ガントチャートの依存関係はどこまで持たせるか|前が延びたら後ろも延びる
ガントチャートの依存関係は、工程表を「絵」から「仕組み」に変える部分です。前の作業が3日延びたとき、後ろの作業の線も一緒に3日ずれてくれるかどうか。ここが効いているかどうかで、進行をとりまとめる人が毎週使う時間はまったく変わります。この記事では、作業のつながりにどんな型があるのか、つなぎすぎると何が起きるのか、そしてどこまで線を持たせるのが自分のチームにとって現実的なのかを、順番に整理します。
工程表が古くなる理由は、線が手作業だから
工程表そのものは、多くのチームがすでに持っています。問題は、それが引かれた日から古くなっていくことです。設計が2日延びた。レビュー担当が休みで確認が1日止まった。素材の支給が週明けにずれた。こうした小さなずれは、どんな進行にも毎週いくつか起きます。ずれ自体は避けられません。避けられるのは、そのずれを表に反映する作業が全部手作業になっていることのほうです。
表計算ソフトで工程表を引いているチームでは、この反映が「セルの塗り直し」になります。前の作業のバーを右に2日ずらしたら、その後ろに並んでいる作業も、自分の目で追いかけて、1本ずつ右にずらしていく。作業が30件あって、そのうち後続にあたるものが半分あれば、ずれ1件につき十数本の線を引き直すことになります。この手間が積み上がると、やがて「更新は週に1回まとめて」になり、次に「今週は忙しいので飛ばす」になり、最後に誰も見ない表になります。現場では、更新が止まった工程表は2週間ほどで誰にも信じられなくなると言われます。表が嘘をつき始めた時点で、進行の判断材料としての価値はゼロです。
作業のつながり、つまり依存関係を工程表に持たせるというのは、この引き直しを表の側に肩代わりさせることです。「この作業が終わってからでないと、あの作業は始められない」という関係をあらかじめ登録しておけば、前の作業の終わりを動かしたときに、後ろの作業も同じだけ動きます。人がやるのは、事実が変わった1か所を直すことだけです。残りは表が計算します。
とりまとめる立場から見ると、この差はもっと大きな意味を持ちます。線を引き直している間、その表は「作業中」です。ほかのメンバーが同じ時間に見ても、そこに映っているのは途中の状態です。1人が表を作り直している数時間、チーム全体の進行の見え方が止まります。つながりを表に持たせるというのは、この「止まる時間」を消す取り組みでもあります。
開発の分野では、工期や工数を見積もる際の判断材料として、実際のプロジェクトから集めた定量データが公開されています。
ソフトウェア開発の見積りや工期の妥当性を判断する材料として、実プロジェクトから収集した定量データを整理し、広く公開している。 出典: ipa.go.jp
こうした基準値は、全体の工期がおおむね妥当かどうかを外から確かめるときには役立ちます。ただし、目の前のプロジェクトで「今週どの作業が動かせるか」を判断する材料にはなりません。そこを埋めるのが、自分たちの工程表に入っている作業のつながりです。
依存関係とは「前が延びたら後ろも延びる」という約束
依存関係という言葉は少し硬いので、意味を先に固めておきます。工程表における依存関係とは、2つの作業のあいだに置く「時間の約束」です。約束の中身は1つだけで、「前の作業の日付が動いたら、後ろの作業の日付も一緒に動く」ということです。
手で並べただけの表と、つながりを持った表
ここを混同しているチームは珍しくありません。工程表の上で作業Aのバーの右隣に作業Bのバーを置けば、見た目には「AのあとにBをやる」ように読めます。しかしそれは、人が目で読んだときにそう見えるというだけの話で、表はその関係を知りません。Aを3日右にずらしても、Bはその場に残ります。結果として、AとBが重なって表示され、しかも誰もそれに気づきません。
つながりを登録した表では、AとBのあいだに矢印が引かれ、Aの終了日とBの開始日が計算でつながります。Aを3日ずらせば、Bも3日ずれます。Bの後ろにCがあれば、Cも3日ずれます。この連鎖が最後の納品日まで届いたとき、はじめて「この遅れは納期に響くのかどうか」が表の上で答えとして出ます。
つながりを持たせると、何が自動で分かるようになるか
