製造業の進捗管理をエクセルで回す型|工程が止まる場所を見つける
製造業の進捗管理をエクセルで組もうとすると、市販のガントチャートのテンプレートがそのままでは使えないことにすぐ気づきます。1つの受注に対して工程が一列に並ぶだけでなく、同じ設備を複数の受注が取り合い、部材が届かなければ工程が丸ごと止まり、数量の一部だけが先に進むことがあるからです。この記事では、表の形をどう決めるか、どの列が要るか、遅れをどう見せるか、現場から更新してもらうために何を削るか、そして共有したときにどこが壊れるかを順に扱います。目指すのは、きれいな工程表ではなく「いま止まっている品番と、その理由が一覧で分かる表」です。
製造業の進捗管理が他の業種と違う3つの点
一般的なプロジェクトの進捗表をそのまま持ち込むと、たいてい2か月ほどで使われなくなります。理由は3つあります。
第一に、進み具合が日付ではなく数量で表れます。受注500個のうち、加工が終わったのが320個という状態が普通に発生します。工程が「終わったか終わっていないか」の二択で表現できないので、完了日だけを入れる列を作ると、現場の実感と表がずれます。ずれた表は、現場から見て嘘の表になり、更新されなくなります。
第二に、止まる原因が自分たちの外にあることが多くあります。部材が届かない、外注先から戻ってこない、図面の変更を待っている、検査で保留になっている。どれも社内の作業量とは関係がありません。ここを「作業中」とひとまとめにすると、担当者の手が空いているのか埋まっているのかが判断できず、応援の出しようがなくなります。
第三に、工程が設備を共有しています。同じ機械を3つの受注が使う場合、1つが遅れると残りの2つの予定も動きます。人の予定表であれば担当者ごとに独立していますが、製造では資源の側から見た並びが必要になります。工程表を受注ごとに縦に並べただけでは、設備の取り合いが見えません。
この3つを踏まえると、製造業の進捗表に求められるのは、美しい横棒のチャートではなく、数量と滞留理由を持った一覧表だと分かります。現場でよく聞くのは、見た目のきれいなガントチャートを作ったが、実際に見ているのは「今日どこで止まっているか」だけだった、という話です。だとすれば、最初からその一点を出す表を作ったほうが早く回ります。
表を作る前に、何を見たいのかを決める
列を作り始める前に、その表で誰の何の判断を助けるのかを1行で書いてください。これを飛ばすと、必ず列が増え続けて埋まらない表になります。
現場のとりまとめ役が知りたいのは、たいてい次の3つのどれかです。今日どの工程に人を寄せるか。納期に間に合わない受注はどれか。営業から納期を聞かれたときに何日と答えるか。この3つは、必要な情報の粒度がまったく違います。
今日の人の配置を決めたいなら、必要なのは工程ごとの仕掛の量と、止まっている理由です。日付は今日と明日しか見ません。逆に納期回答をしたいなら、先2か月の負荷が要ります。1枚で両方をやろうとすると、細かすぎて日次が回らないか、粗すぎて納期回答に使えないかのどちらかになります。
現実的なのは、日次で見る表と、週次で見る表を分けることです。同じデータから2つの見え方を作るのであれば手間は増えません。1枚で兼ねようとすると、日次の側は工程ごとの仕掛を追えるだけの細かさを求め、週次の側は受注単位のまとまりを求めるので、列がどちらにも使えない中途半端な粒度に落ち着きます。
そしてもう1つ、最初に決めておくべきことがあります。この表を誰が更新するのかです。とりまとめ役が全部を代わりに入力する前提なら、列は少なくしなければ持ちません。現場の各担当が自分で入れる前提なら、入力の場所と時間を決める必要があります。作る前にここを決めていない表は、作った人だけが更新する表になり、その人が休んだ日に止まります。
1行を何にするかで、表の寿命が決まる
表の設計でいちばん重要なのは、1行を何にするかです。ここを決めずに列から作ると、あとで必ず作り直しになります。選択肢は3つあります。
1つ目は、1行1受注です。左に受注番号と品番を並べ、右に工程を列として並べます。切断、加工、溶接、塗装、組立、検査、出荷といった工程が横に並び、それぞれのセルに完了日か進捗数量を入れます。行数が受注の数で収まるので全体を見渡しやすく、受注が50件程度までなら扱いやすい形です。
