エクセルの共有でロックがかかる理由|誰かが開いたままになる問題
共有フォルダに置いたエクセルを開こうとしたら、誰かが使用中なので読み取り専用で開きます、と言われる。エクセルの共有でロックがかかるこの場面は、進行をとりまとめている人ほど頻繁に踏みます。直したい行は目の前にあるのに、書き込めない。誰が開いているのかが表示されることもあれば、名前が出ないこともあります。
待てば解決するなら、それは困りごとではありません。実際に起きているのは、待っても開かないという事態です。開いた本人が席にいない、開いていることに気づいていない、そもそも開いた記憶がない。そのあいだに、待てない人が「読み取り専用のコピー」を手元に作り、そこで作業を始めます。ロックの問題が、いつのまにか版が分かれる問題に変わっていきます。
この記事では、まずロックがかかる仕組みを言葉にします。そのうえで、なぜ人は開いたままにするのか、コピーが増える流れがどこで生まれるのかを分解します。最後に、いまの形のまま運用で回避する手と、形そのものを変える手を分けて並べ、どちらを選ぶべきかの物差しを示します。表計算そのものを否定する記事ではありません。表計算が得意な仕事と、そうでない仕事の境目を引くための記事です。
共有したエクセルにロックがかかる仕組みを言葉にする
まず前提を揃えます。エクセルの共有でロックがかかると言うとき、実際には性質の違う複数のことが同じ言葉で呼ばれています。ここを分けないまま対策を探すと、自分の状況に当てはまらない手順ばかり見つかることになります。
大きく分けると3つです。1つ目は、ファイルサーバーや共有フォルダに置いたブックを誰かが開いているために、後から開いた人が書き込めなくなる状態。2つ目は、ブックやシートに保護をかけていて、編集そのものが制限されている状態。3つ目は、ファイルを開いたときにパスワードを求められる状態です。この記事が扱うのは1つ目です。検索する人の多くが踏んでいるのもここです。
開いている人がいることを知らせる「印」が置かれている
ネットワーク上の共有フォルダにあるブックを誰かが開くと、その場所に一時的な印が置かれます。ファイル名の先頭に記号が付いた、目に見えにくい小さなファイルが同じフォルダに作られる形です。後から同じブックを開こうとした人のエクセルは、まずこの印を見に行きます。印があれば「いま誰かが使っている」と判断し、読み取り専用で開くかどうかを尋ねます。
この印には、最初に開いた人の名前が書き込まれています。だから多くの場合、後から開いた人の画面には誰が使用中かが表示されます。ただし表示されるのは、エクセルに登録されているユーザー名です。共用端末で初期設定のまま使っていたり、部署名で登録されていたりすると、画面には人物を特定できない名前が出ます。誰が開いているのか分からない、という状況はこうして生まれます。
重要なのは、この仕組みが「ファイルの中身を守るため」に働いているという点です。同じブックに2人が同時に書き込むと、後から保存したほうの内容で前の人の編集が丸ごと上書きされます。ロックは、その事故を未然に防ぐために設計されています。厄介に感じる動作ですが、外せば安全になるものではありません。
印が残ったまま消えないことがある
正常に閉じれば、この印は自動的に消えます。問題は、正常に閉じられないケースがあることです。
作業中に端末が固まってエクセルを強制終了した、ネットワークが一瞬切れた、共有フォルダとの接続が眠ってしまった、更新の再起動が編集中に走った。こうしたときは、印だけが取り残されます。すると、実際には誰も開いていないのに、開いている扱いのまま何時間も、ときには何日も、書き込めない状態が続きます。
現場でよく聞くのは、「本人に聞いたら閉じているはずと言われた」という食い違いです。本人は嘘をついていません。閉じたつもりで、印だけが残っています。この状態は待っても解消しません。取り残された印を片付けるまで続きます。
「読み取り専用で開く」と言われたときに何が起きているか
後から開いた人には、たいてい3つの選択肢が示されます。読み取り専用で開く、通知を受け取れるようにして待つ、コピーとして開く。表現は版によって変わりますし、置き場所や設定によっては選択肢そのものが違って見えることもあるので、画面のどこに何があるかを覚えるより、この3つの意味の違いを押さえておくほうが役に立ちます。
