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原価計算のテンプレートを案件に合わせる|配賦の決め方

2026年10月1日 ・ Pinateca編集部

原価計算のテンプレートを探している時点で、たいてい先に困っていることが決まっています。案件ごとの利益が分からない、見積の根拠を聞かれて答えられない、去年より忙しいのに残る金が増えていない。どれも「原価が出ていない」という同じ場所に行き着きます。

先に結論を書きます。テンプレートが合わないのは、良いテンプレートを引けていないからではありません。「原価計算」という言葉が3つの別物を指していて、自分がどれを出したいのかを決めないまま枠を探しているからです。飲食店の原価率の表と、製造業の製造原価の表と、受託業務の案件別原価の表は、列も計算の順番も別物です。

この記事では、探す前に決めることを整理してから、テンプレートに必ず要る列、いちばん詰まる間接費の配賦の決め方、労務費の集め方、無料で手に入る入手先と選ぶときの見どころ、そして表計算で続けられる境目までを順に扱います。

原価計算のテンプレートが合わない理由

検索して出てくるテンプレートを3つ並べると、すぐに気づくことがあります。列の構成がまったく違うのです。片方は食材名と使用量と単価が並び、もう片方は工程と作業時間が並び、さらに別のものには部門名と配賦率の欄があります。

これは作り手が適当だからではありません。原価計算が業種によって別の作業だからです。飲食店で必要なのはメニュー1品あたりの原価率で、材料の使用量が分かれば出ます。製造業で必要なのは製品1個あたりの製造原価で、材料費に加えて工場で働く人の時間と設備の費用を乗せる必要があります。受託の制作や開発で必要なのは案件1件あたりの原価で、そのほとんどが人の時間です。

この3つを1枚のテンプレートで扱おうとすると必ず破綻します。使わない列が半分残り、要る列が足りず、誰も埋めない表になる。現場でしばしば出るのは、このパターンです。

言葉になじみが薄いことも、つまずきを増やしています。

このように原価計算が分かれば、会社の利益を生み出すポイントが見えてくるので、その知識は会社から大変重宝されるのですが、「原価計算」という言葉は一般的にはなじみが薄く、言葉を聞くだけで難しいと感じる方も少なくありません。 出典: pcci-school.com

難しく感じる原因の大半は、簿記の用語ではなく、この「どの原価の話をしているのか」が共有されていないことにあります。経理の担当者が売上原価の話をし、現場のとりまとめが案件別の原価の話をしていて、同じ「原価」という言葉で別のものを指したまま会議が終わる。テンプレートを配る前に、ここを1つに決めておく必要があります。

もう1つの背景として、外注の比率が上がったことがあります。社内の人件費だけを原価と考えていた時代の表は、外注費が原価の半分を占める体制には合いません。誰にいくら払ったかは請求書から追えても、それがどの案件のものかは、表に案件の列が無ければ後から分けられません。テンプレートを選ぶときに、外注費を案件に紐づけられる作りかどうかを見ておくと、あとで作り直す手間が減ります。

探す前に決める3つのこと

テンプレートを探す作業に入る前に、3つだけ決めてください。ここが決まっていれば、探す時間は10分で済みます。

1つめは、何の原価を出すのかです。選択肢は3つあります。商品1つあたりの原価、案件1件あたりの原価、月ごとの部門の原価です。商品1つあたりなら材料と作業時間の表、案件1件あたりなら人の時間と外注費の表、月ごとの部門なら費用を科目で並べて配賦する表になります。

2つめは、どの単位で集めるのかです。日ごとに入れるのか、作業が終わるたびに入れるのか、月末にまとめて入れるのか。ここを決めないまま表を配ると、入力の粒度が人によってばらつき、集計しても比べられない数字が並びます。目安として、案件別の原価を出したいなら、遅くとも週に1回は入れる形にしないと記憶で埋めることになります。記憶で埋めた時間は、実績ではなく感想です。

3つめは、出した数字を何に使うのかです。見積の根拠に使うのか、期中に赤字の案件を見つけるためなのか、期末に利益を確定させるためなのか。用途によって必要な精度が変わります。見積の根拠なら概算でよく、期末の確定なら証憑と一致していなければなりません。同じ精度で全部やろうとすると、入力が重くなって続きません。

この3つを決めると、探すべきテンプレートの形が1つに絞れます。逆に、決めずに探し始めると、良さそうなものを5つダウンロードして、どれも自社に合わないという結論になります。3つの問いに答えるほうが先です。

