無料のToDoリストはどこまで使えるか|1人で足りる場合とチームで要るもの
「todo リスト 無料」で検索すると、候補は数え切れないほど出てきます。実際、個人が使う分には無料のToDoリストで十分に足りますし、有料に移る理由もほとんど生まれません。問題が起きるのは、その道具をそのままチームに広げたときです。この記事では、1人で足りる場合の条件をはっきりさせたうえで、個人向けのToDoリストをチームで使うと具体的に何が起きるのか、そしてとりまとめる立場の人が次に何を決めればよいのかを、順に整理します。
無料のToDoリストが無数にある理由
無料の道具がこれだけ多いのは、市場が過当競争だからではありません。ToDoリストという道具が、そもそも無料で配りやすい構造を持っているからです。この構造を理解しておくと、「無料だから機能が足りない」という粗い理解から抜け出せます。足りないのは機能ではなく、想定されている使われ方のほうです。
個人の頭の中を空にする道具として発達した
ToDoリストの出発点は、頭の中に浮かんだ「やること」を外に出して忘れてもよい状態にすることです。買い物のメモも、来週の提出物も、思いついた企画も、すべて同じ列に放り込んで、済んだら消す。この用途では、必要な項目は「やること」と「済んだかどうか」の2つしかありません。
だから個人向けのToDoリストは、入力の速さを徹底的に磨いてきました。アプリを開いて1行書けば登録が終わる。項目を増やして入力を重くする設計は、この用途では明確な悪です。思いついた瞬間に書けなければ、頭の中を空にする役目を果たせません。
この設計思想は正しく、いまでも個人の使い方では最良の答えです。とりまとめる立場の人が個人のタスク整理に無料のToDoリストを使い続けることには、何の問題もありません。ここを否定する必要はまったくありません。
無料で配れるのは、保管するものが小さいから
ToDoリストが保管しているのは、多くの場合が短い文字列と日付だけです。動画も設計データも保存しません。1人が1年間使い続けても、蓄積される量はごくわずかです。提供する側から見れば、1人あたりの費用がほとんどかからない。だから無料で配れます。
さらに、個人向けの道具は問い合わせ対応の負荷も低く抑えられます。使い方が単純なので、詰まる場所が少ない。1人で完結する道具は、運用の支援がほとんど要りません。
逆に言えば、無料で配られている理由がそのまま「チームで使うと足りなくなる理由」になっています。保管するものが小さく、支援が要らず、1人で完結する。この3つの条件は、複数人で仕事を受け渡す場面ではすべて崩れます。
1人で足りる場合の見分け方
チームで働いていても、無料のToDoリストのままで問題ない場面はあります。乗り換えを検討する前に、まず自分の状況が「1人で足りる」側なのかを確かめてください。足りているのに道具を替えると、手間だけが増えます。
依頼の受け渡しが発生しない
タスクが自分の中で始まって自分の中で終わるなら、個人向けのToDoリストで足ります。誰にも渡さないので、担当を書く欄が要りません。相手がいつ着手したかを気にする必要もありません。
判断の目安は単純です。1日のタスクのうち、他人に渡すもの、他人から受け取るものが何割あるかを数えてください。2割を下回るうちは、個人向けの道具のままで十分に回ります。多くの専門職はここに当てはまります。
一方で、進行をとりまとめる立場になると、この割合は跳ね上がります。とりまとめとは、自分で手を動かすことではなく、渡して受け取ることそのものだからです。役割が変わった時点で、必要な道具も変わります。
期限を守る責任が1人に閉じている
期限に間に合うかどうかを自分の裁量だけで決められるなら、リストは自分の記憶の延長として機能します。遅れそうなら自分で前倒しすればよい。誰かの作業待ちで止まることがないので、「止まっている」という状態を記録する必要がありません。
ところが、期限の手前に他人の作業が挟まった瞬間に話が変わります。デザインの確認が返ってこない、先方の支給素材が届かない、法務のチェックが終わらない。こうした待ち時間は、個人のToDoリストでは「未完了」としか表現できません。自分の手が止まっているのか、相手待ちなのかが、リストの上では区別できないのです。
