プロジェクト管理ツールの比較|料金の形で分かれる3つの型
「プロジェクト管理 ツール 比較」で検索してたどり着く記事の多くは、機能の一覧表を並べています。ガントチャートの有無、カンバンの有無、通知の有無。しかし、その表を上から下まで読んでも、どれを選ぶかは決まりません。理由は単純で、いま候補に挙がるようなツールは、機能の並びがほとんど同じだからです。
実際に選択を分けているのは、機能の数ではありません。料金がどう区切られているかです。人が増えたときに費用が上がるのか、欲しい機能が1つ増えたときに上がるのか、それとも何を増やしても上がらないのか。この区切り方の違いが、チームの運用の形をそのまま決めます。
この記事では、プロジェクト管理ツールを料金の形で3つの型に分けます。それぞれについて、費用が増える条件、向いているチーム、そして詰まりやすいところを順に見ていきます。特定のサービス名を挙げて金額や上限を断定することはしません。プランは変わりますし、確かめていない数字を並べても判断の役には立たないからです。判断の直前に各社の公式ページで確認する、その確認の仕方を持ち帰ってもらうことが目的です。
機能の一覧表を並べても、比較は決まらない
比較記事を10本読んでも決まらないという状態は、読み手の理解が足りないから起きるのではありません。表の作りかたに原因があります。
機能の一覧表は、あるかないかの丸とバツで埋まっています。ところが、この丸は粒度がまったく揃っていません。ある道具の「ガントチャートあり」は、タスクの期間を横棒で並べられるという意味です。別の道具の「ガントチャートあり」は、依存関係を線でつないでクリティカルパスを計算するという意味です。同じ丸なのに、できることは何倍も違います。逆に、後者の高機能なものは上位プランでしか使えず、前者は最初の段階から使えるといったことも普通に起きます。丸の数を数える作業には、ほとんど意味がありません。
もう1つの問題は、表に載らない項目に決着がついていることです。とりまとめる立場の人が本当に気にしているのは、道具を入れられるかどうかではなく、入れたあとにチームが使い続けてくれるかどうかです。ここは機能の丸バツには表れません。現場でよく聞くのは、導入から2週間ほどで誰も更新しなくなり、結局チャットの流れと口頭の確認に戻ったという話です。更新されなくなった進捗表は、白紙より危険です。数字が並んでいるので、見た人は正しいと思い込みます。
そして、使い続けてもらえるかどうかを最も強く左右するのが、料金の形です。1人あたりで課金される仕組みだと、見るだけの人にも席の費用がかかります。すると、とりまとめる人は「この人の分まで払う価値があるか」を毎回考えることになり、席を絞ります。席を絞れば、板を見られない人が出ます。板を見られない人には、チャットや口頭で伝えるしかありません。こうして、道具を入れたのに情報が二重に流れる状態ができあがります。
つまり、料金の形は財務の話にとどまらず、誰が板に入れるかを決め、誰が板に入れるかが運用の成否を決めます。だから比較の軸を料金の形に置き換えると、機能表では見えなかった差がはっきり出ます。
比較の軸を「料金の形」に置き換える
料金の形は、大きく3つに分かれます。何を数えて請求額を決めているか、その1点で分類できます。
1つ目は人数で課金する型です。1人あたり月額いくら、という形で、使う人の数に単価を掛けます。世の中のプロジェクト管理ツールで最も多い形です。2つ目は機能の段で課金する型です。無料、標準、上位、法人向けといった段階があり、上に行くほど使える機能が増えます。多くの場合は人数課金と組み合わさっていて、単価が段ごとに変わります。3つ目は定額の型です。人数や案件数にかかわらず、契約そのものに対して一定額を払います。
同じ機能を持っていても、この3つでは費用の増え方がまったく違います。人数で課金する型は、チームが大きくなるほど比例して増えます。機能の段で課金する型は、1人が欲しがった機能のために全員分の単価が上がります。定額の型は、人を増やしても増えないかわりに、別のところに区切りが置かれます。
