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会計事務所の進捗管理をエクセルでどこまでやるか|期限を落とさない形にする

2026年9月7日 ・ Pinateca編集部

会計事務所の進捗管理をエクセルで組もうとすると、他の業種の工程表とは違う難しさに突き当たります。顧問先の数だけ同じ工程が並列で走り、それぞれに期限があり、担当者が複数の顧問先を掛け持ちしている。この3つが重なる形は、一般的なガントチャートの作りでは表現しきれません。この記事では、表の形をどう決めるか、必要な列は何か、期限をどう見せるか、共有したときにどこが壊れるか、そして表計算を続けたほうがよい場合とそうでない場合の境目までを扱います。所内の誰が見ても同じ判断ができる表を作ることをゴールにします。

会計事務所の進捗管理が難しい3つの理由

一般的なプロジェクトの工程表は、1つの案件に対して工程が一列に並びます。会計事務所の場合、この形が当てはまりません。理由は3つあります。

第一に、同じ工程が顧問先の数だけ並列で走ります。50件の顧問先があれば、資料回収、記帳、確認、申告という同じ流れが50本同時に動いています。1本ずつ工程表を作ると50枚の表ができ、全体を見渡せなくなります。かといって1枚にまとめると、行数が数百になります。

第二に、期限が外から決まっています。自分たちで調整できる締切ではなく、制度で決まった期日に向かって全件を間に合わせる必要があります。1件が遅れたときに他をずらす、という調整が効きません。だからこそ、遅れの発見が早いかどうかが直接的に効いてきます。

第三に、担当者が複数の顧問先を掛け持ちしています。誰かが遅れているとき、その原因が本人の作業量なのか、顧問先からの資料が届いていないのかを区別する必要があります。区別できないと、対処のしようがありません。この2つは表の上ではまったく別の状態として扱うべきものです。

この3つを踏まえると、会計事務所の進捗表に求められるのは、美しい工程表ではなく、「いま止まっている件と、その理由が一覧で分かること」だと分かります。ここを外して見た目から作り始めると、埋まらない表ができます。

現場でよく聞くのは、市販のガントチャートのテンプレートを持ってきて作り始めたが、顧問先の数だけ棒が並んで読めなくなった、という話です。ガントチャートは、工程が時間軸に沿って前後する仕事を表すのに向いた形式です。同じ工程が並列で走り、期限が全件で共通している仕事には、そもそも向いていません。会計事務所の進捗管理は、工程表というより一覧表として設計したほうがうまくいきます。

表の形を先に決める

最初に決めるべきなのは、1行を何にするかです。ここが決まらないまま列を作ると、あとで作り直しになります。選択肢は2つです。

1つ目は、1行1顧問先の形です。左に顧問先名を並べ、右に工程を列として並べます。資料回収、記帳、残高確認、試算表、確認依頼、申告、といった工程が横に並び、それぞれのセルに完了日や状態を入れます。全体を見渡しやすく、行数が顧問先の数で収まるのが利点です。月次の管理には、この形が向いています。

2つ目は、1行1作業の形です。顧問先と工程の組み合わせごとに1行を作ります。行数は顧問先の数に工程の数を掛けたぶんになるので、50件で6工程なら300行です。担当者ごとの絞り込みや、期限順の並べ替えがしやすいのが利点です。年に一度の申告のように、工程が長く複雑な場合はこちらが向きます。

多くの事務所では、月次を1つ目の形で、年次を2つ目の形で持つのが現実的です。1枚の表で両方をやろうとすると、どちらにも中途半端になります。シートを分けてください。

どちらの形を選ぶにしても、顧問先の一覧は別のシートに1つだけ置き、他のシートからは参照する形にします。顧問先名を各シートに手で書くと、表記が揺れて集計できなくなります。株式会社を前に付けるか後ろに付けるか、旧商号のままにしているか、所内での通称や屋号だけで呼んでいるか。この揺れは顧問先の数だけ増えていくので、一覧シートで正式な表記を1つ決め、そこから参照する形にしてしまうのが確実です。

必要な列と、増やしてはいけない列

顧問先の数だけ行が伸びる表では、列を1つ足すたびに、埋める手間が顧問先の数だけ掛け算で増えます。多くの表が破綻するのは、列が足りないからではなく、多すぎて誰も埋めなくなるからです。

