ツールの乱立をどう畳むか|どこに何を置くかを1枚にする
ツールが乱立していると感じるとき、困っているのは道具の数そのものではありません。困っているのは、ある案件の最新の状況がどこにあるのか、聞かないと分からないことです。チャットを遡るのか、共有フォルダを開くのか、表計算の工程表を見るのか、それとも担当者の頭の中にしかないのか。それが人によって違うから、確認のたびに人が動きます。
この記事は、道具を減らす話から始めません。先に決めるのは「どこに何を置くか」で、それを1枚に書き出すところから始めます。1枚が書けないうちに道具を消すと、置き場所を失った情報が別の場所に散って、乱立がもう一段ひどくなります。以下では、道具が増えていく経緯、棚卸しの手順、減らすときの順番を順に整理します。
道具が乱立するのは、チームが真面目に動いた結果
道具が増えた現場を見ると、たいていの場合、増やした判断そのものは正しいものです。ファイルの受け渡しが面倒だったからストレージを入れた。メールの往復が重かったからチャットを入れた。抜け漏れが出たからタスク管理の道具を入れた。どれも、そのとき起きていた問題に対する正しい手当てでした。問題は、手当てを足すたびに「情報の置き場所」が1つずつ増えていったのに、置き場所の全体像を誰も書かなかったことにあります。
背景には、道具を入れる敷居が下がり続けているという事情があります。クレジットカードと数分の設定があれば、部門単位でも個人単位でも、その日のうちに新しい道具を使い始められます。無料の枠が用意されていることも多く、決裁を通さずに始められてしまいます。導入に稟議が必要だった時代は、増えるスピードが自然と抑えられていました。いまは抑えるものが何もありません。
クラウドサービスの利用用途として最も多く挙げられているのは、ファイル保管・データ共有である。 出典: soumu.go.jp
置き場所として最も多く使われているのがファイルの保管と共有だ、という点は、乱立の話をするうえで重要です。ファイルは置くだけで役目を果たしているように見えます。しかし、そのファイルが「いまの正解」なのかどうかは、ファイル自体には書かれていません。工程表が3つのフォルダに散っていても、それぞれのファイルは何も文句を言わないのです。人が突き合わせるまで、矛盾は表に出てきません。
もう1つの背景は、働く場所が分かれたことです。同じ部屋にいれば「これ、いまどうなってる」の一言で済んでいたものが、テキストとして残さないと伝わらなくなりました。残す先が増えたのはそのためです。残すこと自体は前進なのですが、残す先の合意がないまま残す量だけが増えると、探す時間が増えます。乱立の正体は、道具の数ではなく置き場所の合意が無いまま置き場所だけが増えた状態です。
とりまとめる立場の人が最初に確かめるべきは、「うちは道具が多い」ではなく、「同じ種類の情報が、いくつの場所に置かれているか」です。道具が7つあっても、種類ごとに置き場所が1つに決まっていれば混乱は起きません。逆に道具が3つでも、進捗という1種類の情報が3か所に書かれていれば、毎日ずれます。数える対象を間違えると、打ち手も間違います。
道具が増えていく4つの経路
増える経緯には型があります。型が分かると、いま自分のチームがどの経路で増えているのかを言い当てられるようになり、止める場所も決まります。
困りごとが出るたびに1つずつ足す
最も多い経路です。抜け漏れが出た、履歴が追えなかった、ファイルが行方不明になった。そのたびに、その困りごとに一番効く道具を探して入れます。1回ごとの判断は合理的で、しかも短期的にはちゃんと効きます。効くので、次の困りごとでも同じやり方を取ります。
この経路の厄介なところは、足した道具を後から見直す機会が制度として存在しないことです。入れるときには「これで解決する」という理由がありますが、外すときには理由を誰かが能動的に作らないといけません。放っておけば残り続けます。結果として、いま起きている困りごとではなく、2年前の困りごとのために契約が続いている道具が積み上がります。
案件ごと、取引先ごとに別の板が立つ
外部と一緒に進める案件では、相手の環境に合わせることがよくあります。相手が使っている道具に招待されて、その案件だけそこで進める。これ自体は現実的な判断です。ただし、案件が5つあって相手が5社なら、進行の場所も5つになります。自社の進行を横に並べて見たいときに、5か所を開いて回ることになります。
さらに、案件が終わったあとにアカウントが残ります。終わった案件の板は、消していいのか判断がつかないまま放置されがちです。契約や検収の記録が中に入っていることがあるからです。使わないが消せない板が溜まっていく、というのがこの経路の終着点になります。