以下、それぞれについて、費用が増える条件と向くチーム、そして詰まりやすいところを順に見ます。読みながら、自分のチームの人数と、動いている案件の数と、見るだけの人の数を思い浮かべてください。この3つの数字が分かっていれば、どの型が自分に効くかは自然に決まります。候補となる各サービスの位置づけを横に並べて確認したい場合は比較の一覧から入ると全体像がつかめます。
人数で課金する型:席の数がそのまま費用になる
最も多い形です。1人あたり月額いくらという単価があり、それに人数を掛けて請求されます。年間払いにすると単価が下がる仕組みを持つものが多く、月ごとの支払いより1割から2割ほど安くなる設定がよく見られます。
この型の良いところは、計算がわかりやすいことです。10人のチームなら単価の10倍。人が抜ければその分だけ減ります。予算を組む立場からすると、来期の人員計画がそのまま費用の見通しになるので説明しやすい形です。小さく始めて、必要になったら足すという運用にも合っています。
費用が増える条件は、使う人が増えたときだけではない
見落とされやすいのは、席を数える範囲です。作業する人だけを数えるのか、見るだけの人も数えるのか、外部の協力者を数えるのか。ここが製品によってまったく違います。閲覧だけのアカウントを無料枠として別に用意しているものもあれば、閲覧でも1席として数えるものもあります。ゲストとして招いた社外の人を、本メンバーと同じ単価で数える設計もあります。
もう1つは最低契約席数です。実際に使うのが4人でも、契約上は5席から、といった下限を置いている製品があります。小さいチームでは、この下限の分がそのまま無駄になります。逆に人数が多いチームでは影響しません。自分のチームの規模によって効き方が変わる条件なので、必ず契約前に確認してください。
3つ目は、年の途中で人を足したときの扱いです。追加した時点から日割りで請求されるのか、次の更新まで待つのか、あるいは追加した瞬間に1年分がまとめて発生するのか。人の出入りが多いチームでは、この違いが年間の総額を大きく動かします。プロジェクトごとに外部の協力者が入れ替わる形で仕事をしているなら、ここは特に重要です。
この型が向くチーム
人数で課金する型が向くのは、全員が手を動かすチームです。関わる人の全員がタスクを持っていて、全員が板を更新するなら、席の数と実際の稼働はほぼ一致します。1人分の費用に1人分の働きが対応するので、無駄が出ません。
人の増減が少ないチームにも向きます。年間払いで単価を下げられるうえ、予算の見通しが立てやすいからです。逆に言えば、人数が読めない状況では年間払いの恩恵を受けにくくなります。
また、席ごとの権限を細かく分けたい組織にも合っています。1人ずつ契約している構造なので、誰に何を見せるかを個人単位で管理する仕組みが整っている製品が多くなります。監査や情報の取り扱いに厳しい要件があるなら、この型が持つ管理のきめ細かさは利点になります。データをどう預かるかという考え方については安全性の考え方に整理されているので、社内の確認事項と照らし合わせるときの参考になります。
この型で詰まりやすいところ
詰まるのはほぼ1点、見るだけの人です。
進行をとりまとめていると、手は動かさないが状況は知っておきたいという立場の人が必ず出てきます。営業の担当者、上長、他部署の窓口、発注元。この人たちに席を渡すと、人数が一気に増えます。10人のチームに見るだけの人が8人付くと、費用は倍近くになります。それを避けて席を渡さないと、その人たちに向けた報告を別に作ることになります。週次の報告資料を手で作り直す時間が発生し、板の情報と資料の情報がずれ始めます。
現場でよく聞くのは、この報告資料の作成に毎週2時間から3時間かかっているという話です。年に直せば100時間を超えます。席の費用を惜しんだ結果、その何倍もの人件費が別の場所で消えている状態です。比較のときは、席の費用だけでなく、席を渡さなかった場合に発生する手間まで並べて見てください。
もう1つの詰まりは、退職や異動のたびに席の整理が必要になることです。使わなくなった席をそのままにしておくと払い続けることになるので、棚卸しの運用が要ります。とりまとめる人の仕事がまた1つ増えます。
