Jiraの使い方|最初のスペースをどう組み立てるか
Jiraの使い方を調べている人の多くは、機能の一覧ではなく、最初の1つ目をどう作ればよいのかを知りたがっています。画面を開くと、テンプレートがずらりと並び、企業管理対象かチーム管理対象かを聞かれ、その先に設定項目が続きます。ここで手が止まると、そのまま数週間放置されることになります。この記事では、最初のスペースを組み立てて、チームが翌週から使い続けられる状態にするまでを、決める順番のとおりに並べます。
画面を開く前に、紙に3行だけ書いておく
作り始める前に決めておくことが3つあります。この3つが決まっていないと、画面のどの選択肢を選んでも後悔します。
・何を1件として数えるか ・状態をいくつに分けるか ・誰がその状態を動かすか
1つ目は、たとえば「取引先からの依頼1件」なのか「1日の作業1つ」なのかという話です。ここが人によってばらつくと、並べたときに大きさが揃わず、進み具合を眺めても何も分かりません。目安は、1件が3日以内に終わるかどうかです。長すぎるなら分ける、短すぎるならまとめる。この基準を最初に共有しておくだけで、あとの手間が大きく減ります。
2つ目は状態です。多くのチームは、作業前、進行中、確認待ち、完了の4つで足ります。5つを超えると、動かす回数が増えて、忘れる人が出ます。3つだと、返事待ちで止まっているものと、実際に手が動いているものが同じところに並んでしまいます。
3つ目がいちばん大事です。状態を動かすのが、とりまとめている人1人だけだと、その板は必ず嘘になります。担当している本人が動かす前提で組み立ててください。この前提を置けるかどうかで、設定の作り方も変わります。
手順1、スペースを作る
公式ドキュメントによれば、作成の流れはこうです。サイドナビゲーションのスペースにカーソルを合わせ、スペースを作成を選びます。すると、テンプレートのライブラリが開きます。テンプレートは用途ごと、あるいはアプリごとにまとめられています。使いたいものを見つけて、テンプレートを使うを選び、名前を付けて、企業管理対象かチーム管理対象かを選び、作成を押します。
作成時に自動でキーが生成され、既定では作った人が所有者になります。キーも所有者も、あとからスペース設定の詳細で変えられると書かれています。ただしキーは仕事の住所になるので、最初に短く覚えやすいものにしておくほうがよいです。取引先の名前や、チームの略称が使われることが多いです。
企業管理対象とチーム管理対象の選択は、ここで迷いやすいところです。公式ドキュメントには、チーム管理対象は設定が簡単でチームの誰でも維持でき、企業管理対象は管理者が画面やスキームを設定して複数のスペースで標準化できる、という違いが書かれています。最初の1つ目なら、チーム管理対象で問題ありません。標準化が必要になるのは、スペースが増えて、部署をまたいだ集計が必要になってからです。
なお、チーム管理対象のカンバンまたはスクラムのテンプレートを使う場合、作成前に既定の作業タイプ、ステータス、ビューを調整してプレビューできると書かれています。ここで紙に書いた3行を反映しておくと、作ったあとに設定画面を探し回らずに済みます。
手順2、テンプレートは「毎日見る画面」で選ぶ
テンプレートの一覧を眺めると、どれも良さそうに見えます。選ぶ基準は1つで、毎日見る画面がどれになるかです。
板に並べて左から右へ動かす形が合っているなら、カンバンのテンプレートです。決まった期間を区切って、その中で終わらせる形にしたいなら、スクラムのテンプレートです。この2つの違いは、機能というより、仕事の入り方の違いです。依頼がいつ来るか読めない仕事は、期間で区切ると溢れます。逆に、まとまった量をあらかじめ受け取って計画する仕事は、期間で区切ったほうが集中できます。
5人から数十人のチームで、取引先からの依頼を受けて進める仕事なら、カンバン側から始めるほうが失敗しにくいです。期間を区切る運用は、区切りごとに計画と振り返りの会議が要ります。その時間を確保できないまま形だけ入れると、区切りが形骸化して、ただの締切になります。
事務や営業の部門であれば、その部門向けのテンプレートも用意されています。公式ドキュメントには、マーケティング、法務、人事といったビジネス部門でタスクを追跡するためのスペースを作れると書かれています。ただし、テンプレートに入っている名前は、そのままだと自分たちの言葉と合わないことが多いので、次の手順で直します。
手順3、列と名前を、自分たちの言葉に直す
作った直後にやることは、列の名前の見直しです。既定では、作業前、進行中、完了の3つが用意されています。紙に書いた4つ目の状態、たとえば確認待ちがあるなら、ここで足します。
