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タスクの属人化が起きる理由|引き継げる形に置き換える

2026年9月10日 ・ Pinateca編集部

「この案件はあの人しか分からない」という状態が、チームの中に1つか2つはあるはずです。タスクの属人化は、担当者が仕事を抱え込んだ結果ではなく、その人に寄せたほうが速かったという毎日の小さな判断が積み上がった結果として生まれます。だから、担当者に「共有してください」と頼んでも解けません。解けるのは、仕事の置き場所と決め方を変えたときだけです。

この記事では、属人化がどういう仕組みで進むのかを分解したうえで、いま何本のタスクが何人に寄っているかを数える方法、手順と判断の理由をどこにどう残すか、担当をどう回すか、そして道具の側が満たしていないと運用が続かない条件までを、とりまとめる人が明日から手を動かせる粒度で整理します。

先に結論を書きます。属人化を解くのに必要なのは、その人の頭の中を全部書き出させることではありません。次の人が詰まる場所だけを、詰まったその日に外へ出す仕組みを作ることです。

属人化は「抱え込み」ではなく、寄せたほうが速いという判断の積み重ね

属人化の話は、しばしば人の問題として語られます。情報を出さない人がいる、教えるのを面倒がる人がいる、という語り口です。しかし現場を分解していくと、寄っている人ほど善意で寄せられていることのほうが圧倒的に多くなります。

最初の分かれ道は「今回だけこの人に」

新しい依頼が来たとき、経緯を知っている人に渡せば説明が要りません。知らない人に渡すと、背景の説明に30分かかり、確認の往復が2回発生し、初回の成果物は手直しが要ります。とりまとめる立場からすると、納期が迫っているときに後者を選ぶ理由はありません。

この判断は、その日その時点では正しいのです。問題は、正しい判断を20回繰り返した先に何が起きるかにあります。20回分の経緯がその人の中だけに積み上がり、21回目には「他の人に渡す説明コスト」が最初より大きくなっています。渡さない理由が、渡さなかったことによって強化される構造です。

現場でしばしば出るのは、「気づいたら3年分の経緯があの人にしかない」という話です。3年かけて意図的に隠したのではなく、3年間ずっと最短経路を選んだ結果としてそうなります。責める相手はいません。

専門性と属人化は、外から見ると似ているが別のもの

その人にしかできない仕事があること自体は、悪いことではありません。設計判断ができる、顧客の癖を読める、品質の線引きができる。こうした能力は積み上げるのに時間がかかり、簡単には移せません。これは専門性です。

属人化はそれとは違います。属人化しているのは能力ではなく、多くの場合ただの情報です。取引先の担当者が誰か、前回どういう理由でその形に落ち着いたのか、承認を出すのは誰か、ファイルはどこに置いてあるのか。どれも本人にとっては当たり前すぎて、わざわざ書くほどのことではないと感じる種類の情報です。

区別の仕方は単純です。「その人が説明すれば、他の人が明日から同じことをできるか」を問います。できるなら、それは情報の属人化であり、書けば解けます。できないなら専門性であり、こちらは育てるしかありません。実際に棚卸しをすると、解けるほうが大半を占めます。

一度寄ると、寄り続ける方向に力が働く

属人化が厄介なのは、放置すると自動的に強くなる点です。その人に質問が集まる、集まるから作業時間が減る、時間が減るから手順を書く余裕がなくなる、書けないからさらに質問が集まる。この輪は、当人の意欲とは無関係に回ります。

とりまとめる立場から見て一番危ないのは、この輪が回っている人ほど「頼れる人」として評価が上がることです。評価が上がると仕事がさらに集まり、輪は加速します。つまり、属人化は組織の評価の仕組みと結びついて自己強化します。個人に注意して直る性質のものではありません。

属人化の代償は、平常時ではなく不在時にまとめて出る

属人化しているチームは、平常時はむしろ速く回ります。説明が要らず、確認も要らず、暗黙の了解で進むからです。だから困りごととして認識されるのが遅れます。

休みが取れない構造は、休暇制度の有無とは別の話

有給休暇の制度があっても、その人が抜けると止まる仕事があるうちは、実際には休めません。休む前に引き継ぎ資料を作る負担が発生し、休んでいる間も連絡が来て、戻ってきたら滞留分が待っている。この3つが揃うと、制度上は取れる休みが実質的に取れなくなります。