機能の段で課金する型:欲しい1つのために全員分が上がる
無料、標準、上位、法人向けといった段階を持ち、上の段に行くほど使える機能が増える形です。多くの製品は人数課金と組み合わせていて、段ごとに1人あたりの単価が変わります。ここでは段の設計そのものが費用を決める点に注目します。
段の分け方には共通の傾向があります。下の段では、板とタスクの基本的な操作ができます。中間の段で、日程を横棒で見る画面、繰り返しの自動処理、権限の細かい設定などが加わります。上の段で、組織全体の管理、監査の記録、ログインの一元管理といった、情報システムの部門が求める要素が入ります。
費用が増える条件は、機能の追加ではなく「誰が欲しがったか」
この型で費用が動く瞬間は、機能が増えたときではありません。誰か1人が上の段の機能を必要とした瞬間です。
たとえば、工程を日程の帯で見たいという要望が出たとします。その機能が中間の段にあるなら、単価は中間の段のものに変わります。ここで重要なのは、要望を出したのがとりまとめ役の1人だけであっても、多くの場合は全員分の単価が上がるという点です。段はアカウント単位ではなく、契約や組織の単位で選ぶ設計が一般的だからです。20人のチームで、1人のために全員の単価が上がる。この構造を理解しておかないと、見積もりが想定の何倍にもなります。
もう1つ、費用の跳ね上がりが起きやすいのが、外部との接続やログインの一元管理を求められたときです。これらは上の段や法人向けの段に置かれることが多く、しかも法人向けの段は個別見積もりで公開価格が出ていない場合があります。社内の情報システム部門が要件を出してきた段階で、費用の桁が変わることがあります。要件を先に聞いておくのが安全です。
この型が向くチーム
段で課金する型が向くのは、必要な機能がはっきりしているチームです。何が必要かが分かっていれば、その機能が含まれる最も低い段を選べます。余計なものに払わずに済むので、無駄が出ません。
段階的に大きくなる予定があるチームにも合います。最初は下の段で始めて、必要になったら上げる。この動きが設計として想定されているので、移行の手間がほとんどありません。データを持ったまま段だけ上げられます。
もう1つ、無料の段が実用に耐える製品なら、小さいチームは費用ゼロで長く使えます。人数の上限や板の枚数の上限が置かれていることが多いので、自分のチームがその内側に収まるかどうかを先に数えてください。
この型で詰まりやすいところ
最大の詰まりは、1つの機能のために全員分を上げる判断を迫られることです。上げれば全員分の費用が増え、上げなければその機能を諦めることになります。とりまとめる人はこの選択を毎回抱えます。
さらに厄介なのは、上げないと決めたときの回り道です。日程の帯が使えないなら表計算ソフトで工程表を作る。自動処理が使えないなら手で通知を送る。この回り道は費用として計上されないので、見積もりの比較には現れません。しかし時間は確実に消えています。工程表を1人が引き直している間、他の人はその表を見られません。更新が終わるまで、チーム全体の情報が古いまま止まります。
もう1つ、段の内容は変わります。今日の下の段にあった機能が、来年には中間の段に移ることがあります。逆もあります。長期の計画を立てるときは、いま見えている段の構成が続く前提で組まないほうが安全です。
各サービスがどの機能をどの段に置いているかは、Asanaとの比較やmonday.comとの比較で扱っています。どちらも段の設計に特徴があり、どの機能がどこから使えるかが選択を分けます。開発の現場で使われてきた課題管理型のツールについてはBacklogとの比較に、国内発の板型ツールとの違いはJootoとの比較にまとめてあります。
定額の型:人数を気にせず増やせるかわりに、上限の置き場所が変わる
契約そのものに対して一定額を払う形です。人数を数えないので、何人で使っても金額が変わりません。近年、この形を採る製品が増えています。