2つ目は、1行1工程です。受注と工程の組み合わせごとに1行を作ります。50件で7工程なら350行になります。工程ごとの絞り込みや、設備別の並べ替えがしやすいのが利点です。工程が長く、外注が挟まる製品ではこちらが向きます。
3つ目は、1行1ロットです。同じ受注でも、分割して流す単位ごとに行を作ります。数量の一部が先に進む現場では、これが実態にいちばん近い形になります。ただし行数が一気に増えるので、受注が多い現場では管理しきれません。
多くの現場では、日次の進捗を2つ目の形で持ち、納期の一覧を1つ目の形で持つのが現実的です。どの形を選ぶにしても、品番と受注の一覧は別のシートに1つだけ置き、他のシートからは参照する形にしてください。品番を各シートに手で書くと、全角と半角、ハイフンの有無で表記が揺れて集計できなくなります。枝番の付け方や、図面の改訂記号を品番に含めるかどうかも、書く人によって変わります。集計が合わない原因がこれだと気づくのはたいてい月末で、そのときにはもう手で直せる件数を超えています。
必要な列と、増やしてはいけない列
進捗表に必要な列は、思っているより少なくて済みます。現場の担当者が手を止めて入力に使える時間は、1日のうち数分しかありません。列の数は、その数分で埋めきれる量に合わせるしかありません。最低限必要なのは次の6つです。
・受注番号。一覧シートから参照する形にして、直接入力しない ・品番と数量。受注数量は最初に確定するので、進捗の分母になる ・工程。名前は現場で実際に使っている呼び方に合わせる ・状態。未着手、作業中、部材待ち、外注中、検査待ち、完了の6つに絞る ・完了数量。日付ではなく数を入れる。分母は受注数量なので進捗率は自動で出る ・備考。止まっている理由を1行で書く欄
このなかで製造業に特有なのが、部材待ち、外注中、検査待ちという3つの状態です。どれも社内の手が空いている状態ですが、次に動かす相手が違います。部材待ちなら購買、外注中なら外注先、検査待ちなら検査の担当です。まとめてしまうと、誰に声をかければよいかが表から分かりません。
完了数量を持たせるのも重要です。進捗率をパーセントで直接入力させると、人によって基準が変わり、集計しても意味のない数字になります。数量なら誰が入れても同じです。パーセントは数式で出してください。
逆に、増やさないほうがよい列もあります。想定工数、実績工数、担当者の作業時間といった時間の列です。埋めるのに手間がかかるわりに、埋まったところで今日の判断が変わりません。原価の把握が必要なら、進捗表とは別の仕組みで取る話です。進捗表に載せると、入力の負担だけが増えて表全体が空欄になります。
工程の分け方は「対処が変わるか」で決める
列として並べる工程は、細かすぎても粗すぎても使えません。細かく分けると入力が追いつかず、粗く分けると止まっている場所が分かりません。判断の基準は1つです。その工程で止まったときに、動かす相手が変わるかどうか。
切断と面取りが同じ担当者の同じ持ち場で連続して行われるなら、分ける意味はありません。止まったときにやることが同じだからです。逆に、加工と外注めっきは分けます。片方は社内の段取り、もう片方は外注先への催促で、対処がまったく違います。
目安として、社内工程は5から8までに収めてください。これより多いと、1件あたり10か所以上を毎日更新することになり、繁忙期に必ず埋まらなくなります。工程数を減らすことに抵抗があるなら、工程は減らさずに、更新する工程だけを絞る運用でも構いません。
工程の名前は、現場で通じる言葉をそのまま使ってください。生産管理の教科書に載っている名前を付けると、現場の担当者が自分の作業と対応づけられず、入力を間違えます。呼び方が持ち場ごとに違うなら、表を作るこの機会に統一しておくと、後の会話も揃います。表を作る作業は、言葉を揃える作業でもあります。
外注工程は、社内工程と同じ列に混ぜて構いませんが、色を変えて区別できるようにしてください。外注に出ている間は社内で手が打てないので、遅れの見方が違います。出した日と戻り予定日の2つを持たせておくと、催促の判断ができます。
遅れを色で出す。条件付き書式の設計
期限を列に入れただけでは、遅れは見つかりません。誰も日付を1件ずつ見比べないからです。条件付き書式で、次の3段階を設定してください。
・工程の予定日を過ぎていて、完了数量が受注数量に届いていない行は赤 ・予定日まで3営業日以内で、まだ着手していない行は黄 ・完了した行は薄い灰色にして、目立たなくする