人が変わるたびにやり方が変わる
とりまとめる人が交代すると、道具も変わることがあります。前任者が表計算で工程を管理していて、後任者はボード型の道具に慣れている。後任者が自分の慣れたやり方に切り替えるのは自然なことですが、切り替えるときに前のやり方を完全には畳めません。過去の案件は前のやり方のまま残り、新しい案件だけが新しいやり方になります。
この状態が数回繰り返されると、社歴によって見ている場所が違う、という状況が生まれます。新しく入った人には最新のやり方しか教えられないので、古い情報にたどり着けません。「あの件の経緯を知りたい」という問いに答えられる人が特定の個人に限られていきます。
誰も止める役をしていない
増える経路をすべて挙げても、止める役がいれば乱立はある程度で頭打ちになります。実際には、止める役が定義されていない組織がほとんどです。入れる判断は現場でできますが、外す判断は誰の仕事なのかが決まっていません。
止める役は、必ずしも「新しい道具を禁止する役」ではありません。新しく入れるなら、どの置き場所を畳むのかを一緒に決める役です。足し算だけを許して引き算を誰の担当にもしなければ、増えるに決まっています。
乱立が壊すのは、道具ではなく合意
道具が多いこと自体は、コストの問題として見れば大きくありません。壊れるのはもっと手前にあるもので、チーム内の合意です。
「最新」がどれか分からなくなる
同じ工程表が、共有フォルダとチャットの添付と個人の手元に存在するとき、どれが最新かはファイル名や更新日時では判断できません。更新日時が新しいファイルが、単に誰かが開いて閉じただけかもしれないからです。人は結局、作った本人に聞きます。聞かれた本人は作業を止めます。
この「聞く・止まる」の往復は、1回あたり数分でも、日に何度も起きます。とりまとめる人ほど、この往復の受け手になります。自分の作業時間が細切れになる原因の大半が、置き場所の不明確さから来ている、という現場は珍しくありません。
入力する人が減って、表が嘘になる
進捗の表が正しく保たれるかどうかは、更新する人が何人いるかで決まります。更新する場所が複数あると、人は自分にとって楽な場所だけを更新します。チャットで報告した人は、それで報告したつもりになります。表を見ている人には届きません。
現場では、置き場所が分かれた表は2週間ほどで誰も更新しなくなると言われています。更新が止まった表は、単に古いだけでなく害があります。古い表を信じて予定を組んだ人が、あとで手戻りするからです。更新されない表は、無い方がましな場面すらあります。
新しく入った人に説明できない
乱立の影響が一番はっきり出るのは、人が増えたときです。参加初日に伝えるべきことが「進捗はここ、ファイルはここ、相談はここ、決定事項はここ」で済むなら、説明は数分で終わります。済まない場合、「案件Aはこっち、案件Bはあっち、ただし請求まわりだけは別」という例外の羅列になります。
例外の羅列は口頭でしか伝わりません。書けないからです。書けないルールは守られません。新しい人は、教わった中で一番分かりやすい場所に情報を置きます。それがまた新しい置き場所になります。乱立は、こうして人が増えるたびに再生産されます。
どこに何を置くかを1枚にする
畳む作業の出発点は、道具の削減ではなく1枚の紙です。この1枚には、道具の名前ではなく情報の種類と、その置き場所を書きます。順番が逆になると失敗します。道具から考えると「この道具にはこんな機能もある」という話になり、置き場所が重なったままになるからです。
先に情報の種類を決める
チームで扱う情報は、細かく分ければきりがありませんが、進行の観点では数種類に収まります。よく使われる切り方は次のとおりです。
・いま誰が何をしているか(進捗、担当、期限) ・決まったこと(仕様、方針、金額、納期の合意) ・作りかけのもの(原稿、デザイン、コード、見積の下書き) ・完成して渡したもの(納品物、請求書、契約書) ・雑談と相談(結論が出る前のやり取り)
この5つを紙に書き出して、それぞれに置き場所を1つだけ書きます。1つだけ、というのが肝心です。2つ書きたくなったら、その2つの違いを説明できるかを確かめます。説明できないなら、それは重なっています。
3つの列だけで足りる
1枚の形は複雑にしません。列は3つで足ります。情報の種類、置き場所、そこを見に行くべき人。これ以上増やすと、1枚を維持する作業そのものが仕事になります。
| 情報の種類 | 置き場所 | 見に行く人 |
|---|---|---|
| 進捗と担当と期限 | 進行用のボード1つ | 全員 |
