ガントチャートの意味は見せる相手で決まる|工程表を3つに分ける
「ガントチャート 意味」で検索する人の多くは、横棒が並んだ図の定義を知りたいわけではありません。引いてはみたものの誰も見ない、更新が追いつかない、そもそも何のために引いているのか分からなくなった。そういう状態を抜け出す手がかりを探しています。結論から書くと、工程表の意味は図の中にはありません。3つある「見せる相手」のうち、どれに向けて引いているのかを決めた瞬間に、粒度も期間も更新の頻度も自動的に決まります。逆に言えば、相手を決めずに1枚で全部を兼ねようとすると、その工程表は必ず使われなくなります。
この記事では、工程表が答えている問いを整理したうえで、社外に出す工程表、社内で回す工程表、自分が管理するための工程表という3つの形を分けて説明します。そのうえで、粒度の決め方、更新が止まる仕組み、道具を選ぶときに見るべき場所まで書きます。
ガントチャートが本当に答えている問い
横棒が並んだ図そのものは、20世紀の初めに工場の作業割り当てを追うために使われはじめた表現です。1本の横棒が1つの作業を表し、棒の左端が開始日、右端が終了日、横軸が時間の流れになる。定義としてはそれだけで、ここに難しいところは何もありません。難しいのは、この単純な図が現場では何種類もの違う仕事をさせられている、という点です。
予定表と工程表は別のもの
カレンダーやスケジュール表は「いつ何があるか」を並べたものです。会議は火曜の14時、締切は月末、といった点の情報が中心になります。工程表が扱うのはそこではありません。工程表が扱うのは、1つの作業が終わらないと次の作業が始められない、という順番と重なりです。つまり工程表の本体は棒の長さではなく、棒と棒の間にある関係です。
この違いを押さえておかないと、工程表を引く作業がただの「予定の清書」になります。予定の清書は、書いた瞬間に価値のピークを迎え、以後は劣化していくだけです。関係を描いた工程表は、ある作業が遅れたときに「では何が後ろにずれるのか」を答えてくれるので、遅れが出たあとにこそ価値が出ます。工程表を引く意味があるのは後者だけです。
工程表は「約束の置き場所」でもある
もう1つ、工程表には数字では説明しにくい役割があります。誰と誰が、いつまでに何を渡し合うと言ったのかを、一箇所に置いておく役割です。口頭の合意やチャットの流れの中にある約束は、1週間もすれば別の話題に押し流されて見つからなくなります。工程表に線として置かれた約束だけが、後から指し直せる形で残ります。
進行をとりまとめる立場の人が工程表を必要とする理由は、たいていここにあります。自分が全部を覚えていられないから、覚えていなくても指し直せる場所を作りたい。そう考えると、工程表に求めるべきものは「きれいに描けること」ではなく「更新しても壊れないこと」だと分かります。
工程表を引く現場が、いま置かれている状況
工程表の引き方を考える前に、まわりの環境が変わったことを押さえておく価値があります。この5年ほどで、チームの働き方は目に見えて分散しました。同じフロアに全員がいて、席を立てば進み具合が分かる、という前提が崩れています。業務委託のメンバーや、週に何日かだけ関わる人が混ざるチームも珍しくありません。
同じフロアにいた頃、工程表は補助的な道具でした。実際の進み具合は空気で分かるので、表は月に1度の報告用に整えれば足りた。いまは逆で、表に書かれていないことは誰も知らない状態が普通になりました。工程表の更新が止まると、その瞬間にチームの現在地が分からなくなります。工程表の重要度が上がったというより、代わりになっていたものが無くなった、と言うほうが正確です。
紙と口頭で回していた部分が減っている
この変化は感覚だけの話ではなく、公的な調査でも同じ方向が確認できます。中小企業庁の白書では、事業者のデジタル化の進み具合を段階に分けて調べています。
段階1:紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態 出典: chusho.meti.go.jp