読み取り専用で開けば、中身は見えます。ただし保存できません。ここで多くの人がやるのが、そのまま作業を始めて、最後に別名で保存することです。この瞬間、正のファイルとは別の場所に、内容の違うファイルが1つ生まれます。悪意はなく、むしろ待ち時間を無駄にしないための合理的な行動です。それでも結果として、版が分かれます。
通知を受け取る形を選ぶと、相手が閉じたときに知らせが来ます。これはうまく働くこともありますが、待っているあいだ手が止まります。締切が近い時間帯に、他人がいつ閉じるか分からないものを待ち続けられる人は多くありません。結局、待てる人だけが待ち、待てない人がコピーを作ります。
「共有ブック」と「共同編集」は別の話
ここで混同されやすいのが、古くからある共有ブックという機能と、クラウド上での共同編集です。
共有ブックは、複数人が同時に同じブックを編集できるようにする古い仕組みです。ただし使える機能に制限があり、テーブルや一部の高度な機能とは併用できません。競合が起きたときの解決も手作業になります。近年の版では既定では表に出ておらず、後方互換のために残されている位置づけです。この機能で解決しようとすると、別の種類の不具合に悩むことになりがちです。
クラウド上での共同編集は、置き場所そのものが違います。ネットワークフォルダではなくクラウドの保管領域にブックを置き、ブラウザやアプリから同時に開いて編集する形です。この形なら、そもそも「開いている人がいるから開けない」という状態が起きません。実務でロックの問題を直接的に減らすなら、この置き場所の変更がもっとも効きます。詳しくは後半で扱います。
開いたままになるのは、だらしないからではない
ロックの相談は、しばしば個人の態度の問題として語られます。閉じ忘れる人が悪い、声をかければ済む話だ、と。ですが同じことが何度も起きるなら、それは仕組みの側に原因があります。
閉じるという動作に、本人にとっての意味がない
エクセルを開いている本人にとって、閉じることには何の得もありません。閉じたところで自分の作業は1ミリも進みませんし、開いたままにしておけば次に見るときにすぐ続きから触れます。むしろ開いたままのほうが合理的です。
閉じないことで困るのは、他の人です。困っている人の姿は、開いている本人には見えません。他人の画面に読み取り専用の案内が出ていることも、その人が待っていることも、伝わってきません。10人のチームで1人が開きっぱなしにすると、残りの9人に影響が出るのに、その9人分の困りごとは1人にも届きません。これは注意力の問題ではなく、情報の非対称の問題です。
端末は簡単には終了しない
もう1つの理由は、いまの働き方では端末を落とす機会が減ったことです。ノート端末を閉じてもアプリは終了せず、翌朝に開けばそのまま復帰します。在宅からリモート接続で社内の端末につないでいる場合、接続を切っても向こう側のエクセルは開いたままです。会議のために席を立ち、そのまま別の仕事に移り、夕方に戻ってきたら、朝に開いたブックがそのまま画面の裏にいる。
さらに、ブックを開いているのは人間だけとは限りません。ファイルを参照する自動処理、バックアップの仕組み、検索用の索引を作る常駐ソフト、同期ソフトの動作。こうしたものが一時的にファイルをつかむことがあり、そのタイミングで開こうとした人には使用中に見えます。誰に聞いても開いていないと言われるのに開けない、という状況の一部はここから来ます。
誰が開いているのかを追いかける時間が積み上がる
そして、探す時間がかかります。表示された名前が誰なのか分からない、名前は分かるが外出中で連絡がつかない、チャットで聞いたが返事が来ない。1回あたり5分から10分の話でも、週に何度も起きればチーム全体では相当な量になります。
この時間はどこにも記録されません。工数として計上されず、遅れの理由としても報告されません。誰かの集中が少しずつ削られているだけなので、問題として表面化しないまま何年も続きます。エクセルの共有でロックに困っているという相談の背後には、たいていこの見えない時間が横たわっています。
コピーが増える流れは、待てない人から始まる
ロックそのものよりも実務に効いてくるのが、そこから派生するコピーの増殖です。ここを止められないと、ロックが解けても混乱が残ります。
「あとで統合します」は統合されない
読み取り専用で開いた人が、自分の担当範囲だけ手元で直して、別名で保存する。ファイル名の末尾に日付や自分の名前を足す。そしてチャットに「直したので、あとで本体に反映お願いします」と投げる。ここまでは、その人としてはむしろ丁寧な仕事です。