この型の意味は、費用の予測がつくことだけではありません。席の数を気にしなくてよくなるので、見るだけの人を板に入れられます。営業の担当者も、上長も、他部署の窓口も、全員が同じ画面を見られます。すると、週次の報告資料を作り直す作業が不要になります。板を見れば分かるからです。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという設計は、この考え方をさらに進めたものです。段を上げないと使えない機能を作らず、区切りを単純にすることで、機能ごとに費用を計算し直す作業自体をなくします。
費用が増える条件は、人ではなく「入れ物の数」
定額といっても、無制限という意味ではありません。人数を数えないかわりに、別のものを数えます。多くの場合は、案件や板や入れ物の数です。同時に動かせる案件が何件までか、板を何枚まで作れるか。ここに区切りが置かれます。
だから、この型で費用が増えるのは、人が増えたときではなく、動いている案件が増えたときです。少人数で多数の案件を並行して回すチームでは、思ったより早く上限に触れます。逆に、大人数で少数の案件を進めるチームでは、上限にほとんど当たりません。自分のチームがどちらの形かを先に確かめてください。
もう1つ数えられることがあるのは、保存できるデータの容量です。設計図や動画を大量に扱うチームでは、人数より容量が先に上限に達することがあります。日々どのくらいのファイルを板に貼っているかを見積もっておくと、判断を誤りません。区切りが何に置かれているかは製品ごとに違うので、料金のような料金の説明ページで、何を数えて何を数えていないのかを必ず確認してください。
この型が向くチーム
見るだけの人が多いチームに強く向きます。作業するのは6人だが、状況を知りたい人が15人いる。こうした形では、人数課金の型と比べて差がはっきり出ます。全員を板に入れても費用が変わらないので、報告の作り直しがなくなります。
人の出入りが多いチームにも合います。プロジェクトごとに外部の協力者が入れ替わる働き方をしているなら、席の追加と削除の管理そのものが不要になります。契約の変更を経理に依頼する手間も消えます。
予算を年単位で固定したい組織にも向きます。人数が読めなくても金額が動かないので、期の途中で追加の申請を出す必要がありません。
この型で詰まりやすいところ
案件の数が多いチームでは、上限に触れやすくなります。1件ごとに板を立てる運用をしていると、枚数はすぐ増えます。終わった案件の板を閉じる習慣をつけるか、複数の案件を1枚の板にまとめる形に運用を変えるか、どちらかの判断が要ります。ここは道具ではなく運用の問題なので、契約前に決めておくのが安全です。
もう1つは、定額であることと引き換えに、機能の幅が絞られている場合があることです。段を作らない設計は分かりやすいかわりに、特定の業種向けの高度な機能が入っていないことがあります。何ができるかの範囲はできることにまとめられているので、自分のチームに必須の機能があるなら、そこで先に確認してください。
3つの型を1枚の表で見比べる
3つの型を並べると、どこで差が出るのかがはっきりします。
| 見る項目 | 人数で課金する型 | 機能の段で課金する型 | 定額の型 |
|---|---|---|---|
| 数えているもの | 使う人の数 | 段と人の数 | 案件や板の数 |
| 費用が増える瞬間 | 人が増えたとき | 誰かが上の機能を必要としたとき | 案件や板が増えたとき |
| 見るだけの人 | 席の費用がかかる場合がある | 段によって扱いが変わる | 増やしても金額が変わらない |
| 予算の読みやすさ | 人員計画がそのまま費用 | 段が変わると跳ねる | 期首に固定できる |
| 向くチームの形 | 全員が手を動かす | 必要な機能が決まっている | 見る人が多い、人の出入りが多い |
| 詰まりやすい場所 | 見るだけの人の席 | 1人のために全員分が上がる | 案件や板の枚数の上限 |
この表で注目してほしいのは、3行目です。見るだけの人をどう扱うかが、型によって完全に違います。とりまとめる立場の人が抱える悩みの多くはここに集まるので、自分のチームで見るだけの人が何人いるのかを数えることが、比較の出発点になります。
