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クリティカルパスの求め方を調べる人がつまずくのは、計算そのものではありません。前進計算と後退計算という言葉の意味が分かっても、目の前の案件のどこから手を付ければよいかが分からないところです。この記事では、求める前にそろえる材料、前進計算と後退計算の手順、余裕日数の出し方、8つの作業を使った計算例、求めたあとに何に使うのかまでを順に示します。求めたのに現場で当たらなくなる原因も後半に書きます。
クリティカルパスは、作業をつないだいくつもの道のうち、いちばん長い道を指します。いちばん長い道の合計時間が、そのまま全体の所要期間になります。並行して進む道がいくつあっても、最も時間のかかる道が終わらないかぎり案件は終わりません。
この定義から、性質が2つ出てきます。1つめは、クリティカルパス上の作業が1日遅れると、全体が1日遅れること。 途中で吸収する余裕がないので、そのまま最後まで響きます。2つめは、クリティカルパス上にない作業は、ある程度遅れても全体に影響しないこと。 この2つが分かるだけで、どの作業を毎日見に行き、どの作業は週1回の確認で足りるかが分かれます。
現場でよく起きるのは、声の大きい担当者の作業や、いま手が止まっている作業を優先してしまうことです。手が止まっていても余裕が5日あるなら、3日後に動き出しても間に合います。逆に、順調に見えていてもクリティカルパス上の作業なら、半日の遅れがそのまま引き渡し日に効きます。優先順位を勘で決めている状態から抜け出すための道具が、この計算です。
本記事では、クリティカルパスが工程管理で重要とされる理由や、実際の求め方・書き方を具体的に解説します。さらに、後半ではクリティカルパスの管理に役立つプロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。 出典: backlog.com
似た言葉としてクリティカルチェーンがあります。こちらは人や設備の取り合いまで含めて考える方法で、作業の前後関係だけを見るクリティカルパスとは前提が違います。まずは前後関係だけで求めてから、人の取り合いを後で当てるほうが、計算が追えます。
計算を始める前に、材料が3つそろっている必要があります。どれか1つが欠けていると、出てきた答えは当たりません。
材料1。作業の洗い出し。 案件を終わらせるために必要な作業を、抜けなく並べます。粒度は、1つの作業が2日から2週間で終わる大きさにそろえてください。半日の作業まで並べると数が膨らんで計算が追えなくなり、1か月の作業を1つにまとめると前後関係が見えなくなります。抜けやすいのは、承認を待つ時間、材料や部品が届くまでの時間、検査や検収の時間です。この3つは誰かが手を動かしていないため作業として認識されにくく、そのくせ日数を食います。
材料2。それぞれの所要時間。 経験ではなく、過去の似た案件の実績から出します。実績が無いときは、担当する人に「最短で何日、ふつうで何日、最悪で何日」を聞いて、ふつうの値を使ってください。ここで注意すべきなのは、担当者に日数を聞くと保険を含んだ数字が返ってくることです。全員が保険を持つと、合計の期間が実態より長くなります。
続いて、各タスクの完了に要する時間を算出します。たとえば、「土地の測量・地盤調査:5日」「基礎工事:25日」「内装工事:30日」といったように現実的な数値を設定しましょう。
クリティカルパスの信頼性を高めるためにも、過去の類似プロジェクトのデータや担当者の経験に基づいて現実的な工数を設定することが重要です。 出典: freee.co.jp
材料3。前後関係。 どの作業が終わらないと、どの作業を始められないかを1つずつ書きます。やり方は、作業の一覧の右に「先行作業」の列を作り、作業の番号を書き込むだけです。図を描く前にこの列を埋めてください。図から始めると、線を引きながら関係を考えることになり、抜けが出ます。
前後関係を書くときに混ざりやすいのが、「本当は同時にできるが、人が1人しかいないから順番にやる」という制約です。これは前後関係ではなく人の取り合いです。いったん分けて、前後関係の列には「終わらないと物理的に始められない」ものだけを書いてください。人の取り合いは後から当てます。混ぜて書くと、人を1人増やせば短くなる道と、どうやっても短くならない道の区別が付きません。
材料がそろったら、先頭から順に計算します。この向きの計算を前進計算と呼び、それぞれの作業がいちばん早く始められる日と、いちばん早く終わる日を出します。
使う式は2つだけです。
最早終了 = 最早開始 + 所要日数