名前を直すときの基準は、誰が読んでも同じ意味に取れるかどうかです。「確認待ち」だけだと、誰の確認かが分かりません。「先方確認待ち」「社内確認待ち」のように、待っている相手が分かる名前にしておくと、板を見ただけで次に動く人が決まります。板の目的は状況を記録することではなく、次に誰が動くかを見えるようにすることです。
作業タイプの名前も、同じ考え方で直します。ストーリーやバグといった言葉は、開発の現場から来ているので、事務のチームには通じません。依頼、修正、確認、といった自分たちの言葉に置き換えられる範囲は置き換えてください。ここを英語やカタカナのまま残すと、参加する人が「これは自分の仕事ではない」と感じます。
直す作業は、30分もあれば終わります。この30分を惜しんで既定のまま配ると、あとから「使いにくい」という声が返ってきます。使いにくさの正体が、機能ではなく言葉であることは、とても多いです。
手順4、スプリントを使うかどうかを、先に決める
スクラムのテンプレートを選ぶと、スプリントという期間の区切りが使えます。使うかどうかで、完了したカードの扱いが変わります。公式ドキュメントには、次のように書かれています。
スプリント機能を有効化していない場合、これらの作業項目は 14 日後にボードから自動的に削除されます。 出典: support.atlassian.com
ここでいう削除は、記録が消えるという意味ではなく、ボードの表示から外れるという意味です。同じページには、スプリントを有効にしている場合、完了時にそれらの作業項目はバックログに戻されない、とも書かれています。
この挙動を知らないと、2週間後に「終わったカードが消えている」と驚くことになります。逆に、この挙動があるおかげで、板が古い完了カードで埋まらずに済みます。板を掃除する手間が要らない、と考えておくとよいです。
判断の目安は、振り返りをするかどうかです。区切りごとに集まって、終わった分を眺めて次を決める習慣があるなら、スプリントを使う価値があります。その習慣が無いまま入れると、期間が終わっても誰も見ないので、区切る意味がありません。まずは使わずに始めて、必要になったら有効にする、という順番で構いません。
手順5、1件目を最後まで通してみる
設定が終わったら、本番のデータを入れる前に、1件だけ通しのリハーサルをします。実際に来た依頼を1件立てて、担当を付けて、期日を入れて、列を最後まで動かします。
このとき見るのは、次の3つです。1件を立てるのに何回クリックしたか。担当を付けるときに迷わなかったか。完了に動かしたあと、それが誰に伝わったか。3つ目が特に重要です。完了にしたことが誰にも伝わらないなら、報告のために別の連絡がもう1本必要になります。それでは手間が増えるだけです。
通しでやってみると、たいてい1つか2つ、直したい点が出ます。入力しなくてよい項目が必須になっている、期日の意味が担当者と自分で違う、といったものです。この時点で直しておけば、10人が使い始めたあとに全員へ説明し直す必要がなくなります。
リハーサルは、できれば自分以外にもう1人巻き込んでやってください。作った本人は迷わないので、迷う場所が見つかりません。作った経緯を知らない人に触ってもらうと、どこで手が止まるかが分かります。
既存の表から移す
いま表計算ソフトで管理している一覧があるなら、それを取り込めます。公式ドキュメントの一覧には、CSVインポーターを使って作業項目を作成する、という項目が用意されています。
移すときにいちばん大事なのは、移す前に列を減らすことです。長く使ってきた表には、途中で足したまま誰も見ていない列が必ずあります。それをそのまま持ち込むと、新しい道具の中に古い散らかりが再現されます。移す前に、過去3か月で一度でも参照した列だけを残してください。半分以下になることが多いです。
行についても同じです。終わっているもの、判断が保留のまま1年動いていないもの、担当が不明なもの。これらを全部持ち込むと、最初に開いた画面が古い行で埋まります。動いているものだけを移して、残りは元の表を保管しておけば足ります。過去の記録が必要になる場面は、思っているより少ないです。
取り込みの作業自体は、日付の書式でつまずくことが多いです。表計算ソフト側で見えている表示と、実際に保存されている値が違うことがあるので、取り込む前に日付の列だけ形式を揃えておくと、やり直しが減ります。
期日という言葉の意味を、1つに決めておく
設定の中でいちばん揉めるのが、期日です。同じ欄を、人によって別の意味で使うからです。ある人は「この日までに終わらせたい希望日」として入れ、別の人は「取引先と約束した納品日」として入れます。両方が混ざった板は、赤くなっている行を見ても、本当に危ないのかどうか判断できません。