線を持たせて得られるものは、引き直しの手間が消えることだけではありません。もう少し実務に効くものが3つ出てきます。
1つ目は、遅れの影響範囲がその場で見えることです。今日入った「素材の支給が2日遅れる」という報告が、最終的に納品を動かすのか、それとも途中の余裕で吸収されるのか。つながりのない表では、この判断を人の頭の中でやることになります。つながった表では、動かした瞬間に後ろの線が動くので、結論が目に入ります。
2つ目は、「いま止まっている作業の原因」が特定できることです。担当者から「まだ着手できていません」と言われたとき、それが本人の手が空いていないからなのか、前の作業がまだ終わっていないからなのかで、打つ手はまったく変わります。前者は人の配分の問題、後者は前の工程の問題です。矢印が引かれていれば、後者はすぐに分かります。
3つ目は、余裕がどこにあるかが分かることです。すべての作業が納期に直結しているわけではありません。何日か遅れても最後の日付に響かない作業と、1日でも遅れると全部が押す作業が混ざっています。後者だけを並べたものが、一般にクリティカルパスと呼ばれる連なりです。つながりを登録していない表では、この区別が原理的に出せません。
作業のつながりには4つの型がある
依存関係というと「前の作業が終わってから次を始める」だけを思い浮かべがちですが、工程表の世界では通常4つの型が使われます。名前は道具によって表記が違いますが、考え方は共通です。
終わってから始める
いちばん使う型です。前の作業が終わることが、後ろの作業を始める条件になります。原稿が仕上がってから校正に入る、設計が固まってから実装に入る、撮影が終わってから編集に入る。工程表に引かれる矢印の大半はこれになります。迷ったらこの型を選んでおけば、大きく外すことはありません。
この型を選ぶときの注意は、「終わる」の定義をチームで揃えておくことです。原稿を書き終えた時点なのか、書いた本人が読み返した時点なのか、依頼者が受け取った時点なのか。ここがずれていると、表の上では終わっているのに次が始められないという状態が起きます。工程表の運用でつまずくチームの多くは、線の引き方ではなく、この「終わり」の定義があいまいなことでつまずいています。
同時に始める
前の作業が始まったら、後ろの作業も始められる、という型です。両方を並行して進めるが、片方が始まらないうちはもう片方も始まらない、という関係のときに使います。たとえば、実装が始まってからテストの準備を始める。制作が始まってから、それを紹介する告知文の下書きを始める。どちらも、相手の完成を待つ必要はないが、着手そのものは相手に引きずられます。
この型は、並行作業を工程表に正しく載せるための道具です。「終わってから始める」だけで組むと、本当は同時に進められるものが直列に並び、全体の工期が実態より長く見えます。逆に、つながりを一切書かずに横に並べると、前が延びたときに後ろが取り残されます。同時に始める型は、その中間を表現します。
同時に終える
後ろの作業の終わりが、前の作業の終わりに引っ張られる型です。使いどころは限られますが、はまると強い型でもあります。よくあるのは、本体の作業と、それに付き添う作業の関係です。開発が終わるまで、対応するドキュメントの更新も終われない。撮影が終わるまで、その現場の記録の整理も終われない。開始のタイミングは自由でよく、終わりだけを揃えたい場面で使います。
この型を入れておくと、本体が延びたときに、付き添う作業の期限だけが取り残されて「期限切れ」の表示が並ぶ事態を防げます。期限切れの表示が並んだ表は、見る人がその表示を無視するようになるので、放っておくと表全体の信用が下がります。
始まったら終える
前の作業が始まることが、後ろの作業を終える条件になる型です。4つのなかでいちばん使用頻度が低く、実際、道具によっては選択肢に用意されていないこともあります。使う場面は、置き換えや切り替えの前後関係です。新しい仕組みの運用が始まったら、古い仕組みの運用を終える。新しい担当者の稼働が始まったら、前任者の引き継ぎ期間を終える。