数え方は簡単です。ここ1か月の間に、進捗を聞かれた相手を全員書き出してください。会議で報告した相手、チャットで状況を聞かれた相手、資料を送った相手。この人数が、板に入れたい見るだけの人の数です。5人を超えるなら、人数課金の型では費用が跳ねます。
1年分の総額で見積もりを出す手順
月額の単価だけを比べても、実際に払う額は分かりません。1年分の総額に直してから並べてください。手順は次の通りです。
表計算ソフトで並べる項目
1行目に、いま検討している製品の名前を横に並べます。左端の列に、次の項目を縦に並べてください。
作業する人の数、見るだけの人の数、外部の協力者の数。この3つを分けて数えるのが要点です。次に、それぞれが何席として数えられるかを製品ごとに書きます。閲覧が無料枠なら0、1席として数えるなら人数分。ここで既に、製品ごとの差が数字として出ます。
続いて、必要な機能を書き出し、それが何段目に入っているかを製品ごとに書きます。段が決まれば単価が決まります。最低契約席数がある場合は、実際の人数より多い数で計算してください。年間払いと月ごとの支払いで単価が違うなら、両方の列を作ります。
最後に、初期費用と移行の作業にかかる時間を入れます。時間は人件費に換算してください。1時間あたり4,000円で計算するなら、移行に20時間かかる想定で8万円です。これを1年分の総額に足します。ここまでやって、はじめて製品どうしが比べられる状態になります。
3年後の姿でもう一度計算する
1年分の総額が出たら、同じ表をもう1枚作ります。人数を3年後の想定に変え、案件の数も増やします。
人数課金の型は、人数を1.5倍にすると費用も1.5倍になります。段で課金する型は、その頃には上の段が必要になっている可能性を織り込みます。定額の型は、案件の数が上限を超えないかを確認します。この2枚目の表で順位が入れ替わるなら、いま安いほうを選ぶ判断は危険です。
料金には必ず、いつ時点の情報かと、税抜か税込かを書き添えてください。プランは変わります。半年前に作った比較表をそのまま使うと、根拠のない判断になります。表を作った日付を必ず残しておくことをおすすめします。
なお、公開されている価格が外貨建ての製品もあります。その場合、為替の動きで実際の支払額が変わります。円建てで予算を固定したいなら、この点も確認事項に入れてください。
型を決める前に、自分のチームで数えておく5つの数字
比較を始める前に、次の5つを数えてください。この数字がないまま比較記事を読んでも、判断は決まりません。
1つ目は、板を更新する人の数です。タスクを持ち、自分で状態を動かす人だけを数えます。
2つ目は、見るだけの人の数です。前の章で書いた方法で数えます。ここが大きいほど、定額の型が効きます。
3つ目は、同時に動いている案件の数です。終わったのに閉じていない案件は除きます。ここが大きいほど、定額の型の上限に注意が要ります。
4つ目は、報告のために手で資料を作っている時間です。週あたりの時間を測ってください。この時間が長いなら、見るだけの人を板に入れられる型を選ぶだけで直接効きます。
5つ目は、この先1年での人の増減の見込みです。増えるなら人数課金の総額を、減るなら年間払いの縛りを、それぞれ確認してください。
この5つが揃うと、3つの型のどれが効くかは自動的に絞られます。2番目と4番目が大きいチームは定額の型、全員が手を動かして人数が安定しているチームは人数課金の型、必要な機能がはっきりしていて無料の段で足りるチームは段で課金する型、という対応になります。
デジタル化の進み方については、公的な整理も参考になります。
中小企業のデジタル化は、紙や口頭による業務が中心の段階から、電子化された情報の活用、そしてデジタルによる業務効率化やビジネスモデルの変革へと、段階を追って進むものとして整理されている。自社がどの段階にいるかによって、次に取るべき手立ては変わる。 出典: chusho.meti.go.jp