最低限必要なのは次の5つです。

・顧問先名。一覧シートから参照する形にして、直接入力しないこと ・担当者。組織名ではなく個人名を入れること ・状態。未着手、資料待ち、作業中、確認待ち、完了の5つに絞ります ・期限。制度上の期日ではなく、所内で設定した内部期限を入れること ・備考。止まっている理由を1行で書く欄

このなかで、会計事務所に特有なのが「資料待ち」という状態です。一般的な進捗管理では、未着手か作業中かの二択にすることが多いのですが、この業種では顧問先から資料が届かないことが遅れの主要な原因になります。作業中と資料待ちを区別しておかないと、担当者の手が空いているのか埋まっているのかが分かりません。

内部期限を入れるのも重要です。制度上の期日をそのまま入れると、全件が同じ日付になり、優先順位がつきません。所内で「制度上の期日の2週間前」といった内部期限を設定し、その日付で管理します。制度上の期日そのものは、顧問先の一覧シートに持たせておけば足ります。

逆に、増やさないほうがよい列もあります。進捗率のパーセント、想定工数、実績工数といった数字の列です。これらは埋めるのに時間がかかるわりに、埋まったところで判断が変わりません。工数の集計が本当に必要になったら、そのときに別の仕組みで取ればよい話です。顧問先1件あたり数字の列を2つ足すだけで、50件なら毎月100か所の入力が新しく増えます。繁忙期に真っ先に飛ばされるのがこの手の列で、飛ばされた列は空欄のまま残り、表そのものが信用されなくなります。

工程の分け方を決める

会計事務所の仕事は、顧問先から資料が届くところから始まり、所内で処理し、顧問先に返すところで終わります。この一本の流れをどこで切って列にするかが、工程の分け方です。切る場所を増やすほど更新の手間が顧問先の数だけ膨らみ、減らすほど「誰の手で止まっているのか」が読めなくなります。

月次であれば、資料回収、記帳、残高確認、試算表作成、所内確認、顧問先への報告の6つ程度が扱いやすい単位です。これより細かく分けると、1件あたり10か所以上を毎月更新することになり、繁忙期に必ず埋まらなくなります。

工程を決めるときの基準は、「その工程で止まったときに、対処が変わるかどうか」です。記帳で止まっているときと、所内確認で止まっているときとでは、動かす相手が違います。だから分ける意味があります。逆に、対処が同じになる工程は分けずにまとめてください。

工程の名前は、所内で実際に使っている言葉に合わせます。教科書的な名前を付けると、担当者が自分の作業と対応づけられず、入力を間違えます。呼び方が人によって違うなら、この機会に統一してください。表を作る作業は、言葉を揃える機会でもあります。

年次の申告は工程が長くなるので、月次と同じ粒度では収まりません。ここは1行1作業の形にして、工程を行として縦に並べるほうが扱いやすくなります。同じ表に混ぜないでください。

期限の見せ方と条件付き書式

内部期限の列を作っても、顧問先が数十件並んだ表を上から1件ずつ日付で見比べる人はいません。色で分かるようにします。条件付き書式で、次の3段階を設定してください。

・内部期限を過ぎていて、状態が完了でない行は赤 ・内部期限まで3営業日以内で、状態が完了でない行は黄 ・状態が完了の行は薄い灰色にして目立たなくする

数式で書くと、期限の列をD、状態の列をEとして、赤の条件は「=AND($D2<TODAY(), $E2<>"完了")」のような形になります。列だけを固定し、行は相対参照にするのがポイントです。適用する範囲は、顧問先名から備考までの1行分に広げておいてください。そうすると、どの顧問先の行が危ないかを横一列で読めます。

「資料待ち」の行だけを別の色にするのも有効です。この色が多い週は、遅れの原因が所内ではなく顧問先側にあることが一目で分かります。担当者に作業を急がせても解決しない状況なので、対処が変わります。所長や管理者が見るべきなのは、この色の割合です。

今日の日付を表の上のほうに置き、そこから計算する形にしておくと、翌月に使い回すときに1か所を書き換えるだけで済みます。TODAY関数を直接使うと開くたびに変わるので、月次の記録として残したい場合は基準日を手で入れる形にしてください。どちらがよいかは用途によります。進行中の管理なら自動、記録として残すなら手入力です。

色の種類は3つか4つまでにしてください。所内でこの表を見るのは、担当者と管理者と所長の3者で、見る目的がそれぞれ違います。色が5つ6つと増えると、この3者が同じ色を同じ意味で読むという前提が崩れ、会議のたびに色の説明から始めることになります。凡例を表の上に書いておくと、繁忙期に入った応援の人でも読めます。