決め方に迷ったときの目安を書きます。いま困っていることを1つだけ挙げて、その困りごとを解消するのに最低限必要な数字だけを出す形にしてください。「案件ごとの利益が分からない」なら、必要なのは案件別の売上と、その案件に使った時間と外注費だけです。材料費の内訳や設備の減価償却は、その困りごとには要りません。最初から完全な原価計算を組もうとした表は、例外なく途中で止まります。

テンプレートに必ず要る列

どの業種でも、原価は3つに分かれます。材料費、労務費、経費です。製造業ではこれを材料費、労務費、製造経費と呼び、受託業務では材料費がほぼ無いので労務費と外注費が中心になります。

この3つとは別に、もう1つの区分があります。直接費と間接費です。ある案件のために使ったと特定できるものが直接費で、複数の案件にまたがるものが間接費です。案件用に買った素材は直接費、家賃や会計ソフトの料金は間接費になります。

テンプレートに必ず要る列は、この2つの区分を両方持っている形です。具体的には次の列が要ります。

・案件または商品の名前(集計の軸になるので、表記を1つに統一する) ・費目(材料費・労務費・外注費・経費のどれか) ・直接か間接か ・金額(税抜で統一する) ・発生した日付 ・誰が入れたか

この6列があれば、案件別の直接費はその場で出ます。間接費の配賦は後の工程なので、入力の段階では「間接」と印を付けて分けておくだけでよいです。ここを混ぜて入力すると、後から分けられません。

見落とされやすいのが、税抜で統一するという点です。請求書は税込で届き、人件費には消費税がありません。混ぜたまま集計すると原価率が狂います。原価率を出すときは、原価も販売価格もどちらも税抜でそろえるのが前提です。

例:原価額300円、販売価格1,000円なら、原価率は30%です。原価額と販売価格は、どちらも税抜きで計算します。 出典: niku-q.co.jp

もう1つ、入れておくと後で助かる列があります。見積の段階でいくらと想定していたかを書く列です。実績だけを集めた表は、赤字が出たことは教えてくれますが、どこで見誤ったのかは教えてくれません。想定と実績を並べて置くと、見積の癖が見えます。時間を少なく見ていたのか、外注費を忘れていたのか、値引きを原価側で吸収していたのか。この列が1つあるだけで、テンプレートが記録の道具から判断の道具に変わります。

業種別に、テンプレートの列はどう変わるか

同じ「原価計算のテンプレート」でも、業種によって列の構成は別物になります。自社に近い形を先に知っておくと、探す対象が絞れます。

飲食店の場合、必要なのはメニュー1品あたりの原価率です。列は、メニュー名、材料名、使用量、材料の単価、1品あたりの材料費、販売価格、原価率の順に並びます。使用量の単位をグラムなのかミリリットルなのか個数なのかで統一しないと、単価との掛け算が合いません。ここを混在させたまま作った表が、原価率が数倍ずれる原因になります。1品ごとの原価率が出ても店全体の原価率は出ないので、仕入の合計と棚卸の増減から全体を出す欄を別に持つ必要があります。

製造業の場合、製品1個あたりの製造原価を出します。列は、製品名、材料費、加工の工程、工程ごとの作業時間、時間あたりの加工賃、外注加工費、製造経費の配賦額の順になります。飲食店との最大の違いは工程の列があることです。同じ製品でも工程が3つなら3行になり、その合計が1個あたりの原価になります。歩留まりの欄を持たせておくと、不良で捨てた分の材料費を原価に乗せられます。ここを入れない表は、実際より原価を低く見せます。

受託の制作や開発の場合、案件1件あたりの原価を出します。列は、案件名、担当者、作業日、作業時間、時間単価、外注先、外注費、直接経費の順です。材料費の列はほぼ使いません。かわりに、作業の種類を分ける列があると役に立ちます。設計なのか制作なのか修正対応なのかを分けておくと、修正対応にかかった時間が案件ごとに見えます。修正が原価を食う商売では、この1列が値段の付け方を変えます。

3つに共通しているのは、単価を別のシートに1か所だけ置くという点です。業種が違っても、単価が各行に散っている表は同じ理由で壊れます。

自社がこの3つのどれにも当てはまらないと感じたときは、いちばん金額の大きい費目がどれかで決めてください。材料費が最大なら飲食店の形、加工にかかる時間が最大なら製造業の形、人の時間が最大なら受託の形が近くなります。小売や物販のように仕入がそのまま原価になる商売では、飲食店の形から使用量の列を外した形がいちばん近いです。

配賦の決め方が最大の分かれ目

原価計算でいちばん詰まるのが、間接費の配賦です。家賃、通信費、会計や勤怠のソフトの料金、管理をしている人の給料。これらは特定の案件のものではないのに、案件別の原価に乗せなければ本当の利益が出ません。