この段階1に当たると回答した事業者の割合は、直近の調査で前の年より大きく減ったと報告されています。紙と口頭で回していた仕事が、何らかの形で画面の上に移りつつある。工程表もその流れの中にあります。ホワイトボードに描いた線が、共有される表やボードに移っている段階だと考えると分かりやすいはずです。
同じ白書には、生産の進み具合を仕組みで管理するようにした効果として、次のような記述もあります。
進捗確認のため現場を見に行く、図面を探すといった、人員の無駄な動きが減るとともに、図面の視認性が向上したことで作業の間違い防止にも寄与した 出典: chusho.meti.go.jp
注目したいのは、効果として挙げられているのが「計画が正確になった」ではなく「探す動きが減った」である点です。工程表の値打ちは、未来を正確に予言することではなく、いま誰かが探している情報を探さずに済ませることにあります。これは、後で出てくる粒度の話に直結します。
道具が増えたぶん、目的が曖昧になった
もう1つの変化として、工程表を引ける道具が増えました。表計算ソフトの他に、タスク管理ツール、ボード型の管理ツール、ドキュメントツールの中の表機能まで、線を引ける場所はいくらでもあります。選べる場所が増えたこと自体は良いことですが、副作用として「どの道具を使うか」の議論が先に来てしまい、「誰に見せる工程表なのか」が後回しになりやすくなりました。
道具の議論から入ると、たいてい機能の多いものが選ばれます。機能が多い道具は表現力が高いので、社外向けの体裁も、社内の細かい割り当ても、1枚で描けてしまいます。描けてしまうことが問題です。次の章で書くとおり、3つの工程表は本来まったく別の形をしているからです。
見せる相手が変われば、同じ案件でも工程表の形は変わる
ここが本題です。工程表は、見せる相手によって3つの別物に分かれます。同じ案件を扱っていても、粒度も、対象期間も、更新の頻度も、載せる項目も違います。この3つを混ぜないことが、工程表を生かす一番の近道です。
社外に出す工程表が答えるのは「いつ何が返ってくるか」
顧客や取引先、あるいは社内でも別部門の責任者に見せる工程表です。相手が知りたいのは、自分の側でいつ何をすればよいか、そして最終的に何がいつ手に入るか、この2点に尽きます。誰がどの作業を担当しているか、社内でどんな手順を踏んでいるかは、相手にとってほぼ関心の外です。
したがって社外向けの工程表は、極端に粗くて構いません。目安としては、1本の帯が1週間から1か月の幅を持ち、案件全体で帯の数が10本前後に収まるくらいです。要件の整理、設計、制作、確認、公開といった大きな塊と、その間に置かれた確認や承認のタイミングだけが載ります。担当者名は基本的に載せません。載せると、相手は個人名を頼りに直接連絡を取りはじめ、進行のとりまとめが機能しなくなります。
社外向けで一番大事なのは、相手にお願いする作業を必ず線として描くことです。素材の支給、原稿の提供、確認の返答は、相手にとっては「言われたらやること」ですが、こちらにとっては工程の一部です。これが線として描かれていないと、確認が2週間止まったときに、遅れの理由がこちら側にあるように見えてしまいます。相手の作業を工程表に載せておくことは、責任の押し付け合いを避けるための実務です。
更新の頻度は低くて構いません。社外向けの工程表を毎日書き換えると、相手は「また変わった」という印象だけを受け取ります。節目ごと、あるいは大きなずれが確定したときだけ差し替えて、差し替えたことを言葉で伝える。この運用のほうが信頼を保てます。
社内で回す工程表が答えるのは「今週は誰が何をするか」
チームの中で共有する工程表です。ここでの読者は、自分の担当を確認したいメンバーと、手が空いているのに気づいていないメンバーです。社外向けとは求められるものが正反対で、担当者名は必須、粒度は細かく、更新は頻繁になります。