問題は、反映する側の負担です。受け取ったファイルと正のファイルを並べて、どこが違うのかを1つずつ見比べる作業が発生します。行が増減していると差分の照合はさらに面倒になります。しかもこの作業は、成果物を1ミリも前に進めません。とりまとめる人だけが黙って引き受ける形になり、忙しい週には後回しになります。後回しになった手元コピーは、その間も更新され続けます。
名前で世代を管理すると、必ずどこかで破綻する
日付や版番号をファイル名に付ける運用は、ほとんどのチームが一度は試します。そして、ほとんどのチームで同じ壊れ方をします。
同じ日に2回直せば、日付だけでは区別できません。そこで末尾に記号を足し、さらに「最新」と付け、そのあとに「最新2」が生まれます。共有フォルダを開くと、似た名前が縦に並び、どれが正なのか名前からは判断できない状態になります。更新日時で判断しようにも、誰かが古い版を開いて何もせず保存しただけで日時は動きます。
名前による世代管理が破綻するのは、名前が中身と連動していないからです。中身を変えずに名前だけ変えることも、名前を変えずに中身を変えることもできてしまいます。人間の注意力で連動を保ち続けるのは、人数が増えるほど難しくなります。
統合作業そのものが属人化する
複数の手元コピーを1つに合流させる作業は、誰にでもできるものではありません。どの列が誰の担当か、どのセルに数式が入っているか、どこを触ると他のシートが崩れるかを知っている人にしか任せられません。結果として、いつも同じ1人がやることになります。
この状態には2つの危うさがあります。1つは、その人が休むとファイルが更新されなくなること。もう1つは、その人以外は中身の構造を知らないままになることです。表計算のブックは、育つほど数式と参照が複雑になります。作った人が異動したあと、誰も触れないまま使われ続けるブックは、多くの組織にあります。
このような状態は、表計算に限った話ではありません。長く使われた仕組みが特定の人しか触れないものになる問題は、国の資料でも繰り返し指摘されています。
複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性 出典: 経済産業省
規模はまったく違いますが、起きていることの構造は同じです。中身を知る人が減り、直す人がいなくなり、それでも止められないから使い続ける。共有フォルダの中で誰も構造を説明できなくなったブックは、その小さな版だと考えると分かりやすくなります。
運用で回避する手
いまの形を変えずに、ロックとコピーの問題を減らす手はあります。効果と手間には差があるので、上から順に検討する形で並べます。
触る時間を分ける
もっとも単純な手は、同時に触らないことです。更新する時間帯を担当ごとに決めて、その時間以外は開かない。あるいは、更新は締切前の決まった時間にまとめて行い、それ以外の時間は誰も書き込まない。
この手は、人数が少なく、更新の頻度が低いチームでは十分に機能します。3人から5人で、週1回の定例前に更新するだけなら、ルールを1つ決めるだけで問題は消えます。一方で、人数が10人を超えるか、更新が日常的に発生するチームでは、時間割を守り続けるコスト自体が負担になります。守らせるための声かけを誰かが担うことになり、その担当が疲れて形骸化します。
触る範囲を分ける
次の手は、1つのブックを複数のファイルに割ることです。担当ごと、案件ごと、月ごとに分けて、それぞれの人が自分のファイルだけを開く。集計が必要なら、参照や集約用のブックを別に作ります。
これはロックの衝突をかなり減らします。ただし副作用があります。ファイルの数が増えるほど、全体像を見るのが難しくなります。集約用のブックが参照切れを起こすと直すのに時間がかかりますし、ファイルを移動しただけで参照が壊れることもあります。全体を見る人の負担を、個々の担当者の快適さと引き換えに増やす形になるので、とりまとめる人が1人しかいないチームでは慎重に判断してください。
開いたままを見つける仕組みを作る
取り残された印や、閉じ忘れを早く見つける手もあります。共有フォルダを管理している部門に依頼して、どの端末がファイルをつかんでいるかを確認してもらう方法が一般的です。サーバー側から接続を切ることで、印を解放できる場合があります。