現場でよく聞くのは、リストの未完了が積み上がって、どれが本当に自分の番なのか分からなくなるという話です。項目が30件を超えたあたりから、リストを開くこと自体が億劫になります。
記録が消えても困るのが自分だけ
個人のアカウントに紐づいた無料のToDoリストは、そのアカウントが失われれば中身も失われます。1人で使っている分には、困るのは自分だけなので許容できます。
チームでは許容できません。ある担当者のリストにしか書かれていない依頼は、その人が休んだ日に存在しなくなります。引き継ぎの場面ではさらに深刻で、退職者のアカウントを止めた瞬間に、進行中の案件の情報がまとめて見えなくなることがあります。
組織の情報管理という観点でも、業務の記録が個人のアカウントの中だけにある状態は避けるべきものとして扱われています。
組織を対象とした情報セキュリティ上の脅威として、内部不正による情報漏えいや、退職者による情報の持ち出しが繰り返し取り上げられている。 出典: ipa.go.jp
業務の記録が誰の管理下にあるかは、道具を選ぶときの判断材料になります。この観点の整理は安全性の考え方にまとめられており、権限をどう区切るか、誰が何を見られる状態にするかという考え方が確認できます。
個人向けのToDoリストをチームで使うと何が起きるか
ここからが本題です。無料のToDoリストをそのままチームに広げると、道具が壊れるわけではありません。壊れるのは運用のほうで、しかも壊れ方には決まった順番があります。
担当欄が無いので、担当は会話の記憶になる
個人向けのToDoリストには、担当者を指定する欄が無いものが多くあります。1人で使う前提なら当然です。全部が自分の担当だからです。
これをチームで共有すると、「誰の仕事か」という情報がリストの外にはみ出します。はみ出した先はチャットの会話か、打ち合わせの発言か、とりまとめ役の頭の中です。3日経つと、そのタスクを誰が持っているのかを確かめるために、チャットをさかのぼる作業が発生します。
さらにやっかいなのは、担当が空白のまま放置されたタスクです。誰も自分の仕事だと思っていないので、期限の前日まで誰も触りません。5人のチームなら口頭で埋められますが、20人を超えるとこの埋め合わせは物理的に不可能になります。
状態が2つしかないので、確認待ちが行方不明になる
個人向けのToDoリストの状態は、たいてい未完了と完了の2つです。この2値では、チームの実態を表現できません。
実務では少なくとも、着手前、進行中、確認待ち、完了の4段階が必要になります。もっとも重要なのは確認待ちです。作業した人の手は離れているのに、まだ完了していない。この状態にあるタスクは、放っておくと誰も見ません。作業者は「出した」と思い、確認者は「まだ来ていない」と思っている状態が、静かに数日続きます。
2値のリストでは、確認待ちは未完了として作業者の列に残り続けます。作業者から見れば自分の責任のように見えるので、督促するか、黙って待つかの二択になります。とりまとめる立場から見れば、ここが最も工程を溶かす場所です。
一覧が個人ごとに分かれ、全体が誰にも見えない
無料のToDoリストをチームで使う場合、多くは各自が自分のアカウントで使い、共有機能で一部を見せ合う形になります。この形では、全体像を1画面で見る手段がありません。
とりまとめる立場の人がやることは、各自のリストを順に開いて、頭の中で合成する作業になります。人数分だけ画面を開くので、10人いれば10回の切り替えが要ります。しかも見た瞬間から古くなるので、毎朝繰り返すことになります。
この作業は表面上は成立します。だから危険です。とりまとめ役が頑張っているうちは問題が見えず、その人が休んだ日に初めて、全体を知っている人が1人しかいなかったことが分かります。
退職と異動でリストごと消える
個人アカウントに紐づく道具の宿命として、人が抜けると記録も抜けます。引き継ぎのときにエクスポートしてもらえばよいのですが、退職の直前は誰もが忙しく、後回しになります。
しかも、書き出せるのはテキストだけであることが多く、期限も担当も状態も、移した先では組み直しになります。移す手間を惜しんで、結局はチャットに箇条書きで貼り付けて終わる。そこからさらに情報が薄くなります。
