進捗管理表をエクセルで作る|更新が止まる前に手を打つ
エクセルで進捗管理表を作ろうとしている人の多くは、表そのものの作り方で困っているわけではありません。困るのはその後です。作った週はきれいに埋まるのに、翌月には空欄が並び、結局は口頭で聞いて回ることになる。この記事では、実務で使える進捗管理表の作り方を列の決め方から順に示したうえで、更新が止まる前に打てる手当てを整理します。表計算ソフトは進捗管理の道具として十分に強力で、止まる原因は機能不足ではなく入力の手間の側にあります。手間をどこまで削れるか、削りきれない部分はどこかまで書きます。
進捗管理表が表計算ソフトで作られ続ける理由
専用の進行管理ツールが数多く出ているのに、進捗管理表を作ろうとすると表計算ソフトが選ばれ続けています。これは情報を知らないからではなく、はっきりした利点があるからです。
第一に、相手がすでに持っています。社内の別部署に共有するとき、取引先に送るとき、相手の環境に何が入っているかを気にしなくてよいのは実務では大きい。閲覧のためにアカウントを発行してもらう必要も、権限を設計する必要もありません。第二に、列を1つ足す判断をその場でできます。専用ツールは項目を増やすのに設定画面を開き、権限を持つ人を探すことになりますが、表計算ソフトなら右クリックで列を挿入すれば終わります。第三に、集計の自由度が高い。担当者ごとの残件数も、工程ごとの遅れ日数も、数式を1本書けば出ます。第四に、印刷して会議の机に置けます。紙で配る運用が残っている現場では、この一点だけで代替が効きません。
そのうえ、進行のとりまとめを専任にできるチームはまれです。5人から数十人の規模では、誰かが自分の作業を抱えたまま片手間で進捗を集めています。新しい道具を選び、設定し、使い方を全員に伝えるところまでを片手間でやるのは重い。だから手元の表計算ソフトで始まります。この選択は合理的で、後ろめたく思う必要はまったくありません。
段階2「アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状況」、段階3「デジタルツールを利用し、業務フローの見直し、効率化を行っている状況」 出典: chusho.meti.go.jp
中小企業白書がデジタル化の段階を整理した区分では、道具を使い始めた状態と、業務の流れそのものを見直した状態が別の段階として置かれています。進捗管理表で言えば、表を作って共有フォルダに置いた時点は前者、誰がいつ何を入力するかまで決めて回り始めた時点が後者にあたります。多くのチームが詰まるのはこの間です。表はできている。回っていない。この記事が扱うのはその境目です。
ここから作るのは、次の性質を持った進捗管理表です。状態は手打ちではなく選択肢から選ぶ。遅れているかどうかは人ではなく数式が判定する。担当者ごとの残件は自動で出る。列の数は必要最小限に抑える。手で色を塗る操作はゼロにします。
更新が止まるのは、機能不足ではなく入力の摩擦
進捗管理表が使われなくなる原因を「エクセルだから」に置くと、道具を替えても同じことが起きます。実際に起きているのは、入力する人にとっての手間が、報告して得られる利益を上回った状態です。原因はだいたい次の5つに分解できます。
1つ目は列が多すぎることです。作った人は網羅性を高めたくて列を足します。開始予定日、開始実績日、終了予定日、終了実績日、進捗率、備考、リスク、次回アクション、報告日。ところが入力する側から見ると、1件更新するのに埋める枠が9つあります。10件抱えていれば90回の入力です。ここで手が止まります。
2つ目は入力の形式が決まっていないことです。状態の欄に「着手」「開始」「作業中」「進行中」「対応中」が混在します。書く側は迷い、集計する側は数えられません。迷いは1件あたり数秒でも、それが摩擦になります。
3つ目は、入力しても何も返ってこないことです。報告した結果として会議が短くなる、割り込みが減る、判断が早く返ってくる、といった見返りがないと、入力は純粋な持ち出しになります。進捗管理表を運用する側は、集めた情報を必ず何かに使って、使ったことを本人に見えるようにする必要があります。