ただしこれは、依頼する相手が必要な手です。情報システムの担当がいる組織では現実的ですが、そうでない場合は毎回誰かに頼むわけにいきません。また、強制的に接続を切ると、開いていた人の未保存の作業が失われる可能性があります。手順や画面は環境によって違いますし、版によっても変わるので、実行する前に管理している部門の判断を仰いでください。
置き場所をクラウドに移して共同編集にする
もっとも効果が大きい運用上の手は、置き場所を変えることです。ネットワーク上の共有フォルダから、共同編集に対応したクラウドの保管領域にブックを移す。これで「開いている人がいるから開けない」という状態そのものが起きなくなります。複数人が同時に開き、それぞれのカーソルが見え、変更がその場で反映されます。
この手を選ぶときに確認しておくことが3つあります。1つ目は、いまのブックが使っている機能がクラウド上でも動くかどうかです。複雑なマクロや一部の高度な機能は、ブラウザ上では制限されることがあります。2つ目は、社外の関係者にどう見せるかです。3つ目は、通信環境です。回線が不安定な場所で作業する人がいると、同時編集は逆にストレスになります。
運用の手には、共通の限界がある
ここまでの手はどれも有効ですが、共通する限界があります。どれも「1つの大きなファイルを、複数の人が奪い合う」という構造そのものは変えていない点です。
時間を分けても、範囲を分けても、置き場所を変えても、扱っているのは相変わらず1枚の大きな表です。表が大きくなるほど、開くのが遅くなり、どこを直したのか分からなくなり、誰かが間違って行を消した事故を後から追えなくなります。共同編集にすると同時に触れるようになる代わりに、同じセルを2人が別々の意図で直したときの調整は人間の仕事のまま残ります。
つまり運用の手は、痛みを減らす手であって、痛みの原因を取り除く手ではありません。それでも十分な場合は多いので、まずここから試すのが順当です。試したうえで足りないと感じたときに、次の話に進みます。
根本から変える手
構造を変えるというのは、「1つの大きなファイルをみんなで触る」形をやめることです。具体的には、表の1行だったものを、それぞれ独立して触れる1件として扱う形に移します。
1つのファイルから、1件ずつのカードへ
進行の管理でエクセルを使っているとき、その表の1行はたいてい1つの仕事を表しています。案件名、担当、期限、状態、備考。この1行を、ファイルの中の1行ではなく、それ自体で開いたり閉じたり書き込んだりできる独立した1件として持つ形に変えます。
こうすると何が起きるか。Aさんが自分の担当する案件の状態を更新している最中に、Bさんは別の案件を更新できます。2人が同じ1件を同時に直すことはめったに起きませんし、起きたとしても影響は1件の中に収まります。ファイル全体をつかむ人がいなくなるので、ロックという概念そのものが日常から消えます。
ボード型の進行管理の道具は、この形を素直に実現したものです。列が状態を表し、カードが1件を表し、担当者が自分のカードだけを動かします。全体を見たい人は板を眺め、細部を見たい人はカードを開く。どういう画面で何ができるのかはできることのページに整理されています。
更新の入力点が、とりまとめる人から担当者に移る
構造を変えることの本当の効果は、ロックが消えることではありません。更新を入れる人が変わることです。
1つの大きなファイルを1人が管理している状態では、更新の情報はいったんその人に集まります。担当者がチャットで報告し、とりまとめる人がファイルを開き、該当の行を探して書き込み、保存する。この経路がある限り、表の鮮度はとりまとめる人の手が空いているかどうかで決まります。忙しい週には、表が現実から数日ずれます。
1件ずつ独立して触れる形になると、担当者が自分の分を直接直せます。中継が1つ消えるので、鮮度が上がります。全員が同じ板を見て、自分の担当分だけを自分で動かす形が定着すると、進捗の確認そのものが減ります。聞かなくても見れば分かるからです。
移すときに失うもの
正直に書いておくべきこともあります。表計算から進行管理の道具に移すと、確実に失うものがあります。
まず、自由な計算です。任意のセルに数式を書いて、好きな集計を作る自由度は、専用の道具ではたいてい制限されます。原価の計算、複雑な条件分岐、シミュレーション。こうした用途は表計算のほうが圧倒的に強く、無理に移すべきではありません。
次に、印刷と書式の細かい調整です。決まった様式で紙に出す必要がある帳票は、表計算のほうが確実です。