決め方は2通りあります。1つは、期日を約束した日だけに限定して、希望日は入れないやり方です。この場合、期日が入っているカードは全部が対外的な約束なので、遅れたときの重みが揃います。もう1つは、着手予定日と期日を分けて持つやり方です。どちらでも構いませんが、混ぜないことだけは守ってください。
もう1つ揉めるのが、担当者です。2人以上を担当にできる仕組みだと、結果として誰も動かなくなります。関わる人が複数いるなら、担当は必ず1人にして、他の人は関係者として付けてください。担当欄が空のカードは、板の上では存在しないのと同じです。2週間後の点検で、担当が空のカードが何枚あるかを数えておくと、運用の緩みがすぐ分かります。
期日と担当の2つが揃っていれば、板は最低限の役割を果たします。逆に、この2つが埋まっていない状態でいくら項目を足しても、状況は見えるようになりません。設定を増やしたくなったら、まずこの2つの記入率を確かめるほうが先です。
自動化は、最初に2つだけ入れる
自動化の機能は面白いので、つい何本も組みたくなります。最初に入れてよいのは、多くても2つです。増やすほど、なぜカードが勝手に動いたのかが分からなくなり、板への信頼が落ちます。
最初に効くのは、期日が近づいたものを担当者へ知らせる仕組みです。人は忘れます。忘れたことを人に指摘されるのは気分が悪いですが、仕組みから知らされるなら角が立ちません。とりまとめている人が催促する回数が減るという意味でも、効果が大きいです。
もう1つ入れるとしたら、完了になったときに依頼した人へ知らせる仕組みです。完了したことが伝わらないと、依頼した側は状況を聞きに来ます。その問い合わせに答える時間が、いちばん削れる無駄です。
反対に、最初から入れないほうがよいのが、状態を自動で変える仕組みです。条件を作り込むほど、実態と合わない動き方をしたときに原因を追えなくなります。しばらく手で動かして、動かし方の癖が見えてから組んだほうが、無駄が出ません。
なお、自動化には利用できる回数の枠があります。無料の範囲では1つの契約あたり月150ステップまでで、有料のプランでは1ユーザーあたりの計算に変わります。定期実行の仕組みを増やすと、想像より早く枠が減ります。ルールの数と、それぞれの中の処理の数を、月に一度見ておくと安心です。
見るだけの人を、どう置くか
板を作ると、必ず「見るだけでいいから入れてほしい」という人が現れます。役員、営業の担当、隣の部署の窓口。この人たちをどう扱うかで、運用の負荷が変わります。
いちばん避けたいのは、見るだけの人が増えた結果、板の言葉が説明用に変わっていくことです。社内向けの報告資料のような書き方になり、実務で使う人にとっては情報量が減ります。板は動かす人のものであって、見る人のためのものではありません。この線引きを最初に決めておくと、あとで揉めません。
見る人向けには、要約の画面か、決まった条件を保存したフィルターを渡すのが現実的です。全部を見せるのではなく、その人が知りたい範囲だけを切り出して渡します。役員なら期日が今月のもの、営業なら自分の取引先のもの、という具合です。切り出して渡すと、質問の量が目に見えて減ります。
権限の設計は、料金のプランによって使える範囲が変わります。ロールと権限や外部との共同作業は有料のプランで開く項目として整理されているため、無料の範囲で始めている場合は、見る人を招く前に、どこまで分けられるのかを確認しておいたほうがよいです。
出先から触れる状態にしておく
現場に出ている人や、移動が多い人が参加するチームでは、机に戻らないと更新できない状態にしていると、板は必ず遅れます。料金ページの機能一覧には、iOSアプリとAndroidアプリがすべてのプランで使える項目として並んでいます。
導入の初日に、参加者全員に入れてもらってください。あとから案内すると、入れる人と入れない人に分かれます。入れていない人の分だけ、とりまとめている人が代わりに打ち込むことになります。
出先から触る前提にすると、設計も変わります。入力欄が多いと、小さい画面では埋めきれません。必須の欄は、題名と担当と期日の3つに絞ってください。詳しい内容は、あとから机に戻ったときに足せばよい話です。その場で1件立てておけることのほうが、内容が詳しいことより価値があります。
写真を添付できる点も、現場のある仕事では効きます。状況を文章で説明するより、1枚撮って貼るほうが早く、誤解も減ります。ただし添付が増えると容量を使うので、無料の範囲で始めている場合は、上限に近づいていないかを月に一度見ておくと安心です。
誰を、どの順番で招くか