中小企業白書には、休暇の制度が実際に機能している背景として次のように書かれています。

これらの制度が円滑に機能している背景として、日頃から技能承継を進め属人業務を削減することに加え、休暇などによる不在の穴を社員同士で助け合いながらカバーしていることにある。 出典: chusho.meti.go.jp

順序が重要です。属人業務を減らすことが先にあり、休暇が機能するのはその結果として書かれています。休暇制度を整えてから属人化に手を付けるのではなく、逆です。

採用や外部委託が増えるほど、属人化は見えにくくなる

人を増やせば属人化は薄まる、というのは直感的ですが実際には逆に働くことがあります。新しく入った人は、既存の仕事の全体像が見えないため、最初に渡された狭い範囲だけを担当します。そしてその狭い範囲について、また新しい属人化が生まれます。増えるのは、寄っている人の人数です。

業務委託や外部の協力者が入る場合はさらに顕著です。契約の範囲が明確なぶん、担当が細かく切り分けられます。切り分け自体は正しいのですが、その人が抜けたときに残るものが何もない状態になりやすい。委託先とのやり取りがメールと個別のチャットだけで完結していると、社内の誰も経緯を知らないまま契約が終わります。

なお、外部の協力者に対して業務時間の管理や指揮命令をどこまで行えるかは、契約の形態によって扱いが変わります。判断に迷う場面では、所管の窓口や社会保険労務士などの専門家に確認してください。この記事では法的な線引きは扱いません。

不在時のコストは、事後にしか計測できない

属人化の代償は、担当者が辞めた日、倒れた日、あるいは長期休暇に入った日に、まとめて表に出ます。そのときに初めて「あの案件の経緯を知る人がいない」と分かります。事前に金額で示すのが難しいため、対策の優先順位が上がりにくい。

とりまとめる立場でできるのは、事前に一度だけ小さく試すことです。特定の担当者に3日連続で休んでもらい、その間に何が止まったか、誰に何件質問が飛んだかを記録します。実際に止めてみると、想定していた場所とは違う場所で止まります。この結果は、社内でどこから手を付けるかを決める材料としてそのまま使えます。

いま何本のタスクが、何人に寄っているかを数える

対策の前に、現状を数字にします。感覚で「うちは属人化している」と言っても、どこから手を付けるかは決まりません。

属人化の兆候として現れる5つの状態

次のうち3つ以上が当てはまる仕事は、属人化していると考えて差し支えありません。

・その仕事の進行状況を、担当者に聞かないと分からない ・依頼や質問が、チームの共有の場ではなく特定の個人宛に直接届く ・過去に同じ判断をした記録が、どこにあるか誰も答えられない ・担当者が休んだ日に、その仕事は進まずに止まる ・引き継ぎを頼むと「口頭で説明したほうが早い」と言われる

最後の項目が出てきたら、ほぼ確実です。口頭のほうが早いのは事実ですが、それは書くべき情報がまだ一度も外に出ていないことの裏返しでもあります。

棚卸しの表は、担当者名ではなく「代わりができる人数」で作る

棚卸しをするとき、担当者の一覧を作っても意味がありません。作るべきは、仕事ごとに「今日から代われる人が何人いるか」を書いた表です。

仕事の単位 代われる人数 止まったときの影響 手を付ける順
請求の締め処理 0人 支払いが遅延する 最優先
顧客Aへの月次報告 1人 信頼を損なう 優先
素材の受け取りと確認 2人 進行が1日遅れる 後回し
定例の議事録作成 4人 影響は小さい 対象外

代われる人数が0の行から順に手を付けます。ここで「代われる」とは、手順書を読めば今日中に着手できる状態を指します。「昔やったことがある」は数えません。半年前の記憶は、手順が変わっていれば使えないからです。

この表を作る作業自体は、5人のチームなら1時間程度で終わります。数十人規模なら、部署ごとに分けて作り、代われる人数が0の行だけを集めて一覧にします。全部を精密に埋めようとすると終わらないので、粗くて構いません。