チームの記録は、人ではなくチームに紐づいている必要があります。これは機能の話ではなく、所有者の話です。
「無料」が指しているものは道具によって違う
無料と書かれていても、その中身は道具ごとにまったく違います。ここを読み分けないまま導入すると、忙しい時期に突然止まります。料金や上限は各サービスの公式ページで最新の内容を確認するのが確実ですが、読み分ける軸は共通しています。
人数の無料、機能の無料、期間の無料
無料の区切り方には、大きく3つの型があります。1つ目は人数で区切る型で、一定の人数までは全機能を無料にし、それを超えたら課金する形です。2つ目は機能で区切る型で、人数は制限しないかわりに、特定の機能を上位プランに置く形です。3つ目は期間で区切る型で、試用期間が終われば課金が始まります。
とりまとめる立場から見て扱いが難しいのは、2つ目の機能で区切る型です。使い始めてしばらく経ってから「この機能は上位プランです」という表示に当たると、そこで運用が止まります。しかも止まる場所は、たいてい運用が軌道に乗り始めた頃です。定着しかけたところで社内の稟議を通すことになり、勢いが途切れます。
人数で区切る型は、費用の見通しが立てやすい反面、外部の協力者を多く招く運用では費用が伸びます。どちらが良いかは、チームの形によって変わります。
上限に当たるのは、たいてい忙しい時期
無料枠には、人数以外にも上限が設定されていることがあります。保存できるファイルの容量、作れる板や表の数、履歴をさかのぼれる期間、外部との連携の回数などです。
これらの上限に当たるのは、暇な時期ではありません。案件が重なり、資料が増え、履歴を確認する必要が出てくる忙しい時期です。3か月ほど順調に使えていたのに、繁忙期に入った週に突然使えなくなるという順番になります。
したがって、無料枠を評価するときは「いま足りているか」ではなく「いちばん忙しい月に足りるか」で見てください。判断材料として、過去1年でもっとも案件が多かった月の件数を数え、その状態を想定して上限を読むと現実に近くなります。各サービスの上限の数え方は比較の一覧で並べて確認できます。数え方そのものが道具ごとに違うので、数字だけを比べても意味がありません。
無料のToDoリストの不足を、別の道具で補おうとするとどうなるか
チームで足りなくなったとき、多くの現場はすぐに道具を替えません。手元にあるもので補おうとします。この補い方には典型があり、どれも一定のところまでは機能します。ただし、限界の来る場所が決まっています。
チャットに貼って全体を共有する
もっともよく見られるのが、各自のToDoをチャットに貼って共有する方法です。朝に今日やることを投稿し、夕方に結果を投稿する。導入の手間がゼロで、既に全員が使っている道具なので、始めた初日から回ります。
限界は3日目に来ます。チャットは時系列にしか並ばないので、昨日の投稿は今日の投稿の下に沈みます。3日前に共有された「来週までにお願いします」は、探さなければ見つかりません。探すためにはキーワードを覚えている必要があり、覚えていられるのは投稿した本人だけです。
さらに、投稿の形式が人によって違うため、全体を見渡すことができません。箇条書きの人もいれば、文章で書く人もいます。担当と期限を書く人と書かない人がいます。読む側が毎回解釈することになり、その解釈の負担はとりまとめ役に集中します。
表計算で全体の進捗表を作る
次に多いのが、表計算で進捗表を作る方法です。行にタスク、列に担当と期限と状態を置けば、必要な情報はひととおり揃います。並べ替えも絞り込みもできるので、機能としては足ります。
ここでの限界は、更新する人の数です。1人が引き受けて全部を入力している間は、表はきれいに保たれます。ただしその1人は、全員から状況を聞いて回る係になります。聞いて回る時間は、週に2時間や3時間に達することがあります。
かといって全員に更新させようとすると、別の問題が出ます。ファイルを同時に開くと編集がぶつかり、片方の入力が消えます。誰かが開きっぱなしにしていて他の人が編集できないという待ちも発生します。結果として「更新はとりまとめ役に依頼する」という運用に戻り、最初の状態に落ち着きます。