道具を選ぶ話も同じです。いま紙と口頭で回っているチームが、いきなり高機能な段を契約しても使いこなせません。段階に合った選び方をするほうが、結果として早く進みます。
入れたあとに使われ続けるかは、料金の型とつながっている
導入が失敗する理由の大半は、機能不足ではありません。更新する人が増えないことです。
板に情報が集まるかどうかは、入力する人の数で決まります。入力する人が増えないと、進捗の表はすぐ嘘になります。そして入力する人の数は、席を持っている人の数を超えられません。ここで料金の型が効いてきます。席の費用を気にして人を絞ると、板に入れない人ができ、その人の情報はチャットや口頭に残ります。板とチャットに情報が分かれた瞬間、板を見るだけでは状況が分からなくなり、結局みんなチャットを見に行きます。板は放置されます。
だから、導入を成功させたいなら、関わる人を全員板に入れられる状態を最初に作るのが近道です。費用の型がそれを許すかどうかを、機能より先に確認してください。
もう1つ、更新が続くかどうかを分けるのが、入力にかかる手数です。1件の状態を変えるのに画面を3回またぐ道具は、忙しい日に更新されません。試用のときは、機能の有無ではなく、いちばん頻度の高い操作を実際に何回か繰り返してみてください。1日に何十回も行う操作が重いなら、機能がいくら揃っていても続きません。
そして、板の見た目です。関わる人全員が、自分の担当がどれかを一目で分かる状態になっているか。人数が増えるほど、この一目で分かることの価値は上がります。
乗り換えのときに費用として見落とされるもの
いまの道具から別の道具へ移る場合、月額の差だけを見て決めると、移行の途中で止まります。次の3つを見積もりに入れてください。
1つ目は、データを移す作業です。自動で取り込める仕組みがあるかどうかで、かかる時間が桁で変わります。取り込みに対応していない場合は、板を手で作り直すことになります。30枚の板があるなら、1枚30分としても15時間です。取り込みの対応状況についてはTrelloからの移行にまとめられているので、いま使っている道具が対象かどうかを先に確認してください。
2つ目は、慣れるまでの停滞です。全員が新しい画面に慣れるまで、進行の速度は落ちます。この期間を見込まずに繁忙期の直前に移ると、確実に混乱します。移行の時期は、案件の切れ目に合わせるのが安全です。
3つ目は、二重運用の期間です。旧の道具をすぐ解約できないことがあります。過去の記録を参照する必要がある、契約が年単位で残っている、といった理由です。2か月から3か月は両方を払う想定で見積もっておくと、あとで慌てません。
移行の判断で迷いやすいのは、いまの道具のままで足りている場合です。上限に触れていない、見るだけの人が少ない、報告の作り直しに時間が取られていない。この3つが当てはまるなら、替えないのが一番安い選択です。板の作り直しも、権限の設定も、全員への説明も要りません。比較記事を読んで不安になっただけなら、まず前の章の5つの数字を数えてみてください。数えた結果として上限の内側なら、その日は探すのをやめてよい状態です。
比較ページの並べ方から見える、判断が分かれる地点
比較のページをサービスごとに作っていくと、読む人がどこで迷っているかが見えてきます。迷いの位置は、サービスの性格によってはっきり分かれます。
板型のシンプルな道具を使っている人が迷うのは、ほぼ上限と人数です。板の枚数か、招ける人の数か、そのどちらかに触れて次を探し始めます。この読者は機能を増やしたいのではなく、いまの使い方をそのまま続けたいだけです。だから比較で見るべきは機能の一覧ではなく、区切りが何に置かれているかになります。この観点はTrelloとの比較で扱っています。
多機能な業務管理の道具を検討している人の迷いは、別のところにあります。できることが多いぶん、どこまで使うかを決められません。使わない機能の分まで払っているのではないかという疑問が先に立ちます。段の設計と、実際に使う機能の対応を確認する必要があり、この整理はAsanaとの比較とmonday.comとの比較にまとめてあります。