最早開始 = 先行作業の最早終了のうち、最も遅いもの
先頭の作業の最早開始は0日目とします。日付ではなく0から数える形にすると、休日の扱いで迷わなくなります。実際の日付は最後に当てはめれば足ります。
2つめの式が要点です。先行作業が2つ以上あるときは、そのうちいちばん遅く終わるものを待つことになります。ここで平均や最短を取ると、計算全体が狂います。合流する箇所で必ず「いちばん遅いもの」を選んでください。
最後の作業まで計算すると、最後の作業の最早終了が案件全体の最短期間になります。この数字が、いま持っている材料から出る答えです。ここで出た期間が希望より長い場合、希望のほうを疑うか、材料のどこかを変えるしかありません。計算の結果が気に入らないからといって、途中の日数を削って合わせるのは、計算をしない状態に戻ることと同じです。
前進計算で間違えやすいのは、作業の抜けです。計算の結果が思ったより短く出たときは、承認や検査の待ち時間を入れ忘れている可能性が高いので、材料に戻って確かめてください。
次に、最後から逆向きに計算します。それぞれの作業が、全体を遅らせずに済む範囲でいちばん遅く始められる日と、いちばん遅く終えられる日を出します。
使う式は、前進計算を裏返した2つです。
最遅開始 = 最遅終了 - 所要日数
最遅終了 = 後続作業の最遅開始のうち、最も早いもの
最後の作業の最遅終了には、前進計算で出た全体の期間をそのまま置きます。ここに希望の納期を置いてしまうと、余裕日数が実態とずれます。納期に間に合わせたいかどうかの判断は、余裕日数を出したあとに行ってください。
2つめの式では、後続作業が2つ以上あるときに「いちばん早いもの」を選びます。前進計算では最も遅いものを、後退計算では最も早いものを選ぶ。この向きの違いが、最初につまずく箇所です。理由は単純で、前進は「全員がそろうのを待つ」、後退は「いちばん早く始まる相手に間に合わせる」という話だからです。
後退計算を飛ばして、前進計算だけでクリティカルパスを見つけようとする人もいます。作業の数が10本程度までなら、いちばん長い道を目で拾えるので通用します。作業が20本を超え、道が何本も分岐して合流する形になると、目では追えません。後退計算をして余裕日数を出すのが、結局いちばん速い道になります。
前進計算と後退計算の両方が終わったら、差を取ります。この差が余裕日数です。
余裕日数 = 最遅開始 - 最早開始
最遅終了から最早終了を引いても同じ値になります。どちらで計算しても構いません。
余裕日数がゼロの作業がクリティカルパス上の作業です。先頭から最後まで、余裕日数ゼロの作業をつないだ道がクリティカルパスになります。余裕日数が3日ある作業は、3日以内の遅れなら全体に響きません。4日遅れると、その時点でクリティカルパスが別の道に移ります。
余裕日数には2種類あることを押さえておくと、現場での使い方が変わります。1つは全体の期間を動かさない範囲の余裕で、これがいま計算した値です。もう1つは、後続の作業の最早開始を動かさない範囲の余裕で、こちらのほうが小さい値になります。後続に迷惑をかけたくない場面では小さいほうを見ます。全体の納期だけを守りたい場面では大きいほうで足ります。
余裕日数を担当者に伝えるときは、数字をそのまま渡さないほうがうまくいきます。 「3日の余裕がある」と伝えると、3日は使ってよいものとして扱われ、結果として余裕が消えます。伝えるなら「この作業は遅れても全体に響かないので、先にあちらを片付けてほしい」という形で、行動の指示にして渡してください。
計算の流れを、具体的な数字で追います。作業はAからHの8つ、所要日数と先行作業は次の通りとします。
| 作業 | 所要日数 | 先行作業 | 最早開始 | 最早終了 | 最遅開始 | 最遅終了 | 余裕 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A 要件の確定 | 5 | なし | 0 | 5 | 0 | 5 | 0 |
| B 設計 | 8 | A | 5 | 13 | 5 | 13 | 0 |
| C 素材の手配 | 4 | A | 5 | 9 | 9 | 13 | 4 |
| D 製作 | 12 | B, C | 13 | 25 | 13 | 25 | 0 |
| E 説明資料の用意 | 3 | B | 13 | 16 | 22 | 25 | 9 |
| F 検査 | 4 | D | 25 | 29 | 25 | 29 | 0 |
| G 手直し | 3 | F | 29 | 32 | 29 | 32 | 0 |
| H 引き渡し | 1 | G, E | 32 | 33 | 32 | 33 | 0 |