もう1つ見落とされがちなのが、行が増えたときの扱いです。完了したタスクを消すと履歴が失われ、残すと行が伸びて見づらくなります。200行を超えたあたりから、表を開くこと自体が敬遠されるようになります。
ホワイトボードと付箋で並べる
出社が中心のチームでは、ホワイトボードに付箋を貼る方法が使われます。この方法には明確な利点があります。全員が同じものを同時に見るので、認識のずれが起きにくい。付箋を動かす操作が軽いので、状態の更新が習慣になりやすい。
限界は場所に縛られることです。在宅の人や外部の協力者からは見えません。写真を撮って共有するという運用が始まりますが、写真は検索できず、翌日には古くなります。過去の経緯も残りません。
板に札を並べて状態を動かすという考え方そのものは、対面で機能することが証明されているやり方です。画面の上でそれを再現する道具が広く使われているのは、この方式が定着しやすいからです。補い方として選ぶなら、いま手元にある道具のうち、この形にいちばん近いものを選ぶのが失敗しにくくなります。
チームで要るものを、機能名ではなく場面で並べる
道具選びが難航するのは、機能名の一覧で比べようとするからです。機能名は各社の呼び方が違い、同じ名前でも中身が違います。比べるなら、実際に困る場面で並べてください。
誰が持っているかが1秒で分かること
とりまとめる立場の人が1日で最も多く発する問いは、「これ、いま誰の番か」です。この問いに画面を見ただけで答えられるかどうかが、道具の価値をほぼ決めます。
板の形でタスクを並べる方式が広く使われているのは、この問いに強いからです。列が状態を、札が個々のタスクを表すので、どこに何が溜まっているかが一目で分かります。確認待ちの列が長く伸びていれば、詰まりの場所はそこだと即座に分かります。
一覧が表の形であっても、担当と状態で絞り込めれば同じ問いに答えられます。重要なのは形式ではなく、切り替え操作なしで全体が見えるかどうかです。この観点で候補を触ってみると、良し悪しがはっきり分かれます。
止まっているものが浮き上がること
順調に進んでいるタスクは、見なくても進みます。とりまとめる立場の人が見るべきなのは、止まっているタスクだけです。
止まっているかどうかを判定する材料は、最後に動いた日付です。2週間動いていないタスクは、ほぼ確実に何か詰まっています。担当者が忘れているか、待ちが発生しているか、そもそもやる必要がなくなっているかのどれかです。
この判定を人力でやろうとすると続きません。道具の側で、更新日で並べ替えるか、動きの無いものを目立たせる仕組みがあると、週に一度の見直しが30分で終わります。無料のToDoリストの多くは更新日を保持していないので、この判定ができません。
過去の決定に手が届くこと
「なぜこの仕様になったのか」を後から探す場面は、必ず訪れます。半年前の判断の理由を、当時の担当者がもう覚えていないという状況は珍しくありません。
タスクの札に、そのときの議論と決定が紐づいていれば、探す先が1か所に定まります。チャットの会話をさかのぼる必要も、共有ドライブを検索する必要もありません。逆に、タスクの記録が短い一行だけだと、決定の理由はどこにも残りません。
とりまとめる立場の人が本当に守りたいのは、進捗そのものより、この経緯です。経緯が残っていれば、担当が替わっても仕事は続きます。
招いた外部の人に、見せる範囲を決められること
外部の協力者と仕事をするチームでは、見せる範囲の制御が必要になります。全部を見せると、他の案件の情報まで渡ってしまう。かといって、何も見せずに口頭で依頼すると、結局とりまとめ役が全部を伝える係になります。
ここは無料の個人向けToDoリストがもっとも苦手にする部分です。共有はできても、範囲を細かく切る発想が元から無いからです。外部の人を招く運用が前提なら、招待の単位と権限の考え方は最初に確認してください。
無料のまま試して確かめられること
道具を替えるかどうかを決める前に、いまの無料のToDoリストのままで確かめられることがあります。ここを飛ばして道具だけ替えると、同じ問題が新しい画面で再現します。