全員を同時に招くのは、うまくいかないことが多いです。最初に招くのは、いちばん件数を持っている2人か3人にしてください。この人たちが毎日開くようになれば、板の中身が実態に追いつきます。中身が空の板に全員を招いても、開いた人は何も見つけられずに帰ります。
2週間ほど回して、中身が溜まってから残りを招きます。このとき、使い方の説明は3行で足ります。何を1件として立てるか、状態をどう動かすか、誰が動かすか。紙に書いた3行と同じものです。マニュアルを作る必要はありません。作っても読まれません。
社外の協力会社を入れるかどうかは、権限の設定と、契約上の扱いを確認してから決めてください。相手の会社の情報管理の規程で、外部のサービスに書き込めない場合があります。ここは道具の設定の話ではなく、相手との取り決めの話なので、先に一言確認しておくと手戻りがありません。
最初の2週間で測る5つのこと
導入がうまくいっているかどうかは、感覚ではなく数で見たほうが確実です。2週間後に、次の5つを数えてください。
・カードを1回でも動かした人の数 ・立てられたカードの数 ・確認待ちの列で3日以上止まっているカードの数 ・期日が空のままのカードの割合 ・とりまとめている人が代わりに動かしたカードの数
1つ目が、参加している人数より少なければ、まだ定着していません。5つ目が全体の2割を超えているなら、入力の手数が多すぎるか、動かす責任が曖昧です。3つ目は、確認する人が滞留の原因になっているサインです。この5つを見れば、次に何を直せばよいかが自動的に決まります。
数え方は、保存済みのフィルターを作っておくと毎回楽になります。条件を決めて名前を付けて置いておけば、開くだけで数字が出ます。毎週同じフィルターを開く習慣を作ると、点検が5分で終わります。
つまずきやすい場所と、その直し方
よく聞く詰まり方を、原因ごとに並べます。
カードが動かない場合、たいてい原因は「動かす場面が仕事の流れに入っていない」ことです。週に一度、同じ画面を全員で開く時間を作ると、その前日に更新が進みます。人を責めても直りません。
粒度がばらつく場合は、3日以内に終わるかという基準を配り直します。それでも揃わないなら、揃わないままでも困らない仕組みにするほうが早いです。件数ではなく、期日で見るようにすれば、大きさのばらつきは問題になりません。
通知が多すぎて誰も見なくなる場合は、通知の設定を絞ります。全員に全部を届けると、結果として誰も読まなくなります。自分が担当のものと、自分が作ったものだけに絞るのが基本です。
板が重くなってきた場合は、表示する範囲を絞ります。公式ドキュメントには、ボードには一度に最大5,000件の作業項目を表示できるとあり、超えるとエラーが出てフィルターの更新を求められると書かれています。動いているものだけを出す設計にしておけば、この上限に当たることはまずありません。
設定を触りたい要望が出てきた場合は、3人以上から同じ要望が出たものだけを反映してください。1人の要望をすべて反映すると、覚えることが増えて、参加し始めた人が離れます。
スペースを増やすかどうかの判断
しばらく回していると、2つ目を作りたくなる場面が来ます。新しい取引先が増えた、別の部署が使いたいと言ってきた、種類の違う仕事が混ざって見づらくなった。どれもよくある理由ですが、増やす前に一度立ち止まったほうがよいです。
増やすと、キーの種類が増えます。人は3つか4つまでは覚えますが、それを超えると、どのキーが何の仕事だったかを毎回確かめることになります。また、スペースが分かれると、横断して眺めるための設定が別途必要になります。数十人の規模で、案件ごとにスペースを作っていくと、半年後には一覧が縦に長くなって、探すだけで時間がかかります。
分ける基準として使いやすいのは、参加する人の顔ぶれが違うかどうかです。同じ人たちが出入りするなら、分ける必要はありません。中の分類で足ります。参加者がほとんど重ならないなら、分けたほうが通知も権限もすっきりします。
もう1つの基準は、状態の並びが違うかどうかです。作業前、進行中、確認待ち、完了で回る仕事と、受付、見積、承認、納品で回る仕事は、同じ板に載せると列が増えて誰も追えなくなります。列の並びが根本的に違うなら、分けるのが正解です。
AIに最初の形を作らせる方法もある
自分で組み立てるかわりに、AIに作らせる手順も用意されています。公式ドキュメントによれば、スペーステンプレートの画面でRovoで作成を選び、作りたい内容をプロンプトで説明すると、スペース名、スペースキー、作業タイプ、ステータス、ビューといった設定が提案されます。スプリントを有効にするかどうかもそこで選べます。文書へのリンクを添えたり、CSVや画像やPDFを渡して文脈を補うこともできると書かれています。