前進計算では、Dの最早開始を決めるときにBとCの最早終了を比べ、遅いほうの13を取ります。Hも同じで、Gの32とEの16を比べて32を取ります。全体の期間は33日です。
後退計算では、Hの最遅終了に33を置き、逆向きに引いていきます。Bの最遅終了を決めるときは、後続のDとEの最遅開始を比べ、早いほうの13を取ります。ここで遅いほうの22を取ると、Bに9日の余裕があるという誤った答えになります。
余裕がゼロなのはA、B、D、F、G、Hです。つないだ道がクリティカルパスで、日数は5+8+12+4+3+1で33日になります。全体の期間と一致していることを必ず確かめてください。一致しないときは、どこかの計算を間違えています。
CとEには余裕があります。Cは4日、Eは9日です。素材の手配が3日遅れても引き渡し日は動きませんが、5日遅れると動きます。この差が、毎日確認する作業と週1回で足りる作業の線引きになります。
計算して終わりにすると、表を1枚作っただけになります。求めた結果が効くのは次の3つの場面です。
場面1。期間を短くしたいとき。 全体を短くしたいなら、クリティカルパス上の作業だけを短くします。余裕のある作業に人を足しても、全体は1日も短くなりません。上の例でCに人を足しても33日は変わらず、Dに人を足せば短くなる可能性があります。短縮の手は3つで、人を増やす、作業を分けて並行させる、前の作業の完了を待たずに一部を始める、のどれかです。どれも追加の費用か手戻りの危険を伴うので、クリティカルパス上に絞って検討する価値があります。
場面2。人を配るとき。 人が足りないときに誰をどこに置くかは、余裕日数で決められます。余裕ゼロの作業に経験のある人を置き、余裕の大きい作業に不慣れな人を置く形です。逆の配置をすると、不慣れな人の遅れがそのまま引き渡し日に効きます。
場面3。遅れの報告を受けたとき。 「3日遅れます」という報告が来たときに、余裕日数の表があれば即座に判断できます。余裕が5日なら、予定を組み替えずに受け入れます。余裕ゼロなら、その場で短縮の手を打つか、後続の予定を動かすかを決めます。この判断を表なしで行うと、全部の遅れを同じ重さで扱うことになり、対応が間に合いません。
計算を週1回やり直す運用にすると、遅れの影響を毎週見直せます。作業が20本程度なら、表を更新して再計算するのに30分もかかりません。
計算は正しいのに現場と合わなくなるときは、次の4つのどれかが起きています。
原因1。1本だと思い込んでいる。 同じ長さの道が2本あることは珍しくありません。上の例でEの所要日数が12日なら、Eを通る道も33日になり、クリティカルパスが2本になります。2本あるときは両方を見なければなりません。片方だけを見て手を打つと、もう片方が全体を遅らせます。
原因2。途中で移る。 余裕のある作業が余裕を使い切ると、その道が新しいクリティカルパスになります。最初に求めた道をずっと見続けていると、いつのまにか別の道が全体を決めている状態になります。余裕が残り1日を切った作業が出たら、その時点で再計算してください。
原因3。人の取り合いを入れていない。 前後関係だけで計算した道は、人が無限にいる前提の答えです。実際には1人が2つの作業を担当していて、並行できないことがあります。この制約を入れると、計算上の道より実際の期間が長くなります。計算のあとに担当者の列を見て、同じ人が同じ期間に2つ以上の作業を持っていないかを確かめてください。
原因4。余裕を全部使い切る前提で動く。 余裕日数は保険です。全部の作業が余裕を使い切ると、案件全体の保険がゼロになります。余裕を「使ってよい時間」として配ると、この状態に必ず到達します。余裕は担当者に配らず、取りまとめる側が持っておく考え方のほうが、最後まで保険が残ります。
工期の設定そのものについては、所管の官庁が示している考え方があります。無理な短縮を前提に計算を合わせることのないよう、国土交通省の公表資料も確かめてください。働く時間の扱いについては厚生労働省の資料が出発点になります。判断が分かれる箇所は、社内の解釈で決めずに所管の窓口へ確認してください。
計算の方法が分かったら、どこで計算するかを決めます。選択肢は3つです。
紙とペン。 作業が15本までなら、これがいちばん速い方法です。表を書いて、前進、後退、差を取るだけです。1回で終わる案件なら、道具を用意する時間のほうが長くかかります。
エクセル。 作業の一覧を表にして、最早開始を MAX で、最遅終了を MIN で組みます。先行作業が複数ある行の参照を手で書くことになるので、作業が増えるほど式が入り組みます。20本を超えたあたりから、式の間違いを見つけるほうに時間がかかり始めます。毎月計算し直す案件なら、最初に作る手間を払う価値があります。作業を並べて期間を棒で見せる作り方そのものは、エクセルで工程表を組む手順と同じです。