まず、1週間だけ「探す時間」を記録してください。誰の担当か、どこまで進んでいるか、前にどう決めたかを調べるために使った時間を、その都度書き留めます。この時間は成果として記録に残らないので、普段は誰も認識していません。数字にすると、とりまとめ役だけで週に数時間に達することがよくあります。
次に、いま抱えているタスクを紙に書き出して、状態で分類してみてください。着手前、進行中、確認待ち、完了の4つに分けたとき、確認待ちが何件あるかを数えます。ここが多いチームは、道具を替える効果がすぐに出ます。逆に確認待ちがほとんど無いチームは、道具の問題ではなく、依頼の粒度の問題である可能性が高くなります。
最後に、更新の手数を数えます。1つのタスクの状態を変えるために、何回の操作が必要かを数えてください。3回を超えるなら、その運用は忙しくなった瞬間に止まります。入力する人が増えないと、進捗の表はすぐに嘘になります。嘘の表は、無いよりも危険です。
無料から有料へ移る境目をどこに置くか
有料に移る判断は、機能が足りなくなったときではありません。もっと手前にあります。
境目の1つ目は、とりまとめ役が全体を頭の中で合成し始めたときです。各自のリストを順に開いて合算する作業が日課になっているなら、その作業に使っている時間が費用の判断材料になります。人件費に換算すれば、多くの場合は道具の費用を上回ります。
2つ目は、確認待ちのタスクが常に存在するようになったときです。確認待ちが常時発生するということは、仕事の受け渡しが日常になったということです。受け渡しを扱えない道具のまま進めると、待ち時間が誰にも見えないまま積み上がります。
3つ目は、外部の協力者が入ったときです。社内だけなら口頭で補える情報も、外部の人には補えません。書いていないことは伝わらない前提で運用する必要があり、その前提には記録が要ります。
4つ目は、人が抜けたときです。1度でも引き継ぎで痛い目に遭ったチームは、記録の所有者を個人からチームに移す必要性を実感しています。この経験がある場合、判断は速く済みます。
逆に、この4つのどれにも当てはまらないなら、無料のままで問題ありません。総務省の白書でも、道具は入れるだけでは効果が出ず、実際に使われているかどうかが職場の状態と結びつくと整理されています。
職場での働きやすさについては、ビジネスICTツールの職場への導入の有無と、働きやすさとの関係は統計的に有意差が認められなかったことから、導入だけでは働きやすさとの関係は窺えなかった。他方、ビジネスICTツールを職場で積極的に利用している回答者の働きやすさへの評価は、使っていない回答者の評価よりもより高くなった。 出典: soumu.go.jp
導入した数ではなく、使われているかどうかが結果を分けます。必要が無いのに替えるのは、使われない道具を1つ増やすことと同じです。
道具を替えても続かないときに効くこと
新しい道具を入れても、2週間で誰も更新しなくなるという話は、現場で繰り返し語られています。原因は道具の性能ではなく、始め方にあります。
まず、切り替え日を決めて翌日から全部を移す進め方は、ほぼ確実に失敗します。移行の途中は2か所を見る期間が必ず発生するので、それを禁止すると現場が混乱します。3週間ほど併用を許し、その間はとりまとめ役が黙って移す。これで定着率が変わります。
次に、最初から欄を増やさないことです。優先度、工数、見積時間、分類といった欄は、あると便利に見えますが、初期は空欄が並びます。空欄の多い表は誰も信用しません。「何を」「誰が」「いつまでに」「いまどこ」の4つだけで始めて、運用が定着してから足してください。
そして、更新する場面を業務時間の中に時刻で置くことです。終業前の10分、週に一度の30分といった形で、カレンダーに入れます。善意に頼った運用は、忙しくなったときに最初に消えます。
移行の実務については、Trelloからの移行に取り込みの手順と、移せるものと移せないものの切り分けがまとめられています。自動で取り込めるのはTrelloだけで、それ以外の道具からはCSVなどを介した手作業になります。この点は先に把握しておくと、移行の計画が立てやすくなります。
ボード型のタスク管理を比べるときに見ている点