4つ目はファイルが開けないことです。誰かが編集で開いていると、他の人は読み取り専用でしか開けません。「あとで入れよう」と思った時点で、その更新はほぼ失われます。共同編集ができる環境でも、同じ表を同時に触ると片方の変更が消えることがあり、一度消えた人は二度と入力しなくなります。
5つ目は、表が更新されていないと分かってしまうことです。人は古い表に入力しません。最終更新が2週間前の表を開いた人は、自分だけ律儀に入れる気になりません。放置は放置を呼びます。逆に言えば、常に新しく見える状態を保てば、入力は続きます。
現場でしばしば聞くのは、進捗管理表を作った本人が結局すべて聞いて回って代理入力しているという状態です。これは表の失敗ではなく、設計が入力者ではなく集計者に最適化されている結果です。以降の手順では、集計の都合よりも入力の負担を先に置いて設計します。
列を決める前に、何を判断したいかを決める
進捗管理表を作るとき、いきなり列を並べ始めると必ず多くなります。先に決めるのは列ではなく、この表を見て何を判断するかです。判断が3つなら、列はその3つを出すために必要な分だけで足ります。
進行のとりまとめで実際に必要になる判断は、たいてい次のどれかです。今週中に手を打たないと間に合わない案件はどれか。誰に仕事が寄りすぎているか。止まっている案件は何で止まっているか。予定どおりに終わったものと遅れたものの割合はどうか。取引先や上長に今日の時点で何と報告するか。
この5つのうち、自分のチームで毎週実際に使うものだけを選びます。使わない判断のための列は入れません。たとえば予実の割合を後から振り返る予定がないなら、開始実績日の列は不要です。誰に寄りすぎているかを見ないなら、担当者を1人に固定する運用にして列を消せます。
決め方の順番はこうです。まず判断を書き出す。次にその判断に必要な最小の情報を書き出す。最後にその情報を列にする。逆から作ると、「あると便利そう」な列が全部入ります。
もうひとつ先に決めることがあります。誰がその列を埋めるかです。担当者本人が埋める列と、とりまとめる人が埋める列と、数式が自動で埋める列を分けます。分けたら、担当者本人が埋める列の数を数えてください。3つを超えていたら、更新は続かないと考えたほうが安全です。ここを超える設計を選ぶなら、そのぶん代理入力の手間を自分が引き受ける覚悟が要ります。
粒度も先に決めます。1行を何にするかです。案件単位にすると行数は減りますが、中で何が止まっているかが見えません。工程単位にすると原因は見えますが、行数が数倍になります。目安として、1つの案件が2週間以内に終わるなら案件単位、それより長いなら工程単位に割ります。迷ったら案件単位から始めて、詰まる案件だけ工程に割るのが現実的です。
最小構成の進捗管理表を作る
ここからは実際の手順です。新しいブックを開き、シート名を「進捗」にします。
1枚目は一覧だけにする
1枚目のシートには一覧だけを置きます。集計表もグラフも別シートに分けます。理由は入力する人の視界を狭くするためです。一覧の上に集計表があると、入力しようとするたびに画面を下にスクロールすることになり、この数秒の摩擦が積もります。
1行目は見出し、2行目からデータにします。見出しの上に空行やタイトル行を入れないでください。フィルタと並べ替えとテーブル機能がすべて素直に効くようになります。1行目を選択して表示の固定をかけておくと、下にスクロールしても見出しが残ります。
データ範囲はテーブルに変換します。範囲内のセルを選んで挿入からテーブルを作れば、行を足したときに数式と書式が自動で伸びます。テーブルにしていない表は、月末に行を足した人が数式の入っていない行を作り、そこだけ集計から漏れるという事故を起こします。
列は7つから始める
最小構成として置く列は次の7つです。
| 列 | 内容 | 埋める人 |
|---|---|---|
| 案件 | 何の仕事か。短い名前 | とりまとめ |
| 担当 | 1人だけ書く | とりまとめ |
| 状態 | 未着手/進行中/確認待ち/完了/保留 | 担当者 |
| 期限 | 終わっていてほしい日 | とりまとめ |
| 次の一手 | 次に何が起きれば進むか | 担当者 |
| 更新日 | 最後に触った日 | 自動 |
| 遅れ | 期限までの残り日数 | 自動 |