この型が必要になる場面は多くないので、対応していない道具を使っているからといって困ることは、ふつうはありません。「終わってから始める」で書き換えられるかどうかを先に検討して、書き換えられるならそちらにしておくほうが、あとから見た人にも読みやすい表になります。
待ち時間と前倒しを日数で置く
型だけでは表現しきれないのが、あいだに入る時間です。ここを扱う仕組みが、多くの道具に「ラグ」「リード」といった名前で用意されています。
待ち時間はプラスの日数で置く
前の作業が終わってから、後ろの作業を始めるまでに、必ず空く時間があることがあります。塗装の乾燥、印刷所での製版、先方の社内確認、支払いサイトの締め。人が手を動かしていないのに、日数だけが確実に過ぎていく区間です。
これを「作業」として工程表に載せると、担当者の欄に何も書けない行が増えて、表が読みにくくなります。かわりに、つながりの矢印に「3日あける」という余裕を持たせておけば、行を増やさずに現実の日程が再現できます。先方の確認に平均で5営業日かかると分かっているなら、その数字を矢印に載せておく。この一手間で、工程表の予測日と実際の日付のずれが目に見えて減ります。
前倒しはマイナスの日数で置く
逆に、前の作業が完全に終わる前でも、後ろの作業を始めてよい場合があります。全10章の原稿のうち、最初の3章が上がった時点で校正を始める、といったやり方です。これを「終わってから始める」で組むと、実態より工期が長く出ます。
こうしたときに、矢印にマイナスの日数を載せて「前の作業の終わりの3日前から始めてよい」と表現します。ただし、この使い方には副作用があります。前倒しを多用した工程表は、前の作業が延びたときに後ろへの影響が読みにくくなり、しかも実務では「前倒しで始めたが、前の作業の内容が変わってやり直し」という手戻りを呼びます。前倒しの矢印は、本当に確実な箇所だけに絞るのが安全です。
つなぎすぎると、表が身動きを取れなくなる
依存関係の話でいちばん見落とされるのが、ここです。つながりは多いほど正確になるわけではありません。むしろ、ある本数を超えたところから、工程表は急に使いものにならなくなります。
すべてを縦につないだ表は、1日の遅れで全部が動く
作業40件を、上から順に1本の鎖のようにつないだ工程表を考えます。この表では、いちばん上の作業が1日遅れると、下の39件すべてが1日ずれます。計算としては正しいのですが、その表を見た人にとっては、毎週すべての予定が動くことになります。
予定が毎週全部動く表は、誰も自分の予定として使いません。「どうせまた変わる」と思われた瞬間に、メンバーは工程表を見るのをやめて、担当者に直接聞きに行くようになります。つながりを持たせた目的が、とりまとめる人への問い合わせを減らすことだったなら、結果は完全に逆になります。
「本当は前後関係がない」ものを縦に並べていないか
つなぎすぎの多くは、悪意なく起きます。表の上で上から下に作業が並んでいると、なんとなく順番があるように見えて、そのまま矢印を引いてしまうからです。しかし実際には、順番があるように見えるだけで、どちらを先にやってもいい作業は珍しくありません。
見分け方は単純です。「後ろの作業を先に始めたら、何が困るか」を1文で説明できるかどうかを確認します。説明できるなら、それは本物のつながりです。「なんとなく順番だから」としか言えないなら、矢印は引かないほうがよいものです。この確認を作業ごとにやるだけで、引く線の本数は目に見えて減ります。
人が足りないだけの前後関係を、線にしない
もう1つ多いのが、資源の都合を依存関係として書いてしまうパターンです。同じ人が2つの作業を担当していて、同時にはできないから順番になる。これは作業と作業のつながりではなく、人の空き具合の問題です。
これを矢印で書くと、担当を替えた瞬間に工程表が実態と合わなくなります。しかも、その矢印は「作業の性質上どうしても順番になる」という本物の矢印と見た目が同じなので、あとから見た人が区別できません。担当の割り振りは、担当者の列や、担当ごとの並べ替えで表現するのが筋です。工程表の矢印は、作業そのものの性質だけに使います。
つなぎすぎた表を運用すると起きること