手順を残す:完璧な手順書を目指すと、必ず途中で止まる

手順書を作る話になると、多くのチームが最初に「テンプレートを決めましょう」から始めます。そして章立てを整え、書式を統一し、書き始めて3本目で止まります。

粒度は「次の人が詰まる場所」に合わせる

手順書が続かない最大の理由は、粒度が細かすぎることです。画面のどこをクリックするかまで書こうとすると、1本あたり2時間かかり、しかも画面が変わった瞬間に嘘になります。

書くべきなのは、初めての人が実際に詰まる場所だけです。具体的には次の4種類に絞ります。

・どこから始めるか(入口のURLやファイルの置き場所) ・誰の許可が要るか(承認者と、承認を求めるタイミング) ・何を守るか(絶対に外してはいけない条件と、その理由) ・終わったと判断する基準(どうなったら完了と言えるか)

この4つだけなら、1本あたり15分で書けます。操作の細部は書かなくて構いません。入口さえ分かれば、いまの道具は画面を見れば操作できます。詰まるのは操作ではなく、判断と場所です。

更新のきっかけを、作業そのものに埋め込む

書いた手順書が古くなるのは避けられません。避けられないので、更新するきっかけを人の善意ではなく作業の中に置きます。

有効なのは、「次の人が詰まったら、詰まった本人が1行足す」という決め方です。書いた人が更新するのではなく、読んで詰まった人が更新します。詰まった瞬間が、その手順書の欠けている箇所が最も鮮明に分かる瞬間だからです。あとから思い出して書くより正確で、しかも1行で済みます。

もう1つは、作業の完了条件に「手順の変更があれば反映する」を含めることです。タスクを完了にする直前に確認する項目として置いておくと、月に数回は実際に更新されます。別途の「手順書更新タスク」を月次で立てる運用は、忙しい月に真っ先に飛びます。

文字と動画は、目的で使い分ける

操作の流れを伝えるには画面録画が速く、書く手間も少なくて済みます。一方で、動画は検索できません。「あの承認は誰に出すんだったか」を確認したいときに、10分の動画の中から探すのは苦痛です。

使い分けの目安は、探す頻度です。1回覚えれば済む初期設定のような内容は動画で構いません。何度も確認しに戻る内容、たとえば承認者、判断基準、例外の扱いは、必ず文字で書きます。文字は検索でき、部分的に直せます。

判断の理由を残す:ここが最も抜けやすく、最も効く

手順は比較的よく書かれます。抜けるのは、なぜその手順になっているかです。理由が残っていないと、次の人は手順を変えられません。変えられないので、意味を失った手順がそのまま残り続けます。

決めた理由と、採らなかった案を1行ずつ

決定を記録するとき、結論だけを書くと後から役に立ちません。最低限、次の3つを1行ずつ残します。

・何を決めたか ・なぜそうしたか(守りたかった条件) ・何を採らなかったか(検討したが外した案と、その理由)

3つ目が特に重要です。採らなかった案が書いてあると、次の人が同じ案を提案して同じ議論を繰り返す時間がなくなります。逆に、前提が変わったときには「あのとき外した理由は、いまはもう当てはまらない」と判断できます。理由が無いと、変えていいのかどうかが誰にも分かりません。

書く場所は、決定が生まれた場所のすぐそばに置きます。会話の流れから離れた別の文書にまとめると、そのうち誰も見に行かなくなります。案件ごとのカードに、決定を1行ずつ足していく形が最も続きます。

差し戻しの基準を、言葉にして外に出す

品質の線引きは、属人化の中でも解きにくい部類です。「これは出せない」と判断できる人が1人しかいない、という状態はよく起きます。

これを解くには、差し戻した実例を集めるのが早道です。理想の基準を先に定義しようとすると抽象的になり、使えません。差し戻したものについて「何が理由で差し戻したか」を1行ずつ書き溜めていくと、30件ほど貯まった時点で明確な傾向が見えます。その傾向が、そのままチェック項目になります。

例外の扱いを、あらかじめ決めておく

属人化した人の頭の中にある情報で、最も外に出にくいのが例外です。「この取引先だけは締めが5営業日前」「この案件だけは請求書の宛名が違う」といった類のものです。

例外は、手順書の本文に混ぜると読みにくくなり、混ぜないと忘れられます。対処としては、例外が発生する対象そのもの、つまり顧客や案件の単位に例外を貼り付けます。案件のカードを開けば、その案件だけの例外が最初に目に入る状態にしておけば、手順書を読み返す必要がありません。

