カンバンツールをローカルで動かす選択肢|自社サーバに置く前に決めること
カンバンツールをローカルで動かしたい、という相談は、たいてい「データを外に出せない」という一言から始まります。ところが話を聞いていくと、求めているものは人によってまったく違います。自社サーバに置きたいのか、社外のネットワークから遮断したいのか、ただ手元のアプリで軽く動かしたいのか。この記事では、ローカルという言葉が指す3つの形を分けたうえで、実際に自社サーバへ置ける製品と公開されている費用、置いたあとに毎月発生する仕事、そしてクラウドのままで要件を満たせる場合の見分け方を順に整理します。
ローカルで動かしたいと言うとき、求めているものは3つに分かれる
進行のとりまとめをしている人から「ローカルで動くカンバンはないか」と聞かれたとき、その裏側にある動機はおおむね3つに分かれます。この3つを混ぜたまま道具を探すと、必要のない構築費を払うか、要件を満たさないものを選ぶかのどちらかになります。
1つ目は、契約や規程の都合です。取引先との秘密保持契約で「データを国内の自社管理下に置くこと」と書かれている、あるいは親会社の情報セキュリティ規程で外部サービスの利用に承認が要る。この場合に必要なのは、データの保管場所と管理主体を説明できる状態であって、必ずしも自社サーバである必要はありません。
2つ目は、ネットワークの都合です。工場や研究所のように、そもそも社外のインターネットに出られない区画で使いたい。これは本当に自社サーバでなければ成り立ちません。閉じた網の中に立てる以外の答えがありません。
3つ目は、費用と身軽さの都合です。人数分の月額を払いたくない、あるいは1人で使うから自分の機械だけで完結させたい。この動機なら、自社サーバを立てる手間のほうが月額よりずっと高くつく可能性があります。
現場でしばしば起きるのは、1つ目の動機なのに2つ目の答えを選んでしまうことです。規程を読み直すと「外部サービスの利用は禁止」ではなく「利用にあたり管理部門の承認を得ること」と書かれている、というのはよくある話です。まず自分がどの動機で動いているのかを確定させてください。ここが決まると、選択肢は一気に絞れます。
ローカルという言葉が指す3つの形を切り分ける
技術的にも、ローカルには段階があります。区別せずに製品を比べると、話がかみ合いません。
・自社サーバ設置型(オンプレミス)。自社が管理する機械にソフトを入れ、社内の網からだけ見えるようにする形です。データは完全に自社の中に残ります ・自分で借りたサーバに置く形(自己ホスト)。クラウドの仮想サーバを自分で契約し、そこにソフトを入れます。機械は借り物ですが、ソフトの管理は自分たちです ・手元の機械だけで動く形(デスクトップアプリ)。1台の中で完結し、他の人とは共有できません
このうち、5人から数十人のチームで板を共有したいという要件だと、3番目は最初から外れます。共有できないものは、進行のとりまとめには使えないからです。実際に候補になるのは1番目か2番目のどちらかです。
そしてもう1つ、誤解の多い形があります。クラウドサービスが配っているデスクトップアプリです。画面が独立したウィンドウで開くので手元で動いているように見えますが、中身はブラウザの窓であり、データはサービス側にあります。ネットワークが切れれば見えなくなります。デスクトップアプリがあるからローカルで使える、と読むと判断を誤ります。
クラウドに置いたとき、個人データの扱いはどうなるのか
「外部サービスにデータを置くと個人情報の第三者提供になる」という理解で自社サーバを選ぼうとしている場合、その前提は事実と少し違います。個人情報保護委員会は、ガイドラインに関する質疑応答の中で判断の基準を示しています。
当該クラウドサービス提供事業者が、当該個人データを取り扱わないこととなっている場合には、当該個人情報取扱事業者は個人データを提供したことにはならないため、「本人の同意」を得る必要はありません。 出典: ppc.go.jp
同じ質疑応答では、取り扱わないこととなっている場合とは、契約条項によって外部の事業者がサーバに保存された個人データを取り扱わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場合等が考えられる、と説明されています。つまり判断の軸は、データが自社の機械にあるかどうかではなく、契約と権限設定でどう定められているかにあります。
もちろん、これは法の解釈にかかわる話です。自社の契約や規程が具体的にどう読めるのかは、社内の法務や所管の窓口、専門家に確認してください。ここで言いたいのは、自社サーバにしなければ規程を満たせないと決めつける前に、契約書の条項と設定の確認で済む可能性を先に潰しておくべきだ、ということです。判断の材料を集める入口としては、各サービスの安全性の考え方のページに、データの保管場所や暗号化、権限の分け方がどう書かれているかを読むところから始めるのが現実的です。