専用の道具。 作業の前後関係を登録すると、余裕日数とクリティカルパスを自動で出す道具があります。作業が50本を超える案件や、前後関係が入り組む案件では、これが現実的な選択になります。ただし道具を選ぶ前に確かめてほしいことがあります。自動計算がある道具は、前後関係を1本ずつ登録する前提で作られています。登録しないかぎり計算は始まらないので、登録し続けられるかどうかが実際の分かれ目になります。
登録が続かない現場は珍しくありません。その場合は、計算は月1回まとめて紙で行い、日々の進み具合はカードを動かして見る形に分けたほうが回ります。日々の進み具合を追う道具を選ぶときは、ボードの種類とカードに載せられるものを先に見てください。できることには、カンバンやガントや予定表を同じカードの仕組みのまま切り替える形が並んでいます。
表だけで計算できますが、道の分岐と合流が多い案件では図に描いたほうが間違いに気づけます。丸と矢印で作業のつながりを描いた図をアロー・ダイアグラムと呼びます。描くときの決まりが3つあります。
決まり1。矢印が作業、丸が節目。 矢印の上に作業名を書き、下に所要日数を書きます。丸は作業の区切りで、そこに集まる矢印が全部終わってから、そこから出る矢印が始まります。この向きを逆に覚えると、図を読むたびに迷います。丸の中には番号を振り、左から右へ番号が大きくなるように並べてください。番号が前後すると、計算の途中でどちらを先に見るべきかが分からなくなります。
決まり2。同じ丸から同じ丸へ、矢印を2本引かない。 2つの作業が同じ節目から始まり同じ節目で終わる場合、矢印が並んでどちらの日数を使うのか分からなくなります。この場合は節目を1つ足して、片方を点線の矢印でつなぎます。点線の矢印は所要日数ゼロの作業で、ダミー作業と呼ばれます。実際の仕事は無く、順番の関係だけを表すための線です。ダミー作業を使わずに無理に1本にまとめると、前後関係が崩れます。
決まり3。始まりと終わりは1つずつ。 始まりの丸が2つある図は、どちらから計算を始めればよいか決まりません。前提として先に終わっている作業があるなら、それも矢印として描いてください。終わりの丸が2つあるときも同じで、最後の引き渡しを1つの丸にまとめます。
図を描く手間は、作業が20本を超えると急に増えます。描くこと自体が目的ではないので、表で計算が追えているなら図は省いて構いません。図が効くのは、前後関係を打ち合わせの場で確かめたいときです。表を見ながら「この作業はあの作業の後ですね」と確認する作業は退屈ですが、図を1枚出せば全員がその場で指を差せます。
計算の前に必要な作業の洗い出しは、いきなり前後関係から始めないでください。順番を間違えると抜けが出ます。
先に、成果物を分解します。 案件の最後に何を渡すのかを書き、それを構成する部品に分け、部品をさらに分けます。分け方の基準は「これ以上分けても担当者が変わらない」ところまでです。この分解をWBSと呼びます。成果物から分解すると、作業の抜けが出にくくなります。作業から並べ始めると、思い出した順に並ぶため、誰も担当していない作業が最後まで見つかりません。
次に、分解した末端に所要日数と担当者を当てます。 ここで担当者が決まらない末端が出てきたら、それは作業の抜けではなく、体制の抜けです。日数を当てる前に担当を決めてください。担当が決まらないまま日数を入れると、その作業は必ず遅れます。
最後に、前後関係を当てます。 末端の作業を全部並べたうえで、先行作業の列を埋めます。この順番で進めると、前後関係を考えている途中で作業を思い出して追加する手戻りが減ります。
分解の深さで迷ったときは、末端の数が30本から60本に収まるあたりを目指してください。これより少ないと1本の作業が大きすぎて遅れが見えず、これより多いと毎週の更新が終わりません。案件の規模によって適切な深さは変わるので、最初から正解を狙わず、1週間運用してから粒度を調整するほうが早く落ち着きます。
分解した一覧は、計算のためだけに使うものではありません。日々の進み具合を追う板にそのまま並べれば、作業の一覧と進捗が1か所に集まります。前後関係の計算は月に1回、日々の動きは板で、という分担にすると、どちらも続きます。
クリティカルパスが分かると、短縮の検討先が絞れます。手は3つしかなく、どれにも代償があります。代償を先に知っておくと、打ち合わせで話が早く終わります。
