ツール導入の手順|先に決めておくと戻さずに済むこと
ツールの導入手順を調べている人が本当に困っているのは、登録画面の進み方ではありません。登録は数分で終わります。困るのは、入れたあとに誰も使わなくなって、気づけば元の表計算ソフトとチャットに戻っている、という結末をどう避けるかです。この記事では、5人から数十人のチームで進行を預かっている人に向けて、道具を入れる前に決めておくと後から戻さずに済むことを、試す範囲、やめる基準、決める人、全体に広げる時期という4つに絞って段取りの形で整理します。
先に結論を書きます。導入がうまくいかない原因のほとんどは、道具の選び方ではなく、決めごとを飛ばして手を動かし始めたことにあります。逆に言えば、決めごとを先に済ませておけば、選んだ道具が合わなかったときですら被害は小さく収まります。合わないと分かった時点でやめられるからです。やめられない状態のまま進めることが、戻す作業を一番重くします。
道具の入れ替えが増えている一方で、定着していない現実
板の上にカードを並べて進行を見る形は、いまや特別なやり方ではなくなりました。案件を1枚ずつのカードにして、未着手から完了まで列を移していく見せ方は、開発の現場から始まって、制作、広報、営業、事務の進行管理にまで広がっています。無料で試せる道具が増えたことで、導入の入口はかつてないほど低くなりました。
ところが、入口が低くなったぶん、出口も増えました。現場でよく聞くのは、道具を入れてから2週間で更新が止まり、1か月後には元のチャットと表に戻っていた、という話です。しかも、そこで終わりません。半年後に別の道具でもう一度同じことをやり、また戻ります。チームの側には「またツールの話か」という空気が残り、次に本当に必要になったとき、提案が通りにくくなります。
この繰り返しが起きるのは、道具の性能が足りないからではありません。順番の問題です。多くのチームは、比較記事を読んで候補を選び、無料で登録し、全員を招待し、いまの案件を全部移すところから始めます。この順番だと、うまくいかなかったときに引き返す場所がありません。全員を巻き込んで全案件を移したあとで「やっぱり合わない」となれば、戻す作業そのものが大仕事になり、誰も言い出せなくなります。言い出せないまま更新が止まり、静かに死にます。
行政サービスの設計指針でも、この順番の問題は明確に言語化されています。
利用者のニーズから出発する 何度も繰り返す 一遍にやらず、一貫してやる 出典: digital.go.jp
一遍にやらないこと、そして何度も繰り返すこと。この2つは、社内で道具を入れるときにもそのまま当てはまります。小さく試して、確かめて、広げる。この順番を守れば、失敗しても失敗の範囲が小さく、次の試行に進めます。一遍にやると、失敗が全体の失敗になり、次がなくなります。
「入れたのに戻した」が起きる典型的な流れ
戻すことになったチームの流れは、驚くほど似ています。まず、進行を預かっている人が現状に困り、比較記事を読んで候補を絞ります。ここまでは正しい動きです。次に、無料の枠で登録し、良さそうだったのでチーム全員を招待します。招待した時点で、これは「試し」ではなく「本番」になります。
そのあと、いまの案件をまとめて移します。移す作業は1人でやることが多く、数日かかります。移し終えて「今日から新しい道具で管理します」と伝えます。最初の数日は、珍しさもあって全員が触ります。1週間経つと、忙しい人から順に更新が止まります。更新されないカードが増えると、板を見ても実態が分からなくなります。実態が分からない板は、誰も見なくなります。見られない板は、更新する意味がなくなります。ここで完全に止まります。
止まったあと、進行を預かっている人は板と表計算ソフトの両方を更新し続けます。二重管理です。二重管理は必ず限界が来るので、どこかで片方を捨てます。捨てられるのは、慣れていない新しいほうです。
この流れのどこにも、悪意も怠慢もありません。決めていなかったことが順番に表面化しただけです。だから、決めておけば止められます。
戻す羽目になるのは、4つの決めごとを飛ばしたとき