自社サーバに置けるカンバンツールには何があるか
実際に自分の機械へ入れられる板の道具は、大きく2種類あります。無償で公開されているものと、商用で販売されているものです。
無償で公開されているものの代表は次の3つです。いずれもソースコードが公開されていて、自分のサーバに入れて使えます。
・Kanboard。公式サイトにMITライセンスで配布されていると書かれており、日本語を含む30以上の言語に翻訳されていると案内されています。機能を意図的に絞っている、と公式が明言しています ・Wekan。GitHub上のライセンス表示はMITです。板の操作感はカードを列の間で動かす形で、板そのものの機能は充実しています ・PLANKA。公式サイトでは無償のCommunity版と、有償のPro版・Enterprise版が案内されています。Pro版の自社サーバ設置は1ユーザーあたり月額7.20ユーロ(年払い)、月払いなら7.90ユーロと公開されています
商用のオンプレミスでは、Backlogがエンタープライズプランとして自社サーバ設置型を提供しています。公式ページには「お客様のサーバにインストールしてご利用いただけるライセンスです」と書かれており、人数課金型の年額が公開されています。
商用のオンプレミスはいくらかかるのか
Backlogのエンタープライズプランの料金は、公式ページに人数ごとの年額として掲載されています。2026年9月4日時点の表示では、10人までが年額150,000円、20人までが300,000円、50人までが450,000円、100人までが600,000円で、いずれも税抜と明記されています。501人以上は50人増えるごとに75,000円ずつ増える、とも書かれています。
なお同じページには、2027年1月1日からプランが変わる旨の案内が出ています。公式のお知らせによれば、2026年12月31日で現行プランの新規契約が終了し、翌日から新しいプランが始まります。エンタープライズプランについては、適用開始日から新しい料金が適用され、機能や利用環境はそのまま維持されると書かれています。契約を検討しているなら、この時期の前後で条件が変わることを前提に見積もりを取ってください。同じ会社のクラウド側の条件はBacklogとの比較にまとめてあります。
自社サーバ設置には、ライセンス費のほかに機械の費用がかかります。10人程度なら仮想サーバ1台で足りますが、それでも月額数千円から1万円台の費用と、初期の構築工数が乗ります。年額15万円のライセンスに、サーバ代と構築の人件費を足したものが実際の総額です。この総額を、人数分の月額と正面から比べてください。
自分で立てたあとに毎月発生する仕事
無償のツールを選ぶと、費用は下がりますが仕事が増えます。この増える仕事を見積もらずに決めると、半年後に止まります。
自社サーバに置くということは、その機械の安全を自分たちが引き受けるということです。情報処理推進機構は、サーバ用のオープンソースソフトウェアについて製品情報とセキュリティ情報をまとめたページを公開し、その活用方法をこう案内しています。
定期的に本ページを参照していただき、利用しているソフトウェア製品に関する情報収集および、ソフトウェア製品のセキュリティ対策に活用してください。 出典: ipa.go.jp
同じページには、掲載している情報を週1回程度の頻度で更新している、とも書かれています。裏を返せば、脆弱性の情報はその頻度で更新され続けているということです。
自社サーバ設置で毎月やることを具体的に並べると、次のようになります。
・本体とその土台(Webサーバ、データベース、実行環境)の更新の確認と適用 ・バックアップの取得と、実際に戻せるかどうかの確認 ・利用者の追加と削除、退職者の権限の停止 ・ディスク容量と動作の重さの監視 ・障害が出たときの一次対応
これらを誰が担当するのかを決めずに導入すると、「詳しい人が1人だけ知っている状態」になります。その人が異動したときに誰も触れなくなる、というのが自社設置でいちばんよく聞く壊れ方です。
サポートが終わる可能性を織り込んでおく
自社サーバに置けば永久に使い続けられる、という考え方も危険です。提供側の方針が変わることがあります。
Atlassianは、Server製品のサポートを2024年2月15日で終了すると公式に案内し、実際に終了しています。自社サーバに置いていた利用者は、クラウドに移るか、上位のData Centerに切り替えるかの判断を迫られました。手元に置いていたからといって、条件が変わらないわけではありません。