顧問先ごとの状況を所内で共有する

進捗表を作る目的は、記録を残すことではなく、所内で同じ判断ができるようにすることです。そのためには、誰がどのタイミングで何を見るのかを決めておく必要があります。

担当者が見るのは、自分の行だけです。フィルタで自分の担当分に絞った状態を保存しておけば、開いた瞬間に今日やるべきことが分かります。全件が見える必要はありません。むしろ全件が見えると、自分の行を探す手間が増えます。

管理者が見るのは、色の付いた行だけです。赤と黄で絞り込み、止まっている理由を確認する。全件を見ようとすると時間が足りません。備考欄に「先方の請求書が未着」と1行あれば、その赤は担当者の遅れではなく顧問先側の事情だと分かり、声をかける相手が変わります。逆に、備考欄が空欄のまま赤になっている行があれば、そこだけ声をかければ済みます。

所長や代表が見るのは、さらに絞った数字です。今月の完了件数と、期限を過ぎている件数の2つだけで足ります。顧問先の総数に対して完了が何件かという割合まで出しておくと、月の半ばの時点で巻き返せるかどうかの見当がつきます。この割合を関数で別のシートに置いておけば、月次でも年次でも同じ形で見られます。

見る人ごとに必要な情報が違う、というのは当たり前のようですが、1枚の表で全員をまかなおうとすると忘れられがちです。フィルタの保存と、集計用の小さなシートを1つ用意するだけで、この3層は作れます。

資料が届かない件をどう管理するか

会計事務所の遅れの原因は、所内の作業量よりも、顧問先から資料が届かないことに起因する割合が高いと言われています。この部分を進捗表でどう扱うかが、実務では最も効きます。

まず、資料待ちの状態にした日付を記録します。状態の列とは別に「資料依頼日」という列を1つ足してください。この日付から今日までの日数が計算できると、どれだけ待っているのかが数字で出ます。7日を超えたら再度連絡する、という基準を決めておけば、催促のタイミングを人の記憶に頼らずに済みます。

次に、催促した記録を残します。備考欄に「9月4日に再依頼」と1行書くだけで足ります。顧問先の経理担当と事務所の担当者が電話とメールの両方でやり取りしていると、この1行がないだけで、依頼したつもりの資料が誰からも催促されないまま月末を迎えます。逆に、担当者と補助者の両方が同じ顧問先に連絡してしまうこともあります。顧問先から見ても、同じ話を何度もされるのは印象がよくありません。

催促の記録は、誰に伝えたかまで書いておくと後で効きます。顧問先の社長に伝えたのか、経理の担当者に伝えたのか、税理士の担当者から先方の顧問社労士に伝わっているのか。会計事務所の資料回収は、伝えた相手と資料を持っている相手が別人であることが珍しくありません。「9月4日、経理の方に再依頼。社長は不在」と書いておけば、次に連絡する人が同じ相手を空振りせずに済みます。所内で使う略号を決めて、社長は代表、経理は経理、といった形に揃えておけば、備考欄が長くなりすぎることもありません。

そして、資料待ちの件数を月ごとに数えてください。特定の顧問先で毎月同じことが起きているなら、それは個別の遅れではなく、やり取りの仕組みそのものを見直す話になります。回収の方法を変える、締切を早める、といった相談の材料になります。

この管理は、表計算でも十分にできます。ただし、催促の記録をメールやチャットに残して進捗表には書かない運用にすると、情報が2か所に分かれます。どちらか一方に寄せてください。

共有したときに壊れるところ

1人の担当者が自分の受け持つ顧問先だけを見ている間は、表はたいてい正しく保たれます。問題は、他の担当者と共有してからです。会計事務所でよく聞くのは次の4つです。

1つ目は、ファイルが分裂することです。共有フォルダに置いていても、誰かが開いている間は他の人が編集できないため、「読み取り専用で開いて、あとで直す」という運用になります。その「あとで」が積み重なると、手元のコピーが増えます。しかも読み取り専用で開く回数がいちばん増えるのは繁忙期なので、表が分裂するのは、正確さがいちばん必要な時期です。ファイル名に日付を入れても、どの版に誰の顧問先の最新が入っているかは、開いて中を見るまで分かりません。

2つ目は、条件付き書式が崩れることです。新しい顧問先が増えて行を途中に挿入すると、その行だけ色の範囲から抜け落ちます。前年のシートから顧問先の行をまとめて貼り付けると、古い期限を前提にした書式が一緒に入ってきます。作った本人は直せますが、他の人には直せません。行の追加は既存行の複製で行う、貼り付けは値のみを使う、という2つのルールを最初に決めておくと、崩れる速度はかなり落ちます。