数式で書くなら、予定日の列をF、完了数量をG、受注数量をDとして、赤の条件は「=AND($F2<TODAY(), $G2<$D2)」のような形になります。ドル記号を付けるのは列だけで、行番号には付けないでください。ここを間違えると、いちばん上の行の予定日だけで表全体の色が決まってしまい、遅れているはずの行が白いまま残ります。範囲は行全体に指定すると、色が行ごとに付いて読みやすくなります。
部材待ちと外注中の行は、赤とも黄とも違う色にしてください。この色が多い週は、遅れの原因が製造の外にあることが一目で分かります。現場に「急いでくれ」と言っても解決しない状況なので、動かす先が変わります。とりまとめ役が朝いちばんに見るべきなのは、実はこの色の割合です。
色の種類は4つまでにしてください。工程ごとに色を割り当てたくなりますが、そこまで増やすと、現場に貼った紙を見た人が、遅れを表す色と工程を表す色の区別をつけられなくなります。凡例は表の上に文字で書いておきます。印刷して現場に貼る場合、モノクロで出すと色がすべて灰色になるので、状態の文字列も必ず列として残してください。色は情報として取り出せません。
基準日の扱いも決めておきます。日次で回す表はTODAY関数のままで構いませんが、朝の打ち合わせで印刷して現場に配る紙は、刷った時点の状態として残る必要があります。何時時点の表かをセルに手で入れ、その値ごと別のシートへ貼り付けておけば、後から「あの日はどこで止まっていたか」を追えます。納期に遅れた受注の原因を後で洗うとき、この記録があるかどうかで話の精度が変わります。
現場から更新してもらうための現実的な工夫
進捗表がうまくいかない原因の大半は、表の作りではなく入力の導線にあります。現場の担当者は1日の大半をパソコンの前で過ごしません。ここを前提にしないと、どれだけよくできた表でも空欄のまま残ります。
よくある形は、現場が紙の作業日報に書き、事務所の誰かがまとめて転記する運用です。この形自体は悪くありませんが、転記が1日1回なら、表は常に半日から1日古いことになります。朝の打ち合わせで昨日の話をしているなら問題ありませんが、今日の配置を決めるために使うなら足りません。転記の時刻を決めて、表の上に「この表は何時時点か」を書いておくだけでも、誤解はかなり減ります。
現場に共有端末を置く場合は、入力する項目を思い切り削ってください。完了数量と状態の2つだけにします。品番を選ぶのも手間なので、その日の対象だけを絞り込んだシートを用意しておくと、入力にかかる時間が明らかに変わります。入力に1分以上かかる形にすると、忙しい日から順に飛ばされます。
もう1つ効くのは、入力してもらう時刻を固定することです。「終業前に自分の分を入れる」と決めておけば、忘れたことに気づけます。気づいたら入れる、という運用は例外なく止まります。
そして、入力された内容に対して何かが起きることを見せてください。入力しても誰も見ていない表には、誰も入力しません。朝の打ち合わせでその表を画面に出すだけで、更新率は変わります。
部材待ちと外注待ちをどう管理するか
製造業の遅れは、社内の作業量よりも、外から届かないことに起因する割合が高くなりがちです。ここを進捗表でどう扱うかが、実務では最も効きます。
まず、待ち状態にした日付を記録します。状態の列とは別に「待ち開始日」という列を1つ足してください。この日付から今日までの日数が計算できると、どれだけ待っているかが数字で出ます。3日を超えたら購買に確認する、といった基準を決めておけば、催促のタイミングを人の記憶に頼らずに済みます。
次に、催促した記録を残します。備考欄に「9月4日に納期確認、9月10日回答」と1行書くだけで足ります。これがないと、誰がいつ連絡したのかが分からず、二重に連絡してしまったり、逆に誰も連絡していなかったりします。相手先から見ても、同じ問い合わせが何度も来るのは印象がよくありません。
そして、待ちの件数を月ごとに数えてください。特定の仕入先や外注先で毎月同じことが起きているなら、それは個別の遅れではなく、発注のかけ方や納期の取り方そのものを見直す話になります。数えていない状態で「あそこはいつも遅い」と言っても、交渉の材料にはなりません。