担当者が埋めるのは状態と次の一手の2つだけです。この2つなら、会議の場で口頭で聞きながら数十秒で埋まります。進捗率の列を入れていないことに気づいたと思いますが、これは意図的です。進捗率は入力者が最も答えにくく、しかも最も当てにならない数字です。「70%」と書かれた案件が翌週も「70%」のままという光景は珍しくありません。率よりも、状態と次の一手のほうが判断に使えます。
担当の列に複数人を書かない理由も同じです。2人書いた瞬間、どちらも自分の担当だと思わなくなります。作業を分担するなら行を分けます。
状態は入力させず、選ばせる
状態の列は入力規則で選択肢に固定します。列を選び、データの入力規則からリストを選び、元の値に「未着手,進行中,確認待ち,完了,保留」と入れます。これで表記の揺れが消え、集計が数えられるようになります。
選択肢は5つまでに抑えてください。増やすほど選ぶ時間が延び、しかも境目が曖昧になります。「確認待ち」を1つ置いておくのが実務では効きます。自分は手を離れているが、相手からの返事で止まっている案件がここに集まるからです。とりまとめる人が最初に見るべきなのはこの列です。
選択肢に色を付けるなら条件付き書式を使います。範囲を選び、条件付き書式の新しいルールから、指定の値を含むセルを書式設定を選び、状態ごとに背景色を割り当てます。ここで手作業でセルを塗らないことが重要です。手で塗った色は、状態が変わったときに一緒に変わりません。色と実態がずれた表は、見た人の信頼を一度で失います。
遅れは人ではなく数式に判定させる
遅れの列は数式で出します。期限の列がD列、状態の列がC列だとすると、次のような式になります。
=IF(C2="完了","", D2-TODAY())
完了したものは空欄、それ以外は期限までの残り日数が出ます。負の数になっていれば期限を過ぎています。稼働日で数えたい場合は =NETWORKDAYS(TODAY(), D2) を使い、祝日の一覧を別シートに持たせて第3引数に渡します。
この列に条件付き書式をかけます。値が0未満なら赤、0以上2以下なら黄色。これで、今週中に手を打たないと間に合わない案件が、開いた瞬間に目に入ります。とりまとめる人が毎朝見るのはこの色だけで足ります。
TODAY 関数を使っているので、ファイルを開くたびに再計算されます。昨日まで黄色だった行が今日は赤になっている、という変化が自動で起きるのが利点です。手で更新する列を1つ減らせます。
更新日は入力させない
更新日を担当者に入力させると、その1列のために入力が止まります。代わりに、状態の列が変わったときに自動で日付が入るようにします。ブックをマクロ有効形式で保存できる環境なら、シートの変更イベントで対象列の変更を拾い、同じ行の更新日に日付を書き込む短い処理を置きます。マクロを使えない環境なら、更新日の列は諦めて、ファイル自体の最終更新日時で代用します。
無理にマクロを入れる必要はありません。更新日が分からないことよりも、更新そのものが止まることのほうが痛手です。列を1つ諦める判断は、この表の設計では正解になりやすいほうです。
集計は別シートに数式1本で出す
集計シートには、担当者ごとの残件数と、状態ごとの件数と、期限を過ぎている件数を置きます。
担当者ごとの残件数は =COUNTIFS(進捗!B:B, A2, 進捗!C:C, "<>完了") です。状態ごとの件数は =COUNTIF(進捗!C:C, A2) で出ます。期限を過ぎている件数は =COUNTIFS(進捗!C:C,"<>完了", 進捗!D:D, "<"&TODAY()) です。
この3つが出れば、週次の打ち合わせで話すべきことはほぼ揃います。グラフは要りません。数字が3つ並んでいれば、その場で読み上げられます。グラフを作ると見栄えは良くなりますが、作り直す手間が増えて更新が止まる側に効きます。
進捗率の推移や工程別の内訳をどうしても見たいときは、ピボットテーブルを1つ置きます。テーブルに変換してあれば、行を足してもピボットの範囲は自動で伸び、更新ボタンを押すだけで反映されます。
印刷とフィルタを先に整える
印刷して配る運用があるなら、この時点でページ設定を済ませておきます。印刷の向きを横、拡大縮小を横1ページに収める、1行目を印刷タイトルとして各ページに繰り返す。この3つを設定しておけば、あとは印刷ボタンだけで済みます。会議のたびに体裁を整え直す時間が消えます。