無償のツールでも同じことが起きます。Mattermostが公開していたFocalboardは、現在はコミュニティ側の組織に移されたリポジトリで公開されています。PLANKAは、GitHub上のライセンス表示が一般的なオープンソースのライセンス名ではなく独自の名称になっています。無償で使い始めた道具の条件が、途中で変わることはあります。
だから自社サーバ設置を選ぶときは、データを外に出す手段があるかどうかを最初に確認してください。CSVで書き出せるのか、APIで取れるのか。出せる形が確保されていれば、方針が変わっても移れます。出せないなら、それは自社サーバに置いていても自由ではありません。
クラウドのままでよい場合の見分け方
すべてのチームが自社サーバにすべきだ、という話ではありません。むしろ、次の条件に当てはまるならクラウドのままのほうが総額も手間も少なくて済みます。
・社外のインターネットに出られる環境で仕事をしている ・板に載せるのはタスク名、担当、期限、簡単なやり取りが中心で、契約書や個人情報そのものは別の場所で管理している ・情報システムの担当が専任でいない、または他の業務と兼任している ・利用者が数十人までで、しかも増減がある
とくに4つ目は効きます。自社サーバ設置は人数が増えても費用が急には上がりませんが、人数が減っても下がりません。出入りの多いチームだと、クラウドの人数課金のほうが実態に合います。逆に、100人を超えて人数が安定しているなら、自社サーバ設置の年額が有利に働く場面が出てきます。
半分だけ手元に置くという運用
全部を自社サーバに移すか、全部をクラウドに置くか、の二択で考えると行き詰まります。実務では、置き場所を情報の種類で分ける形がよく機能します。
板に載せるのは、作業の名前、担当、期限、状態だけにする。設計図や契約書、個人情報を含むファイルは、社内のファイルサーバや既存の文書管理に置き、板からはファイル名か整理番号で参照する。こうすると、板そのものには機微な中身が入らないので、クラウドを使う判断がしやすくなります。
この分け方には副次的な効果もあります。板が軽くなるので、現場の人が開くようになります。板に大きなファイルをぶら下げると、読み込みが遅くなり、現場では開かれなくなります。進行のとりまとめで大事なのは、全員が毎日開くかどうかです。何を載せないかを決めることは、続けるための設計でもあります。
費用を正面から比べるための計算の仕方
自社サーバ設置とクラウドを比べるときは、次の項目をそろえてください。片方だけ都合よく数えると、必ず判断を誤ります。
・ライセンス費または月額(人数分) ・サーバの費用(自社設置のみ。物理なら購入と保守、借りるなら月額) ・構築にかかる工数(自社設置のみ。初期の1回だが、時給に換算して足す) ・毎月の運用工数(自社設置のみ。更新、バックアップ、問い合わせ対応) ・障害が起きたときに止まる時間の見積もり
たとえば10人のチームで、商用のオンプレミスを選ぶと年額15万円に加えてサーバ代と構築工数が乗ります。同じ10人でクラウドの人数課金型を選ぶと、1人あたり月額1,000円台の製品なら年額12万円台に収まります。この規模だと、費用だけを理由に自社サーバへ動く理由はほとんどありません。動く理由があるとすれば、それは費用ではなく、最初に挙げた2つ目の動機、つまりネットワークが閉じているという条件のほうです。
各社の人数あたりの金額を並べて確認したいなら、料金のページと比較の一覧を先に見ておくと、比較の土台がそろいます。
移すときに壊れやすいところ
自社サーバへ移す、あるいは自社サーバから移る場合、いちばん失われやすいのは板の中身ではなく、板の外側にある情報です。
・カードに付いた添付ファイル。書き出しの対象に含まれないことがあります ・コメントの履歴と発言者。名前が消えて本文だけ残る形になりがちです ・担当者の割り当て。移行先で利用者を作り直すと、紐づけが外れます ・列の並び順と、板ごとの決めごと。これは記録に残っていないことが多いので、移す前に文章にしてください
移行の前に、いまの板の運用ルールを1枚の文章にまとめておくと、移した後の混乱がかなり減ります。どの列に何を置くのか、誰がカードを動かすのか、完了の定義は何か。この3つが書かれていれば、道具が変わっても運用は続きます。既存の板からの取り込みについては、Trelloからの移行のページに、どのデータが自動で運べてどこから手作業になるのかが整理されています。
板の道具そのものを選ぶときの順番
ここまでの判断を踏まえて、実際に選ぶ順番を整理します。上から順に潰していくと、迷う時間が短くなります。
