは、この段階で聞けたはずのことが多いです。
導入の手順を5段階に分けます。一斉に始めないことが最大のコツです。
ステップ1:案件1本で試す。 規模が中くらいで、依頼元が協力的な案件を選びます。往復が多くて困っている案件を選びたくなりますが、荒れている案件で新しい道具を試すと、道具のせいにされます。
ステップ2:制作側だけで先に使う。 依頼元を入れる前に、社内のレビューで1週間使います。操作の疑問をここで潰しておくと、依頼元に説明するときに詰まりません。
ステップ3:依頼元を1社だけ入れる。 全社に広げる前に1社です。ここで「アカウントが作れない」「会社のネットワークから開けない」といった問題が出ます。出てから対処すれば済みます。
ステップ4:前の方法をやめる日を宣言する。 ここを曖昧にすると、メールでの指示が並行して続きます。日付を決めて、その日からメールの指示は道具に写してから着手する、と決めます。
ステップ5:往復の回数を記録し始める。 導入の効果は、感覚では測れません。案件ごとの往復回数を数え始めてください。3か月分たまると、往復が減ったのか、案件の性質で変わっているだけなのかが見えます。
定着しない場合の注意点も挙げます。
注意1:制作側が結局チャットで返している。 依頼元が道具に書いても、制作側がチャットで返すと記録が分かれます。返事も同じ場所に書く、と決めてください。
注意2:進行担当が全部の指示を写している。 写す作業が1人に集中すると、その人が休んだ日に止まります。依頼元に直接書いてもらう形に近づけていく必要があります。
注意3:確定の合図が運用されていない。 コメントを全部閉じることを確定の条件にしたなら、閉じていない案件を進めないでください。1回例外を作ると、条件として機能しなくなります。
注意4:過去の案件を探せない。 半年前の案件で何と言われたかを探せないと、同じ議論をやり直します。案件をまたいで検索できるかを、導入前に確かめておいてください。細かい条件はよくある質問にも並んでいます。
同じ校正でも、制作物の種類によって向いている進め方が変わります。種類ごとに整理します。
印刷物。 いちばん行き違いが起きにくい代わりに、間違いが取り返せない領域です。色は画面と刷り上がりが違うので、色の指示は画面のコメントだけで確定させないでください。文字の間違いは印刷後に直せないため、最終の確認は必ず出力した紙で行う形を残すのが現実的です。道具で扱うのは初稿から中盤までの往復で、最後の1回は紙に戻す。この形が安全です。
ウェブページ。 幅によって形が変わるので、位置の指示は「どの幅で見たときか」が要ります。スマートフォンで見て崩れている箇所を、パソコンの画面の座標で指示しても伝わりません。URLを開いてその場にコメントを付けられる道具は、この点で強いです。合わせて、確認する端末と幅を最初に決めておきます。
動画。 再生時間のどこかを指定できないと指示になりません。「中盤のテロップ」では探すところから始まります。秒数を書く運用にするか、時間軸にピンを刺せる道具を使うかのどちらかです。動画は容量が大きいので、費用の形も先に確かめてください。
アプリやサービスの画面。 画面の数が多く、状態によって見た目が変わります。ログイン前とログイン後、データがあるときとないとき。どの状態の画面かを指示に含める型を作らないと、同じ箇所の指摘が繰り返されます。
SNSの投稿画像やバナー。 1本の制作に対して確認する人が多く、しかも締切が短い領域です。往復の回数を2回に決め切ることが、どの道具よりも効きます。
種類をまたいで制作している会社では、1つの道具で全部を扱おうとしないほうが早く落ち着きます。種類ごとに向いた道具を使い、案件の本数と締切と往復の記録だけを1か所にまとめる形です。まとめる側の場所には、添付をその場でプレビューできること、コメントが時系列で残ること、そして案件をまたいで検索できることを求めます。
指示を受けた側の手順も決めておくと、往復が目に見えて減ります。手順は4つです。
受け取ったら、まず数える。 指示が何箇所あるかを数えて、その数を相手に返します。「18箇所、うち5箇所は確認させてください」と返すだけで、相手は自分が出した量を認識します。量の認識が共有されると、無自覚に増やす指示が減ります。
矛盾と判断待ちを先に出す。 18箇所のうち、互いに矛盾する指示、判断が必要な指示を先に返します。ここを後回しにして13箇所を直すと、残りの5箇所の判断を待つあいだ案件が止まります。判断待ちを先に投げるのが最短です。
必須と希望を分けて確認する。 全部が必須なのか、時間が足りなければ落としてよいものがあるのか。締切が近い案件では、この確認が効きます。相手も全部が同じ重さだとは思っていないことが多いです。
直したら、指示の単位で閉じる。 「直しました」とまとめて返すのではなく、指示の1件ごとに閉じます。閉じ方を1件単位にすると、次の版で「これは前に言ったはず」が起きません。
この手順を回すと、往復の回数そのものよりも、1回の往復にかかる日数が縮みます。往復の回数は依頼元の都合で決まる部分が大きいですが、1回の日数は受ける側の手順で縮められます。
校正の道具を選ぶ話で後回しになりやすいのが、誰にどこまで見せるかです。校正は社外の相手と一緒にやる作業なので、案件の他の情報まで一緒に見えてしまう作りにすると、あとで困ります。決めておくことは4つです。
見せ方を、アカウント発行とURL共有のどちらにするか。 アカウントを発行する方式は、誰がいつ何を書いたかが残ります。人数分の席が必要になるので、料金に効きます。URLだけで見られる方式は、依頼元に手間をかけません。ただしURLは転送されます。転送された先を止める手段があるかどうかを、選ぶ前に確かめてください。期限を付けられるか、あとから無効にできるか。この2つが無い道具は、公開前の制作物には向きません。