そして、道具を使う人が増えることによる摩擦です。新しい画面を覚えてもらう必要があり、最初の数週間は「前のほうが早かった」という声が必ず出ます。この期間を越えられるかどうかは、道具の性能ではなく、進行をとりまとめる人が使い方を1つに絞って示せるかどうかで決まります。
エクセルをやめる話ではない
ここは強調しておきます。エクセルは、表を扱う道具として非常に優れています。数式の柔軟さ、誰の端末にもある普及率、印刷への強さ、外部との受け渡しのしやすさ。これらを同時に満たすものは他になかなかありません。集計、分析、見積もり、原価計算、帳票の作成。こうした仕事で表計算を置き換える理由はほとんどありません。
問題が起きているのは、表計算を「複数人が同時に書き換え続ける台帳」として使っている場面だけです。表計算は、1人が計算するための道具として設計されています。そこに10人が同時に書き込もうとすれば、無理が出るのは当然です。道具が悪いのではなく、用途が設計から外れています。
現実的な着地は、両方を使い分ける形です。進行の状態は板で管理し、数字の計算や分析は表計算で行う。板から書き出したデータを表計算で集計する運用は、多くのチームが自然にたどり着きます。
どこで線を引くかを決める物差し
運用で回避するか、構造から変えるか。この判断を感覚でやると、あとから振り返れなくなります。判断の物差しを4つ挙げます。
同時に触る人の数
1つ目は人数です。ただし、チームの人数ではありません。同じブックを同じ日に書き換える可能性がある人の数です。
チームが20人いても、書き込むのは2人だけで残りは見るだけなら、ロックはあまり問題になりません。逆にチームが6人でも、全員が毎日書き込むなら衝突は日常的に起きます。書き込む人が5人を超えたあたりから、時間を分ける運用は維持が難しくなります。
更新の頻度
2つ目は頻度です。週1回の定例前だけ更新するのか、何かが起きるたびに更新するのか。
前者なら、運用の手で十分に足ります。後者の場合、更新のたびにファイルを開いて該当行を探して保存する手間が積み上がり、やがて「まとめて後で入れよう」に変わります。まとめて後で入れる運用になった時点で、表は現実から遅れ始めます。頻度が高いほど、1件ずつ独立して触れる形の利点が大きくなります。
入力する人が誰か
3つ目がもっとも重要です。表を直す人が1人に固定されているのか、担当者それぞれが直すのか。
1人に固定されているなら、ロックの問題は実はあまり起きません。起きているのは「その1人が忙しいと表が古くなる」という別の問題です。この場合、道具を変えても、入力の経路を変えなければ何も改善しません。逆に、担当者それぞれが直す形を目指すなら、1つの大きなファイルを共有する形はいずれ限界を迎えます。
表としての計算が主か、進行の管理が主か
4つ目は、そのブックが何をしているのかです。数式で計算をしているのか、状態を書き留めているだけなのか。
数式が中心で、セルの参照が張り巡らされているなら、無理に移さないほうがよいです。移した先で同じ計算を再現できるとは限りませんし、再現できたとしても手間に見合いません。一方、中身をよく見ると数式はほとんどなく、状態と期限と担当を人手で書き換えているだけ、というブックも多くあります。この種のブックは、移した効果がはっきり出ます。
判断に迷ったら、いまのブックを開いて数式が入っているセルの割合を数えてみてください。ごく少ないなら、それは表というより台帳です。台帳は、台帳のための道具のほうが向いています。
板に移すことを検討するときに、先に見ておくとよいこと
構造を変える方向に傾いたとして、次に出てくるのは「どれを選ぶか」です。ここでは特定の道具を勧めるのではなく、比較のときに見るべき観点だけを挙げます。
観点の1つ目は、料金の決まり方です。多くの道具は、使える機能をプランごとに分けています。この形だと、必要な機能が上位プランにあるかどうかを毎回確かめる必要が出ます。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという決め方であれば、比較は人数と板の数を数えるだけで済みます。どちらが良いかは使い方によりますが、決まり方の違いは先に把握しておくと迷いません。料金の考え方は料金のページで確認できます。
2つ目は、いま使っている道具からどう移るかです。表計算から移す場合、書き出しと取り込みの手順が現実的かどうかが分かれ目になります。取り込みが自動でできる相手は限られており、道具によっては手作業での作り直しになります。移行の考え方はTrelloからの移行で整理されています。自動で取り込める範囲には限りがあるので、そこも含めて確認してください。