担当を回す:交代を前提にした組み方に変える

手順と理由が外に出たら、次は実際に人を回します。書いてあるだけでは、いざというときに動きません。

2人目を置くのは、負荷を分けるためではない

すべての重要な仕事に2人目を置きます。ここで2人目の役割は、作業を分担することではありません。「その仕事の現在地を説明できる状態」を保つことです。

具体的には、2人目は週に一度、進行状況を確認して自分の言葉で要約します。要約が書ければ、その人は交代できる状態にあります。書けなければ、書けなかった箇所が、まさに情報が外に出ていない箇所です。この方法だと、2人目の負荷は週に10分程度で済みます。

回す周期は、四半期に一度が現実的

担当の交代は、頻繁すぎると習熟が進まず、間隔が空きすぎると意味がありません。四半期に一度、重要な仕事のうち1つか2つについて主担当と副担当を入れ替える形が、多くのチームで無理なく回ります。

交代のときに全部を引き継ぐ必要はありません。副担当が主担当になり、新しい人が副担当に入る。この形なら、経緯を知っている人が常に2人いる状態が保たれます。全員が一斉に入れ替わることを避けるのが要点です。

引き継ぎは休む前ではなく、平常時にやる

休暇の直前や退職の直前に引き継ぎをするのが最も難しいのは、そのときが最も忙しく、かつ引き継ぐ側に時間の余裕がないからです。よく聞くのは、退職まで2週間という時点で引き継ぎ資料の作成を依頼し、結果として形だけの資料が残るという話です。

平常時に少しずつ移しておけば、休む直前にやることは残っている分の確認だけになります。副担当が週に10分の要約を続けていれば、引き継ぎ資料そのものが不要になります。

質問がどこに集まっているかを見ると、寄っている人が分かる

属人化を数える別の方法として、質問の流れを見る手があります。仕事の量ではなく、質問の量で測ります。

チャットで「〇〇さん、これって」から始まる個人宛の質問を1週間分数えると、特定の1人か2人に極端に集中していることがほとんどです。その人が、いまのチームのボトルネックです。作業が集中しているとは限りません。集中しているのは情報です。

対処は2段階です。まず、その人に飛んだ質問への回答を、本人ではなく質問した側が記録に残します。答えた人が書くと負担が増えて続きませんが、聞いた側なら「教えてもらったことを1行残す」で済みます。次に、同じ質問が2回以上出た項目だけを手順書に昇格させます。1回しか出ていない質問は、手順書に書いても読まれません。

この運用を1か月続けると、頻出の質問はほぼ出尽くします。個人宛の質問が減ってきたら、情報が外に出始めた証拠です。

90日で引き継げる形に置き換える進め方

一度にすべてを変えようとすると失敗します。属人化は数年かけて積み上がったものなので、解くのにも時間がかかると考えて計画を立てるほうが確実です。90日を3つに区切る進め方が、数十人規模までのチームでは現実的です。

最初の2週間は、数えるだけで手は付けない

この期間にやるのは、代われる人数の表を作ることと、個人宛の質問を数えることの2つだけです。改善に着手したくなりますが、我慢します。

理由は2つあります。1つは、どこが本当に危ないかは数えるまで分からないからです。感覚で危ないと思っていた仕事より、誰も気にしていなかった定型処理のほうが代替不能だった、という結果はよく出ます。もう1つは、数えた結果をチームに見せることが、そのまま次の段階への合意形成になるからです。「属人化を減らしましょう」では動きませんが、「代われる人が0人の仕事が7本あります」なら動きます。

この期間に担当者を呼び出して事情を聞く必要はありません。表と数字だけで足ります。個人を特定して問題として扱った瞬間、情報は出にくくなります。

1か月目は、代われる人が0の仕事だけに絞る

数えた結果のうち、代われる人が0の行だけを対象にします。多くても5本までに絞ってください。数を欲張ると、どれも中途半端になります。

その5本について、入口、承認者、守る条件、完了の基準の4項目だけを書きます。1本15分なので、合計で75分です。書くのは担当者本人ですが、書かせるのではなく、とりまとめる側が聞き取って書くほうが早く終わります。本人は当たり前だと思っている情報ほど、聞かれないと出てきません。