公開前の素材をどう扱うか。 校正の対象には、発売前の商品の写真や、まだ出していない価格が入ります。制作物の中身が公開前の情報だという前提で、保存先を決めてください。社内の誰でも見られる場所に保存してしまうと、流出の経路が増えます。案件ごとに見える範囲を区切れるかどうかは、機能表よりも実際の画面で確かめたほうが確実です。区切りの単位がボードなのか、案件なのか、それより細かいのかで、運用の手間が変わります。
人が入れ替わったときの手順。 依頼元の担当者が変わる、代理店が抜ける、印刷所を変える。このときに古い相手の権限を外す作業が、たいてい抜けます。抜ける相手が出た時点で誰が権限を外すのかを、最初に決めてください。案件が終わったら共有を閉じる、という取り決めにしておくのが一番忘れにくい形です。
保管の期間。 校正の記録は、案件が終わったあとも参照されます。あとで「この直しは誰の指示だったか」を確かめる場面が出るからです。一方で、いつまでも残すと公開前の素材が残り続けます。納品から6か月で画像だけ消す、といった期間の取り決めを、道具の選定と同時に決めておくと迷いません。どこまでを道具側の設定で縛れるかは、安全性の考え方のような説明のページに書かれていることが多いので、比較の段階で読み比べておくと判断が速くなります。
最後に、校正の記録を進行の板の上にまとめると何が見えるようになるかを整理します。校正の道具を入れる目的は記録を残すことではなく、往復を減らすことなので、ここが本題です。
往復の回数の分布。 案件ごとに往復が何回だったかを並べると、平均ではなく分布が見えます。多くの案件が2回で終わっていて、一部が6回を超えている形になることが多いです。改善の対象は平均ではなく、6回を超えた案件です。
往復が多い案件の共通点。 6回を超えた案件を並べると、共通点が出ます。よくあるのは、依頼元の決裁者が初稿の段階で見ていない、指示をまとめる担当が決まっていない、そして初稿の前に確認すべき前提が確定していない、の3つです。どれも道具では解けません。手前の段取りの問題です。
待ちの長さ。 提出してから指示が返ってくるまでの日数も、記録に残ります。制作の時間より、待ちの時間のほうが長いことは珍しくありません。締切が守れない原因が、制作の遅さではなく確認の待ちだったと分かることがあります。この場合、打ち手は制作を速くすることではなく、確認の期限を先に決めることです。
工程への影響。 往復が1回増えると、後工程がどれだけずれるか。カードの期間を横棒で並べて見ると、その場で分かります。横棒をドラッグして開始日と締切を変えられる形なら、往復が増えた時点で後工程の相談を始められます。これを日数の計算で毎回やっていると、相談が遅れます。
同じ指摘の繰り返し。 案件をまたいで同じ指摘が出ることがあります。文字の詰め方、ロゴの余白、禁止色。3回出た指摘は、案件ごとに直すものではなく、制作の前提として共有すべき情報です。決まったことがカードの説明欄に残る形にしておくと、4回目が来なくなります。
確認が集まる時間帯の偏り。 指示が返ってくる時刻を記録に残すと、依頼元の都合が見えます。週の後半にまとめて返ってくる相手、夕方以降に返ってくる相手。分かっていれば、提出の曜日と時刻を合わせられます。提出を火曜の午前にずらすだけで、返りが1日早くなることがあります。締切のあるカードを月間カレンダーに並べて、提出と確認の締切が集中している週を先に見つけておくと、この調整がしやすくなります。
見えたことをどこに反映するかも決めておいてください。前提の確定は初稿の前の打ち合わせへ。確認の期限は見積りの条件へ。繰り返す指摘は制作の手引きへ。記録を読んだ結果が必ずどこかに残る形にしないと、記録は増えるだけになります。
なお、いま使っている方法のままでよい場合もあります。案件が月に2本で、確認する人が2人で、往復が毎回2回で収まっている。この条件なら、道具を増やす手間が回収できません。判断の目安は、往復のとりまとめに月5時間以上かかっているかどうかです。すでにボード型の道具を使っているなら、Trelloからの移行のように既存のボードをそのまま運べる経路があるかも先に確かめておくと、移る判断がしやすくなります。
無料で始められる道具はありますが、無料の範囲の切り方を確かめてください。期間で切られる形だと試用が終わった日に全部止まるので、本番の運用を試したことになりません。人数や案件の数で切られる形なら、1案件を初稿から確定まで通して判断できます。校正の記録は後から読み返すものなので、保存期間で消える形は避けたほうが安全です。
道具によって違います。リンクを開くだけでコメントできる形と、招待して登録してもらう形があります。依頼元の会社が社外の道具への登録を認めていない場合があるので、候補を絞る前に確かめてください。ただしリンクだけで見られる形は、公開前の制作物では見せる範囲を絞れるかを別途確認する必要があります。
道具だけでは減りません。減らない原因の多くは、指示を出せる人が決まっていない、往復の回数を先に決めていない、確定の合図を決めていない、のどれかです。道具が解くのは、指示の場所が伝わらない、版が混ざる、終わりが数えられない、の3つです。運用の決めごとを先に決めてから道具を入れると効果が出ます。
位置にピンを刺す指示は校正に特化した道具が得意で、案件の本数や締切、往復の記録は進行管理の道具が得意です。2つに分ける形は現実的ですが、どちらが正の記録かを決めてください。両方に指示が書かれると版が混ざります。案件の本数が少なければ、進行管理の道具のカードに添付とコメントで集める形でも足ります。