導入で決めておくべきことは、細かく数えればいくらでも出てきます。ただ、戻すか戻さないかを分けているのは、次の4つだけです。この4つが決まっていれば、他の細かいことは走りながら決められます。逆に、この4つが空欄のまま走ると、細かいことをどれだけ丁寧に決めても結果は変わりません。
決める人が空席のまま始まっている
いちばん多いのがこれです。誰が最終的に「続ける」「やめる」を判断するのかが決まっていないまま、なんとなく試し始めます。すると、誰かが不便を言うたびに議論が振り出しに戻ります。「前の道具のほうが早かった」と誰かが言い、別の誰かが「慣れの問題だ」と言い、結論が出ません。結論が出ないまま時間が過ぎ、その間に更新が止まります。
決める人は、多数決ではなく1人に決めてください。進行を預かっている人でも、その上長でもかまいません。大事なのは、その人が判定役であることを自分から明言していることと、チームがそれを知っていることです。合議で決めようとすると、反対する人が1人でもいれば止まります。道具の乗り換えは全員が得をする変更ではなく、入力の手間が増える人と減る人が必ず出ます。手間が増える側にとって反対する理由は常にあるので、合議では通りません。
同時に、決める人は「やめる」判断もできる人でなければなりません。続ける決定しかできない人が決める人になると、実質的には撤退できない体制になります。撤退できない体制で始めた試行は、試行ではありません。
試す範囲が最初から広すぎる
もう1つ多いのが、最初から全員・全案件で始めてしまうことです。範囲が広いと、何が原因でうまくいかなかったのかが分かりません。道具が合わなかったのか、移したデータが汚かったのか、説明が足りなかったのか、たまたま繁忙期に重なったのか、全部が混ざります。混ざったまま「うまくいかなかった」という結論だけが残ります。
試す範囲は、案件を1つ、人を3人から5人に絞るのが現実的です。この規模なら、うまくいかなかったときに何が原因かを名指しできます。名指しできれば手当ができます。手当ができれば、次の範囲に進めます。
範囲を絞ることには、もう1つの利点があります。やめるときのコストがほぼゼロになることです。5人が2週間使った板を閉じるのは、全社が3か月使った板を閉じるのとは比べものになりません。やめるコストが小さいと、人は正直に評価できます。やめるコストが大きいと、うまくいっていなくても「もう少し様子を見よう」と言い続けることになります。
やめる基準が言葉になっていない
「様子を見る」が続く原因は、やめる基準を決めていないことです。基準がないと、判断は感覚になります。感覚での判断は、すでに払ったコストに引きずられます。移行に3日かけたのだから、招待した全員に説明したのだから、と続ける理由が積み上がっていきます。
やめる基準は、試す前に、数えられる形で書いてください。感想ではなく、数えられるものにするのが要点です。たとえば、試用の最終日にカードの更新が3日以上止まっているカードが半分を超えていたらやめる、といった書き方です。あるいは、進行を預かる人以外の入力が週に1回もなかった人が試用メンバーの半数を超えたらやめる、でもかまいません。
基準を作るときに気をつけたいのは、効果ではなく行動を測ることです。導入から2週間で成果が変わることはまずありません。変わるとすれば行動です。人が入力するようになったか、板を見て会話するようになったか、探す手間が減ったか。行動が変わっていないのに成果だけが変わることはないので、行動を基準にするほうが正しく、しかも早く判定できます。
全体に広げる合図が決まっていない
4つ目は、うまくいった場合の話です。試用がうまくいっても、広げる合図が決まっていないと、いつまでも試用のままになります。試用のままだと、参加していない人は関係のない話として扱い続けます。関係のない話のまま数か月が過ぎると、試用チームの中でも「これは正式なものではない」という扱いになり、優先度が下がります。
広げる合図は、日付と条件の両方で決めておくのが確実です。試用の判定日に基準を満たしていれば、その翌週から次のチームに広げる、という形です。日付だけだと、うまくいっていなくても広げてしまいます。条件だけだと、いつまでも判定しません。両方が要ります。