つながりが多すぎる工程表には、共通した症状があります。まず、日付を1つ直すのが怖くなります。どこまで影響するか読めないので、実態が変わっても表を直さなくなります。次に、矛盾した制約が同時に成立して、道具が日付を計算できなくなります。ある作業が別の作業の後ろに来なければならず、同時に別の経路では前に来なければならない、という循環が生まれる状態です。最後に、表の作り直しが発生します。
作り直しは、とりまとめる人にとっていちばん重い作業です。数十本の矢印を引き直す時間は、まとまった半日から1日を食います。その時間はチームの誰の作業も進めません。つなぎすぎを避けることは、この作り直しを起こさないための予防でもあります。
どこまで持たせるかを決める4つの基準
では、線はどこまで引くのが正解なのか。唯一の答えはありませんが、決め方の基準を持っておくと、迷いが減ります。
遅れたときに誰かへ連絡が要る箇所だけをつなぐ
いちばん実務的な基準です。前の作業が遅れたときに、後ろの担当者へ連絡しなければならない関係。そこにだけ矢印を引きます。逆に言えば、遅れても誰にも知らせなくていい関係は、つながりとして持たせる価値が薄いということです。
この基準の良いところは、工程表の役割が「連絡の自動化」だと明確になることです。つながりを持たせておけば、前が動いた時点で後ろの担当者の予定も動くので、とりまとめる人が個別に連絡しなくても情報が届きます。連絡の要らない関係にまで矢印を引いても、この効果は増えません。増えるのは表の複雑さだけです。
節目と受け渡しだけをつなぐ
もう1つの決め方は、粒度を上げることです。個々の作業を全部つなぐのではなく、工程の区切り、担当が変わる受け渡しの箇所、外部に出す締切、この3種類だけを矢印でつなぎます。区切りの中で行われる細かい作業は、順番を書かずに並べておきます。
この持ち方をすると、矢印の本数は作業数のわりに大きく減ります。作業が50件ある進行でも、受け渡しの箇所は8から12本程度に収まることが多く、表を見た人が全体を頭に入れられる本数になります。細かい順番は担当者の中で調整してもらえばよく、とりまとめる人が管理する対象ではありません。
本数の目安を先に決めておく
数の感覚も持っておくと役に立ちます。実務でよく使われる目安は、矢印の本数を作業件数の3割以内に抑える、というものです。作業40件なら矢印は12本程度まで。もう1つは、1つの作業から出ていく矢印と入ってくる矢印を、それぞれ3本までにする、という上限です。
これらは絶対の基準ではありませんが、超えたときに「本当に全部要るのか」を見直すきっかけになります。上限を決めずに引き始めると、線は必ず増えていきます。減らす仕組みを最初に置いておくほうが、あとから整理するより安く済みます。
更新する人の数に合わせる
見落とされがちですが、これが最も現実的な基準かもしれません。工程表を更新する人が1人しかいないなら、矢印は少ないほうがいいです。全部の情報がその1人に集まってから表に反映されるので、反映が止まった瞬間に、つながりが多いほど表が大きく実態からずれます。
逆に、各担当者が自分の作業の状態を自分で更新する運用ができているなら、矢印は多めに持たせても機能します。前の作業の担当者が「終わった」と入れた瞬間に、後ろの担当者の予定が動くからです。つまり、どこまで線を持たせるかは、道具の性能の話ではなく、チームの更新体制の話です。ここを取り違えて、更新が1人に集中したままで細かい依存関係を組んでも、維持できません。
道具の種類ごとの現実的な扱い方
作業のつながりをどう持つかは、使っている道具によって手触りが変わります。ここでは大きく3つに分けて考えます。
表計算ソフトで工程表を作っている場合、つながりは基本的に人の頭の中にあります。関数や条件付き書式でそれらしく再現することはできますが、担当者ごとに書き方が違う表が量産され、最終的に引き継げないファイルになりがちです。表計算で運用を続けるなら、矢印は書かず、節目の日付だけを別のシートに切り出して、そこだけを守る運用にするほうが現実的です。全部を再現しようとすると、維持する人の負担が大きくなりすぎます。