1つ目、ネットワークが閉じているかどうかを確認する。閉じているなら自社サーバ設置一択なので、無償のものか商用のオンプレミスかを費用と運用体制で決めます。閉じていないなら次へ進みます。
2つ目、規程と契約を読み直す。禁止なのか、承認が要るだけなのかを確定させます。承認が要るだけなら、承認に必要な資料をサービス側の公開情報から集められるかを見ます。
3つ目、板に載せる情報の種類を決める。機微な中身を載せないと決められるなら、選択肢は大きく広がります。
4つ目、人数と板の数で費用を比べる。ここで初めて金額の話になります。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという考え方の道具なら、必要な機能が上位プランに隠れていないかを毎回確かめる手間が省けます。何ができるかはできることのページで、板とガントとやり取りが同じ場所にそろっているかを確認できます。
5つ目、いま使っている道具から移せるかを確認する。移せないなら、その候補は選ばないほうが安全です。
いまの道具のままでよい場合
乗り換えないほうがよい場合も、はっきりしています。カードを動かす操作にチームが慣れていて、板が毎日開かれていて、規程上の問題も出ていないなら、道具を変える理由はありません。道具の入れ替えは、それ自体が数週間の混乱を生みます。混乱に見合う理由がないなら、そのままが正解です。
カードのやり取りが軽く、人数も枠に収まっている段階なら、Trelloとの比較にあるような他のサービスの条件と見比べても、いまの形を崩す必要はないでしょう。手元に置きたいという話が出てくるのは、たいてい取引先から要求が来たときか、扱う情報の種類が変わったときです。そのきっかけが来ていないなら、動くのはまだ早い、と考えて構いません。
社内の承認を通すために用意しておく資料
外部サービスの利用に承認が要る会社では、承認を取る作業そのものが導入の山場になります。ここでつまずいて自社サーバへ流れるチームが多いのですが、必要な資料はだいたい決まっています。先に集めておけば、承認は思っているより早く通ります。
管理部門から求められるのは、おおむね次の5点です。
・データがどこの国のどの設備に保存されるか。所在地が公開されているか、問い合わせで回答が得られるか ・通信と保存の暗号化がどうなっているか。通信の暗号化はほぼ全社が対応していますが、保存時の暗号化は書き方が分かれます ・アクセス権限をどこまで細かく分けられるか。閲覧だけの人を作れるか、外部の協力会社を特定の板だけに入れられるか ・利用者の追加と削除を誰がどう行うか。退職者の権限をその日のうちに止められる仕組みがあるか ・データを取り出す手段と、契約が終わったあとのデータの扱い
このうち承認で引っかかりやすいのは3つ目と4つ目です。板は取引先や協力会社と共有する前提で使われることが多く、社外の人が社内の全部の板を見られる作りだと、そこで止まります。逆に、社外の人を特定の板だけに入れられる仕組みが説明できれば、話は前に進みます。
もう1つ、承認の場で聞かれやすいのが障害時の連絡です。止まったときにどこを見れば状況が分かるのか、過去にどれくらい止まったのかを、公開されている稼働状況のページで示せると説得力が出ます。自社サーバに置く場合は、この説明を自分たちで用意することになります。誰がいつどう連絡するのかを、導入前に文章にしておいてください。
閉じた網の中に立てるときの進め方
ネットワークが社外に出られない区画で板を使いたい場合は、自社サーバ設置しか道がありません。この場合の進め方には、順番があります。
まず、置く機械を決めます。既存の社内サーバに相乗りさせるか、専用に1台用意するかです。相乗りは費用が浮きますが、他の業務と同じ機械が止まると被害が広がります。板は毎日全員が開くものなので、止まったときの影響は思っているより大きいと考えてください。
次に、更新をどう当てるかを決めます。閉じた網の中では、ソフトの更新ファイルを外から持ち込む手順が要ります。誰がどの頻度で持ち込み、いつ当てるのかを最初に決めておかないと、1年後には古いまま放置された状態になります。放置された自社設置のサーバは、クラウドを使うより危険な状態になりえます。
3つ目に、バックアップの戻し方を先に試します。取れているつもりで戻せない、というのは自社設置でいちばん多い失敗です。導入の1か月目に、あえて別の機械へ戻す作業を1回やってください。この1回をやったかどうかで、数年後の被害の大きさが変わります。
4つ目に、利用者の登録と削除の手順を紙に落とします。クラウドなら管理画面の1操作で済むことが、自社設置では手順書がないと属人化します。人が増えるほど、この手順の有無が効いてきます。
最後に、動かし始めてから3か月は、板の使われ方を毎週見てください。カードが動いていない列、誰も触っていない板が出てきたら、それは道具の問題ではなく運用の設計の問題です。置き場所を変えても、この問題は解決しません。