| 決まったこと | ボードのカードに追記 | 全員 |
| 作りかけのもの | 共有ストレージの案件フォルダ | 担当者と確認者 |
| 完成して渡したもの | 共有ストレージの納品フォルダ | 担当者と経理 |
| 雑談と相談 | チャット | 全員 |
表の右端に「見に行く人」を書く理由は、置き場所を決めただけでは足りないからです。全員が見る場所と、担当者だけが見る場所を分けておかないと、全員が全部を見に行くことになり、結局チャットで聞いた方が早い、に戻ります。
迷いやすい2つの線引き
1枚を書くとき、必ず議論になる線引きが2つあります。1つは、チャットで出た結論をどこに残すかです。チャットは相談の場所としては優秀ですが、結論の置き場所としては向きません。流れて消えるからです。線引きとしては「相談はチャット、結論が出たらその結論だけをボードのカードに書く」が扱いやすい形になります。書き写す手間はかかりますが、その手間が探す時間を消します。
もう1つは、ファイルとタスクの関係です。作りかけのファイルを進行のボードに全部貼ると、ボードが重くなります。逆にストレージにだけ置くと、どのタスクのファイルなのか分からなくなります。実務的には、ボードのカードにはファイルへの場所を1つ書いておき、実体はストレージに置く、という形が落ち着きます。実体は1か所、入口は進行の板に集めるという考え方です。
1枚をどこに置くか
書いた1枚をどこに置くかも決めておきます。そして、その置き場所は1枚自身にも書きます。最も確実なのは、進行の板の一番左上に固定して誰でも開ける状態にすることです。共有フォルダの奥に置くと、探せる人しか読めません。
新しく人が入ったときに最初に渡すのもこの1枚です。渡して、説明を数分で終わらせられるなら、その1枚は正しく書けています。説明に例外の但し書きが必要になったら、まだ畳み切れていない場所が残っています。
棚卸しの手順
1枚を書くには、いま何が使われているかを把握する必要があります。棚卸しは、うまくやれば1時間から半日で終わります。長く時間をかけると途中で止まります。
出ているものを全部並べる
最初にやるのは、記憶に頼らずに一覧を作ることです。集める先は3つあります。1つ目は、経理が持っている支払いの記録です。毎月あるいは毎年、どこにいくら払っているかが分かります。2つ目は、社内で使われているメールアドレスに届く通知です。通知が来る道具は、使われていなくても契約が生きています。3つ目は、メンバーへの聞き取りです。無料枠で使っている道具は支払いの記録に出ないので、聞かないと分かりません。
聞き取りのときの質問は「何を使っていますか」ではなく、「先週、仕事のために開いた画面を全部教えてください」にします。前者だと業務システムしか出てきません。後者だと、個人が使っている道具まで出てきます。乱立の実態は、後者に含まれています。
使われ方を数字で見る
並べたら、それぞれについて3つの数字を書き込みます。最後に更新された日、使っている人数、毎月の費用です。この3つで、道具はきれいに分類できます。
最終更新が90日より前で、使っている人が1人か2人の道具は、畳む候補です。費用が発生していれば、なおさら優先度が上がります。逆に、毎日更新されていて全員が使っている道具は、たとえ費用が高くても最後まで触りません。触ると業務が止まります。数字を書かずに感覚で判断すると、声の大きい人が使っている道具が残り、実際に業務を支えている道具が消える、という逆転が起きます。
情報の種類に割り当てる
次に、一覧の各道具に対して「この道具には、さっきの5種類のうちどれが入っているか」を書きます。1つの道具に複数の種類が入っていることは普通にあります。それは問題ありません。問題なのは逆で、1つの種類が複数の道具に入っている場合です。
割り当てが終わると、重なりが目で見えます。「進捗」が3つの道具に書かれている、「決まったこと」がどこにも割り当てられていない、といったことが分かります。割り当てられていない種類が見つかったら、そこは口頭と記憶で回っている部分です。乱立の反対側の問題として、必ず一度は見つかります。
消せないものに印を付ける
最後に、法や契約の都合で残さなければならないものに印を付けます。契約書、請求と入金の記録、個人情報を含むもの、取引先の指定で使っている環境などです。ここは道具の整理とは別の判断が要ります。保存の期間や扱いについては、社内の管理部門や顧問の専門家に確認してから動かします。判断を急いで消すと取り返しがつきません。
印を付けたものは、畳む対象から外して「見るだけの置き場所」として1枚に書きます。使わないが残す、という状態を明示しておかないと、次に棚卸しをした人がまた同じ判断で悩みます。