カード型のタスク管理ツールを使っている場合、1枚1枚の作業は見やすい一方で、作業と作業の時間的な前後は表現しにくいことがあります。この形の道具は、いま誰が何を持っているかを見るのには向いていて、いつまでに何が終わるかを見るのには工夫が要ります。カード型の道具を使い続けるなら、期日を全カードに必ず入れる運用と、週に1回の棚卸しをセットにするのが定石です。それぞれの道具の考え方の違いは、Trelloとの比較やJootoとの比較のページで、板の形とスケジュールの見せ方という観点から整理しています。
工程表の機能を持つツールを使っている場合は、つながりの型が選べるかどうか、待ち時間を日数で置けるかどうかを最初に確認します。ここは道具によって差が出る部分で、料金プランによって使える範囲が変わることもあります。仕様や上限は公式のページで確かめるのが確実です。何がどこまでできるかの整理はできることにまとめてあり、区切りの考え方は料金のページで確認できます。
遅れが出たときに、どこから手を付けるか
つながりを持たせた工程表がいちばん役に立つのは、平常時ではなく、遅れが出た日です。ここでの動き方を先に決めておくと、慌てて全部を組み替える事故が減ります。
まず、その遅れが最後の日付に届くかを見る
報告が入ったら、最初にやるのは対策を考えることではなく、影響が納期に届くかどうかを確認することです。つながりが登録されていれば、前の作業を実際の日数だけ動かすだけで答えが出ます。届かないなら、そこに使う余裕は残っているということで、対策は要らないか、軽いもので済みます。届くなら、そこから先は判断の話になります。
この確認を飛ばして、遅れの報告が入るたびに全員へ共有し、対策会議を開くチームは少なくありません。ところが実際には、報告された遅れのうち相当数は途中の余裕で吸収されます。吸収されるものにまで人を集めると、会議の回数だけが増えて、本当に手を打つべき遅れへの反応が鈍ります。工程表につながりを持たせる目的の1つは、この選別を機械にやらせることです。
余裕がある作業と、ない作業を分けて扱う
同じ2日の遅れでも、意味はまったく違います。後ろに余裕が5日ある作業の2日は、何も起きません。余裕がゼロの作業の2日は、そのまま納期の2日です。人を足す、範囲を削る、期日を動かすといった対策を検討するのは、後者だけで足ります。
余裕がゼロの作業がつながった経路は、進行のあいだに移動します。今週まで余裕のあった経路が、来週には余裕ゼロになっていることは普通に起きます。だから、この経路は月に1回まとめて確認するのではなく、日付を動かすたびに見直すものだと考えたほうが実態に合います。つながりを持った工程表は、この見直しを日付の変更と同時にやってくれます。
詰まったときに削る順番を決めておく
遅れが納期に届くと分かったときの選択肢は、突き詰めると3つです。人を足して期間を縮める、作業の範囲を減らす、後ろの日付を動かす。どれを先に検討するかを、進行の始めにチームで決めておくと、その場の力関係で決まらなくなります。
工程表の上で効くのは、この判断をした結果をその日のうちに表へ反映することです。範囲を減らしたなら、その作業の行を消すか、期間を縮める。日付を動かしたなら、動かした事実を残す。決めたことが表に入っていないと、翌週にはまた同じ議論が始まります。決定を表に写す作業まで含めて、遅れへの対応です。
運用が続くかどうかは、誰が更新するかで決まる
ここまで型と本数の話をしてきましたが、実際に工程表が生き続けるかどうかを決めるのは、運用のほうです。
つながりを持たせた表は、正しく更新されている限り強力ですが、更新が止まると、つながっていない表よりも危険になります。自動で計算された日付が並んでいるぶん、見た人はそれを信じるからです。実態と違う日付を、根拠がありそうな見た目で提示してしまう。これが、依存関係を持たせた工程表のいちばん怖い失敗です。
これを避けるには、更新の担当と頻度を先に決めます。よく取られるのは、各担当者が自分の作業の終了を報告する経路を1本に絞り、とりまとめる人が週に1回、まとめて表に反映する形です。報告の経路がチャット、口頭、会議の3つに散っていると、とりまとめる人が情報を集める作業だけで時間が溶けます。入力する人が増えないと、進捗の表はすぐに嘘になります。
もう1つ有効なのは、表を更新しやすくしておくことです。日付の変更に承認が要る、権限がないと触れない、といった制約が多いほど、更新は遅れます。誰でも自分の担当分は触れて、履歴が残る形が、続けやすさとしては優れています。誰が何を見られて、どこまで触れるのかという考え方は安全性の考え方で整理しています。導入時によく出る疑問はよくある質問にまとめてあります。