手1。人を増やす。 クリティカルパス上の作業に人を足します。代償は費用と、立ち上がりの時間です。人を2倍にしても日数が半分になる作業は限られています。作業を分担できる形でないかぎり、増えた人の説明と調整に時間を取られ、かえって遅くなることもあります。設計や仕様の確定のような、1人の頭の中で決めることが多い作業は、人を足しても短くなりません。人を足して効くのは、製作や検査のように同じ作業を並行して進められるものです。
手2。作業を分けて並行させる。 1つの作業を前半と後半に割り、後半を別の担当者に渡します。代償は、割った箇所での引き継ぎです。引き継ぎの説明に半日かかるなら、短縮できる日数からその分を引いて考えてください。割る箇所は、成果物が形になって渡せる位置に置きます。途中の中途半端な状態で渡すと、受け取った側が最初から作り直します。
手3。前の作業の完了を待たずに一部を始める。 設計が全部終わる前に、確定した部分から製作を始める形です。代償は手戻りの危険です。後から設計が変わると、先に作った分が無駄になります。この手を使うときは、変わりにくい部分から始めるという条件を必ず付けてください。どこが変わりにくいかは担当者にしか分からないので、取りまとめる側が独断で決めないことが重要です。
3つのどれを選ぶかは、短縮したい日数と使える費用で決まります。3日程度の短縮なら、手3が最も安く済みます。2週間を超える短縮が必要なら、手1と手2を組み合わせることになり、費用の判断が必要になります。そして、どの手も使えないときの答えは、納期を動かす相談を早く始めることです。打てる手が無い状態を月末まで抱えることが、案件でいちばん高くつく選択になります。
計算を1回やることと、毎週やり続けることの間には大きな差があります。続けるために見るべき数は3つです。
1つめは、前後関係を登録する手間。 作業が30本あれば、前後関係は40本前後になります。これを毎回入れ直すのか、一度入れたら案件をまたいで使えるのかで、続くかどうかが変わります。
2つめは、担当者が自分の余裕を見られるか。 取りまとめる人だけが余裕日数を知っている状態だと、遅れの判断が全部その人に集まります。担当者が自分の作業の余裕を見られるなら、判断の一部を任せられます。
3つめは、遅れの連絡がどこに来るか。 表が正しくても、遅れの一報がチャットや電話の中にあると、表への反映が遅れます。連絡と表が同じ場所にあるだけで、反映までの時間が短くなります。
道具を比べるときは、機能の数より、無料で使える範囲と有料に移る境目の条件を先に見てください。人数で区切る道具、機能で区切る道具、ボードの数で区切る道具があり、どれで区切られるかによってチームが増えたときの金額が変わります。区切り方は料金のページで確かめられます。
いま別の道具を使っているなら、移す手間も判断に入ります。付箋の形で管理してきたチームはTrelloとの比較、課題の一覧として運用してきたチームはBacklogとの比較、無料の範囲の広さで選んできたチームはJootoとの比較が比べやすい相手です。表計算の延長で管理してきたならNotionとの比較も見ておくと、どこまで自由に作れてどこから重くなるかの線が分かります。7社をまとめて見たいときは比較の一覧から入ってください。上限の数え方で分からない点はよくある質問に答えがあります。
最後に1つだけ、今日できることを挙げます。いま動いている案件の作業を紙に並べ、先行作業の列だけを埋めてください。計算はその次で構いません。先行作業の列が埋まらない案件は、そもそも順番が決まっていない案件です。その場合に必要なのは計算ではなく、順番を決める打ち合わせです。
同じ長さの道が2本以上あることは珍しくありません。余裕日数がゼロの作業をつないだ道が複数出てきたら、それら全部がクリティカルパスです。2本あるときは両方を見る必要があります。片方だけに手を打っても、もう片方が全体の期間を決めるため、短縮の効果が出ません。
15本までなら紙とペンで足ります。20本を超えると道の分岐と合流が増え、目でいちばん長い道を拾えなくなります。エクセルで組む場合も、30本前後から参照の式が入り組んで間違いを見つけにくくなります。50本を超える案件では、前後関係を登録して自動で計算する道具を検討してください。
数字をそのまま伝えると、使ってよい時間として扱われて余裕が消えます。伝えるなら「この作業は遅れても全体に響かないので、先に別の作業を片付けてほしい」という行動の形にしてください。余裕は取りまとめる側が持っておくほうが、最後まで保険として残ります。
多いのは、人の取り合いを計算に入れていないことです。前後関係だけで求めた道は、人が無限にいる前提の答えになります。同じ人が同じ期間に2つ以上の作業を持っていないかを確かめてください。次に多いのは、承認を待つ時間や検査の時間を作業として数えていないことです。