導入の段取りを、時系列で組み立てる
4つの決めごとを踏まえて、実際の段取りに落とします。全体で4週間を見ておくと無理がありません。急ぐ事情があっても、判定日だけは省かないでください。判定日を省くと、続けるかやめるかの決着がつかず、最初に書いた「静かに死ぬ」流れに入ります。
準備の週にやること
道具を探し始める前に、いまの詰まりを1行で書きます。「進捗が分からない」では広すぎます。「誰が何をどこまでやったかを聞かないと分からず、毎週の確認に時間を取られている」まで具体化してください。この1行が、後で判定の物差しになります。
次に、その詰まりが起きている場面を数えます。1週間のあいだ、進捗を聞くために送ったメッセージの数を数える。工程表を引き直した回数を数える。同じ質問を何回受けたかを数える。数えるだけで、思っていた場所と違うところが詰まっていると分かることがよくあります。詰まりの場所を取り違えたまま道具を選ぶと、どんな道具を入れても解決しません。
そのうえで候補を絞ります。候補は2つまでにしてください。3つ以上を並べると比較そのものが仕事になり、比較で満足して導入まで進まないことがあります。絞るときの観点は次の章にまとめます。
試す範囲を固定する
候補が決まったら、試す範囲を決めて文書に残します。対象の案件名、参加する人の名前、開始日、判定日、判定の基準、判定する人。この6項目を書いた短い文書を1枚作り、参加者に共有します。長い資料は要りません。数行で足ります。
この文書があると、試用中に出る不満の扱いが変わります。「使いにくい」という声が出たとき、それが判定基準に関わる話なのか、慣れの話なのかを切り分けられます。基準に関わるなら記録し、そうでないなら判定日まで保留にする。切り分けができないと、毎日出る細かい不満のたびに議論が起き、疲れて止まります。
参加する人を選ぶときのこつは、いちばん忙しい人を1人入れておくことです。暇な人だけで試すと、忙しい人が使えるかどうかが分かりません。導入後に更新が止まる原因は、たいてい忙しい人が入力する時間を取れないことなので、そこを試用のうちに確かめる価値があります。
移すデータを絞る
試用のためにデータを移すとき、全部を移そうとしないでください。進行中の案件だけで足ります。完了した案件も、遠い先の予定も、試用には要りません。全部移そうとすると、その準備だけで試用期間が終わります。
移す量が少ないと、もう1つ良いことがあります。手で作れることです。手で1枚ずつカードを作ると、カードに何を書けば足りるのかが分かります。取り込み機能で一気に入れると、要らない項目まで全部入ってきて、板が最初から重くなります。試用の段階では、軽い板のほうが判定に向いています。
試用期間中にやること
試用が始まったら、進行を預かる人がやることは3つです。
1つ目は、自分が先に使い切ることです。人は、見本がないと使い方を決められません。判定する立場の人が板を放置していると、他の人も放置します。逆に、毎日そこに書き込まれていれば、他の人もそこを見に来ます。
2つ目は、二重管理を明示的に止めることです。試用中に表計算ソフトとの両方を更新し続けると、必ず表計算ソフトのほうが正になります。慣れているからです。試用の対象案件については、板だけを正とすると宣言してください。宣言が怖いなら、対象案件を1つに絞った意味がありません。1つなら、失敗しても取り返せます。
3つ目は、詰まった声を記録することです。判定日に思い出そうとしても思い出せません。その場で1行書き残してください。誰が、何をしようとして、どこで止まったか。この記録が、判定の材料になり、次に広げるときの説明資料にもなります。
判定日に決める
判定日には、決める人が3つのうちどれかを選びます。続ける、やめる、条件付きで延長する。この3つ目を用意しておくのが実務的です。基準を満たさなかった原因が道具ではなく進め方にあると分かった場合、進め方だけ変えてもう2週間試す価値があります。ただし、延長は1回までと決めておいてください。延長を繰り返せるようにすると、やめる基準が意味を失います。