減らすときの順番
順番を間違えると、減らしたはずが増えます。安全な順番は決まっています。
まず、誰も使っていないものから
最終更新が古く、使っている人が1人か2人で、他の道具と重なっている。この条件を全部満たすものから畳みます。抵抗が最も少なく、失敗しても影響が小さいからです。
畳むときは、いきなり解約しません。まず「新規の書き込みを止める」だけにします。既存の中身は読める状態のまま、新しく書くのは別の場所にしてもらいます。この状態で1か月置いて、誰も困らないことを確かめてから解約します。読めなくなって初めて「あれが必要だった」と分かることは、実際によくあります。
次に、重なっているものを寄せる
同じ種類の情報が複数の場所にある場合、どちらに寄せるかを決めます。判断の基準は、機能の多さではありません。いま実際に、より多くの人が毎日開いている方に寄せます。人が動く方向に情報を動かす、というのが原則です。優れた道具に人を移動させるより、人がすでにいる場所に情報を集める方が、はるかに定着します。
寄せる作業では、過去の情報を全部移す必要はありません。進行中の案件だけを新しい場所に作り直し、終わった案件は古い場所に読み取り専用で残す、という切り方が現実的です。全部移そうとすると作業量で挫折し、中途半端な状態が固定します。
主戦場は最後に触る
全員が毎日使っている道具は、最後まで動かしません。ここを最初に動かすと、慣れの問題と乱立の問題が同時に起き、原因が切り分けられなくなります。周辺を畳んで1枚が安定してから、必要であれば主戦場の見直しに入ります。
主戦場を動かすと決めた場合も、切り替えの日を1日にしません。新しい案件から新しい場所で始めて、進行中の案件は元の場所で終わらせる、という並走の期間を取ります。並走期間は1枚に明記します。書いていないと、どちらに書けばいいか分からない人が両方に書き、二重管理になります。
やってはいけない減らし方
3つあります。1つ目は、置き場所を決める前に解約することです。行き場を失った情報は、必ず個人の手元か、もっと目の届かない場所に移ります。2つ目は、上から一律に禁止することです。禁止された道具の代わりが用意されていなければ、隠れて使われるだけで、把握できない置き場所が増えます。3つ目は、全部を一度に変えることです。人が覚え直せる量には限りがあり、同時に複数の変更を出すと、どれも定着しません。
移すときに詰まるところ
寄せると決めたあと、実務で詰まるのはたいてい同じ3か所です。
持ち出せる形かどうか
移すには、いまの道具から中身を取り出す必要があります。取り出せる形式は道具によって違います。表形式で丸ごと書き出せるものもあれば、画面から手で写すしかないものもあります。移す先を決める前に、移す元から何がどう取り出せるかを確認しておくと、作業量の見積もりが大きく外れません。
取り出したデータのうち、そのまま移せるのは進行の骨格の部分だけであることが多いです。添付ファイル、コメントの履歴、誰がいつ動かしたかの記録は、形式が合わずに落ちることがあります。落ちて困るものがあるなら、古い場所を読み取り専用で残す判断に切り替えます。
権限をどう引き継ぐか
移す作業でよく漏れるのが、誰が何を見られるかの設定です。元の場所では特定の人しか見られなかった情報が、移した先では全員に見える状態になることがあります。逆に、見えるべき人に権限を渡し忘れて、移した初日に業務が止まることもあります。
移す前に、いまの権限の設定を一覧にしておきます。案件ごとに外部の人が入っている場合は特に重要です。データの扱いや権限の考え方については、安全性の考え方で整理されている観点が確認の目安になります。取引先との契約で情報の扱いが決められている場合は、契約書の条項を先に確認します。
通知の量が変わる
移した直後に必ず起きるのが、通知の増減です。新しい場所からの通知が全員に一斉に飛ぶと、通知が邪魔だという理由で見なくなる人が出ます。逆に通知を絞りすぎると、書いたのに気付かれない状態になります。
移行の初週は、通知の設定を全員で一度そろえる時間を取ります。個々人に任せると、設定した人としない人で情報の届き方が変わり、また「聞いた方が早い」に戻ります。通知の初期設定も1枚に書いておく項目です。
寄せる先を選ぶとき、比べる材料をどこで見るか
寄せる先の候補を比べる段階になったら、機能の一覧表を並べても答えは出ません。機能が多い方が勝つ比べ方をすると、いま人が使っていない方を選んでしまうからです。見るべき点は、進行をとりまとめる立場から見て3つに絞れます。全員が毎日開くだけの軽さがあるか、費用が人数で読めるか、いまの場所から中身を持ってこられるか、です。