板の上でつながりを持つという考え方
工程表の依存関係は、本来は「線の機能」ではなく「チームの合意の写し」です。誰の作業が誰の作業を待たせているのかが、全員に同じ形で見えていること。とりまとめる人が頭の中で持っている前後関係が、表の上に出ていること。この2つが満たされていれば、線の種類が4つそろっているかどうかは、実は二次的な問題です。
進行の道具を選ぶときの判断材料も、ここに集まります。細かい機能の数ではなく、チームの全員が同じ板を見て、自分の担当分を自分で動かせるかどうか。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという考え方を取るのは、進行の見え方は人数が増えたときにこそ効くもので、機能の出し惜しみで分けるものではないからです。工程表のつながりも、それを見る人が限られていては意味がありません。
道具ごとの向き不向きは、板の形と工程表の見せ方の組み合わせで整理すると分かりやすくなります。作業の一覧を担当者ごとに見たいのか、期間で見たいのかという観点ではAsanaとの比較が参考になり、文書と作業を同じ場所に置く考え方についてはNotionとの比較で整理しています。組織全体の進行を1つの画面に集約する方向性はmonday.comとの比較、開発の課題管理と工程表を接続する方向性はBacklogとの比較で扱っています。どれが自分のチームに合うかは、いま何に困っているかによって変わるので、全体を見比べたい場合は比較の一覧から入るのが早いです。
すでに別の道具でカードを運用しているチームが移る場合、いちばん重い作業は工程表を引き直すことではなく、既存のカードを移すことです。ここに時間がかかると、移行そのものが途中で止まります。カードと一覧を持ち込む手順はTrelloからの移行にまとめてあります。ただし、自動で取り込めるのは限られた形式だけで、他の道具からの移行は手作業になる部分が残ります。この点は先に把握しておいたほうが、移行の計画が現実的になります。
最後に、道具を替えても解決しないことも書いておきます。作業の「終わり」の定義が揃っていない、報告の経路が複数ある、更新する人が1人に固定されている。この3つは、どの道具に移っても同じように起きます。依存関係の線を引く前に、この3つのうち少なくとも1つを決めてから工程表に手を付けるほうが、結果として早く落ち着きます。線は、決まったことを写す道具です。決まっていないことを線で表現しようとすると、線は増え続けます。
Q1. 依存関係は全部の作業に設定したほうがいいですか?
設定しないほうがいいです。矢印が増えるほど1つの遅れが全体を動かし、毎週すべての予定が変わる表になります。実務では、作業件数の3割以内、1つの作業に出入りする矢印は3本までを目安にします。遅れたときに後ろの担当者へ連絡が要る関係だけをつなぐ、と決めると本数は自然に収まります。
Q2. つながりの型は4つ全部を使い分ける必要がありますか?
必要ありません。実務で引く矢印の大半は「終わってから始める」で足ります。並行して進めたいものに「同時に始める」を足し、本体に付き添う作業に「同時に終える」を使う程度で、多くの進行はまかなえます。使う型が少ないほうが、あとから表を見た人にも読みやすくなります。
Q3. 同じ人が2つの作業を担当していて順番になる場合、矢印を引くべきですか?
引かないほうがいいです。それは作業のつながりではなく、人の空き具合の問題です。矢印で書くと、担当を替えたときに表が実態と合わなくなり、しかも本物の前後関係と見分けがつきません。担当者の列や担当ごとの並べ替えで表現し、矢印は作業そのものの性質だけに使います。
Q4. 表計算ソフトのままでも依存関係は再現できますか?
関数や条件付き書式である程度は再現できますが、書き方が担当者ごとに変わり、引き継げないファイルになりがちです。表計算で続けるなら、矢印は書かずに節目の日付だけを別シートに切り出して守る運用が現実的です。全部を再現しようとすると、維持する人の負担が大きくなりすぎます。