やめる決定をしたときは、やめたことを参加者に明確に伝えてください。曖昧に終わらせると「あの板はまだ生きているのか」という状態が残ります。生きているのか死んでいるのか分からない板は、次の導入のときに負債になります。閉じる日を決めて、データを書き出して保管し、閉じます。
全体に広げる順番
続ける決定をしたら、次のチームに広げます。ここでも一度に全部ではなく、隣の1チームから始めます。試用チームの誰かが、次のチームの相談役に入る形にすると定着が早くなります。使い方の説明を、進行を預かる人が全チームに繰り返すのは持ちません。使えるようになった人が次の人に教える形にすると、広がる速度が人数に比例します。
広げるときは、板の作り方をそろえてください。列の名前、カードに必ず書く項目、期限の入れ方。チームごとにばらばらだと、横断して見たときに何も分かりません。ただし、そろえるのは最低限にしてください。細かく決めすぎると、決まりを守ることが目的になり、入力が止まります。
古い道具をいつ閉じるか
最後に、古い道具を閉じる日を決めます。ここを決めないチームが非常に多く、そして二重管理のまま1年が過ぎます。二重管理は、どちらが正なのか分からない状態を作るので、道具を入れる前より悪くなることすらあります。
閉じる日は、全体に広げた日から1か月後あたりが目安です。それまでは古い道具を読み取り専用として残し、新しい書き込みは受け付けないようにします。閉じたあとも、書き出したデータは保管しておきます。過去の記録を参照したい場面は、思っているより早く来ます。
試用中に出る詰まりと、その場での手当
段取りを決めていても、試用が始まれば詰まります。詰まること自体は問題ではありません。問題は、詰まったときに何を直せばよいか分からず、道具のせいにして終わることです。よく出る詰まり方は限られているので、あらかじめ知っておくと、その場で手当ができます。
誰も入力しないまま数日が過ぎる
いちばん多い詰まり方です。原因は「入力する時刻が決まっていない」ことがほとんどです。人は、いつ書けばよいか決まっていない作業を後回しにします。後回しにした作業は、その日のうちに消えます。
手当は簡単で、書く時刻を1つ決めることです。朝の始業直後でも、退勤前でもかまいません。決まった時刻に、自分の担当カードの状態だけを見る。この習慣が付くまでは、進行を預かる人が声をかけ続ける必要があります。声をかけるのを面倒に感じるかもしれませんが、この期間は2週間ほどで終わります。ここを乗り切らずに撤退すると、次にどんな道具を入れても同じところで止まります。
もう1つの原因は、入力する項目が多すぎることです。カードを1枚作るのに、期限、担当、優先度、分類、見積もり時間まで求められると、書く前に気持ちが折れます。試用の段階では、必須の項目をカード名と担当の2つだけにしてください。足りない項目は、必要だと分かってから足せばよく、最初から足すと入力が止まります。
決める人が忙しくて判定日が流れる
判定日に決める人が捕まらず、そのまま数週間が過ぎる。これも頻出します。判定が流れると、試用が終わったのか続いているのか分からない状態になり、参加者の熱が下がります。
防ぐには、判定日を決めた時点で、その人の予定表に30分の枠を押さえておくことです。日付だけ決めて枠を取らないと、必ず他の予定で埋まります。また、判定の材料は前日までに1枚にまとめて渡してください。当日に材料を集め始めると、その場では決まりません。材料は、試用中に書き残した詰まりの記録と、やめる基準に対する実際の数字の2つで足ります。
反対する人が1人いて、話が進まない
道具の乗り換えは、全員が得をする変更ではありません。入力の手間が増える人は必ずいます。その人が反対するのは、立場としては正しい反応です。
手当は、説得ではなく交換です。増える手間の代わりに、何が減るのかを具体的に示します。進捗を聞かれる回数が減る、同じ報告を2か所に書かなくてよくなる、探す時間が減る。減るものが示せないなら、その人にとっては純粋に手間が増えるだけなので、反対のほうが筋が通っています。その場合は、その人を試用の範囲から外すという判断もあります。全員でやる必要は、試用の段階ではありません。