情報をまとめる道具をプロジェクト管理に流用している場合の迷いは、また違います。自由に作れるぶん、作った人しか構造を分かっていない状態になりやすく、更新が特定の人に集中します。この構造の問題は料金では解けません。詳しくはNotionとの比較で扱っています。
課題管理型の道具を使っている人は、開発以外の業務も同じ場所で回すかどうかで評価が変わります。国内の開発現場で長く使われてきた背景があるので、開発の工程には合いますが、営業や制作の進行を同じ板に載せるかどうかは別の判断になります。この点はBacklogとの比較に、国内発の板型ツールとの違いによる区切り方の差はJootoとの比較に整理されています。
こうした比較を読むときに大事なのは、書いている側が自分の弱点を書いているかどうかです。この記事を出している側の道具にも、はっきりした限界があります。ソースコードを置くリポジトリの機能は持っていません。自動化と外部連携の広さでは勝負していません。画面は日本語のみです。自動で取り込めるのはTrelloからだけで、他の道具からのデータは手で移すことになります。何ができるかの範囲はできることに書いてあり、データの扱いの考え方は安全性の考え方にまとめてあります。
弱点が1つも書かれていない比較記事は、その分だけ差し引いて読んでください。同じ理由で、この記事では特定のサービスについて料金や上限の数字を書いていません。プランは変わりますし、確かめていない数字を並べると、読んだ人が誤った前提で判断してしまうからです。金額と上限は、決める直前に各社の公式ページで確認するのが唯一確実な方法です。
最後に、順番をもう一度確認しておきます。まず数える。板を更新する人、見るだけの人、動いている案件、報告資料に使っている時間、1年後の人の増減。次に、その数字を3つの型に当てはめて、どこで費用が跳ねるかを見る。最後に、候補を2つまで絞って1年分の総額を出し、3年後の姿でもう一度計算する。この順番で進めれば、機能の一覧表を何枚見比べても決まらなかった判断が、数字で決まります。導入の前に出やすい疑問はよくある質問に集めてあり、区切りの置き方は料金で確認できます。
比較は、良い道具を探す作業ではありません。自分のチームの形に、料金の区切り方が合っているかを確かめる作業です。形が合っていれば、関わる人を全員板に入れられます。全員が板に入れれば、板は更新され続けます。更新され続ける板だけが、進行の役に立ちます。
Q1. プロジェクト管理ツールの比較で、最初に見るべき項目はどれですか?
料金が何で区切られているかです。使う人の数で課金するのか、機能の段で課金するのか、案件や板の数で定額なのか。この3つで費用の増え方がまったく違います。機能の一覧はどの製品も似ているため、差が出るのはこの区切り方です。あわせて、見るだけの人に費用がかかるかどうかも必ず確認してください。
Q2. 見るだけの人が多いチームには、どの型が向いていますか?
人数を数えない定額の型が向きます。作業するのが6人でも状況を知りたい人が15人いるような形では、人数課金だと費用が倍近くになるか、席を絞って報告資料を手で作り直すことになります。定額の型なら全員を板に入れられるので、その作り直しの時間がなくなります。ただし案件や板の枚数に上限が置かれる点は確認が要ります。
Q3. 月額の単価が安いほうを選べば費用は抑えられますか?
単価だけでは判断できません。1年分の総額に直し、見るだけの人の席、最低契約席数の有無、年間払いと月払いの差、初期費用、移行にかかる時間の人件費まで足してください。そのうえで3年後の人数と案件数でもう一度計算します。この2枚の表で順位が入れ替わる場合、いま安いほうを選ぶのは危険です。
Q4. いまの道具のまま替えないほうがよいのは、どういう場合ですか?
人数や板の枚数の上限に触れていない、見るだけの人が少ない、報告資料の作り直しに時間を取られていない。この3つが当てはまるなら替える理由がありません。移行には板の作り直し、権限の設定、全員への説明、慣れるまでの停滞が伴い、旧の道具と2か月から3か月ほど二重に払う期間も発生します。替えないのが一番安い選択です。