1本の帯の長さは、1日から5日くらいに収めるのが扱いやすい範囲です。それより長い帯は、途中で進んでいるかどうかを外から判断できません。「制作」という3週間の帯があったとして、10日目にその帯が順調なのか手遅れなのかは、誰にも分かりません。帯を短く切ると、終わったか終わっていないかで判断できるようになります。
対象期間も社外向けとは違います。社内で回す工程表が本当に使われるのは、目の前の2週間から1か月です。半年先の帯を同じ画面に並べても、誰も見ませんし、見ても行動が変わりません。半年先の予定は社外向けか、後述する管理用の工程表に置いておいて、社内向けの画面からは外す。この割り切りが、更新されつづける工程表の条件です。
もう1つ、社内向けで見落とされがちなのが「待ち」を描くことです。ある人の作業が終わるのを別の人が待っている状態は、工程表の上では空白になりがちですが、この空白こそが進行の中で一番管理しにくい部分です。待ちの理由と、待ちが解ける予定の日を線か注記で残しておくと、とりまとめる人が毎朝聞いて回る必要がなくなります。
自分が管理するための工程表が答えるのは「どこが危ないか」
3つめは、進行を預かる人が自分のために持つ工程表です。これは誰にも見せません。見せないからこそ、他の2つには書けないことが書けます。
ここに書くのは、確定していない予定、まだ言えない前提、危ないと感じている箇所です。「この承認は前回も5日遅れたので、今回も遅れる前提で見る」「この担当者は今月別の案件と重なっている」「この工程は見積もりが甘い可能性が高い」。こういった判断材料は、社外に出せば不安を与えますし、社内に出せば特定の人を責める形になりかねません。しかし、とりまとめる人がこれを持っていないと、遅れが表に出てから動くことになります。
管理用の工程表は、バッファを別の線として持つのが実務的です。社外向けの工程表では、余裕は帯の中に溶かして見えなくします。管理用では逆に、余裕を独立した帯として描いておき、それがどれだけ食い潰されたかを見ます。バッファが50%を切ったら関係者に相談する、といった自分なりの基準を決めておくと、判断が遅れません。
対象期間は一番長く、案件の最初から最後までを1枚で見ます。粒度は社外向けと社内向けの中間くらいが扱いやすいはずです。細かすぎると全体が見えず、粗すぎると危ない箇所が特定できません。
3つを1枚で兼ねようとすると、必ずどれかが壊れる
多くの現場で起きているのは、この3つを1枚の工程表でやろうとして、結果的にどれとしても機能しなくなる、という事故です。壊れ方には型があります。
社外向けに寄せると、社内で使われなくなる
顧客に見せる予定があると、工程表は自然と体裁の良いほうへ寄っていきます。担当者名が消え、帯が長くまとめられ、社内の細かい手順が省かれる。その結果、メンバーが自分の今日の仕事を確認する道具としては役に立たなくなります。使われない表は更新されず、更新されない表は社外向けとしても嘘になっていきます。
この型の厄介なところは、壊れていることが表面から見えない点です。工程表は見た目には整ったままで、ただ誰も見ていないだけ。とりまとめる人が「共有してあるのに誰も見ない」と感じているとき、原因はメンバーの意識ではなく、その表が社内向けの問いに答えていないことにあります。
社内向けに寄せると、社外に出せなくなる
逆の型もあります。細かく管理しようとして帯を刻み、担当者名と作業内容をすべて載せた工程表は、社内では機能しますが、そのままでは社外に出せません。人員配置や社内の段取りが全部見えてしまうからです。
すると、社外に見せるたびに別のファイルを作り直すことになります。この作り直しが曲者で、2回目までは丁寧にやりますが、3回目からは前回のファイルを開いて日付だけ直すようになります。社内の実態と社外に出している工程表が静かにずれていき、ずれに気づくのは、相手から「先週の説明と違う」と言われたときです。
管理用の情報を混ぜると、事故になる
一番避けたいのが、管理用に持っていた見立てを、そのまま共有の工程表に書いてしまうことです。「この工程は遅れる見込み」「この担当は手が回っていない」といったメモは、書いた本人にとっては単なる備忘ですが、読む人にとっては評価です。共有の場所に置いた瞬間に、それは評価として受け取られます。