最後に、チーム向けの道具を候補として並べるときに、どこを見ればよいかを整理します。ここは機能表では判断できない部分です。
比較の起点として使いやすいのは、板の考え方の違いです。同じ「ボード」と呼ばれていても、1枚の板に何を載せる想定なのかが道具ごとに違います。個人のタスク整理を出発点にした道具と、チームの工程管理を出発点にした道具では、札に持たせる情報の量が変わります。この違いを整理したのがTrelloとの比較で、板と札の考え方がどこで分かれるかが確認できます。
大規模な運用を前提に設計された道具との違いを見たい場合はAsanaとの比較が参考になります。表示の切り替えや権限の細かさをどこまで求めるかで、選ぶべきものが変わります。文書とデータベースを1つの場所にまとめる考え方の道具と比べたい場合はNotionとの比較に、自由度の高さと運用の負荷がどう釣り合うかが整理されています。
工程を大きな粒度で管理する道具との違いはmonday.comとの比較に、開発の工程と課題管理を軸にした道具との違いはBacklogとの比較にまとめられています。国内で使われている板型の道具との違いを確認したい場合はJootoとの比較が該当します。候補を一度に見渡すなら比較の一覧から入るのが早道です。
機能の範囲そのものはできることで確認できます。ここで先に把握しておくべきなのは、できないことのほうです。ソースコードを置くリポジトリの機能はありません。自動化や外部サービスとの連携の豊富さで競う設計にもなっていません。画面は日本語のみです。自動で取り込めるのはTrelloからだけです。これらが必須の要件になっているチームは、他の候補を選んだほうが結果的にうまくいきます。
料金の考え方は料金で確認できます。運用の観点で意味があるのは、機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという構造です。この形だと、「この機能を使うには上位プランが要る」という社内交渉が発生しません。使い始めてから止まる場所が減るという意味で、定着には効きます。一方、人数が増えれば費用は素直に伸びるので、外部の協力者を多く招く運用のチームは、招く人数の見込みを先に立てておくほうが安全です。
導入の前に出やすい疑問はよくある質問にまとめられています。無料のToDoリストからの移行で実際に詰まるのは、機能の差ではなく、移したあとに誰が更新し続けるかという運用の設計です。道具を決める作業は、その設計を決める作業の前段でしかありません。1人で足りているなら替えない。受け渡しが日常になったなら、記録の置き場所をチームに移す。判断の軸はこの2つで足ります。
Q1. 無料のToDoリストは、何人までなら問題なく使えますか?
人数よりも、タスクの受け渡しがあるかどうかで決まります。全員が自分の仕事だけを管理していて、他人に渡すタスクが全体の2割を下回るなら、10人を超えても無料のToDoリストで回ります。逆に3人でも受け渡しが日常なら、担当と状態を扱える道具に移したほうが結果的に手間が減ります。
Q2. 無料のツールをチームで使うと、最初にどこで詰まりますか?
確認待ちの扱いで詰まります。個人向けのToDoリストは未完了と完了の2値しかないため、作業者の手が離れて確認者の番になっている状態を表現できません。作業者は出したつもり、確認者はまだ来ていないと思っている状態が数日続き、その待ち時間が誰にも見えないまま工程を圧迫します。
Q3. 有料に移るかどうかは、どの時点で判断すればよいですか?
とりまとめ役が各自のリストを毎朝開いて全体を頭の中で合成し始めたら、その時点が境目です。あわせて、確認待ちが常時発生している、外部の協力者が入った、引き継ぎで情報が失われた経験があるという3点のいずれかに当てはまるなら、費用より失っている時間のほうが大きくなっています。
Q4. 新しい道具を入れても定着しません。何を変えればよいですか?
始め方を変えてください。切り替え日を決めて翌日から全部移す進め方は失敗します。3週間ほど併用を許し、その間はとりまとめ役が黙って移します。あわせて欄を増やさないこと、状態を変える操作が3回を超えないことを確認し、更新する時間を終業前の10分として業務時間に置いてください。