書き終わったら、その4項目を読んだだけで別の人が着手できるかを試します。試さずに終えると、書いた気になるだけで終わります。

2か月目から3か月目は、実際に人を回す

書いたものが使えるかどうかは、人を回して初めて分かります。対象の仕事について副担当を1人置き、週に10分の要約を始めます。要約が書けない箇所が出てきたら、そこが書き漏らした情報です。

3か月目には、5本のうち1本か2本について実際に主担当を交代します。交代した週は多少もたつきますが、そのもたつきこそが情報の欠けている場所を教えてくれます。ここで元に戻さないことが重要です。戻すと、次からは誰も交代を提案しなくなります。

90日を終えた時点で、代われる人が0の仕事は0本になっているのが目標です。残りの仕事については、次の90日で同じ手順を繰り返します。

道具の側が満たしていないと、属人化対策は続かない

ここまでの手立ては、どれも道具に依存しない運用の話です。ただし、道具の設計が合っていないと、運用は例外なく途中で止まります。属人化を解く目的から見て、道具に求められる条件は4つあります。

関わる人が全員、同じ板を見られること

最も重要な条件です。属人化を解くというのは、1人の中にある情報を全員が見える場所に出すことなので、見られない人がいる時点で成立しません。

ここで詰まるのは、費用が人数で増える道具を使っていて、閲覧だけの人にまで費用がかかる場合です。結果として「関係者だけをツールに入れて、それ以外は報告で共有する」運用になり、報告を作る人にまた仕事が寄ります。

料金の考え方はサービスごとに違います。人数の数え方、閲覧のみの参加者を数に含めるかどうか、プランの区切りが機能で分かれているかどうかを先に確認してください。料金のページでは、機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという考え方を採っています。機能でプランが分かれない構造だと、「その機能を使うには上位プランが必要」という社内交渉が発生しないぶん、運用が止まる場所が減ります。一方で、人数が増えれば費用は素直に増えるので、外部の協力者を多く招くチームは招待する人数の見込みを先に立てておくほうが安全です。

入力の手数が少ないこと

属人化対策で増える作業は、記録することです。記録の手数が多いと、忙しい週から順に飛びます。

目安として、状態を1つ更新するのに必要な操作が3回を超えるなら、その運用は続きません。カードを開いて、項目を選んで、保存して、閉じる。この程度で終わる必要があります。できることでは、板の上でカードを動かすことと、そこにコメントや期限を足すことに絞って画面が作られています。逆に、細かい権限設定や複雑な自動化を前提にした道具は、設定した人しか全体を把握できなくなり、設定そのものが新しい属人化を生みます。

過去の経緯が、あとから追える形で残ること

判断の理由を残すという話は、道具の側に「残す場所」が無いと実行できません。案件ごとに、決定と経緯が時系列で積み上がる場所が要ります。

文書を中心に据える道具は、この点で強い一方、書き方の自由度が高いぶん、書式や置き場所の決め方そのものが属人化しやすい傾向があります。この違いはNotionとの比較で整理しています。逆に、課題を1件ずつ登録して履歴を積む形の道具は経緯が追いやすく、その代わり登録の手間が増えます。開発以外の業務にも使う場合の向き不向きはBacklogとの比較にまとめてあります。

出るときに、中身を持ち出せること

属人化の話と道具選びは、実はつながっています。データを持ち出せない道具に情報を集めると、今度は道具そのものが属人化します。乗り換えたくても中身を移せないので、動けなくなる。

移行のしやすさは、入れる前に確認しておく項目です。Trelloからの移行では取り込みの手順を説明していますが、自動で取り込めるのはTrelloからのものだけで、他のサービスからは手作業での移し替えになります。ここは正直に書いておきます。あわせて、社外の協力者を招くときにどこまで見えるかは安全性の考え方で整理しています。

いま使っている道具のどこで詰まっているかを見分ける

道具を変えることが目的ではありません。いま使っているものでも、属人化を解く運用は組めます。判断すべきなのは、いまの道具のどこで運用が止まっているかです。

カードを動かす形の板をすでに使っていて、人数や板の数の上限、あるいは外部の協力者を招くときの費用で止まっているなら、詰まっているのは操作ではなく参加の範囲です。この場合はTrelloとの比較で、招ける人数と板の数え方を並べて確認してください。無料の範囲でどこまで足りるかも、この観点で見ると判断しやすくなります。