3つを分けるべき理由は、粒度の話だけではありません。書ける内容の性質がそもそも違うからです。分ける手間を惜しむと、いずれ人間関係のほうにコストが跳ね返ります。
分けたうえで、元になる情報は1つにする
ここまで読むと「では3枚を別々に手で更新するのか」という疑問が出ます。それでは更新の手間が3倍になり、続きません。目指すべきなのは、元になる情報を1箇所に持ち、見せ方を切り替えることです。
具体的には、作業の単位と担当と期日は1つの場所にだけ入力しておき、社外向けには大きな塊だけを表示する、社内向けには直近だけを表示する、といった形にします。表示を切り替えるだけなら、更新の手間は1つ分で済みます。この「入力は1箇所、表示は複数」という条件を満たせるかどうかが、道具を選ぶときの一番大きな分かれ目になります。
粒度は感覚で決めない。決め方には基準がある
工程表がうまくいかない原因の大半は、粒度が合っていないことです。粒度は好みの問題に見えますが、実際には2つの基準から機械的に決められます。
基準1:更新の頻度から逆算する
帯の長さは、更新の間隔よりも短くします。週1回しか更新しないのに帯の長さが1日だと、更新のたびに大量の帯を動かすことになり、すぐに続かなくなります。逆に、毎日更新するのに帯が1か月だと、毎日見ても何も変わらないので、見る習慣が消えます。
社外向けは節目ごとの更新なので帯は週から月の単位、社内向けは毎日か週2回の更新なので帯は日の単位。この対応関係を守るだけで、工程表はかなり扱いやすくなります。粒度を決めるとき、まず決めるべきは「どのくらいの頻度で触るか」のほうです。
基準2:終わったと言い切れる単位まで割る
もう1つの基準は、その帯について「終わりましたか」と聞いたときに、はい・いいえで答えられるかどうかです。「デザイン」という帯には、はい・いいえで答えられません。「トップページのデザイン案の提出」なら答えられます。答えられない粒度の帯は、進捗の欄に80%といった数字が入りはじめ、その数字は誰も検証できないので、やがて意味を失います。
進捗率という考え方そのものが悪いわけではありませんが、はい・いいえで答えられる単位まで割ってしまえば、進捗率は要らなくなります。5つに割った帯のうち3つが終わっていれば、それが進捗です。数字を人が判断して入れるより、はるかに正確で、はるかに揉めません。
割りすぎたときのサイン
逆に細かく割りすぎたときにも、はっきりしたサインが出ます。1つは、帯の数が多すぎて画面に収まらず、毎回スクロールしないと全体が見えない状態です。もう1つは、作業そのものより工程表の入力に時間がかかる状態です。目安として、社内向けの工程表で1人あたりの帯が同時に10本を超えたら、割りすぎを疑う価値があります。
期間の取り方と、依存関係をどこまで描くか
粒度の次に迷うのが、どこまで先を描くかと、作業同士のつながりをどこまで描くかです。ここも相手ごとに答えが違います。
先を描きすぎない
工程表は先まで描けるほど立派に見えますが、確定していない先を描くのは、ほとんどの場合で害になります。確定していない帯は、日付が近づくたびに動かすことになり、動かす作業が更新の負担になります。負担が一定を超えると、人は更新をやめます。
実務的には、確定している部分と見込みの部分を見た目で分けるのが有効です。色を変える、点線にする、注記を付けるなど、方法は何でも構いません。分けておけば、見込みの帯が動いても「動くものが動いただけ」として扱えます。分けていないと、見込みが動くたびに計画そのものが崩れたように見えてしまいます。
つながりは、遅れが波及する場所だけ描く
依存関係の矢印は、全部描くと読めなくなります。実際に必要なのは、そこが遅れると後ろが確実にずれる箇所だけです。多くの案件で、その箇所は3つから5つ程度しかありません。承認の待ち、外部からの支給、環境の準備といった、自分たちだけでは動かせない場所がそれに当たります。