候補ごとの違いを整理したページとしては、名前が挙がりやすい道具について個別にまとめたものがあります。付箋を並べる形のボードとの違いはTrelloとの比較、仕事の割り振りと期限の管理に強い道具との違いはAsanaとの比較、文書とデータベースを自由に組み立てる道具との違いはNotionとの比較、表示形式を切り替えて使う道具との違いはmonday.comとの比較にまとめられています。国内で使われることの多い道具についてはBacklogとの比較とJootoとの比較があり、どれから見ればよいか決めかねる場合は比較の一覧から入ると、比べる軸そのものが整理された状態で見られます。
比較を読むときに気を付けたいのは、いま使っている道具の欠点探しにしないことです。乱立の原因は、たいてい道具の性能ではなく置き場所の合意の欠如にあります。合意が書けていない状態で乗り換えても、新しい道具の中で同じ乱立が再生産されます。1枚が書けてから比較を読むと、必要な条件がはっきりしているので判断が速くなります。
何がどこまでできる道具なのかを確かめるにはできることが入口になります。費用の見通しについては、人数で読める形かどうかが定着に効きます。全員が入る前提で試算しないと、あとから「この人は入れない」という例外が生まれ、例外がまた別の置き場所を作るからです。金額の考え方は料金で確認できます。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという考え方を取る場合、誰を入れるかで迷う場面が減り、1枚の維持が楽になります。
移す作業の見通しについては、いまの場所からどこまで自動で持ってこられるかが分かれ目です。自動で取り込めるのはTrelloだけで、それ以外の道具からは手で作り直すことになります。この点は隠さずに書かれていて、手順はTrelloからの移行で確認できます。同じように、リポジトリの機能は持っていないこと、自動化や外部サービスとの連携では勝負していないこと、画面が日本語だけであることも、あらかじめ分かった上で判断する材料になります。連携で業務を組み立てているチームには向きません。
なお、乱立を畳む過程では、契約や権限の細かい疑問が必ず出ます。人が増えたときの扱い、外部の人をどこまで入れられるか、退会したあとのデータがどうなるか。この種の疑問は、判断を先送りにすると1枚が書き上がらない原因になります。答えが公開されているものはよくある質問で確認し、公開資料で確認できないものは問い合わせて、確認できた内容を1枚の余白に書き足しておきます。1枚に書かれていない例外は、時間が経つと必ず忘れられ、次の乱立の起点になります。
畳む作業の成果は、道具の数が減ったことでは測れません。測るなら、新しく入った人に置き場所を説明するのにかかる時間と、「あれどこにある」と聞かれる回数です。この2つが目に見えて減っていれば、道具が何個残っていても、そのチームの乱立は解けています。
Q1. 道具の棚卸しは、どのくらい時間をかけるべきですか?
一覧を作って数字を書き込むところまでで、1時間から半日を目安にします。長くかけると途中で止まり、中途半端な一覧だけが残ります。集める先は、経理の支払い記録、通知メール、メンバーへの聞き取りの3つです。聞き取りでは「先週、仕事で開いた画面を全部教えてください」と聞くと、無料枠で使われている道具まで拾えます。
Q2. 使われていない道具は、すぐ解約してよいですか?
いきなり解約せず、まず新規の書き込みだけを止めます。既存の中身は読める状態のまま1か月ほど置き、誰も困らないことを確かめてから解約します。読めなくなって初めて必要だったと分かることがあるためです。契約書や請求の記録、個人情報を含むものは、保存の期間や扱いを管理部門や専門家に確認してから判断します。
Q3. どちらの道具に情報を寄せるか、判断の基準は何ですか?
機能の多さではなく、いま実際により多くの人が毎日開いている方に寄せます。人がいる場所に情報を集める方が定着するからです。移すときは進行中の案件だけを作り直し、終わった案件は元の場所に読み取り専用で残すと、作業量で挫折しません。全員が毎日使っている主戦場は、周辺を畳んで置き場所の1枚が安定してから最後に触ります。
Q4. 1枚にはどこまで細かく書けばよいですか?
列は3つで足ります。情報の種類、置き場所、見に行く人です。これ以上増やすと1枚の維持そのものが仕事になります。種類は「進捗」「決まったこと」「作りかけ」「完成して渡したもの」「雑談と相談」の5つ程度に収め、それぞれに置き場所を1つだけ書きます。2つ書きたくなったら、その違いを説明できるか確かめてください。