フィルタも先に使い方を決めます。担当者で絞る、状態が完了以外で絞る、遅れが赤の行だけで絞る。この3つを使う想定なら、それぞれの手順を表の外の欄に1行ずつ書いておきます。とりまとめる人以外がフィルタをかけたまま保存して、次の人が「行が消えた」と慌てる事故も減ります。
続けられる形にするための三つの手当て
ここまでで表はできました。ここからが本題です。更新が止まる前に打つ手を3つの順で見ます。優先順位もこの順です。
列を減らす
最初にやるのは足すことではなく減らすことです。運用を1か月続けたら、列ごとに埋まっている割合を数えてください。埋まっていない列は、必要とされていない列です。消します。
消すのをためらう理由はたいてい「いつか使うかもしれない」です。しかし埋まらない列は、入力する人にとっては毎回スキップする判断を強いる存在で、表全体の心理的な重さを増やしています。使わない列は消して、必要になったときに足し直すほうが安く済みます。
備考の列は特に検討の価値があります。備考は書く側にとって何を書けばよいか分からない欄で、たいてい空欄になるか、他の列に書くべきことが流れ込んで検索できなくなるかのどちらかです。「次の一手」のように問いの形にした列名にすると、書く内容が決まって埋まりやすくなります。列名を問いに変えるだけで入力率が変わることは、よく聞く話です。
減らした結果として集計が粗くなるのは受け入れます。細かい集計ができる空欄だらけの表よりも、粗くても埋まっている表のほうが判断に使えます。
選ぶだけにする
次にやるのは、残った列を可能な限り選択式にすることです。自由入力は、書く手間と表記の揺れの両方を生みます。
状態はすでに入力規則で選択式にしました。同じことを担当と工程にも適用します。担当は名簿シートを作って入力規則の元の値に範囲を指定すれば、名簿を更新するだけで選択肢が増えます。氏名を手打ちさせると、姓だけの人とフルネームの人が混在して集計できなくなります。
日付も入力の形を決めます。期限の列には日付の入力規則をかけ、範囲外や文字列を弾きます。「今週中」「月末」といった文字列が1件でも混ざると、遅れの数式が全部エラーになります。
次の一手のような自由入力が残る列は、書き出しの型を示します。列の見出しの下ではなく、表の外に例を3つ書いておきます。「先方の返答待ち」「素材の受領待ち」「レビュー依頼済み」のような短い形が並んでいれば、書く側は真似します。書き方を揃えると、あとから「待ち」で検索するだけで止まっている案件が抜き出せます。
さらに踏み込むなら、更新の操作そのものを選ぶだけにします。会議の場で画面を映し、とりまとめる人が状態のセルを開いて選択肢を出し、担当者は口頭で答えるだけ。入力の手を担当者から外し、判断だけを求める形です。人数が10人程度までなら、この方法が最も確実に更新が続きます。
更新の場を1つにする
3つ目が最も効きます。進捗の情報が入る場所を1つに絞ります。
止まる表の裏側では、たいてい情報が分散しています。チャットで「終わりました」と報告があり、メールで「来週にずれます」と連絡があり、会議で口頭の共有があり、そのどれもが表には反映されていない。とりまとめる人は3か所を見て回って表に転記することになり、その転記が追いつかなくなった時点で表が死にます。
決めるのは次の2つです。進捗はここに書く、と場所を1つ決めること。そして、そこに書かれていないことは進捗として扱わない、と宣言すること。後者を言い切るのは勇気が要りますが、これを言わないと分散は止まりません。チャットで報告した人は、それで報告が完了したと思っています。
場を1つにする方法はいくつかあります。表を共同編集できる場所に置いて、チャットには表へのリンクだけを流す。会議の冒頭10分を更新の時間にして、その場で全員が自分の行を触る。あるいは、チャットのチャンネルを表の話専用にして、更新したら短く一言流す運用にする。どれでも構いませんが、複数を並行させないことが条件です。
もうひとつ、更新の頻度を決めます。毎日は続きません。週1回、曜日と時刻まで決めます。「金曜の夕方までに状態を更新する」のように具体的にしておくと、忘れた人に声をかけるタイミングも決まります。頻度を決めないと、更新は「気づいた人がやる」になり、誰もやらなくなります。