工程の担当と期限を細かく管理していて、設定が複雑になりすぎて設定した人しか触れなくなっているなら、詰まっているのは設計の重さです。Asanaとの比較monday.comとの比較では、できることの幅と、そのぶん増える初期設定の手間を対比しています。多機能であることは欠点ではありませんが、設定を担当した1人に依存する状態は、まさに新しい属人化です。

国内向けの機能や日本語での画面表示を重視して選んだ道具を使っているなら、Jootoとの比較が近い比較対象になります。候補全体を横に並べて見たい場合は比較の一覧から順に確認できます。なお、ここで紹介している道具はどれも、いまそれを使って回っているチームがあるものです。回っているなら、無理に変える理由はありません。

板の並びから見える、属人化を解く条件

比較のページを横断して読むと、属人化に効く条件と、効かない条件がはっきり分かれます。効くのは、参加できる人数の範囲、更新の手数、経緯が残る場所の3つです。効かないのは、自動化の豊富さと、外部サービスとの連携の数です。

理由は単純です。自動化と連携は、設定した人にしか全体像が見えません。設定を作った人が抜けると、何がどう動いているのか誰にも分からない箱が残ります。属人化を解くために入れた仕組みが、新しい属人化を作る。この逆転はしばしば起きます。

板の上にカードを並べる形が属人化に効くのは、状態が絵として見えるからです。誰が何を持っているか、どこで止まっているかが、説明されなくても一目で分かる。説明されないと分からない状態こそが属人化なので、説明が要らない表示形式そのものが対策になります。

その代わり、この形には限界もあります。工程の前後関係を線で結んで管理する使い方や、コードの管理をタスクと結びつける使い方には向きません。リポジトリの機能は持っていませんし、自動化と外部連携の豊富さで勝負する設計にもなっていません。画面は日本語のみです。多国籍のチームで英語の画面が必要な場合は、別の候補を検討してください。運用上どこまで足りるかはよくある質問にも整理があります。

とりまとめる立場から最後に確認しておきたいのは、属人化を解いた先に何が変わるかです。作業の総量は減りません。減るのは、聞きに行く時間、待つ時間、そして誰かが抜けたときに止まる時間です。この3つはどれも記録に残らないため、削っても成果として見えにくい。だからこそ、着手する前に一度だけ計測しておく価値があります。特定の担当者に3日休んでもらい、何が止まったかを書き留める。その記録が、次に何を変えるかを決める材料になります。

Q1. タスクの属人化は、担当者に共有を頼めば解決しますか?

解決しません。属人化は抱え込みではなく、経緯を知っている人に渡したほうが速いという日々の判断が積み上がった結果です。頼むと本人の負担だけが増え、忙しくなると止まります。変えるべきは、次の人が詰まる4項目、つまり入口、承認者、守る条件、完了の基準を外に出す仕組みのほうです。

Q2. 手順書を書いても更新されません。どうすれば続きますか?

書いた人ではなく、読んで詰まった人が1行足す形にしてください。詰まった瞬間が、欠けている箇所を最も正確に把握できる瞬間です。あわせて、タスクを完了にする直前の確認項目に手順の反映を入れます。月次の更新タスクを別に立てる運用は、忙しい月に真っ先に飛ぶので採らないほうが確実です。

Q3. どの仕事から属人化を解けばよいか、優先順位はどう決めますか?

担当者の一覧ではなく、仕事ごとに「今日から代われる人が何人いるか」を書いた表を作り、0人の行から着手します。ここでの代われるとは、手順書を読めば今日中に着手できる状態を指し、昔やったことがあるは数えません。5人のチームなら、この表は1時間ほどで作れます。

Q4. 道具を入れ替えれば属人化は減りますか?

道具だけでは減りません。効くのは、関わる人が全員見られること、更新の手数が3回以内であること、経緯があとから追える場所があることの3つです。逆に、自動化や外部連携の豊富さは効きません。設定した人にしか全体が見えなくなり、新しい属人化を作る側に回ることがあるためです。

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