外注に出した分の進み具合をどう受け取るかも、先に決めておいてください。外注先に毎日の進捗を報告してもらうのは現実的ではありませんが、出荷の何日前に何個できているかだけは、決まった形で聞ける状態にしておく必要があります。電話で聞いた数を口頭のまま扱うと、聞いた人の記憶の中にしか残りません。聞いた日と、そのとき言われた数量と、戻り予定日の3つを備考欄に1行で残す形にしておけば、次に電話する人が前回との差分だけを確認できます。分納で戻ってくる外注工程では、戻ってきた数を完了数量に足していく形にし、出した数との差がゼロになるまで行を閉じないでください。差が残ったままの行が、そのまま社内の後工程が待っている数になります。
この管理は表計算でも十分にできます。ただし、催促のやり取りをメールやチャットに残して進捗表には書かない運用にすると、情報が2か所に分かれます。どちらか一方に寄せてください。分かれた瞬間から、どちらかが必ず古くなります。
納期回答に使うときの負荷の見方
進捗表のもう1つの役割は、営業から「この数量、いつ出せますか」と聞かれたときに答えることです。ここを勘で答えている現場は多く、答えた日付が守れずに信用を落とす原因になります。
必要なのは、工程ごとの残り仕事量です。各行の受注数量から完了数量を引けば、その工程に残っている数が出ます。工程ごとに合計すれば、どこに仕事が溜まっているかが数字で見えます。この合計を1日の処理能力で割ると、消化に何日かかるかが概算で出ます。精密である必要はありません。3日で終わるのか3週間かかるのかが分かれば、回答としては十分です。
1日の処理能力は、実績から取ってください。理論値の設備能力を使うと、段取り替えや不良の手直しが入らない前提の数字になり、必ず外れます。過去1か月の完了数量を稼働日数で割った値のほうが、はるかに当たります。この計算は表計算が得意な作業なので、別シートに関数で置いておけば毎回作り直す必要はありません。
そして、ボトルネックになっている工程を1つ特定してください。全工程の負荷を均等に見ようとすると判断が遅れます。いちばん詰まっている工程の消化見込みが、そのまま納期回答の下限になります。ここが分かっていれば、営業に対して「この工程が空くのが来週半ばなので、そこから何日」という説明ができます。数字の根拠がある回答は、社内の押し問答を減らします。
共有したときに壊れる4つの場所
とりまとめ役が自分の手元だけで回している間は、表はたいてい正しく保たれます。問題は、他の人と共有してからです。現場でよく聞くのは次の4つです。
1つ目は、ファイルが分裂することです。共有フォルダに置いていても、誰かが開いている間は他の人が編集できないため、読み取り専用で開いて後で直す運用になります。事務所と工場の両方に人がいる現場では、工場側が自分の端末にコピーを作り、そこで完了数量を入れ始めます。ファイル名に日付を入れても、事務所側の版と工場側の版のどちらが新しいかは、両方を開いて品番ごとに数量を突き合わせるまで分かりません。
2つ目は、条件付き書式が崩れることです。行を挿入したときに範囲がずれる、他のシートからコピーして貼り付けたセルが書式を持ち込む、といった形で少しずつ壊れます。作った本人は直せますが、他の人には直せません。行の追加は既存行の複製で行う、貼り付けは値のみを使う。この2つのルールを最初に決めておくと、崩れる速度はかなり落ちます。
3つ目は、並べ替えです。誰かが納期順に並べ替えると、他の人が見ていた行の位置が変わります。複数人が同時に触っている状態で並べ替えが起きると、意図しない行を書き換える事故につながります。並べ替えではなく、自分の画面だけで絞り込めるフィルターを使うルールにしてください。
4つ目は、更新する人が1人に固定されることです。現場に入力してほしいのに、とりまとめ役が聞いて回って代わりに入れる形になると、その人が休んだ週にすべてが止まります。しかも聞かれる側は同じ説明を毎日繰り返すことになり、双方の時間が削られます。工場を歩いて持ち場ごとに数量を聞いて回る形になると、とりまとめ役の午前中はそれだけで終わり、本来やるべき段取りの組み直しに手が回らなくなります。
エクセルの上限と、その手前で来る限界
仕様上の上限は、実務で問題になることはほとんどありません。Microsoftが公開している仕様では、ワークシートは1,048,576行、16,384列まで使えます。1つのセルに入る文字数は32,767文字、1回の並べ替えで使えるキーは64までです。受注が数千件あっても、行数が足りなくなることはありません。