この数箇所だけを明示しておけば、遅れが起きたときに「後ろがどれだけずれるか」を即答できます。それ以外の細かいつながりは、担当者の頭の中にあれば十分です。工程表に描く目的は、頭の中にないことを外に出すことであって、全員が知っていることを図にすることではありません。
節目は日付ではなく状態で置く
マイルストーンを置くときは、「10月1日」ではなく「公開できる状態になっている」のように、満たすべき状態で書きます。日付だけの節目は、日付が動いた瞬間に意味を失いますが、状態で書いた節目は、日付が動いても何を達成すべきかが残ります。この書き方にしておくと、社外向けの工程表でも説明がしやすくなります。
表計算ソフトで引き続けたときに起きること
工程表の入口は、多くの場合が表計算ソフトです。始めるのに費用がかからず、誰でも開けて、自由に色を付けられる。この手軽さは本物の長所なので、少人数で、更新の頻度が低く、社外向けの体裁を整えるのが主な目的なら、無理に別の道具へ移る理由はありません。
問題が出るのは、チームが5人を超えて、更新の頻度が上がってからです。よく聞くのは次のような詰まり方です。
1人が開いている間、他の人は編集できない
共有の設定によっては、誰かがファイルを開いている間、他の人は読み取り専用でしか開けません。とりまとめる人が線を引き直している時間帯は、メンバーが自分の担当を更新できない。この状態が続くと、更新はとりまとめる人に集中し、その人の負荷だけが上がります。入力する人が増えないと、進捗の表はすぐ嘘になります。表計算ソフトで工程表が続かない一番の理由は、機能の不足ではなく、入力できる人が増えないことです。
ファイルが増える
最終版、最終版2、修正後、といったファイル名が増えていくのは、表計算ソフトで工程表を回した多くのチームが通る道です。どれが正しいのか分からなくなると、人は自分の手元のコピーを信じるようになり、チームの中に複数の現実が生まれます。
期日を動かすと、線を全部引き直すことになる
作業同士のつながりを式で組んでいない限り、1つの作業が3日遅れたときに、後ろの帯を手で動かすことになります。20本の帯があれば20回動かす。この作業が重いので、遅れが出てもすぐには反映されず、工程表と実態のずれが日に日に広がります。
つながりを式で組めば自動で動くようにもできますが、今度はその式を組んだ人しか触れないファイルになります。担当が変わったときに誰も直せず、結局そこで作り直しになるという話もよく聞きます。
移るかどうかの判断
表計算ソフトを離れる境目は、機能ではなく人数と頻度で決まります。目安としては、更新する人が3人以上になったとき、あるいは更新の頻度が週2回を超えたときです。この条件に当てはまらないなら、慣れた表計算ソフトを使い続けるほうが、たいていは早く終わります。
工程表が更新されなくなる本当の理由
道具を替えても、しばらくすると更新が止まる。この経験を持つ人は多いはずです。原因は道具の使いにくさよりも、次の3つに集中しています。
更新する動機が入力する人の側にない
工程表を更新して得をするのは、多くの場合とりまとめる人です。メンバーにとっては、自分の仕事の進み具合はすでに自分が知っているので、入力しても自分の利益になりません。この非対称を放置したまま「ちゃんと更新してください」と言い続けても、続きません。
対処は2つあります。1つは、入力の手間を極端に小さくすることです。カードを動かす、チェックを入れる、その程度で済むなら、義務感がなくても更新されます。もう1つは、更新した人が得をする使い方を作ることです。工程表を見れば自分の次の仕事が分かる、待ちが解けたことが通知される。こうなると、更新は自分のための行為になります。
二重入力が発生している
チャットに報告し、工程表にも入力し、日報にも書く。同じことを3回書かせている現場は珍しくありません。人は3回目で必ず手を抜きます。抜かれるのは、たいてい工程表です。チャットの報告は相手がいるので抜けませんが、工程表は誰も待っていないからです。