反対が根強いときに避けたいのは、上から決めて押し切ることです。押し切れば試用は始まりますが、入力は増えません。入力されない板は嘘をつくので、判定の材料が取れず、結局やり直しになります。
道具を選ぶときに見る観点
候補を2つに絞る段階で、何を見るかを整理します。機能の一覧を突き合わせる作業は、時間がかかるわりに判断を変えません。使わない機能がいくつ多くても、導入の成否には関係がないからです。見る価値があるのは次の4つです。
料金がどこで区切られているか
料金表を見るとき、金額そのものより、何によって金額が変わるのかを見てください。人数で変わるのか、案件の数で変わるのか、機能で変わるのかで、運用の仕方が変わります。
機能で区切られている場合、試用のときに使えていた機能が、本番のプランでは使えないということが起きます。逆に、使いたい機能が上位プランにしかないと、その1つのために全員分の単価が上がります。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという区切り方をとる道具もあり、この場合は「どの機能がどのプランか」を調べる手間が消えて、決めるのは何人を招待するかだけになります。どちらが良いかはチームによりますが、区切り方を確認せずに金額だけ比べると、あとで想定が崩れます。
料金は変わるものなので、検討している時点の公式ページで確かめてください。税抜きか税込みかも、月払いか年払いかも、表示によって違います。社内で予算の話をするときは、この2点を必ず添えて出してください。
入力にかかる手数
定着するかどうかは、ほぼここで決まります。1件を登録するのに何回クリックするか、既存のカードの状態を変えるのに何手かかるか。これを候補ごとに実際に数えてください。数手の差が、毎日数十件で効いてきます。
とくに、スマートフォンから触れるかどうかは確認しておく価値があります。外にいる時間が長い人がチームにいる場合、パソコンの前に戻らないと更新できない道具は、その人からの入力が丸ごと落ちます。落ちた入力は、進行を預かる人が代わりに埋めることになります。
権限と、外の人をどう入れるか
外部の協力者や取引先を板に招く可能性があるなら、そのときの扱いを先に確認してください。全部が見えてしまうのか、指定した範囲だけ見せられるのか、その人の分も人数に数えるのか。あとから確認すると、招待できないという理由で運用の形を変えることになります。
社内の情報の扱いについては、社内の規程や取引先との契約で決まっている条件が先にあります。持ち出しの可否や保管の場所について不安がある場合は、社内の管理部門や、契約の窓口に確認してください。安全性の考え方のように、道具の側がどういう方針でデータを扱うかを公開している場合は、その内容を確認のための材料に使えます。
使える言葉と、日々の見た目
日本語だけで使えるのか、英語の画面が混ざるのかは、定着に直接効きます。英語が混ざる画面は、慣れている人には問題ありませんが、日常的にパソコンを使わない人には壁になります。試用に忙しい人を入れておく理由と同じで、いちばん壁を感じる人が使えるかどうかで判定してください。
一方で、日本語のみという割り切りは、海外の協力者がいるチームには合いません。どの割り切りが自分たちに合うかを見るのであって、割り切りの有無で優劣を付ける話ではありません。
比較のページから読み取れること
道具を絞る段階で参考になるのは、機能の一覧よりも、いま使っている道具との違いがどこにあるかという整理です。比較の情報は、乗り換えを勧めるためではなく、乗り換える理由がない場合を先に確かめるために読むと役に立ちます。
板の形で進行を見てきたチームなら、データの持ち方が近いので移行そのものは素直に進みます。この場合の論点は、移行の難しさではなく料金の区切り方に移ります。その整理はTrelloとの比較にあり、自動で取り込める経路がある場合の実際の手順はTrelloからの移行に書かれています。試用の段階で取り込みを使うかどうかは、前の章で触れたとおり、手で作るほうが判定に向くこともあるので、両方を知ったうえで選んでください。