ファイルの置き方と、同時編集で詰まるところ
表の設計と同じくらい、置き場所が更新率を左右します。
社内のファイルサーバーに置いた場合、誰かが編集で開いている間、他の人は読み取り専用でしか開けません。とりまとめる人が表を整えている最中は、担当者が入力できない状態になります。夕方に全員が更新しようとする運用だと、この衝突が毎週起きます。開いたまま席を外す人が1人いるだけで、その日の更新は集まりません。
クラウドの保存領域に置いて共同編集にすると、同時に開けるようになります。ただし別の注意点が出ます。条件付き書式のルールが多い表は動作が重くなります。ルールは列単位でまとめ、行ごとに個別のルールを作らないようにしてください。数式で A:A のように列全体を参照している箇所も、テーブルの範囲参照に置き換えたほうが軽くなります。
もう1つ、共同編集では「誰がどこを変えたか」が分かりにくくなります。変更履歴を確認できる環境ならそれを使い、使えないなら週次でファイルをコピーして日付入りの名前で残します。表の数字を巡って認識が食い違ったとき、遡れる材料があるかどうかで話の長さが変わります。
ファイル名にも決まりを作ります。「進捗管理表_最新.xlsx」のような名前は、必ず「進捗管理表_最新_修正版.xlsx」を生みます。日付を入れる形にして、原本は1つだけと決めます。共有フォルダに似た名前のファイルが3つ並んだ時点で、どれが本物か分からなくなり、入力する人はそこで手を止めます。
外部の協力者や取引先に共有する場合は、共有の範囲を毎回確認します。リンクを知っている全員が編集できる設定のまま社外に渡ると、意図しない範囲まで見えます。担当者名や単価の列を含む表なら特に注意が要ります。
更新が止まる前兆と、そのときに打つ手
止まってから立て直すのは、新しく作るより難しくなります。前兆の段階で手を打ちます。見るべき兆候は4つです。
1つ目は、特定の列だけ空欄が増えることです。全体は埋まっているのに備考だけが空、という状態は、その列が不要だという合図です。列を消します。消すと、その行を触ること自体の心理的な負担が下がります。
2つ目は、同じ状態のまま2週間以上動かない行が増えることです。これは表の問題ではなく、その案件が実際に止まっています。状態を「保留」に移すか、次の一手の欄を埋めて誰が動くかを決めるかのどちらかをします。動かない行を「進行中」のまま置いておくと、表全体が信用されなくなります。
3つ目は、とりまとめる人の代理入力が増えることです。自分が聞いて回って入れている割合が半分を超えたら、設計が入力者に合っていません。列を減らすか、会議の場で一緒に埋める形に切り替えます。
4つ目は、表とは別の場所で進捗の会話が始まることです。チャットで「あの件どうなってます」と聞かれるようになったら、表が参照されていない証拠です。聞かれたときに口頭で答えず、表のリンクを返す運用に切り替えると、参照される場所が戻ってきます。
打つ手の順番も決めておきます。まず列を減らす。それでも止まるなら選択式にする。それでも止まるなら更新の場と頻度を決め直す。ここまでやっても止まるなら、表計算ソフトの外に原因があります。人数が増えすぎているか、案件の粒度が合っていないか、そもそも進捗を集める必要がない業務かのどれかです。
エクセルのままでいい場合
道具を替える話に進む前に、替えなくてよい場合を先に置きます。次のどれかに当てはまるなら、表計算ソフトを使い続けるのが合理的です。
とりまとめる人が1人で、その人がほぼ全部の入力をしているなら、替える理由は薄くなります。同時編集の衝突が起きず、表記の揺れも起きないからです。この場合の主な負担は情報を集めることであって、道具ではありません。
数字の集計や分析が主目的なら、表計算ソフトのほうが強い場面が多くあります。工数の集計、原価の按分、予実の差異分析といった処理は、関数とピボットで柔軟に組めます。専用ツールの集計機能は決められた形の集計は速い一方、自由な切り口には向かないことがあります。
印刷して配る運用が残っているなら、そのままがよい選択です。専用ツールの画面を紙に落とすと、たいてい体裁が崩れます。