3つ目は、置き場所と安全性です。社外の関係者を招くのか、社内だけで使うのか、どこまでを誰に見せるのか。この設計を後から変えるのは面倒なので、最初に決めておくと楽になります。考え方は安全性の考え方にまとまっています。
比較そのものを進めるなら、道具ごとの向き不向きを並べたページが役に立ちます。カードを動かす形の代表格についてはTrelloとの比較、仕事の割り当てと期限の管理を重視する形についてはAsanaとの比較、文書と表を一緒に扱いたい場合についてはNotionとの比較にそれぞれ観点が整理されています。表の見た目を細かく作り込む方向を検討しているならmonday.comとの比較、開発の課題管理と一緒に扱いたいならBacklogとの比較、日本語環境での使い勝手を重く見るならJootoとの比較が参考になります。全体をまとめて眺めたい場合は比較の一覧から入るのが早いです。細かい疑問はよくある質問にも整理されています。
なお、料金や上限の数字は改定されます。この記事では具体的な金額を書きません。判断するときは必ず各社の公式ページで、いつ時点のものか、税抜か税込かを確かめてください。
変える前に、いまの状態を数えておく
道具を変えるかどうかを決める前に、いまの状態を数字にしておくと判断が楽になります。感覚で困っていると言っているうちは、変えたあとにうまくいったかどうかも感覚でしか分かりません。
数えるのは4つです。1つ目は、直近1か月で読み取り専用の案内が出た回数。正確に数えるのが難しければ、今週から数え始めるだけでも構いません。2つ目は、そのうち「誰が開いているのか探した」回数と、探すのにかかった時間。3つ目は、共有フォルダの中にある、似た名前のファイルの数。4つ目は、手元コピーを本体に反映する作業に月あたり何時間かかっているかです。
この4つを書き出すと、詰まっている場所がはっきりします。読み取り専用の案内が出る回数は多いが、待てばすぐ解消しているなら、置き場所をクラウドに移すだけで大半が片付きます。似た名前のファイルが並んでいて、反映作業に時間がかかっているなら、問題はロックではなくコピーの増殖にあります。この場合、置き場所を変えるだけでは足りず、1件ずつ独立して触れる形に移す価値が出てきます。
そして、変えたあとに同じ4つをもう一度数えます。数字が動いていなければ、変えた場所が間違っていたということです。エクセルの共有でロックがかかる問題は、機能の設定を1つ直せば消える種類のものではなく、チームの中で情報がどう動いているかを設計し直す話です。設計を変えたら、動いたかどうかを測る。この往復ができるチームは、どの道具を選んでも最後には回るようになります。
Q1. 誰も開いていないはずなのに読み取り専用になります。なぜですか?
開いていることを知らせる一時的な印が、共有フォルダに取り残されている可能性が高いです。強制終了や通信の切断、更新の再起動が編集中に起きると、印だけが消えずに残ります。この状態は待っても解消しないので、共有フォルダを管理している部門に接続状況を確認してもらってください。未保存の作業が失われる可能性があるため、自己判断での強制解除は避けたほうが安全です。
Q2. ロックを回避するために、ファイルを分けるのは有効ですか?
衝突の回数は確実に減ります。ただし全体像を見るのが難しくなり、集計用のブックで参照切れが起きたときの復旧に時間がかかります。とりまとめる人が1人しかいないチームでは、担当者の快適さと引き換えにその1人の負担が増える形になります。人数が少なく、集計が単純な場合に向いた手です。
Q3. クラウドに置いて共同編集にすれば、すべて解決しますか?
同時に開けないという問題は解消します。ただし、1つの大きな表を複数人で書き換える構造は変わりません。同じセルを2人が別々の意図で直したときの調整や、誰が何を変えたのか分かりにくい問題は残ります。移す前に、いま使っている数式やマクロがクラウド上でも動くかを確かめてください。
Q4. エクセルをやめて専用の道具に移すべき境目はどこですか?
そのブックに数式がほとんど入っておらず、状態と期限と担当を人手で書き換えているだけなら、移す価値があります。逆に計算や分析が中心なら、移さないほうが確実です。判断の目安は、同じ日に書き込む人が5人を超えているか、更新が日常的に発生しているか、担当者それぞれに直してほしいかの3点です。