配賦とは、この間接費を何らかの基準で案件に割り振る作業です。基準の選び方は3つあります。

作業時間で割る方法が1つめです。全体の間接費を、全案件の作業時間の合計で割って1時間あたりの単価を出し、案件ごとの時間に掛けます。人の時間が原価の中心になる受託業務ではこれが素直です。

売上で割る方法が2つめです。売上の大きい案件に多く乗せます。計算が簡単で、間接費が売上にほぼ比例する商売では実態と合います。ただし、売上は大きいが手間がかからない案件の原価を過大に見せます。

人数や件数で割る方法が3つめです。管理の手間が案件の数にほぼ比例する場合に使います。1件あたり均等に乗せるので、小さい案件の原価が重く出ます。

どれが正しいという話ではなく、自社の間接費が何に比例して増えるかで決めます。判断の手順は次のとおりです。間接費の中で金額の大きい上位3つを挙げ、その費用が増える原因を1つずつ書きます。家賃なら人数、ソフトの料金なら利用者数、管理の人の給料なら案件の件数か作業時間。上位3つの原因がそろって時間に紐づくなら時間基準、件数に紐づくなら件数基準です。

数値で見ると分かりやすくなります。月の間接費が60万円で、その月の全案件の作業時間の合計が300時間なら、1時間あたりの配賦額は2,000円です。40時間かかった案件には8万円が乗ります。この案件の直接費が30万円、売上が50万円なら、間接費を乗せる前の利益は20万円ですが、乗せた後は12万円です。この差を知らずに「利益率40%の案件」として次の見積を作ると、値段の付け方が狂います。

部門が分かれている場合は、配賦を2段階で考えます。まず全社の間接費を部門に割り振り、次に部門の費用を案件に割り振ります。1段階で全社の間接費を全案件に均して乗せると、間接費をほとんど使っていない部門の案件に、他部門の費用が乗ります。段階を分けるのは手間ですが、部門ごとの利益を見たいなら避けられません。部門が1つしかない規模なら、1段階で十分です。

配賦で気をつける点が2つあります。1つは、基準を年度の途中で変えないことです。変えると前後の比較ができなくなり、改善したのか基準が変わっただけなのか分からなくなります。もう1つは、配賦率を毎月作り直さないことです。月ごとの間接費の増減がそのまま案件の原価に乗って、同じ作業でも月によって原価が変わります。前年度の実績から年間の配賦率を1つ決めておき、期末に実績と突き合わせて差を見る形が扱いやすいです。

労務費をどう集めるか

案件別の原価を出そうとして止まる理由は、ほぼ1つに集約されます。時間の記録が無いことです。

材料費は請求書があります。外注費も請求書があります。労務費だけは、誰がどの案件に何時間使ったかを記録しないと存在しない数字です。そしてこの記録は、本人が入れるしかありません。

まず単価を決めます。月給に社会保険料の会社負担分と賞与を足した年間の総額を、年間の実働時間で割ります。年間の総額が600万円で、実働が1,800時間なら、1時間あたり約3,333円です。この単価は人ごとに出しても、職種ごとの平均で出してもかまいません。人ごとに出すと給与が推測できてしまうため、共有する表では職種の平均を使うほうが運用しやすいです。

次に時間を集めます。ここで入力する人が増えないと、原価の表はすぐ嘘になるという問題に当たります。月末に思い出して書いた時間は、実態より丸まって、忙しかった案件に多めに寄ります。

集め方を軽くする工夫は3つあります。1つは刻みを粗くすることです。15分刻みで求めると入力が面倒になって続きません。0.5時間刻みで十分です。2つめは、案件の一覧を選択式にすることです。案件名を手で書かせると表記がばらつき、集計できなくなります。3つめは、入力の場所を作業の場所に近づけることです。表計算のファイルを別に開かせる形は、開く手間そのものが理由で飛ばされます。

作業の進行を管理している道具の中で時間も入れられるなら、入力率は上がります。人数が増えたときに機能が有料側へ移らない作りかどうかは先に確かめておくと、あとで運用を組み直す手間が省けます。費用の区切り方は料金で確かめられます。

記録が続くかどうかは、入れる本人に返るものがあるかで決まります。入れた時間が原価の集計にしか使われない表では、入力は「会社のための作業」になり、優先順位が下がります。その週に自分が何にどれだけ使ったかがその場で見える形になっていれば、入力は自分のための確認になります。同じ数字を集めるのに、どちら向きに見せるかで入力率が変わります。