工程表を生かしたいなら、報告の場所を工程表に寄せて、他を減らすしかありません。話す場所と残す場所を分け、残す場所を1つに決める。この整理をしないまま道具だけを増やすと、更新されない表がもう1枚増えるだけになります。
見に行く理由がない
最後に、そもそも誰も見ていない、という理由があります。見られていない表は更新されません。見に行く理由を作るには、その表にしか無い情報を置くことです。今日やることが書いてある、待ちの状況が分かる、確認の依頼が来る。こういった情報が集まっていれば、人は自然に見に行きます。
逆に、工程表が「上に報告するための図」でしかないなら、メンバーが見に行く理由はありません。この場合、無理に共有しようとせず、管理用として自分だけで持つほうが健全です。3つに分けるという話は、ここにもつながっています。
道具を選ぶときに見るべきところ
工程表の形を決めたあとで、はじめて道具の話になります。見るべき点は多くありません。
同じ情報を複数の見え方で出せるか
前に書いたとおり、入力は1箇所、表示は複数、という条件を満たせるかが最重要です。カードで管理している内容が、そのまま時間軸の上に並ぶ。担当者で絞り込める。直近だけを表示できる。これができれば、社外向けと社内向けを別ファイルで管理する必要がなくなります。ボード型のタスク管理から入って工程表の表示に切り替える形は、この条件を満たしやすい作りです。どこまでの表示ができるかはできることで確認できます。
入力の手数が少ないか
メンバーが更新する部分の手数は、少ないほど良いという単純な基準で判断できます。ログインしてから自分の担当を更新するまでに何回クリックが必要か、実際に数えてみると道具ごとの差がはっきり出ます。5回を超えるようなら、更新は続かないと考えておいたほうが安全です。
料金の区切り方が使い方と合っているか
見落とされやすいのが料金の考え方です。多くの道具は、機能の差でプランを分けています。工程表の表示は上位プランだけ、といった区切りです。この形だと、必要なのは工程表の表示1つなのに、他の機能ごと上のプランに移ることになります。一方で、機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという考え方の道具もあります。どちらが得かはチームの規模で変わるので、実際の人数を当てはめて計算してみるのが確実です。区切り方の考え方は料金にまとめられています。
移せるか、そして出せるか
いま使っている道具から中身を移せるかどうかも、判断材料になります。手で移し替えるとなると、100枚のカードがあれば100回の作業です。ここで諦めて移行が止まる例は多くあります。ただし、自動で取り込める範囲は道具によって限られていて、対応しているのが特定の道具からだけ、というのが普通です。取り込みの範囲はTrelloからの移行で確かめられます。
同時に、将来そこから出せるかも見ておきます。入れるのは簡単で出すのが難しい道具は、数年後に選択肢を狭めます。書き出しの形式が公開されているかどうかは、契約前に確認しておく価値があります。
預ける情報の扱いが説明されているか
工程表には取引先の名前や納期が載ります。社外に出したくない情報が集まる場所になるので、預ける先の考え方は確認しておきます。誰がどこまで見られるか、保存の場所はどこか、退会したときにどうなるか。このあたりが文章で説明されているかどうかは、安全性の考え方のようなページを読めば分かります。
得意でない領域も先に把握しておく
道具を選ぶときは、できることより、できないことを先に知っておくほうが失敗しません。ボード型の管理ツールは、進行のとりまとめには向いていますが、ソースコードそのものの管理までは面倒を見ないのが普通です。外部の多数のサービスと自動でつなぐ用途では、その領域に特化した道具のほうが強いこともあります。画面の対応言語が日本語だけ、という道具もあるので、海外のメンバーが入る予定があるなら先に確認が要ります。こうした前提を知らないまま導入すると、後から別の道具を追加することになり、結局は場所が増えます。
内部の比較データから見えること