案件の数が少ない場合も同じです。同時に走っているのが20件以下で、担当者が数人なら、表1枚で十分に見渡せます。道具を替えると、覚え直す手間のほうが大きくなります。
社外の協力者に見せるだけで、書き込んでもらう必要がない場合も、ファイルを送るほうが速い。アカウントを作ってもらう手間がないことは、そのまま相手への配慮になります。
板に移すことを考え始める境目
一方で、次の症状が同時に出ているなら、進捗の置き場所そのものを見直す価値があります。
同時に触る人が5人を超えていて、しかも全員が自分の行を自分で更新する運用にしたい場合。表計算ソフトでもできますが、衝突の管理に手間がかかります。
案件ごとに、やり取りの履歴や添付ファイルが増えていく場合。表のセルに経緯を書き足していくと、行の高さが伸びて一覧性が失われます。会話とファイルが案件に紐づく形のほうが向きます。
状態の変化を追いたい場合。いつ「進行中」になって、いつ「確認待ち」に移ったかを後から見たいなら、表計算ソフトでは履歴を別に持つ工夫が要ります。
そして、更新が続かない原因が入力の手間そのものにある場合。列を減らし、選択式にし、場を1つにしてもなお止まるなら、入力の操作を変えるしかありません。カードを右に動かすだけで状態が変わる形は、セルを選んで選択肢を開く操作より手数が少なくなります。
移すかどうかを決める前に、いまの表で何が起きているかを言葉にしておいてください。「更新されない」では判断できません。「担当者6人のうち入力しているのは2人」「状態の列は埋まるが次の一手は空」のように具体化すると、道具を替えて解決する話なのか、運用を決め直す話なのかが分かれます。
道具を見比べるときに実際に効く軸
進捗を板の形で管理する道具に移す場合、比較の軸は機能の数ではありません。入力する人が続けられるかどうかに直結する要素は、実務では次の4つに絞られます。
1つ目は、人数が増えたときに何が起きるかです。多くのサービスは人数に応じた課金で、しかも機能ごとにプランが分かれています。使いたい機能が上位プランにあると、人数が増える前に費用が跳ねます。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという料金の形なら、使える範囲を先に読みやすくなります。料金の考え方は料金のページで確認できます。プランは変わるものなので、比較するときは必ず各社の公式ページで現時点の条件を確認してください。
2つ目は、日本語で使えるかどうかです。海外製のサービスは日本語表示に対応していても、細かい設定画面や通知文が英語のまま残ることがあります。とりまとめる人は読めても、たまにしか触らない担当者にとっては、それだけで開かない理由になります。逆に、日本語だけで作られているサービスは海外の協力者と組むときに壁になります。どちらの制約を受け入れるかを先に決めてください。
3つ目は、いまの表からどう移すかです。進捗管理表の中身を手で打ち直す前提だと、移行そのものが立ち消えになります。表計算ソフトからの取り込みに対応しているか、対応していないなら何なら取り込めるかを先に確かめます。他のツールからの取り込みについてはTrelloからの移行のページに手順がまとまっています。自動で取り込めるのはTrelloからで、他のサービスからは書き出したファイルを整えて移す形になります。
4つ目は、預けるデータの扱いです。案件名や取引先名が入る以上、どこに保存されて誰が見られるかは確認しておく必要があります。安全性の考え方のページに、データの扱い方の考え方が書かれています。社内の情報管理の規程がある場合は、契約前に確認を通しておくと後戻りが減ります。
機能の一覧そのものはできることのページにまとまっています。板にカードを並べて動かす形、担当者と期限を持たせる形など、進捗管理表の列に相当するものが画面の中でどう表現されるかを見ておくと、移したあとの姿を想像しやすくなります。運用上の細かい疑問はよくある質問にまとまっているので、決める前に一通り目を通しておくと確認の往復が減ります。
いま使っている道具との比べ方
すでに何かを使っていて、それでも進捗管理表が表計算ソフトに戻ってきている場合は、戻ってきた理由を先に特定します。理由によって、次に見るべきものが変わります。