置き場所を変えても解決しないこと
自社サーバに移せば板が使われるようになる、ということはありません。板が使われなくなる原因は、置き場所とはほとんど関係がないところにあります。
よく聞くのは、カードを動かす人が1人に偏っている状態です。担当者が自分で自分のカードを動かす形になっていないと、とりまとめ役が全員分を代わりに動かすことになります。この形は必ず破綻します。1人が全部を写している限り、板は実態から遅れ続けます。
もう1つは、板の列が細かすぎる場合です。工程を10列に分けると、どの列に置けばよいか迷う時間が発生します。迷いが発生する道具は使われません。列は4つか5つに収めて、迷わない状態を作るほうが続きます。
3つ目は、板を見なくても仕事が回ってしまう構造です。指示がチャットで飛び、板は事後の記録になっている。この形だと板は二重入力の手間でしかなくなります。板を「見る場所」から「そこで決まる場所」に変えないと、置き場所をどう工夫しても使われません。具体的には、依頼を出すときに必ず先にカードを作る、という一点だけを決めるところから始めると変わります。カードを作らずに口頭やチャットで頼んだ仕事は受けない、という運用を2週間続けると、板に載っていない仕事が急速に減ります。
4つ目は、完了の定義が人によって違う場合です。作業した本人は終わったつもりでも、確認する側から見ると終わっていない。この食い違いがあると、完了の列にカードが溜まったまま誰も片付けなくなります。何をもって完了とするのかを1行で決めて、板のどこかに書いておいてください。列の名前を「完了」ではなく「確認待ち」と「確認済み」に分けるだけで解消することもあります。
自社サーバ設置の検討は、こうした運用の設計と切り離して進められます。むしろ、運用が回っていない状態のまま置き場所だけを変えると、構築の手間だけが増えて何も良くなりません。順番としては、運用の形を整えてから置き場所を決めるほうが、失敗が少なくなります。
板の道具を選ぶ側からの見え方
板を提供する側から見ると、ローカルで動かしたいという相談には、費用の話と規程の話が混ざっている場合がほとんどです。切り分けの入口として、自社サーバに置く前に確認しておきたいことをまとめておきます。
・データを取り出す手段が公開されているか。CSVかAPIのどちらかで全件が取れるなら、あとから移れます ・誰がその機械を面倒みるのかが決まっているか。決まっていないなら自社設置は選ばないほうが安全です ・板に載せる情報の種類を、載せるものと載せないもので線引きできているか ・料金体系が人数と入れ物の数だけで決まるのか、機能ごとに分かれているのか。後者だと、必要な機能が上位に置かれていて総額が読めません
質問の形でまとまった情報を先に見ておきたい場合は、よくある質問のページに、データの扱いと契約まわりの答えが並んでいます。板を1つに集めることの狙いは、機能の多さではなく、全員が同じ場所を見る状態を作ることにあります。置き場所の議論は、その目的から逆算して決めるのがいちばん失敗しません。
Q1. カンバンツールを完全に自社サーバだけで動かせますか?
可能です。KanboardやWekanのように、ソースコードが公開されていて自分のサーバに入れられるものがあります。商用でもBacklogがエンタープライズプランとして自社サーバ設置型を提供しており、10人までなら年額150,000円(税抜、2026年9月4日時点)と公開されています。ただし更新やバックアップは自分たちの仕事になります。
Q2. デスクトップアプリがあればローカルで使えますか?
いいえ。クラウドサービスが配っているデスクトップアプリの多くは、独立したウィンドウでブラウザ画面を表示しているだけで、データはサービス側にあります。ネットワークが切れると使えません。手元にデータを置きたいなら、自社サーバに入れる形の製品を選ぶ必要があります。
Q3. クラウドに置くと個人情報の第三者提供になりますか?
個人情報保護委員会の質疑応答では、クラウド事業者が個人データを取り扱わないこととなっている場合には本人の同意は不要、と示されています。判断の軸は保存場所ではなく契約条項とアクセス制御です。自社の契約でどう読めるかは、法務や専門家に確認してください。
Q4. 無償のツールと有償のクラウド、どちらが安く済みますか?
人数が少なく担当者を置けないなら、有償のクラウドのほうが総額は安くなりがちです。無償のツールはライセンス費が0円でも、サーバ代、構築の工数、毎月の更新とバックアップの工数が乗ります。10人規模なら、その工数の人件費だけで年額のライセンス費を超えることが珍しくありません。