利用にはRovoクレジットを使います。同じページには、スペース作成のプロンプトを1回入れるたびに組織のRovoクレジット残高から10クレジットを消費すること、そしてRovoクレジットの割り当てが2026年12月3日から適用されることが書かれています。
使うかどうかの判断は、手間の問題より、設計を自分で持つかどうかの問題です。提案された設定をそのまま使うと、あとで直すときに、なぜその形なのかを説明できません。たたき台として出させて、列の名前と作業タイプは自分たちの言葉に直す、という使い方なら噛み合います。
使い続けられる形かどうかで選ぶ
ここまでの手順を眺めると分かるとおり、決めることの大半は道具の設定ではなく、チームの取り決めです。何を1件にするか、状態をいくつにするか、誰が動かすか。この3つは、どの道具を使っても同じように決めることになります。
道具の側で違うのは、その取り決めをどれだけ少ない手数で表現できるか、という点です。設定の自由度が高い道具ほど、決められることが増えるかわりに、決めなければ動きません。反対に、選べる幅が狭い道具は、決める手間が少ないかわりに、細かい事情に合わせられません。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという考え方は、この決める手間を減らす方向の設計です。
他の道具でどう組み立てるのかを見ておくと、選ぶときの目が変わります。カンバンの板を軸にした道具の組み立て方はTrelloとの比較に、割り当てと期日を軸にした道具についてはAsanaとの比較に整理があります。文書と一緒に置く形についてはNotionとの比較、国内で使われている道具についてはBacklogとの比較とJootoとの比較、見た目で状態を追う道具についてはmonday.comとの比較にまとめてあります。並べて見るなら比較の一覧が入口です。
最初の1か月を越えるための、いちばん短い道
最後に、実際に定着したチームがやっていたことを1つだけ挙げます。毎週決まった時間に、同じ画面を全員で開いていました。10分で足ります。開くだけです。そこで一件ずつ確認しなくても、その時間があると分かっているだけで、前日に更新が進みます。
反対に、定着しなかったチームに共通しているのは、板を見る場面が無いことです。設定は丁寧に作られていて、テンプレートも選ばれていて、招待も済んでいる。それでも、誰も開かない時間が続けば、中身は止まります。道具の使い方の話は、最後にはここへ戻ってきます。
その10分の使い方にも、少しだけ工夫の余地があります。上から順に全部を読み上げると時間が足りなくなるので、見るのは2か所だけにしてください。確認待ちで止まっているものと、期日が今週のものです。この2か所を見れば、動かせる人がその場で決まります。終わったものを眺める時間は要りません。終わったことは、板に残っているだけで足ります。
組み立てが終わったら、どこまでできるかはできることに、費用の考え方は料金にまとめてあります。いま使っている板から動かす場合の手順はTrelloからの移行に、預けるデータの扱い方は安全性の考え方に、それ以外の疑問はよくある質問で扱っています。
Q1. 最初のスペースは企業管理対象とチーム管理対象のどちらで作ればよいですか?
最初の1つ目ならチーム管理対象で問題ありません。公式ドキュメントには、チーム管理対象は設定が簡単でチームの誰でも維持でき、企業管理対象は管理者が画面やスキームを設定して複数スペースで標準化できると書かれています。標準化が必要になるのは、スペースが増えて部署をまたいだ集計が要るようになってからです。
Q2. スプリントを使わないと、完了したカードはどうなりますか?
公式ドキュメントには、スプリント機能を有効にしていない場合、完了列の作業項目は14日後にボードから自動的に削除されると書かれています。記録が消えるのではなく、ボードの表示から外れるという意味です。板が古い完了カードで埋まらずに済むので、掃除の手間は減ります。
Q3. 表計算ソフトの一覧をそのまま取り込んでよいですか?
取り込む前に列と行を減らしてください。公式ドキュメントにはCSVインポーターを使って作業項目を作成する手順が用意されていますが、過去3か月で一度も参照していない列や、1年動いていない行まで持ち込むと、新しい道具の中に古い散らかりが再現されます。動いているものだけを移すのが基本です。
Q4. 導入がうまくいっているかは、どう確かめればよいですか?
2週間後に、カードを1回でも動かした人の数、立てられたカードの数、確認待ちで3日以上止まっているカードの数、期日が空の割合、とりまとめ役が代わりに動かした数の5つを数えます。1つ目が参加人数より少なければ定着していません。5つ目が2割を超えるなら入力の手数が多すぎます。