カードを並べて動かす形自体は合っているが、無料の範囲や画面の言語で詰まっているなら、同じ形の他の選択肢を見ることになります。Trelloとの比較では、板とカードという同じ考え方を持つ道具どうしで、どこが違うかが整理されています。
工程が多くて依存関係を管理したくなっている場合は、Asanaとの比較が参考になります。作業の親子関係や複数の見え方を持つ道具と、板1枚に集約する道具の設計思想の違いが分かります。
自由に組める代わりに設計に時間がかかっている場合は、Notionとの比較を見てください。何でも作れることの利点と、作り込みの手間が誰にかかるかという論点が整理されています。表計算ソフトの自由度に慣れた人が移りやすい反面、設計を任される人の負担は表計算ソフトのときと変わらないという指摘は、この記事の主題と重なります。
進行の可視化や自動化を重く求めているなら、monday.comとの比較が該当します。自動化と外部サービスとの連携を軸に選ぶ場合、そこを主戦場にしている道具のほうが合います。板1枚に集約する道具は、そこでは勝負していません。
開発の案件を扱っていて、課題管理とソースコードの管理を近づけたいなら、Backlogとの比較を見てください。リポジトリの機能を含む道具と、含まない道具では前提が違います。コードの管理まで1か所にしたいなら、含む側を選ぶのが素直です。
日本語で作られた板の道具どうしを見比べたいなら、Jootoとの比較があります。似た方向の道具どうしの違いは、機能表よりも実際の画面と料金の区切り方に出ます。
どこから見ればよいか決めきれない場合は、比較の一覧から入ると、各サービスとの違いがまとめて並んでいます。
比べる前に、表で試せることを試しておく
最後に順番の話をします。道具を替える検討に入る前に、この記事の前半で挙げた3つの手当てを試してください。列を減らす、選ぶだけにする、更新の場を1つにする。この3つは今日から表計算ソフトの上で試せて、費用もかかりません。
そのうえで、それでも更新が止まるなら、原因は入力の操作そのものにあります。そのときは道具を替える判断に十分な根拠があります。逆に、この3つを試さずに道具だけ替えると、新しい道具の上で同じことが起きます。列が多く、自由入力が多く、更新の場が分散した板は、表計算ソフトの表と同じ速さで止まります。
進捗管理表がうまく回っているチームの表を見ると、たいてい素っ気ないほど列が少なく、状態の選択肢も数個しかありません。作り込まれた表ほど早く死ぬというのは、進行管理では繰り返し観察されることです。凝った表を作れることと、更新が続く表を作れることは別の技能です。後者を選んでください。
Q1. エクセルの進捗管理表に最低限必要な列は何ですか?
案件名、担当、状態、期限、次の一手の5つで足ります。ここに更新日と遅れ日数を数式で自動計算する列を加えた7列が最小構成です。進捗率の列は入力者が答えにくく実態とずれやすいので、状態の選択肢で代替するほうが更新は続きます。担当者本人に入力させる列は3つ以内に抑えてください。
Q2. 進捗管理表の更新が止まってしまったとき、まず何をすればよいですか?
列を減らすことから始めてください。1か月運用して埋まっていない列は不要な列です。次に残った列を入力規則で選択式にして、書く手間と表記の揺れを消します。最後に進捗を書く場所を1つに決め、更新の曜日と時刻まで決めます。この順番で効きます。
Q3. 進捗管理表を複数人で同時に更新するにはどうすればよいですか?
社内のファイルサーバーに置くと、誰かが編集で開いている間は他の人が読み取り専用になります。クラウドの保存領域に置いて共同編集にすると同時に開けますが、条件付き書式のルールが多い表は重くなるため、ルールは列単位でまとめてください。原本は1つと決め、ファイル名に日付を入れます。
Q4. エクセルからタスク管理ツールに移すべき境目はどこですか?
同時に更新する人が5人を超えていて、案件ごとにやり取りや添付が増え、状態の変化を後から追いたい場合が目安です。ただし移す前に、列を減らす、選択式にする、更新の場を1つにするという3つを表計算ソフトの上で試してください。これを試さずに道具だけ替えると、新しい道具でも同じ理由で止まります。