ワークシートの行数と列数 1,048,576 行、16,384 列 出典: support.microsoft.com
実務で困るのは上限ではなく、行数が増えたときの見づらさと重さです。500行を超えたあたりから、スクロールしないと今日の話にたどり着けなくなります。対処は2つあります。完了した行を月ごとに別シートへ移すこと、そして色の付いた行だけを表示するフィルターを保存しておくことです。
開くのが遅くなる原因も、たいていは決まっています。条件付き書式の範囲を列全体に指定していると、使っていない行まで計算対象になります。実際に使う行数ぶんだけに範囲を絞り直すと、多くの場合は元の速さに戻ります。他のブックへのリンクを大量に張っている場合も同じです。
ウィンドウ枠の固定も忘れないでください。受注番号と品番の列を左に貼り付けておくと、右へスクロールしても何の行を見ているかが分かります。これがないだけで、表を読む速度が目に見えて落ちます。
属人化と引き継ぎへの備え
進捗表は、作った人が異動や退職でいなくなると、その時点で更新が止まりがちです。数式や条件付き書式の意味を誰も知らないので、壊れたときに直せません。
備えとして、表の1行目か別シートの先頭に説明を書いておいてください。状態の6つの意味、予定日の決め方、色の意味、更新の締切。これだけで十分です。とくに部材待ちと外注中と検査待ちの線引きは、書いておかないと持ち場ごとに違う使われ方をします。外注先で検査を待っている品を外注中と入れるか検査待ちと入れるかが人によって割れると、色の割合が何も意味しなくなります。
数式についても、複雑なものは避けてください。前工程の完了日から次工程の予定日を自動計算する仕組みは便利ですが、作った本人以外は直せなくなります。触る人が複数いる表では、あえて手入力にしておくほうが長持ちします。
データの持ち方も素直にしてください。1つのセルに「品番と数量とロット番号」を詰め込んだり、状態を色だけで表したりしていると、別の仕組みへ移すときに人が読み直すことになります。状態は必ず文字列の列として持ってください。数量は必ず数値として持ってください。この2つを守っておくだけで、将来の選択肢が残ります。
エクセルを続けてよい場合と、見直す合図
ここまで注意点を並べましたが、受注の件数と関係者の並びによっては、いまの表を作り替える必要はありません。
・進捗表を更新するのが1人か2人で、他は見るだけ ・受注が数十件で、関係者が全員同じ建物にいる ・外注や協力会社に表を見せる必要がない ・朝の打ち合わせで口頭の補足が必ず入る運用が定着している
この条件なら、エクセルで十分です。現場の担当者に新しい入力の形を覚えてもらうには、繁忙の谷を選んで、持ち場ごとに手を止めて説明する時間が要ります。交代勤務があるなら、その説明を班の数だけ繰り返すことになります。そこまでの手間を掛けて替える理由がいまの表に見当たらないのなら、替えないという判断がそのまま正解です。
逆に、次のどれかが起きているなら、表の列を作り直しても解決しません。現場に自分で更新してほしいのにとりまとめ役が聞いて回っている、事務所と工場と外注先で同時に見たい場面がある、進捗表とは別にチャットやメールで状況をやり取りしていて人が手で同期している、「あの品番どうなった」という確認が1日に何度も発生している、といった状態です。
とくに3つ目が効きます。部材の入荷日は購買のメールにあり、外注先の回答は電話で聞き、図面の変更はまた別の連絡で流れてくる。表に載るのはその結果だけなので、なぜ止まっているかという経緯は常に表の外にあります。作業は表で管理し、判断はチャットや電話で決まる。そうなると、止まっている理由をいちばん知りたい人が、いちばん表を見なくなります。表だけをきれいに保っても、この構造は変わりません。
なお、製造業を取り巻く環境そのものが動いていることは、行政の資料からも読み取れます。
近年、各国の保護主義的な政策強化による国際経済秩序の揺らぎによる不確実性の更なる高まりとともに、AI等デジタル技術の急速な発展が、製造業を取り巻く環境に大きな変化をもたらしており、製造業の競争力強化に向けては、経済安全保障の取組やAI・デジタル技術の活用が重要となります。 出典: meti.go.jp
道具を替えること自体が目的になると失敗しますが、いまの表で何が見えていないかを言葉にできているなら、選択肢を並べる価値はあります。なお、労働時間の扱いや外注先との契約条件に関する判断は、所轄の労働基準監督署や専門家に確認してください。