外注費の集め方にも触れておきます。外注の請求書は月単位で届くことが多く、1枚の請求書に複数の案件が混ざります。届いた時点で案件ごとに分けないと、後から分けられません。発注の段階で案件名を発注書に書き、請求書が届いたらその案件名で分けて入力する。この順番を守るだけで、月末の突き合わせが要らなくなります。

時間の記録を求めるときの注意を1つ書きます。業務委託の相手に稼働時間の記録を求める場合、指示の仕方によっては契約の性質の判断に関わります。記録の目的が原価の把握であることを伝えたうえで、実際の指揮命令の有無については所管の窓口や専門家に確かめてください。

無料のテンプレートの入手先と、選ぶときの見どころ

無料で手に入る先は大きく3つあります。

表計算ソフトの提供元が公式に配っているテンプレート集が1つめです。数は多くありませんが、数式の作りが素直で壊れにくいです。業種別のテンプレートを配っている専門サイトが2つめで、飲食店向けの原価率表や製造業向けの原価計算表が見つかります。会計ソフトや業務システムの会社が配布しているものが3つめです。自社製品の紹介が付きますが、列の設計は実務に沿っていることが多いです。

選ぶときに見る点は4つあります。

1つめは、単価が1か所にまとまっているかです。材料や作業の単価が各行に直接打ち込まれている表は、単価が変わるたびに全行を直すことになります。別のシートに単価の一覧があり、集計シートがそれを参照している形が正解です。

2つめは、結合セルが使われていないかです。結合された列は並べ替えとフィルタが効かず、行の挿入でエラーが出ます。触った人は自分が壊したと思って黙るので、崩れた表がそのまま回ります。

3つめは、集計が数式で出ているかです。合計欄に数字が直接入っている表を配ると、行を足した人が合計を直さないまま提出します。

4つめは、間接費の欄があるかです。無料のテンプレートの多くは直接費だけの表で、配賦の欄がありません。直接費だけでも始められますが、後から間接費を足す設計になっているかは見ておく必要があります。

ダウンロードしたテンプレートをそのまま使うときのおすすめの手順を書きます。最初に、使わない列を消さずに非表示にしてください。消すと数式が壊れることがあり、後で必要になったときに戻せません。次に、自社の案件を3件だけ入れて、集計欄の数字が手計算と一致するかを確かめます。ここで合わないテンプレートは、数式の参照範囲が固定されていることが多く、行を足した分が集計に入りません。最後に、入力する人に配る前に、入力する欄だけ背景色を変えて、それ以外のシートを保護してください。保護を掛けていない表は、数式の入ったセルに数字を直接打ち込まれて、翌月から集計が止まります。

必要なスキルについても触れておきます。原価計算のテンプレートを使い回すだけなら、表計算の基本の操作で足ります。自分で組むなら、条件付きの集計をする関数と、別のシートから値を引く関数の2つを知っていれば作れます。簿記の資格は要りません。要るのは、自社の費用がどこで発生しているかを言葉で説明できることです。

テンプレートで回すメリットと、続かなくなる理由

表計算のテンプレートで原価計算を回すメリットは3つあります。

導入の費用がかからないことが1つめです。すでに手元にあるソフトで始められ、決裁も要りません。2つめは、自社の勘定科目や案件の呼び方にそのまま合わせられることです。専用のシステムは項目が決まっていて、自社の言い方に直せないことがあります。3つめは、計算の中身が見えることです。数式を追えば、なぜその数字になったかが分かります。ブラックボックスに数字を入れて出てきた原価は、疑われたときに説明できません。

一方で、続かなくなる理由もはっきりしています。

いちばん多いのが、入力が1人に集中することです。時間や費用を各自が入れる前提で作った表でも、実際に入れるのは半分の人で、残りは代わりに誰かが聞き回って埋めます。この時点で、表の更新が特定の1人の仕事になります。その人が休むと止まります。

2つめが、ファイルの複製です。共有フォルダの表を各自がダウンロードして書き込み、メールで送り返す運用になると、どれが最新か分からなくなります。集計する人が手で統合し、その過程で数字が1か所ずれる。ずれに気づくのは、たいてい決算の直前です。

3つめが、月をまたぐと比較できなくなることです。月ごとにシートを複製する運用は、途中で列を1つ足した瞬間に過去のシートと構造が変わります。半年後に年間の推移を出そうとして、シートごとに列の位置が違うことに気づきます。

4つめが、案件の数が増えたときに行数が持たないことです。案件が100件を超えると、フィルタで絞って見る運用になり、全体を見渡すことをやめます。全体を見なくなった原価の表は、赤字の案件を見つける役目を果たしません。