工程や依存関係を細かく管理してきたチームは、粒度をどこまで細かくするかが最大の論点になります。細かく管理できる道具は、細かく入力しないと価値が出ません。入力する人が増えないと、細かい表はすぐ嘘になります。この関係はAsanaとの比較で扱われています。試用の判定基準を作るときに、この観点を入れておくと、道具のせいなのか運用のせいなのかを切り分けやすくなります。
自由に組める道具から移す場合、設計の自由と、その設計を維持する手間の関係を見ることになります。作り込んだ人が異動した瞬間に誰も直せなくなる、という詰まり方は現場でよく聞きます。この論点はNotionとの比較に整理されています。
社内の管理も併せて行う形の道具を検討しているならmonday.comとの比較を、課題管理とコードの管理を近づけて運用してきたならBacklogとの比較を見てください。板1枚に集約する形の道具は、リポジトリの機能を持ちません。コードまで1か所にまとめたいなら、含む側に残るほうが素直な判断です。日本語で作られた板型の道具どうしを見比べるならJootoとの比較があり、似た方向の道具の違いは機能表よりも料金の区切り方と実際の画面に出ます。どこから見るか決めきれない場合は、比較の一覧にまとめて並んでいるので、いま使っている道具の項目から入るのが早い。
機能の範囲そのものを先に把握しておきたいならできることを、費用の試算を社内に出す必要があるなら料金を確認してください。予算の相談を通すときは、月額だけでなく、何人分で、どの区切りで金額が変わるのかまで示すと一度で通ります。導入の可否を聞かれたときに出やすい疑問、たとえば途中で人数を変えたらどうなるか、データを取り出せるかといった点はよくある質問にまとまっています。
板1枚に集約する形の道具には、はっきりした割り切りもあります。自動化と外部サービスとの連携では勝負せず、画面は日本語のみで、自動で取り込めるのは限られたサービスからだけです。この割り切りが合わないチームは、別の道具を選ぶほうが結果的に良い判断になります。導入の手順を丁寧に踏んでも、合っていない道具に移せば戻ることになるので、最初の見極めと、やめる基準の設定に時間をかける価値があります。
比較の情報を読むときに忘れないでほしいのは、料金も上限も変わるということです。記事や第三者のまとめではなく、検討している時点の各サービスの公式ページで確かめてください。そして、確かめられない項目については、確かめられないまま社内資料に書かないことです。導入を進める側が根拠のない数字を1つでも書くと、そこが崩れたときに全体の提案が崩れます。決めごとを先に置いて小さく試すやり方は、この意味でも安全です。確かめられることだけで判断を進められるからです。
Q1. ツールの導入手順で最初にやるべきことは何ですか?
道具を探すことではなく、いまの詰まりを1行で書き、それが起きている回数を1週間数えることです。進捗を聞くために送ったメッセージの数、工程表を引き直した回数などを数えると、思っていた場所と違うところが詰まっていると分かることがあります。詰まりの場所を取り違えたまま選ぶと、どの道具を入れても解決しません。
Q2. 試用はどのくらいの期間、何人でやればよいですか?
案件を1つ、人を3人から5人に絞り、2週間を目安にしてください。判定日に基準を満たさず、原因が進め方にあると分かった場合のみ、2週間の延長を1回まで認めます。範囲が小さいと、うまくいかなかったときに原因を名指しでき、やめるコストもほぼゼロなので、正直に評価できます。
Q3. やめる基準はどう決めればよいですか?
効果ではなく行動を、数えられる形で書いてください。導入から2週間で成果が変わることはまずありませんが、行動は変わります。更新が3日以上止まっているカードが半分を超えたらやめる、進行を預かる人以外の入力が週に1回もなかった人が半数を超えたらやめる、といった書き方にすると判定が揺れません。
Q4. 古い道具はいつ閉じればよいですか?
全体に広げた日から1か月後を目安に、それまでは読み取り専用として残し、新しい書き込みは受け付けない形にします。閉じる日を決めないと二重管理が続き、どちらが正なのか分からない状態になって導入前より悪化します。閉じたあとも、書き出したデータは保管しておいてください。