公開情報から見た、道具を替える境目
図面や品番が載る表を社外のサービスに置くかどうかは、月額の数字を並べただけでは決まりません。先に見るべきなのは、何で区切っているかです。人数で区切るのか、機能で区切るのか。ここが違うと、同じ金額でも使い方が変わります。
案内ページの料金には、無料プランは5人までとボード10個までで、6人目または11個目のボードから1人あたり月500円(税抜)、年払いなら月400円(税抜)になると書かれています。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという設計で、ガントチャートもチャットもカスタムフィールドも無料の範囲に入ります。外注先や協力会社に見てもらうだけであれば、その相手は人数に数えないという記載もあります。とりまとめ役と現場のリーダーが5人までなら、費用をかけずに試せる範囲です。
一方、機能で区切る型のサービスもあります。Trelloの公式の料金ページには、2026年9月4日時点で、無料プランについて「ワークスペースあたり最大10ボード」「ワークスペースあたり最大10コラボレーター」という記載があり、カレンダーやタイムラインといった見え方はPremiumプランの機能として並んでいます。機能ごとの対応はTrelloとの比較に表でまとめてあります。
見え方の種類そのものを確認したい場合はできることに、カンバン、ガント、カレンダー、リスト、グリッド、時間割、リソースなど8種類のボードと使い分けが載っています。人やグループを縦に、日付を横に並べて割り当てを見るリソースボードは、設備や持ち場の取り合いを見たい現場に近い形です。他のサービスとの並びは比較の一覧から確認でき、国内で使われることの多いものとしてBacklogとの比較やJootoとの比較、汎用的な道具としてNotionとの比較、大きめの組織で使われるAsanaとの比較やmonday.comとの比較も同じ形式で並んでいます。
図面や品番といった社外に出せない情報を外部のサービスに置くことへの不安については、安全性の考え方に、ワークスペース単位のデータ分離、ロールによる権限の絞り込み、操作ログとログイン履歴の3点で整理が載っています。すでに別のサービスにカードを作っている場合の取り込みはTrelloからの移行に移行できる範囲が表で書かれており、残りの疑問はよくある質問にまとまっています。
最後に、実際に試すときの手順を書いておきます。全部を一度に移そうとしないでください。進行中の受注を10件だけ選び、1か月だけ新しい形で回してみる。それで朝の確認の回数が減るなら、続ける価値があります。回数が減らなかったなら、止まっている理由をそもそも誰も書いていないということなので、道具ではなく入力の導線をもう一度見てください。試した1か月ぶんの記録は、どちらに転んでも次の判断の材料になります。
Q1. 製造業の進捗表は1行1受注と1行1工程のどちらで作るべきですか?
日次で止まっている場所を見たいなら1行1工程、納期の一覧を見たいなら1行1受注が向いています。数量の一部だけが先に進む現場では、流す単位ごとに1行を作る形が実態に近くなりますが、行数が増えるので受注件数が多い現場では管理しきれません。目的ごとにシートを分けてください。
Q2. 進捗はパーセントで入力させたほうがよいですか?
完了数量を入力させ、進捗率は数式で出してください。パーセントを人が直接入れると基準が人によって変わり、集計しても意味のない数字になります。受注数量を分母に持たせておけば、誰が入力しても同じ進捗率が出ます。
Q3. 現場が更新してくれません。表の作り方が悪いのでしょうか?
多くの場合、原因は表ではなく入力の導線です。入力項目を完了数量と状態の2つに絞り、対象の行だけを絞り込んだシートを用意し、入力する時刻を終業前などに固定してください。加えて、朝の打ち合わせでその表を画面に出すと、見られている実感が生まれて更新率が変わります。
Q4. エクセルから別の仕組みに移る目安はありますか?
現場に更新してほしいのにとりまとめ役が聞いて回っている、事務所と工場と外注先で同時に見たい場面がある、進捗表とチャットやメールが別々にあって人が手で同期している。このいずれかが当てはまれば検討の時期です。全件を移さず、進行中の受注10件だけで1か月試すのが安全です。