3つ目は、並べ替えです。誰かが期限順に並べ替えると、他の人が見ていた行の位置が変わります。顧問先名の五十音順を頼りに自分の担当分を探している人がいると、その人は別の顧問先の状態を書き換えます。書き換えられた側は自分の行が完了になったことに気づかないので、その顧問先だけが誰の目にも触れないまま期日に近づきます。並べ替えではなく、自分の画面だけで絞り込めるフィルタ機能を使うルールにしてください。

4つ目は、入力が管理者1人の仕事になってしまうことです。担当者が自分の行を更新せず、管理者が聞いて回って代わりに入力する形になると、その人が休んだ週にすべてが止まります。しかも、聞かれる側は同じ説明を毎週繰り返すことになり、双方の時間が削られます。訪問や巡回で外に出ている担当者が多い事務所では、この聞き取りが電話でしか成立せず、管理者の1日が電話で埋まります。

繁忙期の運用をどう変えるか

会計事務所の進捗管理は、時期によって求められるものが変わります。同じ運用を通年で続けようとすると、繁忙期に破綻します。

閑散期は、週に1回の更新で足ります。月曜の朝に前週の状況を確認し、遅れている件だけを話す。この形であれば、更新の負担はほとんどありません。

繁忙期は、更新の頻度を上げる必要があります。ただし、更新の項目を増やしてはいけません。頻度を上げて項目も増やすと、確実に埋まらなくなります。繁忙期こそ、状態と備考の2つだけを毎日更新する形に絞ってください。

繁忙期に効くのは、朝の短い確認です。表を画面に出したまま、赤と黄の行だけを見て、止まっている理由を確認する。10分で終わります。全件を見ようとすると時間が足りなくなるので、色の付いた行だけに絞るのが続けるコツです。

もうひとつ、繁忙期の前に一度、顧問先の一覧を棚卸ししてください。解約した顧問先が残っていたり、担当者が変わったまま反映されていなかったりすると、その分だけ表が信用されなくなります。信用されない表は見られなくなり、見られない表は更新されなくなります。

守秘義務と、表の扱い

進捗表そのものは数字が入っていない管理用の資料ですが、そこに並んでいるのは顧問先の名前です。誰がどこを担当しているか、どこが遅れているかという情報は、外に出せば意味を持ちます。扱いのルールを決めておく必要があります。

第一に、保存場所を1か所に限定します。所内の共有フォルダに置き、個人の端末のデスクトップにコピーを作らないと決めます。持ち帰って作業する場合の扱いも、あらかじめ決めておいてください。

第二に、外部の相手には見せない前提で作ります。備考欄には「先方から資料が来ない」といった内容が書かれます。これは所内の記録であって、顧問先に見せるものではありません。顧問先に進捗を伝えるなら、別の形で必要な情報だけを出します。

第三に、退職や異動のときの引き継ぎ手順を決めておきます。担当者が変わったときに表の担当者列を書き換えるだけでなく、その人が持っていたファイルのコピーがないかを確認します。

離れた場所で働く体制についても、行政が指針を出しています。

円滑に業務を遂行する観点からは、働き方が変化する中でも、労働者や企業の状況に応じた適切なコミュニケーションを促進するための取組を行うことが望ましい。職場と同様にコミュニケーションを取ることができるソフトウェア導入等も考えられる。 出典: mhlw.go.jp

在宅で作業する担当者がいる事務所では、進捗表が唯一の共通の情報源になることがあります。その表が誰の手元にあるか分からない状態は、管理上も情報の扱いの上も好ましくありません。1つの場所にしか存在しない形を作れるかどうかが、実は表の作り方より重要です。なお、労働時間の扱いや業務委託の契約に関する判断は、所轄の労働基準監督署や専門家に確認してください。

エクセルの上限と、実際に困るところ

Excelのワークシートは1,048,576行、16,384列まで使えることが公式の仕様として公開されています。顧問先が数百件あっても、行数が足りなくなることはありません。

実務で困るのは上限ではなく、行数が増えたときの見づらさです。300行を超えたあたりから、スクロールしないと今日の話にたどり着けなくなります。対処は2つあります。完了した行を月ごとに別シートへ移すこと、そして色の付いた行だけを表示するフィルタを保存しておくことです。