5つめが、退職や担当替えで作りが分からなくなることです。数式を組んだ人がいなくなると、誰も触れない表が残ります。原価の表は毎月使うものなので、触れないままでは済みません。作った人が数式の意図を1枚のシートに書き残しておくかどうかで、寿命が変わります。

これらは使い方が悪いから起きるのではなく、1つのファイルを複数人で書き換える形そのものから来ています。注意して防げるのは最初の数か月です。

表計算の外に出す境目と、数字が使われる形にする

原価計算を表計算で続けるか、別の道具に移すかの境目は、案件の数ではありません。同じ日に表を触る人の数です。3人以上が同じ日に同じファイルを書き換える状態になったら、ファイルを回す形は持ちません。

移すかどうかを判断するときに見る点を4つ挙げます。

1つめは、時間の記録がどこで発生しているかです。作業の進行を管理している場所と時間を入れる場所が別だと、入力率は上がりません。同じ場所で済むなら記録が残り、原価の精度が上がります。

2つめは、案件の一覧が1か所にあるかです。原価の表と進行の表で案件名の表記が違うと、突き合わせに手作業が入ります。板の上に案件が並んでいて、その案件に時間と費用が紐づく形なら、突き合わせが要りません。どの形の板が使えるかはできることで確かめられます。

3つめは、決まったことが流れて消えないかです。原価が見積とずれる原因を辿ると、たいてい「あの作業も見てもらえますか」という一言がチャットの中で流れ、見積を直さないまま作業だけ増えていた場所に行き着きます。話す場所と残す場所が同じなら、増えた作業をその場で案件に足せます。

4つめは、人数が増えたときの区切り方です。無料の枠で始めて、人が増えた瞬間に必要な表示が有料側へ移る作りだと、移行のたびに運用を組み直すことになります。機能で絞らず、区切るのは人数とボードの数だけという形なら、増えたときに考えることが1つで済みます。

すでに別の道具を使っている場合は、いま足りていないものから比べるのが早いです。カードの運用を中心に比べるならTrelloとの比較、情報を1か所に集める設計と比べるならNotionとの比較、国産の課題管理と比べるならBacklogとの比較が該当します。7社を横に並べた比較の一覧から入ると、どの軸で選ぶかが先に決まります。Trello の板をそのまま持ち込む手順はTrelloからの移行にあります。自動で取り込めるのは Trello だけなので、表計算から移す場合は手で作り直す範囲を先に見積もってください。費用や社外の相手との共有の扱いで迷う点はよくある質問に並んでいます。

最後に、原価の数字が実際に使われるようにする条件を書きます。出した原価を見る場が無いと、表は埋まるのに誰も見ないものになります。月に1回、案件の一覧を原価率の順に並べて、下から3件だけを見る場を作ってください。全件を見ようとすると時間が足りず、やめます。下から3件なら15分で終わり、赤字の原因が値引きなのか、時間の見誤りなのか、外注費の増加なのかが毎月1つずつ分かります。原価計算のテンプレートの価値は、正確な数字を出すことより、この15分を成立させることにあります。

Q1. 原価計算のテンプレートは無料のもので足りますか?

案件別の直接費を出すだけなら無料のもので足ります。表計算ソフトの提供元が公式に配っているものと、業種別の専門サイトが配っているものの2つを見比べて選んでください。有料のシステムが要るのは、間接費の配賦と証憑の突き合わせを毎月やる段階からです。まず無料の表で3か月回してから判断するほうが確実です。

Q2. 間接費の配賦はどの基準で決めればよいですか?

自社の間接費が何に比例して増えるかで決めます。金額の大きい間接費の上位3つを挙げ、それが増える原因を書き出してください。人の時間に紐づくなら作業時間基準、案件の件数に紐づくなら件数基準、売上にほぼ比例するなら売上基準です。年度の途中で基準を変えると前後を比較できなくなるため、一度決めたら期末まで変えないでください。

Q3. 原価率は税抜と税込のどちらで計算しますか?

原価も販売価格も税抜でそろえます。請求書は税込で届き、人件費には消費税がないため、混ぜると原価率が実態とずれます。テンプレートの金額欄に「税抜」と明記しておくと、入力する人が迷いません。既に税込で入力された行が混ざっている場合は、後から一括で直すのが難しいので、入力の段階で分けてください。

Q4. 労務費の時間はどのくらいの細かさで記録すればよいですか?

0.5時間刻みで足ります。15分刻みを求めると入力が面倒になって続かず、結果として月末に記憶で埋めることになります。案件名は選択式にして表記のばらつきを防ぎ、入力は遅くとも週に1回にしてください。月末にまとめて思い出した時間は、忙しかった案件に多めに寄るため、実績としては使えません。

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