工程表の道具を選ぶ人が、実際にどこで迷っているのかを、比較ページの構成から見ていきます。比較の切り口として繰り返し出てくるのは、機能の多さではなく、次の3点です。
迷いの1つめは「カードと時間軸をつなげられるか」
ボード型で日々のタスクを回しているチームが工程表を必要とするとき、多くの場合は「いま使っているカードを、そのまま時間軸の上に並べたい」と考えています。別のツールで工程表を引くと、カードと帯の二重管理が始まるからです。カードを中心にした管理から工程表へ移りたいときの考え方はTrelloとの比較に整理されています。同じくボードを中心に据えつつ、より多機能な方向に進んだ道具との違いはAsanaとの比較で確認できます。
迷いの2つめは「情報の置き場所と進行の管理を分けるか」
議事録や仕様をまとめる場所と、進行を管理する場所を1つにするか分けるか、という論点も繰り返し出てきます。文書と管理を1つにまとめる作りの道具は自由度が高い反面、進行の管理としては自分で構造を作る必要があります。この違いはNotionとの比較で扱われています。工程の管理を軸に据えた道具どうしの違いはmonday.comとの比較が参考になります。
迷いの3つめは「国内の商習慣に合うか」
日本語の画面、日本の商習慣に沿った課題管理、社外の協力会社を含めた運用。この観点で選ばれてきた道具との違いはBacklogとの比較にまとめられています。国産のボード型で工程表の表示を持つ道具との比較はJootoとの比較にあります。どの道具から移る想定かで見るべき点が変わるので、まず比較の一覧を見て、いま使っているものに近い項目から読むのが早いはずです。
質問として多いのは、機能ではなく運用のこと
寄せられる質問の傾向を見ると、機能の有無より、入れたあとどうなるかを気にしている質問が目立ちます。メンバーが更新してくれなかったらどうするか、社外の人に見せる範囲をどう制御するか、途中でやめたくなったらどうなるか。こうした運用側の疑問はよくある質問にまとめられています。
この傾向自体が、この記事の結論を裏づけています。工程表の道具選びで本当に効くのは、どんな図が描けるかではなく、チームが更新しつづけられるかどうかです。そして更新しつづけられるかどうかは、その工程表が誰に向けて引かれているかで決まります。社外に出す工程表、社内で回す工程表、自分が管理するための工程表。この3つを分けて、それぞれに合った粒度と期間を与えたうえで、元になる情報を1箇所にまとめる。ガントチャートの意味を実務に落とすと、やることはこれだけです。
Q1. ガントチャートは小さいチームにも必要ですか?
人数よりも、作業のつながりがあるかどうかで判断します。1人の遅れが他の人の着手日を動かす関係があるなら、3人でも工程表の価値があります。逆に各自が独立して進められる仕事なら、一覧とチェックリストで足りることが多く、無理に線を引く必要はありません。
Q2. 工程表の粒度はどのくらいが適切ですか?
更新の頻度から逆算します。毎日更新するなら1日から5日の帯、週1回なら1週間単位、社外向けの節目ごとの更新なら1か月単位が扱いやすい範囲です。もう1つの基準は「終わりましたか」にはい・いいえで答えられるかどうかで、答えられない粒度は割りすぎではなく粗すぎです。
Q3. 表計算ソフトで工程表を作り続けても問題ありませんか?
更新する人が2人までで、頻度が週1回以下なら十分に実用的です。移る目安は、更新する人が3人以上になったとき、または週2回を超えて更新するようになったときです。この段階を過ぎると、同時に編集できない、ファイルが増える、期日を動かすたびに引き直すという負担が急に重くなります。
Q4. メンバーが工程表を更新してくれません。どうすればよいですか?
入力する人に利益がないことが原因である場合がほとんどです。更新の手数を減らし、同じ内容をチャットと工程表の両方に書かせる二重入力をやめ、その工程表を見れば自分の次の仕事が分かる状態にします。更新が自分のための行為になれば、催促しなくても続きます。