もうひとつ困るのが、開くのが遅くなることです。顧問先がこれから増えることを見越して、条件付き書式の範囲を列の最後まで指定しておくと、使っていない百万行ぶんが毎回計算されます。実際に使う行数ぶんだけに範囲を絞り直すと、たいていは元の速さに戻ります。

ウィンドウ枠の固定も忘れないでください。顧問先名と担当者の列を左に貼り付けておくと、右へスクロールしても何の行を見ているかが分かります。月次の表は工程が横に6つ並ぶので、右端の報告の列まで動かした時点で顧問先名は画面から消えます。似た名前の法人が並んでいる事務所ほど、ここを固定していないと確認のために左へ戻る往復が増えます。

担当者の負荷を見えるようにする

進捗表のもうひとつの役割は、誰に仕事が寄っているかを見ることです。会計事務所では担当者が複数の顧問先を掛け持ちしているので、件数だけでは負荷が分かりません。

簡単な方法は、担当者ごとに「作業中」と「確認待ち」の件数を数えることです。関数で集計すれば、担当者名の横に件数が並びます。特定の1人だけが2倍の件数を抱えているなら、割り振りを見直す材料になります。件数だけでも、何もないよりはるかに判断できます。

もう一歩進めるなら、顧問先ごとに規模の区分を持たせます。大、中、小の3段階で十分です。件数に重みを掛けて合計すれば、単純な件数より実態に近い負荷が出ます。ただし、この区分を細かくしすぎると維持できなくなるので、3段階までにしてください。

負荷を見る目的は、誰かを責めることではありません。繁忙期に入る前の割り振りを決めるためです。入る前に分かっていれば手を打てますが、入ってから分かっても動かせません。月に1度、閑散期のうちに確認しておくのが実用的です。

なお、この集計を人事評価に直接使うのは避けたほうが安全です。件数が多いことが働きぶりの良さを意味するとは限らず、そう扱われると分かった瞬間に、担当者は表に正確な情報を入れなくなります。表の目的は状況を見ることであって、人を測ることではありません。

属人化への備え

会計事務所の進捗表は、作った人が異動や退職でいなくなると、その時点で更新が止まりがちです。しかもこの業種では、その人が担当していた顧問先の引き継ぎと、表の引き継ぎが同時に起きます。新しい担当者は顧問先の事情を覚えながら、同時に表の仕組みまで読み解くことになり、たいていは表のほうが後回しになります。

備えとして、表の1行目に説明を書いておいてください。状態の5つの意味、内部期限の決め方、色の意味、更新の締切。これだけで十分です。とくに「資料待ち」と「確認待ち」の使い分けは、書いておかないと人によって逆に使われます。顧問先の返事を待っている状態を確認待ちと呼ぶ人と、所内の上長の確認を待っている状態を確認待ちと呼ぶ人が同じ表に混ざると、色の割合が何も意味しなくなります。

数式についても、複雑なものは避けてください。前の工程の完了日から次の期限を自動計算する、といった仕組みは便利ですが、作った本人以外は直せなくなります。顧問先ごとに決算月が違う事務所では、この種の自動計算が特定の月だけ合わなくなり、原因を追える人がいないまま何年も放置されます。手で日付を入れる形にしておけば、間違いは見た瞬間に分かります。

表の作り直しに備えて、元になるデータを素直な形で持っておくことも大事です。1つのセルに複数の情報を詰め込んだり、状態を色だけで表したりしていると、別の仕組みへ移すときに人が読み直すことになります。色は情報として取り出せません。状態は必ず文字列の列として持ってください。

そして、更新の締切を曜日で固定します。顧問先への訪問が入りにくい曜日を選び、その日の夕方までに自分の担当分を直す形にしておくと、外出の多い担当者でも守れます。曜日で決まっていれば、忘れたときに気づけます。気づいたら直す、という運用は例外なく止まります。

エクセルを続けたほうがよい場合

ここまで注意点を並べましたが、顧問先の数と所員の数によっては、いまの表を作り替える必要はありません。

・進捗表を更新するのが1人か2人で、他は見るだけ ・顧問先の数が数十件で、担当者が全員同じ場所にいる ・在宅で作業する人がおらず、同時に開く場面がない ・顧問先に進捗を見せる必要がない

この条件であれば、エクセルで十分です。会計事務所は年に何度か動かせない期日を抱えているので、道具を入れ替えるなら、その期日から最も遠い時期を選んで、所員全員が新しい形を覚え終える期間まで確保する必要があります。そこまでして替える理由がいまの表に見当たらないのなら、替えないという判断がそのまま正解です。

逆に、次のどれかが所内で起きているなら、表の作りを直しても解決しません。担当者が自分で更新してほしいのに管理者が聞いて回っている、在宅と出社が混在していて同時に触る場面がある、進捗表とは別にチャットやメールで状況をやり取りしていて人が手で同期している、「あの件どうなった」という確認が1日に何度も発生している、といった状態です。

とくに3つ目が効きます。顧問先とのやり取りはメールで進み、所内の相談はチャットや口頭で進み、表にはその結果だけが後から書かれる。この形だと、資料が届いた日も、催促した日も、顧問先が返事をくれない理由も、すべて表の外に置かれたままになります。表を見た管理者は、それが古い情報だと知っているので、結局は担当者に口頭で聞き直します。聞き直しが当たり前になった表は、更新する意味を失って空欄が増えていきます。

公開情報から見た、道具を替える境目

顧問先の名前が並ぶ表を所外のサービスに置くかどうかは、月額の数字を並べただけでは決まりません。先に見るべきなのは、何で区切っているかです。

案内ページの料金には、無料プランは5人までとボード10個までで、6人目または11個目のボードから1人あたり月500円(税抜)になると書かれています。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという設計で、ガントチャートもチャットもカスタムフィールドも無料の範囲に入ります。所内で見るだけという立場の人を招く場合、その人数は課金の対象に入らないという記載もあります。所員が5人までの事務所であれば、費用をかけずに試せる範囲です。

一方、機能で区切る型のサービスもあります。Trelloの公式の料金ページには、2026年9月4日時点で、無料プランについて「ワークスペースあたり最大10枚のボード」「ワークスペースあたり10コラボレーターまで無料」という記載があり、カレンダーやタイムラインといったビューはPremiumプランの機能として並んでいます。機能ごとの対応はTrelloとの比較に表でまとめてあります。

使える見え方の種類そのものを確認したい場合はできることに、カンバンやガントを含む8種類のボードと使い分けが載っています。顧問先を縦に、日付を横に並べて誰に仕事が寄っているかを見る形も、この中に含まれます。他のサービスとの並びは比較の一覧から確認でき、国内で使われることの多いものとしてBacklogとの比較Jootoとの比較、汎用的な道具としてNotionとの比較も同じ形式で並んでいます。

顧問先の情報を所外のサービスに置くことへの不安については、安全性の考え方に、どこまでを公開しどこからを閉じるかの整理が載っています。すでに別のサービスにカードを作っている場合の取り込みはTrelloからの移行に条件が書かれており、残りの疑問はよくある質問にまとまっています。

最後に、替えるかどうかを判断するときの現実的な進め方を挙げておきます。全部を一度に移そうとしないでください。月次の顧問先を10件だけ選び、1か月だけ新しい形で回してみる。それで所内の確認の回数が減るなら、続ける価値があります。減らないなら、原因は道具ではなく運用にあります。どちらの結論であっても、1か月で分かることを1年悩む必要はありません。

Q1. 1行1顧問先と1行1作業のどちらで作るべきですか?

月次の管理は1行1顧問先、年次の申告は1行1作業が向いています。月次は工程が短く全体を見渡したいので横に工程を並べる形が読みやすく、年次は工程が長く担当者ごとの絞り込みが要るので縦に伸ばす形が扱いやすくなります。1枚で両方をやろうとせず、シートを分けてください。

Q2. 進捗の状態はいくつに分けるのが適切ですか?

未着手、資料待ち、作業中、確認待ち、完了の5つで足ります。会計事務所で重要なのは「資料待ち」を独立させることです。顧問先から資料が届かない状態と、担当者が作業している状態を分けておかないと、手が空いているのか埋まっているのかが判断できません。

Q3. 期限の列には制度上の期日を入れるべきですか?

所内で設定した内部期限を入れてください。制度上の期日をそのまま入れると全件が同じ日付になり、優先順位がつきません。制度上の期日の2週間前といった内部期限で管理し、制度上の期日は顧問先の一覧シートに持たせておけば十分です。

Q4. エクセルから別の仕組みに移る目安はありますか?

担当者が自分で更新してほしいのに管理者が聞いて回っている状態、在宅と出社が混在して同時に触る場面がある状態、進捗表とチャットやメールが別々にあって人が手で同期している状態のいずれかが当てはまれば検討の時期です。全件を移さず、月次の10件だけで1か月試してください。

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